2022年8月5日

遺骨土砂を埋め立てに使うな!戦没者を家族の元へ! 激闘3時間
8月5日戦没者遺骨に関するガマフヤーと国との意見交換会(上田)



 
  8・5意見交換会
 2022年8月5日、戦没者遺骨に関するガマフヤー(沖縄戦・遺骨収集ボランティア)と国との意見交換会が衆議院第2議員会館で開かれた。第1部は厚労省・外務省と遺骨を家族に帰すためのDNA鑑定について、特に今回は沖縄戦遺族・韓国人遺族のことを意見交換した。第2部は沖縄南部の遺骨土砂の辺野古基地建設への使用について防衛省と話し合った。厚労省は8名・外務省1名、防衛省2名が対応。本土の遺族が会場参加したのに加え、沖縄・韓国から遺族がズームでも参加した。多くの国会議員も同席した。マスコミフルオープンで、ユーチューブで生配信するなど大きな取り組みとなった。

 第2部 遺骨土砂問題の防衛省との意見交換会で
 
 2020年11月1日、沖縄戦遺骨収集ボランティアの具志堅さんがいつものように遺骨収集に出かけたところ、業者が伐採作業をしている現場に遭遇した。そこで、2020年4月防衛省設計変更申請の中に辺野古基地建設で、軟弱地盤のため沖縄県南部の遺骨土砂を大量に使う計画があることを知った。具志堅さんはこの計画を告発・数次に及ぶハンストで広く県民に訴えた。沖縄では大きな反対の声が上がり、全国で220を超える地方議会から南部土砂を埋め立てに使うことに反対の意見書が出た。昨年2021年9月14日に行われた防衛省との意見交換会では、具志堅さんが沖縄から南部の土を持ち込み「これが遺骨収集が終わった後の南部の土砂だ。収集したと思っても、このように遺骨のかけらが残っている」と防衛省に直接見せつけた。
沖縄戦の遺族・米本さん 近藤議員ほか多くの
議員が参加

 今年の意見交換会は、遺族からも「1年たって、何らかの進展があるかもしれないので期待している」との声も寄せられる中で開催された。ところが防衛省は何を質問しても、事前に用意した文書回答を繰り返し読み上げるだけで、実質的な意見交換を拒否する態度に会場はあきれ返った。具志堅さんも「これでは、話し合いになっていない。質問と全く違うことしか答えていない」と憤った。
 質問は、「遺骨は業者によって適切に処理される」と業者任せにする防衛省に「遺族の声を聴かないで計画を進めるのは瑕疵がある」という対立軸を設定した。「土砂に混じる小さな遺骨は遺骨と考えるか?」「専門家でも遺骨は全部収容できないのを知っているか?」「血や肉が腐り染み込んでいる土砂を掘り返さないでほしいと言う県民の声は意味がないと考えるか?」「地方議会決議が200以上あがっているのはなぜか」「遺族の声を聴かないのか?」 8項目に及ぶすべての質問に、「遺骨問題は重要だが、まだ決まっていない」と同じ答弁を繰り返す防衛省。具志堅さんは戦没者を冒涜する計画を立てたこと自体が誤りだと追及する。しかし、防衛省は、全ては変更承認後のことであり、今は確定していないから答えることはなにもないと繰り返す。
 
 「これからも遺族の意見を承る予定がない」−防衛省の本音
 
 
  祖父の遺影を見せる米本さん
 
  遺族が発言
 本土の遺族が祖父の遺影を持ち出し「私のおじいさんはゴミではない」と迫る。会場の他のご遺族は「具志堅さんは人道にもとる行為だと美しい言葉で言っているが、私の言葉では人でなしということだ」と防衛省を痛烈に批判した。ズームでも沖縄県から遺族が、沖縄戦の状況を説明して「許せないことだ」と発言しても、防衛省は決まっていないとまた、同じ回答を繰り返す。
 厳しい追及に、ついに、防衛省の本音が出た。「日本だけでなく海外の遺族の声も聞いてないのでは?」という遺族の質問に、「決まっていないので国内でも遺族の声は、今までも聞かなかった」と発言した。さらに予定について尋ねると。「計画は決まってもいないので、これからも意見を承る予定がない」と発言した。防衛省が、はじめて用意した文書回答と違うことを話したかと思ったらとんでもない遺族無視の発言を行った。遺族に対するこんなひどい態度は必ず遺族に伝わっていく。
 遺族の声を聴かない進め方には瑕疵があるとして、すでに7月24日沖縄県南風原文化センターで遺骨土砂問題・遺族公聴会が実施された。小さな集まりではあったが「絶対に許さない」という遺族の声は沖縄県内で大きく報道された。今後、沖縄県那覇市・中部・北部と公聴会は開催される。ガマフヤー具志堅さんは、さらに全国で遺族の声を集め突きつけていくと防衛省に対し表明した。
 
 第1部 厚労省・外務省との意見交換会で新たにわかったこと

 沖縄のDNA鑑定の進捗状況の把握について、今まで沖縄では6体の遺骨が遺族に帰ったが、遺品など手がかり情報が遺骨とともにあったケースばかりである。ガマフヤーは多くの遺骨を収容し、遺品が遺骨と一緒に出なくても鑑定するように求め、多くの遺族のDNA鑑定集団申請を取り組んだ。しかし、どこまでできているのか、遺族にどのように通知されているのか全く闇の中だった。今回の意見交換会では、沖縄で実施されているDNA鑑定について、遺骨と遺族のDNA鑑定の状況が数字で初めて明らかとなった
 新たに分かった数字だが、今まで@84体の歯のある遺骨からDNAがとれた以降、手足の716体の遺骨から373検体の分析が終了したこと。A南北の塔の地元から厚労省に移管された遺骨は300体あるがDNA鑑定できていない。B昨年3月報道された子どもも含め見つかった遺骨は琉球大学の鑑定で11体。
 遺族の申請や、DNA鑑定の状況については、@当初、厚労省が連絡し申請した軍人遺族は332人Aその後、追加された他の県民など遺族のDNA鑑定申請は1409人、B 軍人と合わせると沖縄戦のDNA鑑定申請者遺族は1700人を超えることになる。
 沖縄での遺骨と遺族の照合や通知は、@当初の84体の遺骨と332人の軍人遺族との鑑定は終わったが、332人の軍人遺族と手足の遺骨との照合は行っていない。B1061人の県民などと84体の歯、373体の手足の照合鑑定は終わったCしかし、沖縄県民を中心として400人については全く遺族の鑑定ができていない
 通知については@332人の軍人と84体の歯の遺骨について「合致せず」と通知したのみでAその後は合致すれば通知するのでしていない。と言うことであった。
 
 「鑑定も通知も」放置 遺族の感情を逆なでする厚労省
 
 はじめて聞く方には、なれない話でややこしいと思われる。どういうことか説明する。通知を受けたのは当初申請した332名の軍人家族のみである。歯のある遺骨と照合鑑定したもので、「合致せず」の通知を受けたご遺族は「もう駄目だった。遺骨はなかった」とあきらめている。ところが、そのご遺族と373の手足の遺骨とは鑑定は終わっておらず、まだ鑑定もされていない遺骨は最低でも300体もあるということだ。こんな話が、「合致せず」と通知を受けたご遺族に全く知らされていない。県民では全く鑑定されていない人が400人もいる。合致すればれ連絡するなどというのは「これを最後の機会として亡くなられた家族との再会を待ちわびている」遺族に対しあまりにも不親切、秘密主義といえる。我々は国際基準である年1回の遺族への報告を求めた。ご遺族からも、年に1回はどのような鑑定をして、どのような状況かも含めて知らせてほしいとの声が会場から上がる。また、「あまりにも遅い」と言う追及に「12大学で鑑定をやっていて、それぞれ教授としての本業があるので進まない」などと今更わかり切ったことを答えるのみだ。これでは太平洋地域で始まった鑑定もままならないだろう。これに対し、厚労省は「厚労省にラボ(研究室)をつくる準備をしている」と言うが、追及すると鑑定員1人と技師2人とのこと。遺族の高齢化と未鑑定遺骨に対応できる体制とはとても思われない。
 しかし、ブラックボックスだった鑑定の実態が数字という形で浮き上がってきたことは意見交換会の大きな成果だった。長年の取り組みで、沖縄から太平洋地域までDNA鑑定を受け付ける形はできた。昨年10月から始まった太平洋地域の遺族の申請者は1028人であることも今回、初めて公表された。沖縄戦の遺族から太平洋地域へ拡大したこの事業を成功させるためには、あまりにも鑑定体制が不十分である。情報もご遺族に公開されなければいけない。ご遺族の高齢化を前に、私も具志堅さんも動かない厚労省をどう動かしていくか課題の大きさに、ため息がでた。

 韓国人遺族の事業参加の問題
 
 タラワ島の遺骨では、日米韓のDNA共同鑑定で1名の韓国人遺族、2名の日本人遺族が確認された。タラワ島の日本兵戦没者は6469人その4人に1人の1200人が韓国朝鮮人である。米国が収集した遺骨は、今まではそのまま日本に渡されるのだが、韓国政府がすべてを日本人として扱うことに米国に異議を申し立て、米国と韓国が2018年末に協定を結んだ。その結果、日米韓の遺骨の共同鑑定が行われた。タラワ島からの韓国への1体の遺骨返還(現在タラワ島にある)に厚労省は全く「知らぬ顔」をしてきた。今回、外務省に日本は返還に関与すべきであると追及した。外務省はこの戦没者の死は、「韓国を植民地支配した結果であり日本が関係ないことはない」と認め検討するとした。韓国が米国から返してもらえばいいだけとし、日本政府が「知らぬ顔」することは認めないことを外務省に突き付けた。
 タラワ島の残る150体の遺骨については、米国から故郷に帰すための安定同位体検査を始めたことを厚労省は認めた。しかし、日本・韓国のどこで育ったかを確認するストロンチウムの検査について、準備段階の作業をしているとして、その進行を明らかに止めていることも明らかになった。タラワ島は、日米韓のDNA共同鑑定で大きな成果を生んだ。監視は必要だが安定同位体の検査も始まっている。この島の遺骨返還にしっかり取り組むことは、先行モデルとなり、その成功は日韓遺族の大きな利益となる。厚労省は「南洋では無理だ」と言っていたが、タラワ島の遺骨返還の成功が、硫黄島での2名の遺骨返還につながり、太平洋地域の遺族への呼びかけに繋がっていった
 沖縄戦での韓国人遺族170名の遺骨との照合が、韓国政府から求められている。しかし厚労省は、昨年の意見交換会で「韓国人を差別するつもりはないが返還条件が合意できていないので照合を始められない」と、回答した。我々は、この「返還条件」が韓国側からの「謝罪要求」を日本政府が拒否しているためだとの情報を得て、2010年の祐天寺で軍人の遺骨返還に関し謝罪をしている事実を明らかすることを求めた。外務省は「2010年5月、当時の外務大臣は、日本が「過去の一時期、植民地支配によって韓国国民に大きな損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ」「痛切な反省と心からのおわび」を表明したことを明らかにしたが、「12年間にいろいろあったので、謝罪が可能・不可能と、ここですぐに言えない」とした。謝罪をしたくないからDNA鑑定できないなどとんでもないことである。

 韓国から「父の一片の遺骨でも母の墓に入れてあげたかった」 故人の声を紹介

 
  zoomで各地と結ぶ
 
  ソウルからイ・ヒジャさん
 ズームで参加した韓国・太平洋戦争被害者補償推進協議会の李熙子(イ・ヒジャ)さんからは、「静かに話をするつもりだったが、外務省や厚労省の話を聞いていてそうはいかなくなった。遺族の遺骨を帰してほしいと言う声には無条件で応えるべきだ」と怒りをあらわにした。手には今年6月に亡くなった沖縄戦遺族(クォン・スチョンさん)の遺影を持ちながら、「父の一片の遺骨でも母の墓に入れてあげたかった」と言っていた故人の思いを語った。外務省は「遺骨を早期に返還することはとても重要だと考えている」「日本政府は、人道的な観点から早期返還を実現する用意がある。韓国と粘り強く協議を継続していきたい」と答えざるを得なかった。
 今回、韓国人遺骨返還をめぐり何が問題になっているのかを明確にし、厳しく追及した。日本政府は、口だけでなく、本当に「植民地支配の反省」をするなら、遺族の謝罪要求に応え無条件に鑑定を始めるべきである。当初、この事業に沖縄県民は排除されていたが、県民の声を集め参加を認めさせた。さらに、韓国や台湾の戦没者遺族の参加を一刻も早く実現し、「戦争を反省し平和をめざす事業」としなければならない。

 戦没者意見交換会は、3時間にわたり行われた。意見交換会には多くの国会議員・秘書の方の参加があった。次は国会で議論していくことになる。また遺骨土砂問題・遺族公聴会も継続して開催していく。

■ 8・5意見交換会をめぐり2つの短いドキュメントがありますので是非ご覧ください。

琉球放送・ドキュメント「遺族の声聞く予定ない・・」 
     https://m.youtube.com/watch?v=OfFlPmNMLuw

ヤフージャパン・ドキュメント:パオネットワーク制作
「すべての戦没者を家族のもとに〜遺骨返還に向けてDNA鑑定を求め闘う異色の公務員」

     https://creators.yahoo.co.jp/teradakazuhiro/0200288302

(参考)
パプアニューギニア訪問時のGUNGUNニュース70号
     https://www.gun-gun.jp/sub/news70/news70.htm