2018年3月2日

「韓国人強制動員犠牲者遺骨奉還のための国際会議」に参加(上田)



 3月2日、ソウルで行われた「韓国人強制動員犠牲者遺骨奉還のための国際会議」に参加した。北海道の朝鮮人労働者遺骨奉還運動と、沖縄から始まったDNA鑑定の取り組みが2つの柱で、私は後者の取り組みを報告した。この日、韓国安全行政部が参加するということで、日本政府にどのような具体的提案をしたのか問うため意気込んだが、担当職員は顔だけ出して「よくわからないので」と参加しなかった。その時はがっかりしたが、実は大きく動き出していた。
 国際会議で報告した点は、3つである。2月8日の第4回の厚労省との韓国人遺骨返還の意見交換での成果を報告した。フィリピンにおける盗掘遺骨の出身地選別、フィリピンへの返還に安定同位体比の予算化がされた。安定同位体比は元素で遺骨の出身地を見分ける新技術で幼少期の飲んだ水などで出身地域が判明する。出身県まで判明するともいわれている。また、DNA鑑定が個人を識別するだけではなく、日本人韓国人の民族的分類ができる程度に技術が進展していることも報告した。この2つの技術が、今後日韓遺骨の分類、つまり韓国人の遺骨返還につながっていく展望であることを強調し、遺骨選別を韓国側からの具体的提案に入れるべきと訴えた。
 
 
国際遺骨会議  
 2つ目は、日本のDNA鑑定の進行現状である。韓国遺族の要求を突きつけ、遺骨でのDNA鑑定を手足の鑑定にも広げてきたこと、昨年4月から大腿骨など一部遺骨の焼骨をやめさせ厚労省に保管させるようになった。また、沖縄でのDNA鑑定は日本兵遺族300名に続き、県民犠牲者の遺族の集団申請を認めさせて来たことを報告した。
 3つ目は、「韓国から具体的提案があれば検討する」日本政府の立場はいまだ継続していることを確認した。ハンギョレ新聞が「行政安全部過去事関連業務支援団は、日本政府に沖縄で死亡したとみられる人々の遺族の遺伝子資料を渡すので、日本が韓国人遺骨を選別してほしいと要請したが、日本は検討するとだけ言っている」と報道したが、この報道に対し厚労省は、我々の問い合わせに、確かに昨年12月21日に韓国行政安全部が訪日・交流したが具体的提案はないと文章で答えた。
 イヒジャさんは「どちらがウソをついているか、韓国側も調べよう」と発言。マスコミも資料を持ち帰るなど国際会議ではこの点にも関心が集中した。その後、韓国政府に対する問い合わせを行った結果、「169名の韓国人沖縄戦遺族のDNAデータ化を行い、日本政府に照合を要求したが、日本政府は今は鑑定は受け入れられないと拒否したとのこと。韓国側研究官参与も要請したが日本側から拒否。すでに4回の会議も行った。上半期に日韓協議が予定されている」との回答だ。どちらがウソをついているのか。認識の違いかもしれない。しかし、厚労省の「具体的提案はない」という文書回答には大きな疑問符がついてきた。
 行政安全部が厚労省を訪問し遺骨問題について議論していることはお互いが認めたので事実のようだ。2016年2月国会での塩崎厚労大臣の「遺族の気持ちは国境に関係なく同じである。朝鮮半島出身者については、外交交渉に関わる問題であるが、遺族の気持ちに強く配慮をしていくべきという指摘、意向をしっかりと受け止め、韓国政府から具体的な提案があれば真摯に受け止め政府部内で適切な対応を検討する」答弁以降、今まで動かなかった韓国政府がついに動き出したことが決定的に重要だ。今後、具体的提案の有無を韓国・日本国会で明らかにする中で、上半期にあると言われる日韓政府協議を遺族のための協議にしていこう。韓国政府が動き出した事実を、着実に冷静に日韓協議の成功に結実させねばならない。いよいよ運動は最終段階に入ってきた。