2005年4月12日〜17日

「あんにょん・サヨナラ」撮影記(4月編)


 
 

関東スタート集会での韓国スタッフ

 戦後60年の2005年、日韓市民が共同でドキュメンタリーを制作します。歴史認識問題で必ず登場する「靖国」をテーマにタイトルは「あんにょん・サヨナラ」。韓国側スタッフが4月のGUNGUN口頭弁論にあわせて来日し、撮影を行いました。次回来日取材は、5月19日から約10日間の予定。

【4月12日】ホテルで日本側スタッフとシナリオ、制作過程の問題点に関して議論。

【13日】朝から靖国神社で撮影。GUNGUN裁判参加後、夕方行われた裁判報告&ドキュメンタリースタート集会で日韓両スタッフが発言。

【14日】平和遺族会の西川重則会長を自宅に取材。飛行機で関西へ。神戸に宿泊。

【15日】ソウル在住で西宮に帰省中の丁智恵さんが通訳をしてくれる。この日神戸市西区にある王塚古墳、渡来系の赤羽神社を撮影。夜はGUNGUN古川宅で懇親会。加藤さんはこの後の議論のために東京から駆けつける。議論は朝方まで。

 

 

菱木さん

 
 

関西スタート集会

【16日】昼から神戸の湊川神社、阪神大震災のメモリアルパークを撮影。震災と戦災の違いはあるが、犠牲者を追悼するための無宗教施設。

 夕方から大阪で、小泉靖国参拝違憲アジア訴訟団の菱木政晴事務局長に取材。「一般の神社は豊作や豊漁に対する感謝と祈願、不作と災いを取り除く祈願が基本的。決して靖国のように死んだ人が神になることはない。靖国は死んだ人を褒めて見習いなさいという宗教。鳥居など形は似ているが他の神道とは違う。なぜ宗教にしたかといえば、崇高な超越的なものにした方が民衆の心の中に深く入るから。A級戦犯を祀っているのは本質ではなく、全ての戦没者を褒め称えているのが本質。被害者と自覚しない限り加害者のまま。お釈迦様の言葉に『全て命ある者は命が惜しい。だから殺させてはならない』というのがある。いつまでも殺させる側についてしまうと見抜くことが大事」などの話しに納得。

 その後、関西スタート集会。丁さんの知り合いをはじめ若い人が参加してくれ、靖国をめぐって「韓国にも死んだ兵士を称える場があるのではないか」と議論になる。活気ある集会になった。

 
 

古川佳子さん

 
 

箕面忠魂碑

【17日】朝から箕面忠魂碑訴訟原告の古川佳子さんを取材。まず自宅で啓介さん(上のお兄さんで45年ビルマで戦死)と博さん(下のお兄さんで44年台湾沖に沈む)の写真や戦地からの手紙などを見せていただく。お母さんが書きとめた日記帳には「なぜ戦死の日、夢枕に子どもが立たなかったのか」嘆く悲痛な文字が。両親が移り住んだ淡路の川の土手に咲き誇っていた宵待ち草に母は「けいすけー、ひろしー、ご飯だよー」と呼びかけた。その宵待ち草が自宅の庭に今年も芽を出している。今年も母の命日の6月に咲くことだろう。

 小学校の正門を見下ろすように聳え立つ忠魂碑を撮影後、近くの公民館で偶然開かれた古川佳子さんが参加する婦人民主クラブの会合に参加。「中国のデモは当然」「敵対関係を煽るメディアの操作が問題」「戦争世代がいなくなると日本は反動化する」「戦前と今を比べると今のほうが自覚的な人が圧倒的に多い」などポンポンと意見が飛び交う。

 夕方から心に刻む集会代表の上杉聰さんに取材。ご自身の幼児体験から部落問題そしてアジアへの戦後補償問題に関心が広がる話しや、今の韓国中国からの抗議行動を受ける日本とドイツとの違いに触れながら、わかりやすく語っていただいた。終了後、鶴橋のアリラン食堂でGUNGUN事務局主催のフェアウェルパーティー。この場でも事務局スタッフへのインタビュー。韓国側スタッフは翌日無事帰国しました。

日韓スタッフのスタート集会での発言より

 
 

加藤久美子さん

 
 

高部優子さん

 
 

金兌鎰監督

 
 

崔眞娥さん

 
 

丁智恵さん

【加藤久美子さん】
日韓の共同作業が本当にできるのか?と当初思ったが、今はできると確信している。それはスタッフ全員が尊敬できるから。真剣に未来につなげていこうとしている。今まで靖国の何が問題かを考えたことがなかったが、ようやくわかってきた。そういう学んできたことを作品に込めたい。今回の制作は真の友好。制作過程自体がドキュメンタリーになる。シナリオ論議を通じて「このテーマはアジア全体の問題だ」と言われた時に日本の若者だけに見せることを考えている自分に気づかされた。この作品でアジア全体の悲しみ、怒りを表現し、靖国が何を象徴しているのかを「合祀」を通じて描きたいと思う。(東京で)

【高部優子さん】
私も勉強させてもらっている。学ぶ姿勢を学ばされる。(東京で)

【金兌鎰監督】
2005年、60年という節目だからこそ過去の問題を解決するために作業に入った。両国の過去をどう解きほぐすか?GUNGUN裁判を通して未来への架け橋になるのではないかと思う。日韓の共同作業といっても簡単にはいかない。言葉や距離に壁がある。一緒にやると決めて4か月になる。この問題は日本だけの問題でなく、アジア全体の問題。日本の右傾化が進んでいる。戦争が起こる脅威を感じている。この作品で平和の大切さを伝えたい。(大阪で)

【崔眞娥さん】
3か月間日韓で会議し、いろんな違いに気づく。しかしお互いの違いを認めた上で配慮しあう過程自体に意味がある。この過程が「作ることができる」という確信になった。世界中の人に見てほしい。(大阪で)

【丁智恵さん】
日韓それぞれの国に対するそれぞれの国民が持つイメージがゆがめられている部分がある。根強い蔑視もあるし、意図的に作られたもの、反日感情を煽る風潮もある。韓国政府は民衆の怒りを日本に向けさせることをやってきた。今回の作品を通じてお互いの誤解している部分を何とかしたいと思う。(大阪で)