在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.89 (2018.4.7発行)

太平洋戦争被害者補償推進協議会の
新事務所開所式で
(3月10日ソウル)

ついに厚労省が「安定同位体比分析による遺骨の国籍判定」有効性を認める!

 2月8日、参議院会館で国会議員を交えて「第4回韓国人戦没者遺骨返還についての厚労省との意見交換会」を開催しました。最大のテーマは遺骨の中にある元素を調査することによって、その出身地域を特定する「安定同位体比分析による判定」を厚労省が認めるか否かにありました。議論の結果(別掲)、厚労省は安定同位体比分析の有効性を認め、現に米兵遺骨をアメリカに引き渡したことや、フィリピン住民遺骨混入の選別にこの判定を使用し500万円予算化したことを認めました。これは大きな変化です。今後韓国政府からの要請があれば、日本政府として応じざるを得ないからです。
 私たちはこの間、日韓のDNA研究者と交流し、「遺骨を家族の元へ」帰すための方法を模索してきました。安定同位体比判定のほか、DNAの特異的遺伝子からも民族判別が可能であることも判明してきました。科学技術は日進月歩です。大切なのは、「焼いて道を閉ざす」ことのないようにすることです。引き続きご支援をお願いします。

韓国からのたより
民問研・推進協の事務所が移転しました!(ソウル:野木さん)

 
 
  新事務所で祈願祭
 昨年12月、民族問題研究所は、26年間にわたる歴史運動の蓄積と10年以上続けてきた植民地歴史博物館建設運動の成果を基に、ソウル市龍山区青坡洞(チョンパドン)にビルを購入し、事務所を移転しました。ビルは、白凡金九紀念館や抗日運動家の墓がある孝昌園のすぐ近く、日本の朝鮮侵略、植民地支配の象徴といえる南山の朝鮮神宮跡や朝鮮軍司令部跡が見渡せる場所にあります。

 地下1階、地上5階建てで、3階に事務局と研究室、編纂室を、4階に資料室、5階に教育広報室を設けました。地下1階と4階には、民族問題研究所が長年収集してきた書籍約4万点と歴史資料約3万点を保管することができる書庫と収蔵庫を設置し、5階には市民講座や会議、交流会を行うことができる多目的セミナー室と小セミナー室を設けました。5階の南山が見えるスペースには、民族問題研究所が事務局を担っている太平洋戦争被害者補償推進協議会と靖国反対共同行動韓国委員会の事務室を設けました。現在、1階にトークコンサートやイベント、企画展示などを行うことができるスペースを、2階に日本の朝鮮侵略、植民地支配の歴史、強制動員被害者や遺族、日韓市民による過去清算運動の歴史を学ぶことができる常設展示室を設けるための準備を進めています。

 歴史を足もとから生き生きと学ぶことができる博物館にしていくために、地域的特性を生かしたフィールドワークや市民講座などのプログラムも準備しています。また、膨大な書籍と資料のデータベース化も継続して進め、広く共有、活用できるよう、検索スペースやウェブサイトも開設していきたいと考えています。常設展示室の完成は5月末、1階スペースや屋上も含めた植民地歴史博物館全体の完成は8月末を予定しています。新たな歴史運動の出発地で皆さまとお会いできることを楽しみにしています!

新事務所でスタッフ 新事務所で遺族が集まる 新事務所の様子

まもなく開館!「植民地歴史博物館」3・20集会(中里)

 
  キム・スンウンさん
 「引っ越しが済んだようだけど開館はいつ?」「みんなで一緒に見学に行きたいけど、ツァーのようなものはあるのかしら?」等々、開館を待ち望む声があちこちから聞こえる中、「植民地歴史博物館」建設の現状が、民族問題研究所資料室長の金丞垠(キム・スンウン)さんより報告されました。
 「3月にソウルでお会いしましょうと言ったので心苦しい気持ちで来ましたが、日々考えて活動している私たちの姿を見て理解して頂けたら嬉しいです。」という言葉から報告が始まりました。まず、スンウンさんから建物の概要や目的が、その後スタッフである野木さんが、地下1階から屋上までを動画で案内、説明してくれました。動画は、明日にでも使えそうな会議室(50人は入れるとのこと)や、整理を待っている資料・本の山など、開館を目前にしている植民地歴史博物館の様子を、まざまざと見せてくれました。
 過去の歴史を遺物として展示するのではなく、そこから現在を考え、悩み、交流し、将来につなげていくという目的が展示をはじめ建物全体に表れていくだろうことが十分に予想できました。5月末には、全てが整う予定だとのことです。会議室有り、ブックカフェ有り、南山タワーをはじめ景色も素晴らしい・・・ここへ来るだけで全てが完結する建物になるのでどうぞ来てくださいとしめくくられました。スタッフの皆さんの意気込み、ご苦労がひしひしと感じられ、すぐにでも飛んで行きたい気持ちにさせられた集会でした。
3・20集会で李煕子さん 会議室

3・2「韓国人強制動員犠牲者遺骨奉還のための国際会議」に参加(上田)

 3月2日、ソウルで行われた「韓国人強制動員犠牲者遺骨奉還のための国際会議」に参加した。北海道の朝鮮人労働者遺骨奉還運動と、沖縄から始まったDNA鑑定の取り組みが2つの柱で、私は後者の取り組みを報告した。この日、韓国安全行政部が参加するということで、日本政府にどのような具体的提案をしたのか問うため意気込んだが、担当職員は顔だけ出して「よくわからないので」と参加しなかった。その時はがっかりしたが、実は大きく動き出していた。
 国際会議で報告した点は、3つである。2月8日の第4回の厚労省との韓国人遺骨返還の意見交換での成果を報告した。フィリピンにおける盗掘遺骨の出身地選別、フィリピンへの返還に安定同位体比の予算化がされた。安定同位体比は元素で遺骨の出身地を見分ける新技術で幼少期の飲んだ水などで出身地域が判明する。出身県まで判明するともいわれている。また、DNA鑑定が個人を識別するだけではなく、日本人韓国人の民族的分類ができる程度に技術が進展していることも報告した。この2つの技術が、今後日韓遺骨の分類、つまり韓国人の遺骨返還につながっていく展望であることを強調し、遺骨選別を韓国側からの具体的提案に入れるべきと訴えた。
 
 
国際遺骨会議  
 2つ目は、日本のDNA鑑定の進行現状である。韓国遺族の要求を突きつけ、遺骨でのDNA鑑定を手足の鑑定にも広げてきたこと、昨年4月から大腿骨など一部遺骨の焼骨をやめさせ厚労省に保管させるようになった。また、沖縄でのDNA鑑定は日本兵遺族300名に続き、県民犠牲者の遺族の集団申請を認めさせて来たことを報告した。
 3つ目は、「韓国から具体的提案があれば検討する」日本政府の立場はいまだ継続していることを確認した。ハンギョレ新聞が「行政安全部過去事関連業務支援団は、日本政府に沖縄で死亡したとみられる人々の遺族の遺伝子資料を渡すので、日本が韓国人遺骨を選別してほしいと要請したが、日本は検討するとだけ言っている」と報道したが、この報道に対し厚労省は、我々の問い合わせに、確かに昨年12月21日に韓国行政安全部が訪日・交流したが具体的提案はないと文章で答えた。
 イヒジャさんは「どちらがウソをついているか、韓国側も調べよう」と発言。マスコミも資料を持ち帰るなど国際会議ではこの点にも関心が集中した。その後、韓国政府に対する問い合わせを行った結果、「169名の韓国人沖縄戦遺族のDNAデータ化を行い、日本政府に照合を要求したが、日本政府は今は鑑定は受け入れられないと拒否したとのこと。韓国側研究官参与も要請したが日本側から拒否。すでに4回の会議も行った。上半期に日韓協議が予定されている」との回答だ。どちらがウソをついているのか。認識の違いかもしれない。しかし、厚労省の「具体的提案はない」という文書回答には大きな疑問符がついてきた。
 行政安全部が厚労省を訪問し遺骨問題について議論していることはお互いが認めたので事実のようだ。2016年2月国会での塩崎厚労大臣の「遺族の気持ちは国境に関係なく同じである。朝鮮半島出身者については、外交交渉に関わる問題であるが、遺族の気持ちに強く配慮をしていくべきという指摘、意向をしっかりと受け止め、韓国政府から具体的な提案があれば真摯に受け止め政府部内で適切な対応を検討する」答弁以降、今まで動かなかった韓国政府がついに動き出したことが決定的に重要だ。今後、具体的提案の有無を韓国・日本国会で明らかにする中で、上半期にあると言われる日韓政府協議を遺族のための協議にしていこう。韓国政府が動き出した事実を、着実に冷静に日韓協議の成功に結実させねばならない。いよいよ運動は最終段階に入ってきた。 

2・8「第4回韓国人戦没者遺骨返還についての厚労省との意見交換会」を開催(古川)

 2月8日、参議院会館で国会議員を交えて「第4回韓国人戦没者遺骨返還についての厚労省との意見交換会」を開催した。今回、最大の焦点は厚労省が「安定同位体比による判定」を認めるか否かにあった。「安定同位体比判定」とは、遺骨の中にある元素を調査することによって、その出身地域を特定する方法で、既にアメリカ(米軍DPAA)や韓国(国防部遺骸発掘鑑識団)が採用していることを突き止めた。そして歯科医向けの雑誌に防衛医科大学染田先生の「歯は生まれ故郷の記憶を刻んだタイムカプセル〜歯の元素分析による戦没者遺骨の日・米・現地住民の分別の試み〜」(「歯界展望」2017.4)という文章を発見した。以下引用する。
 「先の大戦の戦没者の遺骨収集は、終戦以降、厚生労働省やNPO、NGO団体などによって長年行われてきました。しかしながら、現在一部地域では、遺骨収集現場における日本兵、米兵、及び地元住民の3者の遺骨の混同が大きな社会問題、外交問題となっており、事業推進の大きな障害となっています。このため、収集された遺骨についてこの3者を分別する方法の確立が急務となっています。」「これまで私たちは、出身地域別にみた人体硬組織中の元素の特徴(濃度や安定同位体比)についての検討を行ってきました。環境中の酸素、炭素、窒素、硫黄、鉛、ストロンチウムといった元素の特徴は、気候、土壌や地理的条件の特徴を反映して地域別に多様な分布を示すことが知られています。これに、土地土地の食習慣の違いが加わることで、そこに住むヒトの体内における元素の特徴には、さらに多様なバリエーションが加わることになります。」「これらの方法を実際に沖縄県で収容された戦没者遺骨のうち、所持品から米兵の蓋然性のあるものに適用したところ、米兵である可能性がきわめて高いとの判定結果が得られました(琉球大学医学部人体解剖学講座との共同研究)。この結果は、米軍戦没者遺骨鑑定機関(DPAA)に連絡され、平成28年10月にDPAAに引き渡しがなされました。」
 なんと、「安定同位体比判定」を用いて、既に遺骨をアメリカに引き渡しているのだ。

                 参照染田先生のサイト http://www.geocities.jp/ego_isotope/page402

 

要望書を提出 意見交換会 議員から鋭い質問

厚労省が安定同位体比による国籍判別の有効性を認めた

 厚労省との意見交換会は、相原久美子参議院議員の紹介により行われ、韓国からは太平洋戦争被害者補償推進協議会チーム長の金英丸(キム・ヨンファン)さんが参加した。相原議員のほか、森本真治(民進)、伊波洋一(沖縄)、福島みずほ(社民)議員と5議員秘書が参加。多くの日韓マスコミをはじめ一般市民も参加した。
 会議は冒頭、要請書提出の後、厚労省援護課の吉田課長から回答が行われた。
 「安定同位体比を用いて遺骨の国籍や出身地域を特定する方法は前例がない」との回答を受けて議員から質問が飛ぶ。

(議員)「政府が関わらず民間がやったということか?国は関与していないのか?今度の予算で安定同位体比の研究費がついたということだが具体的にどのようなものか?」
(厚労省)「今回の法律で国の責務が明記されており、国は関与するが、沖縄の場合日常の造成工事の中でも遺骨が発掘されるため沖縄県に保管、管理を委託している。大規模な掘削を伴うものは国が関与している。」
(議)「県に委託する中で安定同位体比での判定を琉球大学に委託したということか?」
(厚)「そう。県に委託している骨で、鑑定を実施している中でどうも米兵と思われる遺骨が発見され、染田先生が安定同位体比分析を用いて米国にお返ししたということ。」
(議)「手法は厚労省として認めているのですね。」
(厚)「私どもは否定しているわけではなく、今回は染田先生のご厚意によってやっていただいたと承知している。その結果間違いのないものとして引き取られたと認識している。」
(議)「否定していないということは、手法での実績があるのだから今後やっていくということでいいですね。それと来年の予算の話。」
(厚)「今回、安定同位体比で予算が500万円ついている。フィリピン現地遺骨混入の件で安定同位体の判定を行うための予算措置です。」

・・・以上のとおり、回りくどい言い方ではあったが、厚労省として安定同位体比の有効性を認め、現にアメリカに遺骨を渡したことや、今後の実施に向けた予算化を認めた。これは大きな変化である。今後、韓国政府からの要請があれば、日本政府として応じざるを得ないからだ。遺骨が韓国に帰れば、韓国には国防部遺骸発掘鑑識団という専門チームで遺族との詳細なDNA鑑定が可能だからだ。また会議で厚労省は、在日韓国人のDNA鑑定申請について、韓国政府の具体的提案があれば検討すると明言した。
 今後、さらに安定同位体比やDNA鑑定研究者からの情報を得ながら「遺骨を家族・故郷の元へ」の運動を継続したい。

沖縄で「第2回沖縄戦および海外戦没者のDNA鑑定集団申請説明会」を開催(木村)

 3月16日沖縄県南風原文化センターで、「第2回沖縄戦および海外戦没者のDNA鑑定集団申請説明会」が、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」主催で開かれた。沖縄戦戦没者遺族のDNA鑑定申請は、昨年6月第一回集会以来、600名にのぼる。「手足1本であっても父であり、母である」という県民遺族の声に、「歯だけ」と言って来た厚労省も大腿骨など手足も鑑定すると表明するに至り、徐々に鑑定遺骨の対象を広げてきた。しかし沖縄で昨年の集会が大きく報道されたとはいえ、未だ周知不足だ。また「家族の中に海外死没者がいるが申請できないのか」「亡くなったのが沖縄本島でない」といった声が多く聞かれた。今回の集会は、集団申請を更に呼びかけるとともに、海外戦没者も申請をという遺族の声を国に上げていく場であった。集会には遺族20数名が参加。マスコミ関係6社、テレビカメラも会場を囲み、沖縄での関心の高さが伝わる。
 まず代表の具志堅さんから「沖縄では、遺骨が劣化していてDNAは取れないと言われてきた。しかし、DNA鑑定をずっと言い続けてきた。2009年那覇の真嘉比から名前のある万年筆と一緒に出てきた遺骨がDNA鑑定で遺族に還った。沖縄の遺骨からもDNAが取れることが証明された。2013年から沖縄で遺骨を焼くのを止めた。厚労省はDNA鑑定に条件をつけてきた。一つは、身元特定に繋がる物が出てくること。しかし兵隊の認識票すら部隊の動向を敵に知られないため集められていた。兵隊なら渡された時期により軍服のボタンが代わる等手掛かりがあるが、着物を着ていた一般住民は何も残らない。風葬の遺骨かどうかさえ分からない。二つめは、歯がある遺骨という条件。600体中84体しかない。四肢骨を鑑定してくれと要求してきた。厚労省は個体性のあるものと言っていたが、昨年12月の交渉でやっと、四肢骨が出たらやりましょうとなった。DNA鑑定の対象拡大は沖縄のめどが立ってからと考えていたが、遺族の高齢化を思うと先に延ばすわけにいかない。家族の中で、一人は沖縄で、一人は海外で戦死という場合もある。海外の遺骨も同時に申請を進めていきたい。海外からの遺骨は安定同位体で人種を分けてから、遺族のDNA鑑定をやる。安定同位体研究に予算もついた。沖縄の遺骨は各地の慰霊の塔に埋葬されており、合わせると2000体の遺骨がある。集められた遺骨は焼骨され国立戦没者墓苑に入れられたが、各地慰霊塔には残された遺骨がまだ眠っている。DNA鑑定の可能性は残っている」とこれまでの経過が説明された。

TVカメラも多数 挨拶する具志堅さん 多くの遺族が真剣に

沖縄戦・海外戦没者の遺族からの思いと質問が続々と

 
  遺族からの質問
 
  集会後取材を受ける遺族
 次に参加遺族から、それぞれの家族が亡くなられた状況や質問が出された。ある遺族は、「父と兄を亡くしており、S9年生まれの兄と私と妹が残った。この兄が元気な間に申請したい。上の兄とは離散、どこでどう亡くなったか分からない。毎年魂魄の塔と戦没者墓苑に参っている。別の兄はフィリピンで亡くなった。いくつかの島から遺骨が集められていると聞くがどうなのか」。別の遺族は、「兄を沖縄戦で亡くしている。熊本県知事から「23.8.1摩文仁方面にて死亡」という死亡通知が届いた。一緒にいたという知人から後に聞いた情報と違う。どちらが本当か」と質問。具志堅さんは「死亡通知では首里となっていた人の遺骨が真嘉比で出た。海軍で亡くなったという人が収容所で亡くなっている例もある。通知では一番たくさん戦死した場所を戦死場所にしている。最後に見かけた場所を戦死場所にした例もある。国が戦死場所を特定できない」と答えた。またある遺族は、「伯父は学徒隊で大砲を運んでいるのを見たという証言があるが、国には学徒隊は兵隊ではないので把握していないと言われた。また当時、死体を踏み越えながら肉親を探したが見つからなかった。」等々、今まで確かめようもなく胸に留められていた記憶や想いが次々出されてきた。 
 具志堅さんは最後に離散家族について触れた。「戦後収容所の中に自分の名前も言えない、住所もわからない孤児がいた。1949年首里更生院には209名。戦後労務作業で生活してきた人に、戸籍もない、一度も病院に行ったことがないという人が存在する。孤児については我々も知らなさ過ぎた。孤児に責任はない。国が呼びかけるべきだ」そして最後に「申請は皆さんができる親孝行だ。国に責任を取ってもらわないと、国はまた同じことをやる。子や孫に伝える作業でもある。国にもっと声を上げるべき」と遺族に呼びかけられた。

※ 当日のニュースはこちらでで見れます(YouTube)。 

沖縄で開催の真相究明ネット集会に参加(木村)

 3月17日沖縄大学で第11回強制動員真相究明全国研究集会が、韓国からの10名を含めた150名の参加で開催された。
 まず沖縄国際大学名誉教授の石原昌家さんが「天皇制を守る戦闘だった沖縄戦」と題して基調講演。「軍官民共生共死」というのは住民が自主的主体的に死んだのではなく、軍に洗脳・強制されて死んだという認識が最重要。軍極秘で下された報道宣伝・防諜等に関する県民指導要綱の資料を示し強調された。在日朝鮮人運動史研究会の塚崎昌之さんは、「朝鮮人軍人・軍属の動員の実態とその被害」を報告。志願兵・徴兵の動員総数で日本政府があげる2種類37万と24万を精査、37万人以上と。死亡者数も同様に低く見積もられている。徴兵者が武器も持たされず、差別的に扱われた等、事実の確定をすべきだ。
 続いて「沖縄恨(はん)の碑の会」沖本富貴子さんが「沖縄戦で軍人軍属に動員された朝鮮の若者」と題し、特設水上勤務隊について詳しい報告。港での軍事物資の陸揚げから弾薬運搬などの危険な仕事が主で、監視についた学徒兵によると、「怠けたらすぐ叩いていいからと、6尺棒を与えられた。」という証言もある。
 「ガマフヤー」の具志堅隆松さんからは「沖縄における戦争犠牲者の遺骨収集について」報告。収集でせっかく暗いところから明るいところに出ることができたのに、墓苑に入れられる。国の命令で死んだ人が国の管理下に置かれる不条理。遺骨はDNA鑑定を行い家族の元へ返すべきだと訴えられた。
 2日目の南部地区フィールドワークは、山城地区から魂魄の塔、米須地区、韓国人慰霊の塔から平和の礎を巡った。2013年11月に原告の権水清さんとお父さんの足跡を訪ねたことを思い出す。今回歩いた山城地区は特水勤104中隊が全滅したとされる糸満市新垣より更に南で、102中隊が沖縄戦末期に斬り込みにより全滅したところだ。ここで具志堅さんが遺骨収集をした構築壕を案内。軍用スコップ・防毒マスクのレンズ等出てきたものも見せてもらう。米須地区は294世帯中241世帯に戦没者がおり、一家全滅は62世帯。地図を手に道を歩くと、今も点々と残る空き地に小さな小屋が建てられ、線香立てとお供えが置かれている。平和の礎には新しく刻銘された韓国人15名の中に権水清さんのお父さんの名前もあった。2013年に県庁で刻銘を希望したが、行方不明で死亡が確認できないからと拒否されていた。その後沖本さんたちの努力で刻銘されたものだ。戦場であった現地を歩きながら聞く話しを聞きながら、美しい景色の中に逃げ惑った人々の声が聞こえてきた。また2001年韓国人慰霊の塔で祭祀をした際の権水清さんの慟哭が蘇ってきた。

詳細な朝鮮人動員パネル展示 150人が参加 説明する具志堅さん
山城陣地壕 一家全滅屋敷跡 刻銘された権水清さんの父・云善さん

ノー!ハプサ第14回口頭弁論報告(山本)

 3月20日、ノー!ハプサ第2次訴訟第14回口頭弁論が東京地裁103号法廷で行われました。韓国からは原告の李炳順(イ・ビョンスン)さん、太平洋戦争被害者補償推進協議会共同代表の李煕子(イ・ヒジャ)さん、通訳として金英丸(キム・ヨンファン)さん、そして、夜の「まもなく開館!『植民地歴史博物館』3・20集会」のために来日した民族問題研究所資料室長の金丞垠(キム・スンウン)さんも参加されました。

いよいよ立証段階へ

 前回の第13回口頭弁論で、弁護団が総力を挙げて裁判所に事実認否の必要性を訴え、調書にも記録させました。その結果、1月12日の進行協議を踏まえて、9月から10月にかけて証人尋問を行うことが決まり、日程調整・法廷の確保も行われました。今回の裁判に向けて、前回裁判の確認に従い、被告日本国と靖国神社から準備書面が提出されましたが、原告側が情報公開請求した戦後の合祀関係の新しい資料について一部言及したものの、その内容は「合祀は靖国神社が行ったもの」「一般的情報提供義務」という従来の主張の繰り返しであり、原告側が求めていた植民地支配と靖国合祀に関する事実関係の認否は一切拒否する不当なものでした。

「民族的人格権」を争点に
 
 意見陳述に立った李炳順さんは、「二才の娘と妊娠中の妻を後にして、死地へ連れて行かれる父の足取りが、どれほど重かっただろうか思うと、胸が張り裂ける思いです。また、そのとき父を見送る母の気持ちがどうだっただろうか思うと、涙が止まりません」「私は多くのことを望んでいるわけではありません。 靖国に合祀された父の名前を靖国から消し、私が正々堂々とお祀りしたいだけです。私は、そのときはじめて子としての責任を果たすことができるのです」と涙ながらに訴えました。
 弁護団は「民族的人格権の要件論」に関する準備書面25を提出しました。秋には証人調べが予定されているとは言え、現在の被告の認否拒否の姿勢を放置していては十分な審理は行えません。次回裁判には民族的人格権及び合祀論に関する詳細な書面を準備するとともに、立証計画を提出する予定です。今回は会場が確保できず、悪天候の中駆けつけてくださった傍聴者の皆さんと裁判所1階でまとめの集会を行い、解散しました。

ノー!ハプサ 第15回口頭弁論
5月22日(火) 14:00 東京地裁103号法廷

GUNGUNインフォメーション

4月13日(金) 安倍靖国参拝違憲訴訟 訴訟集結と再出発の集い 
                18:30〜 エルおおさか709号(地下鉄・京阪天満橋駅徒歩5分)
                「天皇制に抗う(仮)」田中伸尚さん
5月22日(火) ノー!ハプサ(合祀)第15回口頭弁論 14:00 東京地裁103号法廷
7月17日(火) ノー!ハプサ(合祀)第16回口頭弁論 10:30 東京地裁103号法廷
8月11日(土) 平和の灯を!ヤスクニの闇へ 2018キャンドル行動 13時〜
                在日韓国YMCAスペースY  (水道橋駅徒歩7分)
         【事前学習会】
            5月18日(金) 18:30 同会場 「遺骨と靖国」栗原俊雄さん
            6月22日(金) 18:30 同会場 「戦争と平和の明治150年」原朗さん
            6月29日(金) 18:30 同会場 「大日本帝国憲法から考える明治150年」小関彰一さん