2005年3月2日〜5日

日韓共同映像プロジェクト始動! 3月靖国行動取材記


◆ 3月2日(水)
 14時50分、新大阪発の新幹線で出発。隣には箕面忠魂碑訴訟の古川佳子さんが。「韓国と共同プロジェクトでドキュメントを制作するんですけど,一緒に東京へ行ってくれませんか?」という要請に二つ返事でOKしてくれました。東京へ着くまでの2時間半,ずっと会話が尽きず。
 18時ホテルに入ると、すぐ交流会。沖縄からも金城実さんをはじめ3名の参加。特に沖縄戦での被害を象徴する「ガマから日本軍に追い出された被害者が「軍への協力」名目で遺族者援護法の適用とともに靖国に合祀されている」憤りを金城さんは熱く語った。交流会には李熙子さん,金兌鎰監督ほかドキュメント制作チームも参加。李熙子さんは風邪気味でしんどそうだ。
 23時過ぎに山口県自衛官護国神社合祀拒否訴訟の中谷康子さんが到着。ほっとする。

 
合祀絶止を申し入れる李熙子さんと古川さん  

◆ 3日(木)
 8時出発で靖国神社への「合祀取り消し」要請行動。靖国側は「係争中はお会いできない」の一点張り。しかし団長の菅原龍憲さんは「原告でない人もここにはいる」と食い下がる。台湾からの高金素梅さんが靖国側の話を遮ぎろうとする不誠実な対応に激怒。李熙子さんも一緒に猛抗議。その後、神社境内で金城実さんと福岡訴訟判決を生かす会の郡島恒昭さんにインタビューする。
 11時国会へ移動。小泉首相への面会を求めるが叶わず。内閣府への申し入れになる。昼食後は国会院内集会。共産党の赤嶺政賢議員,吉川春子議員,民主党の石毛えい子議員をはじめ,多くの議員秘書が参加。今回の行動をアピール。
 16時からは有楽町の「日本外国特派員協会」で記者会見。金銀植さんの英語でのスピーチは見事。ただ質疑の中で「北朝鮮の問題をどう考えるか」「台湾の中には靖国に合祀されて喜んでいる人も多くいる」という,明らかに否定的な意図を持った記者からの質問が。「この人は近代日本形成過程で福沢諭吉を先頭に,いかに中国、台湾、朝鮮を蔑視し,残虐行為を働いた歴史を知らないのだろうか?」と憤る。
 18時ホテルに戻って,中谷さん,古川さん,李熙子さん3人を古くから取材してきたジャーナリストの田中伸尚さんに司会をお願いして,座談会をもつ。「韓国での合祀拒否の動きに触発されて日本の運動が再び盛り上がることに意味がある」と話が盛り上がってきたところでタイムアップ!集会の時間がきてしまい中断。非常に残念。
 19時報告集会。大阪から丹羽弁護士も駆けつける。

 
 

雪の千鳥が淵で撮影

◆ 4日(金)
 朝から大雪。見る見る間に路面が白くなっていく。中谷さん,古川さん,李熙子さんと千鳥が淵に向かう。一面「真っ白!!」。アジア太平洋戦争での軍人軍属の犠牲者240万人の無名戦士の共同墓地である。銘板に日本が侵略戦争を繰り広げたアジア太平洋地域の地図が描かれ,そこに戦死者の数が刻まれている。古川佳子さんのお兄さんが沈んだ台湾沖。その目的地のフィリピンでは最も多い50万人が。李熙子さんのお父さんが亡くなった中国戦線では45万人が亡くなっている。その多くは無謀な作戦拡大による補給路断絶による餓死,病死。いわば「犬死に」が,靖国合祀によって実相が覆い隠されていることを示す銘板である。
 千鳥が淵墓苑の中央には遺骨が納められた納骨堂があり,3人が花をたむける。古川さんは「母は2人の兄が死んだときに夢枕に立たなかったことを非常に後悔し,二人を追悼するために淡路に移住した。そこで乱れ咲く大松宵草(月見草)に向かって名前を呼び「ごはんだよ」と呼びかけていた」と語る。中谷さんは夫の遺骨(のどぼとけ)を今でも枕元においていることを語ってくれる。李熙子さんも涙ながらに父への思い,靖国への思いを語り,収録を終えた。
 10時、ここで李熙子さんは一足早く帰国。中谷さん,古川さんも自宅に向けて東京駅へ。遠い東京まで来ていただいたことに感謝。3人が一緒に映る映像に期待が膨らむ。
その後、再び靖国へ。真っ白な靖国に「冷たさ」を重ね合わせた映像撮り。

 

資料を説明する辻子さん

 

 11時半、中目黒の恵泉バプテスト教会へ。今回の行動を準備してくれた辻子実さん(「侵略神社」の著者)へインタビュー。明治時代の靖国の絵巻物や朝鮮神宮の貴重な写真、資料などを見せていただき,韓国側でお借りする。また話では,韓国のハンセン病患者が隔離された小鹿島(ソロクト)に神社が残っていることや,朝鮮半島には神社を村ごとに建てたため忠魂碑がないことなど,目からうろこの貴重な話をお聞きする。昼食は辻子さんお奨めの梁石日さんも食べにくるというギョウザ屋さんへ。
 15時、明治神宮へ移動。観光などで訪ねている人,特に若い人へのインタビュー。たまたま訪ねた高校生は、天皇のことは「あまり身近でない」と率直に語ってくれた。
 18時からは,最近「前夜」という雑誌を創刊された、東京大学教授の高橋哲也教授に編集室でインタビュー。韓国側の用意した20以上の質問を整理しながら,しかも淀みなく答える高橋先生の「すごさ」に感動。その後カンボジア料理で乾杯!

 
 

大江志乃夫教授

◆ 5日(土)
 9時、シベリア抑留者の墓参りや遺骨収集ツアーに長く関わっている岡野工治さんと打ち合わせ。
 13時から、「靖国神社」著者の大江志乃夫教授にインタビュー。いつか茨城県の自宅まで訪問するつもりが,大江先生自身が東京に来る機会があるからと、この日実現した。金兌鎰監督は最近韓国で出版された「靖国神社」にサインしてもらって大喜び。ご病気で手足の自由がきかない中でもさすが、明瞭、的確に質問にお答えいただいた。
 その後、スピリトン事務所で食事を挟んで、翌朝の始発電車まで激論を交わす。
 以上のように,すべてがおそろしいほど順調に撮影・取材が進みました。こちらの要請に快く応えてくださった皆様に心から感謝します。と同時に日韓市民の共同プロジェクトであるこの作品を完成させるために奮闘したいと思います。皆さん!サポートをよろしくお願いします。(古川)