在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会ニュースレター 「未来への架け橋」 NO.93 (2020.2.1発行) |
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遺族の皆さんが若者と一緒に忘年会 |
「遺骨選別に科学者を入れよ」「遺骨を焼くな」と厚労省・外務省に申し入れ! |
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明けましておめでとうございます。 また新しい年がやってきました。いつも共にしてくださる在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会の皆さまのご健康とご多幸を心よりお祈りいたします。 昨年は、本当に胸苦しく、気苦労の多い1年でした。いつも皆さまのことを思い出して心をなだめました。いま起こっている様々な問題は通りすがりの風のようなものだと、考えてみました。私たちが共に活動し、賢明に克服していかなければと、また使命感が生まれました。 私は、一昨年10月の韓国大法院判決を見守りながら、皆さまのことを思い浮かべました。とても嬉しい気持ちでいっぱいでした。皆さまのご支援と、日本と韓国を行き来しながら、何度も法廷に入り、堂々と歴史の証人となった被害者や遺族の粘り強い闘争によって獲得した大きな成果でした。 いま見られる様々な動きは、希望の架け橋をつくる過程だと考えてください。私たちが続けてきた闘いと交流は、歴史の中にきちんと残され、次世代が不幸な歴史を振り返るきっかけとなっているのです。本当に意義深い成果です。 皆さま、お元気でお過ごしください。そして、楽しく幸せな2020年を力強く迎えられることを心より願っています。 2020年1月10日 太平洋戦争被害者補償推進協議会 李熙子 |
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1・21「戦没者の遺骨に関する厚労省外務省との意見交換会」を開催(上田)
今回の意見交換会は遺骨収集推進法施行から4年を迎えるにあたり沖縄でなかなか進まないDNA鑑定(特に遺骨鑑定)の進展のための全般的なチェックや提言を行うことと、韓国人遺骨問題を焦点に据えて取り組んだ。要請団体は沖縄戦遺骨収集ボランティア・ガマフヤー(ガマを掘る人)と、太平洋戦争被害者補償推進協議会、戦没者遺骨を家族の元へ連絡会の3団体。3団体が共同で要請するのは初めてだ。 冒頭大きな成果があった。厚労省から沖縄で発掘され保管されている手足の遺骨700体について今年3月末までに検体を採取し4月から鑑定を開始すると報告された。政府広報により130名の遺族の追加申請(遺族の申請は1000名近くになる)があったこと。また、慰霊塔など17か所に今後鑑定の対象となる遺骨があることが報告された。ここで問題が生じた。誰が700体の遺骨から検体を採取するかという質問に厚労省は事務職員が行うと答えた。参加者からは「専門家が行うべきではないのか」と強い追及が行われた。またガマフヤーから「鑑定に当たっては沖縄の科学技術大学院大学などの鑑定拠点を置き進めるべき」との提案がされた。厚労省は「素人でもDNA鑑定できないとわかる骨もある」などと発言し、参加の国会議員から「素人がすべきことではない」と抗議を受ける始末だった。
遺族の声「遺族は焼骨など望んでいない」 また、DNA鑑定を妨げる焼骨のことについても大きな議論になった。硫黄島では1万人の回収した遺骨のうち500体以外のほとんどは焼骨してしまっていることが明らかとなり、韓国のマスコミでも驚きだと報道された。厚労省が焼く理由を「遺族感情」としていることにも、参加した遺族から「遺族はそんなことを望んでいないし、厚労省は遺骨の遺族の承諾を得ていない」という当たり前のことが指摘された。専門家の参加と、沖縄の拠点を置くこと、焼骨反対の遺族の声はマスコミを通じて全国に伝えられた。これほどのマスコミの関心は、ロシア問題(日本人でない骨を焼骨し、持ち帰ったのを長年隠蔽した事件)の真剣な反省を厚労省が行わず、私たちがその解決の方向性を指し示したからである。 タラワ島での遺骨の一体が韓国人と判明したことを認める また、太平洋地域の遺骨ではタラワ島の遺骨について2000名に連絡をし、300名からDNA鑑定の申請があったことや硫黄島でも4月から呼びかけを始めることなども報告。 今回外務省が参加し、米日間で共同鑑定を進めるタラワ島で1体の遺骨が韓国人遺族と合致したことの報告を韓国外務省より受けたことを認めた。沖縄戦韓国人遺族163名が遺骨との照合を韓国政府を通じて要請していることについては、今まで「韓国政府から具体的要請があれば応える」「外交ルートの要請がない」という厚労省の逃げ文句は今回なくなり、「適切に検討する」というものに変わった。また日本外務省も韓国連合ニュースの取材に返還に向けて韓国外交部と引き続き協力する意向を示した。 「骨片でもいいから家族に返して!」李熙子さんと朴南順さん
「息苦しい思いです。2013年14年から要望書を4,5回渡した。しかし、今日の応えの中で私が怒りを抑えることができないのは、ご遺骨を厚労省の専門家でもない職員がゴミの分別みたいに選別しているが、専門家がやるべき仕事でしょ。それをやっていることに怒りを感じる。いまだに基本的な事も始まっていないではないかと思っている。自分の家族のことだと思うなら、こういう風に仕事をするのか考えてみてください。前には韓国の要請があれば応えると言っていたのに、今日は協議中ですという返答。自分の良心に照らして考えてみてください。一つの骨片も青年の時連れて行かれた人の骨片です。家族にとって骨片一つでも待ち焦がれていることを考えてください。戦争責任は取らないといけないでしょう」 また朴南順(パク・ナムスン)さんも続けた。 「重苦しいです。ブラウン島で父は亡くなった。父が42年に動員されブラウン島で亡くなったことを知らずに生きてきた。国家記録員で2005年初めて知った。父がいなくて勉強もできなかったので漢字も読めません。紙は白く字は黒くしか見えない。靖国合祀の判の意味も分かりませんでした。戦争に勝手に連れて行って鉄砲の盾にしておいて、こうやって家族にも知らせず合祀している。漢字も分からない日本語も分からないので、海軍軍属で飛行場の工事をしていて爆撃で死んだと李ヒジャさんに聞いた。私が母のお腹の中にいる時に日本のために父は連れていかれた。皆さんお願いします。ブラウン島で焼骨しないで、私に返してください。私がお祀りするのでお願いします」 日本の多くのマスコミが2人の話を直接聞いたことは大きな意味がある。今回初めてタラワ島で韓国人遺骨が見つかったことが日本のマスコミにより報道された。 私たちの闘いは、もう真ん中どころかあと一歩のところまで来ている。すべての戦争犠牲者と連帯していくことが闘いのカギとなっている。今回の意見交換会は日韓関係の改善に大きな一歩を築いた。 意見交換会での日本人遺族の発言 沖縄戦遺族 「私は少なくとも焼骨について聞かれたことはない。だれの指示で、なぜ焼かなければならないか応えて欲しい。検体を取った残りの骨も焼かないで欲しい。焼骨という行為は世界中から指をさされる行為。焼骨には罰則を設けて欲しい」 ミャンマー遺族 「伯父はミャンマーで戦死した。焼骨はぜひやめていただきたい。その是非を全遺族に聞いて欲しい。国策で戦地に行き、遺骨は野晒。また国の判断で焼くというのは倫理的におかしい。遺族の許可を取って欲しい」
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寄稿
埋葬された写真がある以上、何らかのけじめが必要との考えから私たちは会を立ち上げた。遺族探しから始まって、遺骨が見つかればDNA鑑定で家族(故郷)に帰すことができると期待を持って発掘を計画した。この発掘には韓国、台湾、北海道、そして沖縄から青年たちが集まり、「揺らぐアジアの平和を確かなものへ」を合言葉に2月8日から4泊5日で行う予定だ。地元本部町では辺野古新基地反対の現場に毎日通っている本部町島ぐるみをはじめ、町議の協力で町からの支援をもらい、又何よりも健堅区の理解を得て実施に向っている。本部町の戦争を語り継ぐ活動をされている方の協力は大きい。 本部町も沖縄戦の被害を大きく受けている。1944年の10・10空襲では瀬底島沖で潜水母艦・迅鯨が沈没、健堅の部落には爆弾が落され山での避難生活が余儀なくされた。健堅森の方には日本軍壕がそのまま残っている。ここの壕堀りには健堅に駐屯していた朝鮮人部隊(=特設水上勤務第104中隊)が動員されたと思われる。八重岳方面には第3高女が補助看護に動員された陸軍病院跡がある。日本軍はここに負傷兵を置き去りにして後退した。護郷隊に動員されて命を落とした3中生(名護在の中学校)の少年がいる。又現在、健堅に隣接する本部港からは伊江島の平和学習に向かう子どもたちを乗せて船が出港している。このように健堅は次世代につながる平和学習の重要な地域として浮上している。 一日も早く生きた証の回復を!日本政府は放置の謝罪を! 遺族への遺骨返還については、遺骨を引き取りたいはっきりと意思を示された方は一人。口に出さずとも期待されているかもしれないが、引き取りにはっきり難色を示す方もいる。遺族が望むからという動機では健堅の遺骨発掘は説明できない。私たちは戦争に連行し死なせたものをかくも長く放置している日本政府が許すことができないという立場だ。たとえ歳月がたち遺族の元に戻れなくとも、沖縄の地に放置されている遺骨を収容し、一日でも早く生前の名前を取り戻して生きた証が回復されなければならないと思う。 韓国の遺骸奉還課では2人の遺骨であることがはっきりすれば最高の儀礼を持って祖国に持ち帰りたいとしている。日本政府も積極的に遺骨を探し出し最高の医学水準で身元を特定すべきである。遺族の方には戦争の過ちを伝え丁寧な謝罪と共に、どのような状況で亡くなりどのように弔われたのかを詳細に報告すべきである。特に韓国のお二人は日本の補償制度から切り離され死亡一時金も遺族年金もなかった。連行の過程から調べてその過ちを認め、謝罪すべきである。 遺骨収容の共同作業にご支援を!
健堅の遺骨は日韓両国政府がそれぞれの研究成果を共有しながら、国家の責任として鑑定を成功させるべきであり、それが実現されるようにするのが私たちの役割ではないかと考える。 (2020年1月23日) ※2017年には李熙子さんも本部町の現場を訪れています。ご支援をよろしくお願いします! |
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ノー!ハプサ第2次訴訟控訴審第1回口頭弁論の報告(山本)
続いて、弁護団から控訴理由書と準備書面1・2の陳述を行いました。控訴審で弁護団が強調したのが、韓国人靖国神社無断合祀問題は単なる感情の問題ではなく違法性の問題であるということです。準備書面2は国際人権法の観点からこれを展開したものです。また、準備書面1では、豊臣秀吉時代の朝鮮侵略の際に夫が殺され、日本側将兵を道連れに自害した朱論介(チュ・ノンゲ)という女性を日本側で勝手に追悼していた問題をめぐる日韓間の紛争を取り上げ、遺族の意思を無視した無断合祀の問題性を明らかにしました。 被告日本国の答弁書は簡単なもので、控訴理由書に対する主張は次回行うとしました。被告靖国神社の答弁書は5ページに及ぶものでしたが、山口自衛官合祀訴訟最高裁判決に全面的に寄りかかり、「控訴人らが合祀に嫌悪感があるとしても、その合祀の状況が、社会通念上許される限度を超えて控訴人らの人格的利益を侵害するようなものではない」と開き直るものです。原判決は植民地支配の事実に一言も触れていません。父や兄を失った遺族の「人格権」にしっかり向き合って判断するよう東京高裁には求めたいと思います。 第1回口頭弁論ということで、裁判後は一昨年10月30日の大法院判決後の日韓関係の下での靖国合祀取り消しや遺骨返還など韓国人軍人軍属問題の解決を求める集会を約50名の参加で開催しました。原告の朴南順さんから「これからが始まりです」とあいさつがあり、大口昭彦弁護団長と浅野史生弁護士から控訴審方針・書面の説明が行われました。続いて、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」の矢野さんから「歴史清算をめぐる動きと日韓市民の課題」について提起していただき、それを踏まえて、太平洋戦争被害者補償推進協議会の李熙子(イ・ヒジャ)さんから遺族の立場からの発言を、「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会の上田さんから戦没者遺骨の返還を政府に迫る闘いの現状報告と21日の対政府交渉の呼びかけがありました。
次回は3月24日(火)午前11時から、東京高裁101号法廷です。 |
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