2018年7月17日

厚労副大臣に沖縄戦県民遺族のDNA鑑定申請名簿を提出(上田)



 7月17日、沖縄戦遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの具志堅隆松代表とともに厚労省副大臣を訪問しました。目的は第3次DNA鑑定集団申請名簿の提出。昨年7月の135名、12月の35名に続き3回目。7名の海外戦没者を含む84名分の名簿を提出しました。
 今回、厚労副大臣はガマフヤーの申し入れに、84体の遺骨(歯のある遺骨について、その歯と手足を鑑定)と、326人(今回提出以前)の遺族の鑑定照合結果を年末に終わらせ結果を通知すると公表しました。6月にNHKが、「4月段階で遺族の鑑定が全くできておらず、遺骨鑑定の渋滞が起きている」と現状を報道しました。鑑定委員の科学者たちも「大学の仕事があり専属できない実態や予算の少なさ」を訴えるなど厚労省の取り組み姿勢を批判。年間66体の遺骨鑑定しかできていない現状も明らかになり、「このスピードでは遺族がいなくなってしまう」という危機感が、私たちの国会ロビー活動を通じて国会議員にも広がりました。沖縄での継続した申請受付や、マスコミとの連携、国会活動を通じて実現した成果です。

はじめて海外戦没者の名簿を受理

 今回名簿提出の84名は、3月に行った「第2回沖縄戦没者遺族DNA鑑定集団申請説明会」以降の名簿です。この3月説明会で初めて沖縄戦で戦没した方にとどまらず沖縄県外で戦没した海外戦没者について呼びかけを行いました。沖縄では、国策によりフィリピンをはじめ海外地域に労働者として集団移住した人が多く、海外でも多くの方が戦闘に巻き込まれて亡くなっています。DNA鑑定の呼びかけが県内に浸透する中、自分たちも参加できないかという声が届くようになりました。厚労省は沖縄戦でのDNA鑑定を踏まえて、海外戦没者を対象にするかどうか検討するとしており、現状では海外戦没者の鑑定表明をしておりません。しかし沖縄での取り組みから海外戦没者へという方向は当然の流れであり、遺族が高齢化する中で一刻の猶予もない緊急課題です。7名でも海外戦没者の遺族の名簿を厚労省が受け取ったこと、その声を厚労省に認めさせたことに大きな意味があります。

遺骨鑑定「渋滞」の解消が不可欠

 6月22日沖縄県名護市で開いた「戦没者遺骨を家族の元へ沖縄名護集会」でも、翌日6・23摩文仁でのDNA鑑定集団申請宣伝行動でも、ご遺族からの思いを聞き、申請を受け付けました。県民遺族のみならず、摩文仁を訪れた本土遺族の方々も申請されました。あやふやな死亡地記録に固執する厚労省の枠に入っていない人たちです。厚労省は「こんなにたくさん申請があるとは思っていなかった」とNHKインタビューに答えています。しかし沖縄では申請の勢いは止まっていません。「何人沖縄戦で死んだと思っているのか」これが摩文仁で遺族から聞いた厚労省への怒りの声でした。
 私たちが日本で取り組まなければいけない大きな問題は、遺骨鑑定渋滞問題の解消です。11大学への遺骨鑑定の分散発注の弊害を解消し、専属の科学者を置き、継続的・専門的・総合的に鑑定する体制を日本に作り出さなければなりません。遺骨を家族に返すまでを国家の責任とする、戦没者遺骨収集推進法に命を吹き込みましょう。政党を超え、考えの違いを超え、戦争の被害者遺族の元に遺骨を返すために何が必要か、遺族・科学者・国会議員・支援者の力を集め、厚労省に解決案を突き付けていきましょう。

日韓政府への働きかけを強めよう

 一方、韓国での取り組みはどうなっているのかを報告します。韓国安全行政部と日本厚労省の交流は始まっています。韓国では160名の沖縄戦戦没者遺族のDNAデータ抽出をすでに実施し、厚労省に鑑定照合を求めています。残念ながら厚労省は、「まだ韓国政府から具体的提案はない」などと言い、外交ルート(韓国外交通商部)からの正式提案が無いからと逃げています。南北・米朝・米韓交渉が続く中、厚労省単独で判断できない政治状況に入ってしまっているとはいえ、日本人の遺族の鑑定も十分にできず、遺骨の鑑定渋滞を起こし、遺族に遺骨を返す仕事ができていないことが大きな問題です。
 日本と北朝鮮が交渉せざるを得ない国際情勢になる中、遺骨問題は韓国・日本間の「解決できる」課題として浮上してくることは間違いありません。「韓国から具体的提案があれば検討に応じる」という、公式見解を日本政府は変えていません。私たちは、東アジアの平和構築・信頼関係の拡大が進むならば、展望は一挙に開けると予想しています。日・韓・朝において遺骨問題が平和構築のシンボルになるかも知れません。我々もあらゆるチャンネルを通じて韓国政府に要請を強めていきます。