1956.1.30 旧陸軍関係靖国神社合祀事務協力要綱(案)についての説明
旧陸軍関係 靖国神社合祀事務協力要綱(案)についての説明 31.1.30 復員課
1.本要綱(案)の内容について 1)本案は細部の検討未了であるが、取り敢えず明年度事務の構想を都道府県に連絡するため配布するものである。従って細部については今後の変更があり得ることを含みおかれたい。 2)合祀事務に対する協力は従来行って来ているところであるが、明年度以降においては、憲法の許す枠内の事務(復員業務の枠内の事務)を、国費を充てて推進し、これにより合祀事務全般の推進に寄与せんとするものである。本案の内容はこの趣旨に基づいている。
2.方針について 1)合祀の速度については今後3年間に大部の合祀を了えようとするものである。これがためには旧陸軍関係では年間約30万の合祀を目標とする必要がある。 2)戦没者の合祀は、形式的には靖国神社が行うものであり、国及び都道府県はこれに協力するものである。これは現在及び将来とも変りはない。しかしながら合祀者の選考に関する限り実質的には国及び都道府県でなければ実施不可能である。そこで、明年度以降においてはこの事務の実体に即応するよう事務体系を改めることとした。 即ち、従来靖国神社で選定し決定していた合祀者を、今後は都道府県が選定し、厚生省で決定して、靖国神社へ通知するということに改めたのである。 3)終戦前の合祀事務が、国の事務として極めて厳かに行われていたことは周知のことであるが、終戦後は神社の性格地位も変わりその合祀事務の責任も神社側に移ったため終戦後十年間の復員関係機関は、この事務について往時の軍機関が懐いていたほどの厳粛な気持ちを自ら感じなくなっているのではあるまいか。 今日靖国神社は、一宗教法人であるが、これに対し、神社を宗教法人ではない特殊の性格のものとし且つ国費を以て経営できるものとせよとの声も強い。これは靖国神社に対する国民の考え方の一端を表現したものと言えよう。合祀事務取扱上の心構についても考えさせられるところである。 今日都道府県主務課の事務能力は遺憾ながら逐次弱化しつつある。しかしながらこの事務の処理に関してはその道義的意味に鑑み終始能く適正確実に処理せられ、殊に合祀者選定事務の処理については些かの過誤もなからしめるよう万般の配慮がなされることが望ましい次第である。
3.一般の要領について 別紙の図参照
4.31年度の事務について 1)31年度の事務における特異点の一つは、新たに事務体系の切替、実質的責任転移が行われたことに応じて、先ず徹底した原簿の整理を行うべきと、その二つは原簿整理未了の間における秋期合祀者の選考にそごなからしめることである。 2)原簿の目的について 原簿の目的は、従来のような単なる合祀者の控簿に止まるものではない。責任を以て合祀予定者を選考するための原簿でなければならない。これがためには合祀済が記録されているべきは勿論であるが、もともと原簿としては戦没者が網羅的に記録され、その身上に関する必要な事項が正確に記録されてある資料たることが必要でありその外、遺族についての必要な記事が掲記されていることが望ましい。 右の見地からすれば、一般に原簿は戦没者調査票とし、できればこれに遺族票を添付したものとすることが適当と考えられる。 (註)(イ)戦没者調査票については、再製したもの、紛失したもの、援護局に畄置のもの等についての部分的な問題はある。 (ロ)援護法、恩給法等事務に関する総合的原簿を作ることの必要性においては誰しも異論のないところであろう。唯従来は能力的(予算上の)にここまで及ばなかったのである。明年度においては新たな事務依託費もあるのでこれらを総合運用すればこの作業も敢て不可能ではないとも考えられる。前述の戦没者調査票に遺族票を添付したものはこの意味の原簿たる目的にも合致し得る。 既に自らの発意においても右の方式による原票或は新たな様式の原票作製に着手されている向もあるやに聞くが、この際総合的な戦没者原票を整備する著意は誠に機宜を得たものであると考える。 3)原簿に合祀済者を投入する作業について (イ)過去の合祀済者は一応総て都道府県に通知済の筈である。然しながら都道府県としては原簿への記入漏れ、記入誤りもあり得ることであるし又終戦前後の資料消失もあると思われるので、この際靖国神社が有する過去の合祀者(但し一応満州事変以降の戦没者とする)全部の名票を都道府県に送付し未記入の分を記入すると共に記入済のものについては総点検を行うこととした。 なお、29年10月分以降合祀の分については名票未調整であるのでこれは目下の計画では、神社と援護局とで、分担調整することとしているが状況によっては一部を都道府県へ依頼するかも知れない。 (ロ)原簿整備作業はその原簿の整備の程度如何によって完成時期は異なる訳であるが、合祀済者の投入作業に関する限り10月末までに完了することを目途にするという趣旨である。 4)31年度秋期合祀予定者の選考について 前述したとおり原簿未整備のうちに選考する関係上之の範囲は従来一人の合祀者もない20年9月2日以降の外地戦没者と限定し重複合祀の虞をなからしめたものである。 選考基準は当面取り敢えずのものとして恩給(公務扶助料)既裁定者(但し援護法第4条第2項及び同附則《28年法律第百八十一号》の第20項に係るものを除く)とした。この合祀基準の総合的なものはいずれ将来十分検討の上必要な時期までに通達することになる筈である。 前述範囲で選考した場合各都道府県の平均人員は薬4000人程度と推測される。なお、祭神名票の様式は従来通りとし、用紙は中央で印刷配布する。 5)32年度春期合祀予定者選考事務について 本案の記述は一応の構想であり今後更に検討の上詳細は別に定める。
(別紙)
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