在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会ニュースレター 「未来への架け橋」 NO.84 (2016.5.14発行) |
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李煕子さん南英珠さんの |
「戦没者遺骨収集推進法」が成立! |
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遺骨問題は「個人の尊厳を回復する」闘い
残念ながら今回成立した「戦没者遺骨収集推進法」は基本部分で韓国人を視野に入れない不十分なものです。しかし塩崎厚生労働大臣の発言にあるとおり、今後韓国政府を動かすことができれば展望は切り開かれます。 以下、法律成立過程での私たちの取り組みと今後の展望について報告します。 韓国から見た「戦没者遺骨収集推進法」成立過程とこれから(上田)
韓国の世論は、どう動いたでしょうか。ハンギョレに続き、聨合ニュースは、「法律は収拾対象遺骨を'我が国(日本)戦没者'のことで限定することによって日帝強制占領期間に日本軍や軍属(軍務員)で動員されて戦死した朝鮮人犠牲者は適用対象で排除された」と法律の基本構造を徹底批判しつつも、塩崎大臣の発言については、ここを突いて遺族の希望を実現していくしかないとの論調で、韓国政府に積極的対応を促しています。韓国各新聞・ネットニュースは遺族からの韓国政府への具体的提案を求める声を繰り返し報道しています。太平洋戦争犠牲者補償推進協議会は、すでに政府との交渉を行い、国会議員選挙後の国会の人事配置が決まる6月に、外交通商部に新しく配属される国会議員とともに、政府交渉を進める準備を進めています。すでに韓国政府もまた、韓国人遺族の遺伝子銀行の設立に向けた予算計上を公表するなど、日本政府への対応策を取り始めています。 李煕子(イ・ヒジャ)さんが3月16日、国会でのDNA学習会・第5次国会議員ロビー行動のため来日した時、着くなり「なんで塩崎発言について日本政府が韓国にその内容を伝えないのか?」と、私に怒っていました。遺骨問題の展望は出てきたものの、日本政府から言ってこないのはけしからんということです。「大臣が国会で言ったことは、取り消せない。国際的に見て、韓国に言ったのも同じ。」と言うしかありませんでした。しかし、2日間、国会で一緒に動く中で、ヒジャさんは具志堅さんに「具志堅さんの何十年の努力が花開く時が来た」と話していました。そして最後に「沖縄の県民の鑑定ができるように頑張って」と、私たちに言い帰国しました。法律ができて日本人にはしっかり対応すると思っていたのに、今のままでは厚労省は日本人にもちゃんとしない。そんな厚労省と闘っている私たちの姿を目にして出た言葉です。「日本人にしないのに韓国人にするわけがない。まずしっかり遺骨収容の法律を日本で作って」。ずっとヒジャさんが、私たちに言ってきたことです。さっそくヒジャさんは、韓国に帰り「“日本は歯から検体を採るため、歯がない遺骨は火葬すると聞いている。韓国政府の対応が遅れ、火葬されてしまえば遺骨返還が不可能になる”と懸念を示した」(聨合ニュース)とマスコミに発言し、連係した動きを作り出していただいています。 スタートの沖縄で「四肢骨」からのDNA鑑定実現を!
3月29日、厚労省が沖縄方針を発表しました。私たちは、3月22日の塩崎発言以降この発表までに塩崎大臣に、重要な資料を提示しました。1つは朝鮮戦争犠牲者の遺骸発掘調査を行っている韓国国防部遺骸鑑識団が四肢骨を中心に鑑定している写真です。続いてもう1つがソウル大学大学院の博士論文です。この論文は鑑識団の活動を分析している2007年の論文ですが、朝鮮戦争犠牲者の鑑定事業で、歯よりも四肢骨のほうが、DNA抽出がよりできており、実際、歯よりも四肢骨から鑑定しているという論文です。これを翻訳し、川田議員を通じて塩崎大臣に渡しました。その結果、塩崎大臣から四肢骨について鑑定の対象となるか検討をするよう指示されたことを、厚労省は川田事務所に明らかにしました。
私たちが、求めていた遺骨検体・呼びかける遺族数・部隊名(部隊名は後日、参議院厚労委員・森本しんじ事務所が追及し公開された)の情報公開がされました。特に遺族の実質的なデータベース化方針が初めて示されました。3月22日の国会質疑からわずかな期間でしたが、沖縄方針発表にも大きな圧力をかけました。第5次ロビー活動で要請した沖縄出身国会議員もぎりぎりまで厚労省を呼びつけたり、質問書を出したりしました。具志堅さん、沖縄の国会議員のみなさん、川田龍平事務所、森本しんじ事務所、ぐんぐんの仲間が一致団結し厚労省沖縄方針発表に短期間に大きな圧力をかけてきました。 さて、次の国会論戦では、四肢骨の鑑定を認めさせることが課題になります。この闘いは、残る通常国会、秋の臨時国会、おそらく来年の通常国会にかかる1年がかりの長い闘いになります。600件の遺骨に含まれる韓国人の父の遺骨を焼かせてしまうわけにはいきません。「日本人遺族と連帯し、韓国人遺族の問題を解決する」。私たちのこの方針は、両国の遺族の目線から問題を提起し、思いを伝え、党派を超える国会議員の理解と行動を得てきました。それは政府の説得にもつながっています。沖縄の600体の遺骨(四肢骨)を鑑定に入れることは、一片の遺骨でも返してほしいという遺族の要求そのものです。70年の沖縄県民遺族の思いを声に出すために、6月沖縄県議会再決議の実現を具志堅さんと相談しています。6月に韓国で、新国会議員とともに外交通商委員会を通じた韓国政府に対する要請が本格的に始まります。沖縄戦でなくなった韓国人軍人・軍属の多くが行方不明扱いとなっており、このことも課題として浮上してくるでしょう。 私たちは、2月3月にこの大きな山の5合目に一挙に到達しました。衆議院厚労委員会での法案通過時まったく、なすすべもなかった私たちが、参議院厚労委員会で大きな議論と展望を作り出しました。6合目7合目の課題は見えてきました。沖縄県民と連帯しこの山を登っていくこと、そして韓国政府に日本政府への具体的要求を行わせること、この2つを日本と韓国で進めていきましょう。 |
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3・16「DNA鑑定に関する国会内学習会」を開催(古川)
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関西で李煕子さん、南英珠さんのキムチ作り教室&お話し会を開催(木村)
前日、私の家に到着したヒジャさんヨンジュさんのトランクは韓国からの食材がぎっしり詰め込まれていた。トッポッキ、チャプチェ、すりおろしニンニク、生姜、2種類のネギ、ほうれん草、コチジャン、唐辛子、ごま油、魚醤、ケチャップ、水あめ等調味料、太い胡瓜から人参まで。トランクから食材が取りだされる度に歓声があがり、写真に収めた。韓国からの食材と、塩漬けした白菜、千切り大根3本分、人参、玉ねぎ、胡瓜 等日本の食材を会場まで運びキムチ教室が始まった。ちなみに日本の食材は関西以西の物にこだわり、数日かけて店を回り探し求めた。 予定の料理は、キムチと鶏がゆ、チャプチェだったが、トッポッキも加わり、オイ(胡瓜)キムチは韓国・日本産混合。参加者全員が調理室に入りきらず、ポイントのみ全員が集まり確認してもらうことになった。テーブルには、美味しそうな料理が大皿に山盛りとなり「お腹いっぱい」と言いながらも次々おかわり。食後は甘い韓国コーヒーと、京都の久米さん持参のヨモギ餅までいただいた。そのまま交流会に入り、自己紹介ではヒジャさんとの出会いの話、ヨンジュさんとニューギニアに関わる話に盛り上がった。ニューギニア遺族の阪本さんをはじめ、皆さんが忙しい中駆けつけて下さった。 植民地歴史博物館オープンへの思いを交流 ヒジャさんは今、植民地歴史博物館建設に力を注がれている。挨拶でヒジャさんは、「6月沖縄で行われる恨之碑の集会に向けてパンフレットを準備している。戦時中、慶尚北道から3000人が沖縄戦に動員されている。姜仁昌さん徐正福さんの二人が生きている間に資料を作って講演会とかやればよかった。遅くなったが慶尚北道の学校に配りたい。日本で多くの戦後補償裁判が闘われたが、苦しんでいる人に会うことが大事。博物館は来年の春、遅くとも来年中に開所したい。展示物は、尹貞玉さんから寄贈を受けた従軍慰安婦に関する資料、東京靖国訴訟の辻子実さんから寄贈を受けた靖国神社関連資料が含まれる。今日の様な食文化交流ができるような空間が欲しいと考えている」と。歴史博物館と聞き、貴重な資料が集められる意義ある活動だとは考えていたが、ヒジャさんの話しを聞くうち、韓国と日本の市民レベルの交流の歴史も展示の内容に入る、更に来館者の交流の場も作ると聞き、単なる資料見学のための場所ではないこと、今までの交流、活動の歴史が刻まれ更に未来に引き継がれる交流が生まれる場所なんだとわかった。朴クネ、安倍がどんな政治を行おうと、市民の連帯の力に勝てるはずがない。そんな力をためる場になるだろうと思いワクワクする。 終了後、ヒジャさんから、キムチ教室は合格と言ってもらえた。何より初参加の方も含めて楽しい時が持てたことがよかった。一方、秋に韓国遺族達と一緒に江華島への旅をしようとヒジャさんから提案があった。今後も継続した交流が国境を越え、私たちの求める平和な社会を築いていくことは確かだ。
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ノー!ハプサ第2次訴訟第7回口頭弁論報告(山本)
原告側の準備書面では、被告日本国が答弁書で「(靖国神社に合祀されているということは)被合祀者が太平洋戦争で戦没したという事実を示すに過ぎない」と言っていることに対して、では、なぜ、被告日本国は靖国神社に情報提供したのか、靖国神社は被告日本国と同じ認識なのか、求釈明を突き付けています。今後の大きな争点になると思います。 裁判後は、参議院議員会館で裁判総括集会を行った後、在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会、ガマフヤーとの共催で遺骨問題の学習会を開催しました。遺骨収集法案が参議院通過した後ということで、山口や関西方面からの参加や川田龍平議員の参加もいただき、裁判ともども盛り上がりました。被告日本国は裁判で「遺骨収集の法的根拠は無い」と開き直ってきましたが、今回遺骨収集法案が成立したことで、そのような居直りは許されなくなります。裁判の中でもその責任を追及し、韓国人の遺骨収集の前進につなげていきたいと思います。 次回第8回口頭弁論は、6月14日(火)午前10時30分から、東京地裁103号法廷で行われます。(傍聴券抽選のため、30分前集合)。次回こそは被告日本国・靖国神社側が反論する番です。引き続きぜひご参加ください。裁判後には弁護士会館で総括集会を予定しています。 |
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読書案内 韓国人元BC級戦犯の訴え −何のために、誰のために− 李鶴来(イ・ハンネ)著 梨の木舎 1700円+税 4月24日、東京で李鶴来さん「何のために誰のために」出版記念会が開かれた。サブタイトルとして「韓国・朝鮮人BC級戦犯者問題の立法解決をめざして」とある。この出版記念会は、8年前に衆議院に提出されながら審議もされず廃案となった立法案「特定連合国裁判被拘禁者等に対する特別給付金支給に関する法律案」を、5月にも再提出し、成立をめざす出発点ともいえるものであった。李鶴来さんは、今年まで周囲の勧めにもかかわらず、立法化後にと出版を断わっていたという。しかし、今年2月で91歳となった。是非立法化を図りたいという思いを含め出版を決意されたという。だから、実は、この本の最終章は、5月からの立法化である。今も毎日議員を訪問しているという。頭が下がる思いである。本書は、李鶴来さんの一生を描いたものであり、捕虜監視員生活から、22歳の若さで死刑執行の恐怖と向き合った8ヶ月、不条理を訴え続けた取組等々、全てが書かれている。ぐんぐん裁判原告の羅鐡雄さんのお世話になった(2002年9月来日)。「波乱に満ちた私の生涯も終末期を迎え、戦犯、特に刑死者の無念の怨恨(おもい)を多少なりとも癒し、名誉を回復するのが、生き残った私の責務」(著者あとがき)。この思いに少しでも応えることができればと思う。是非、一読を。(御園生) |
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