在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.84 (2016.5.14発行)

李煕子さん南英珠さんの
キムチづくり&お話し会
4月30日・大阪

「戦没者遺骨収集推進法」が成立!
 塩崎大臣「韓国政府から提案があれば真摯に受け止め適切な対応を検討する」と答弁 
「歯だけでなく四肢骨を対象にDNA鑑定を」の声を広げよう!

 4月1日、「戦没者遺骨収集推進法」が施行されました。昨年9月衆院可決、2月24日参院本会議可決を経て、3月24日衆院本会議再議決で成立したものです。韓国人など旧植民地出身者排除への懸念や、DNA鑑定具体策をめぐり、私たちは議員要請活動を行いました。    
 2月18日参院厚労委員会で津田弥太郎議員から「補償問題や慰安婦問題とは絡めることなく、また費用についても適切に韓国側が負担する、そのような前提の下で、韓国側から遺骨に関するDNA鑑定をお願いされた場合」どう対応するのかとの質問に対し、塩崎厚労大臣は「遺族の気持ちは国境に関係なく同じである。朝鮮半島出身者については、外交交渉に関わる問題であるが、遺族の気持ちに強く配慮をしていくべきという指摘、意向をしっかりと受け止め、韓国政府から具体的な提案があれば真摯に受け止め政府部内で適切な対応を検討する」と答弁しました。そして参院可決時に「戦没者の遺骨から抽出したDNA情報のデータベース化に当たっては、できるだけ多くの遺骨の身元を特定し遺族に引き渡せるよう、遺族からの幅広いDNA検体の提供の仕組みについて検討すること」との付帯決議が附されました。
 法成立を受けて厚労省は3月29日、沖縄で収集した遺骨のDNA鑑定に関する方針を公表、遺骸の発掘場所や今後呼びかける遺族数が公開されました。対象に県民犠牲者が含まれることや、遺族が希望すれば将来の遺骸発見に備えてDNAデータを保管すること、発掘場所に関連した軍部隊が公表されるなど、一定の前進がありました。

遺骨問題は「個人の尊厳を回復する」闘い 
「焼骨してすべて千鳥ヶ淵へ」の時代に終止符を!  

 
  川田議員
 「時の為政者によって傷つけられた個人の尊厳を回復するという点では、私は、自分自身薬害の被害者として、こうした亡くなった後も個人の尊厳を回復するための国の責任というものを大変重いと感じております。国のために犠牲となった戦没者の御遺骨の収集は国の責任であり、この法案第2条にあるように、ただ収集をするのではなく、御遺族の元にお返しするところまでしっかり行うのが国の責任である」。これは2月18日参議院厚生労働委員会での川田龍平議員の発言です。薬害エイズ被害者として国・厚生省と闘った川田議員の言葉の重みを感じます。「死人に口なし」とよく言われますが、「靖国の英霊」などと死後まで国に利用され、個人の尊厳を傷付けられた人々の悔しさを受け止める作業こそが、遺骨を故郷・家族に還す闘いです。
 残念ながら今回成立した「戦没者遺骨収集推進法」は基本部分で韓国人を視野に入れない不十分なものです。しかし塩崎厚生労働大臣の発言にあるとおり、今後韓国政府を動かすことができれば展望は切り開かれます。
 以下、法律成立過程での私たちの取り組みと今後の展望について報告します。
 
韓国から見た「戦没者遺骨収集推進法」成立過程とこれから(上田)

 
  ニューギニアでの遺骨
 
  川田議員と
 
  ヒジャさん
 
  具志堅さん
 遺骨問題について、国会とくに、2・3月の参議院厚生労働委員会での論争と前進は画期的なものでした。2月18日の参議院厚労委員会法案通過時での津田議員の質疑と、塩崎大臣の答弁を韓国のハンギョレ新聞はこう報道しました。「津田弥太郎議員はさる18日参議院厚労委員会で“去る大戦で多くの韓半島出身者が過去の日本軍兵士・軍属として各地で戦死した。この問題を補償問題や慰安婦問題と連係せずに、また費用を適切に韓国側が負担するという前提の下、遺骨のDNA鑑定に対する韓国側の要請が来た場合日本政府は拒絶してはいけない”と指摘した。これに対する返事で塩崎厚生労働大臣は“韓国政府から具体的提案があればこれを真剣に受け止め政府の中で適切な対応を検討する考えだ”と返事をした。日本政府が韓国人遺族たちのDNA鑑定要求に協力することができるという方針を明確な形態で明らかにしたのだ。この作業が円滑に進行されれば日本政府が発掘する第2次世界大戦犠牲者の中に混ざっている韓国人の遺骨が70年ぶりに遺族のもとに戻ることができるようになる」と。補償が切り離される、韓国側に一定の負担を求めている、日本政府が韓国政府に呼びかけずに韓国側からの具体的提案を待つなどの限界があるのは事実です。しかし津田議員の質疑に対し、塩崎大臣が仮に「この法律は“我が国(日本)の戦没者”を対象としたものである。発掘現地で韓国人とわかる遺品が出てきたら韓国と交渉する」と今まで通りの絶望的な答弁がされた場合を考えれば、日本政府の大きな方針転換です。慰安婦合意の激震で日韓関係が大きく揺れるさ中に、堂々と参議院厚労委員会で確認された方針転換です。遺骨問題は日韓条約では終わっていない、終わりようのない人道的な問題であると、遺骨問題への支持を広げてきた私たちにとって、遺骨が遺族のもとに帰る可能性を作り出す大きな道を切り開いた答弁でした。
 韓国の世論は、どう動いたでしょうか。ハンギョレに続き、聨合ニュースは、「法律は収拾対象遺骨を'我が国(日本)戦没者'のことで限定することによって日帝強制占領期間に日本軍や軍属(軍務員)で動員されて戦死した朝鮮人犠牲者は適用対象で排除された」と法律の基本構造を徹底批判しつつも、塩崎大臣の発言については、ここを突いて遺族の希望を実現していくしかないとの論調で、韓国政府に積極的対応を促しています。韓国各新聞・ネットニュースは遺族からの韓国政府への具体的提案を求める声を繰り返し報道しています。太平洋戦争犠牲者補償推進協議会は、すでに政府との交渉を行い、国会議員選挙後の国会の人事配置が決まる6月に、外交通商部に新しく配属される国会議員とともに、政府交渉を進める準備を進めています。すでに韓国政府もまた、韓国人遺族の遺伝子銀行の設立に向けた予算計上を公表するなど、日本政府への対応策を取り始めています。
 
 李煕子(イ・ヒジャ)さんが3月16日、国会でのDNA学習会・第5次国会議員ロビー行動のため来日した時、着くなり「なんで塩崎発言について日本政府が韓国にその内容を伝えないのか?」と、私に怒っていました。遺骨問題の展望は出てきたものの、日本政府から言ってこないのはけしからんということです。「大臣が国会で言ったことは、取り消せない。国際的に見て、韓国に言ったのも同じ。」と言うしかありませんでした。しかし、2日間、国会で一緒に動く中で、ヒジャさんは具志堅さんに「具志堅さんの何十年の努力が花開く時が来た」と話していました。そして最後に「沖縄の県民の鑑定ができるように頑張って」と、私たちに言い帰国しました。法律ができて日本人にはしっかり対応すると思っていたのに、今のままでは厚労省は日本人にもちゃんとしない。そんな厚労省と闘っている私たちの姿を目にして出た言葉です。「日本人にしないのに韓国人にするわけがない。まずしっかり遺骨収容の法律を日本で作って」。ずっとヒジャさんが、私たちに言ってきたことです。さっそくヒジャさんは、韓国に帰り「“日本は歯から検体を採るため、歯がない遺骨は火葬すると聞いている。韓国政府の対応が遅れ、火葬されてしまえば遺骨返還が不可能になる”と懸念を示した」(聨合ニュース)とマスコミに発言し、連係した動きを作り出していただいています。

スタートの沖縄で「四肢骨」からのDNA鑑定実現を!
 
 
ニューギニアでの遺骨  
 沖縄から始める方針を3月中に厚労省が出すということが決まっていました。まず沖縄戦遺族のDNA鑑定呼びかけに沖縄の県民犠牲者が含まれるのかどうかという大きな問題。そして、遺族の高齢化や今後の発掘を考えれば一度とったデータをデータベース化するか否かという問題がありました。また、遺骨側のデータベース化はすると言っていましたが、沖縄が独自に保管する四肢骨600体について、厚労省は個体性のない遺骨、DNA鑑定に必ずしもつながらない骨として焼いてしまおうとしていました。これらの問題に前進しなければ、塩崎大臣の発言の効果、つまり、韓国人遺族に遺骨が戻る希望は、数分の一になってしまうのです。沖縄戦の最大の犠牲者である沖縄県民を鑑定から外したら、韓国人遺族に寄り添う事業になるはずがありません。父である足や腕の骨が、個体性がないなどと言って勝手に焼いてしまえば、沖縄だけでも600人の遺骨が遺族に帰る道を閉ざされます。沖縄で歯だけであれば87件しかないのです。沖縄でスタートする基準が、アジア太平洋地域全体の遺骨鑑定の事業全体に波及するのです。私たちは3・16国会内DNA学習会と第5次ロビー活動を通じ、参議院厚労委員会での第2ラウンドの闘いを準備しました。すべての沖縄出身国会議員5名に、沖縄県民を鑑定呼びかけに入れること、四肢骨も鑑定することを厚労省に訴えてもらうよう要請し、また参議院厚労委員会一般質疑での四肢骨問題での再論争を準備しました。その結果3月22日厚労委員会一般質疑において川田隆平議員の追及に厚労省は「沖縄で戦闘に巻き込まれた方は対象となる」と明確に答えました。また塩崎大臣は、「今すぐ歯以外でもDNA鑑定をするほど今科学的な知見の集積は日本でされていない。韓国を含め、どのようなことが科学的に証明可能なのかということをよく考えていく」と回答しました。沖縄県民への鑑定実施に加え、四肢骨鑑定が射程に入ってきたのです。
 
 3月29日、厚労省が沖縄方針を発表しました。私たちは、3月22日の塩崎発言以降この発表までに塩崎大臣に、重要な資料を提示しました。1つは朝鮮戦争犠牲者の遺骸発掘調査を行っている韓国国防部遺骸鑑識団が四肢骨を中心に鑑定している写真です。続いてもう1つがソウル大学大学院の博士論文です。この論文は鑑識団の活動を分析している2007年の論文ですが、朝鮮戦争犠牲者の鑑定事業で、歯よりも四肢骨のほうが、DNA抽出がよりできており、実際、歯よりも四肢骨から鑑定しているという論文です。これを翻訳し、川田議員を通じて塩崎大臣に渡しました。その結果、塩崎大臣から四肢骨について鑑定の対象となるか検討をするよう指示されたことを、厚労省は川田事務所に明らかにしました。

ソウル大大学院博士論文一覧表@  
韓国でのDNA採取作業
DNA検査に使われた骨の割合(%)
大腿骨
上腕骨
脛骨
尺骨
奥歯
橈骨
その他
58.0%
15.6% (注:肩につながる腕)
15.2 % (注:むこうずねをなす太い骨)
 2.6% (注:前腕二本の骨のうち小指側にある管状の長骨)
 3.2%
 1.8% (注:前腕二骨の一つ,尺骨と並行している管状の長骨)
 3.4%

ソウル大大学院博士論文一覧表A  
朝鮮戦争遺族のDNA鑑定を
呼びかける看板
発掘された骨からのDNAテスト成功率  
  DNA採取濃度 A―STR Y―STR mtDNA  
  単位:ng/μL
(ナノグラム/マイクロリットル)
(常染色体STR) (Y染色体STR) (ミトコンドリアDNA)  
大腿骨 0.2030 90% 77% 100%  
上腕骨 0.1543 78% 64% 100%  
脛骨 0.0342 58% 39%  95%  
尺骨 0.0084 29% 21%  86%  
奥歯 0.0058 39% 14%  78%  
橈骨 0.0031 35%  9%  60%  
その他 0.0035 19% 13%  40%  

 
赤嶺議員と  
 3月29日発表された厚労省沖縄方針の概要は以下の通りです。@真嘉比(那覇市)53件、幸地(中頭郡西原町)14件、平川(南城市大里)5件、経塚(浦添市)3件の歯の検体からDNAが抽出されており、まずこの4か所75件の遺骨(沖縄全体の9割)をデータベース化する。A平成28年度の早い時期に2533名の遺族への鑑定呼びかけと鑑定を行う。(その中には軍人軍属のみでなく平和の礎に刻銘された一般県民も含む)B鑑定により身元が特定されなかった場合について原則遺族のデータは廃棄するが、遺族が保管を希望する場合は一定期間保管し、後日使用する。C太平洋地域も含む8000体の遺骨について、平成28年度中にデータベース化を行い、沖縄4地域の結果を踏まえて、ほかの地域について遺族への呼びかけ実施を検討する。というもので、方針発表の記者会見では、「手や足からもDNAはとれる」と厚労省が含みのある発言するに至っています。
 私たちが、求めていた遺骨検体・呼びかける遺族数・部隊名(部隊名は後日、参議院厚労委員・森本しんじ事務所が追及し公開された)の情報公開がされました。特に遺族の実質的なデータベース化方針が初めて示されました。3月22日の国会質疑からわずかな期間でしたが、沖縄方針発表にも大きな圧力をかけました。第5次ロビー活動で要請した沖縄出身国会議員もぎりぎりまで厚労省を呼びつけたり、質問書を出したりしました。具志堅さん、沖縄の国会議員のみなさん、川田龍平事務所、森本しんじ事務所、ぐんぐんの仲間が一致団結し厚労省沖縄方針発表に短期間に大きな圧力をかけてきました。
 
 さて、次の国会論戦では、四肢骨の鑑定を認めさせることが課題になります。この闘いは、残る通常国会、秋の臨時国会、おそらく来年の通常国会にかかる1年がかりの長い闘いになります。600件の遺骨に含まれる韓国人の父の遺骨を焼かせてしまうわけにはいきません。「日本人遺族と連帯し、韓国人遺族の問題を解決する」。私たちのこの方針は、両国の遺族の目線から問題を提起し、思いを伝え、党派を超える国会議員の理解と行動を得てきました。それは政府の説得にもつながっています。沖縄の600体の遺骨(四肢骨)を鑑定に入れることは、一片の遺骨でも返してほしいという遺族の要求そのものです。70年の沖縄県民遺族の思いを声に出すために、6月沖縄県議会再決議の実現を具志堅さんと相談しています。6月に韓国で、新国会議員とともに外交通商委員会を通じた韓国政府に対する要請が本格的に始まります。沖縄戦でなくなった韓国人軍人・軍属の多くが行方不明扱いとなっており、このことも課題として浮上してくるでしょう。
 私たちは、2月3月にこの大きな山の5合目に一挙に到達しました。衆議院厚労委員会での法案通過時まったく、なすすべもなかった私たちが、参議院厚労委員会で大きな議論と展望を作り出しました。6合目7合目の課題は見えてきました。沖縄県民と連帯しこの山を登っていくこと、そして韓国政府に日本政府への具体的要求を行わせること、この2つを日本と韓国で進めていきましょう。

3・16「DNA鑑定に関する国会内学習会」を開催(古川)

 3月16日、ノー!ハプサ(合祀)の口頭弁論後に、参議院会館で「戦没者遺骨DNA鑑定に関する国会内学習会」を開催しました。
 「ガマフヤー」代表の具志堅隆松さんが沖縄での遺骨収集の現状について報告。次に「文系でもわかるDNA鑑定」と題してこの問題について協力を申し出ている「NPO遺伝子情報解析センター」の研究員から、DNA鑑定のしくみや日進月歩の科学技術の発展などを学びました。方法次第で鑑定の精度を上げることが十分可能であることや、厚労省が「地名、部隊名」が判明している人に限定したり、「歯」に限って鑑定を行うなどと、恣意的な基準を設けてきたことの不合理性が明らかになりました。
 集会には川田龍平議員をはじめ2人の議員、5人の議員秘書も参加。川田議員からは「戦争によって奪われた遺族の時間を取り戻すためにも最善を尽くしたい」と厚労委に向けての決意が述べられました。
 最後に、韓国から参加されたノーハプサ原告鄭鎮福(チョン・ジンボク)さんのお父さんの戦死地クェゼリン島からは、昨年15体の遺骸が収容されており、その中に鄭鎮福さんのお父さんの遺骸が含まれる可能性が十分考えられることを全体で確認しました。
     
川田議員と具志堅さん 遺伝子情報解析センターの山田さん 鄭鎮福(チョン・ジンボク)さん

関西で李煕子さん、南英珠さんのキムチ作り教室&お話し会を開催(木村)
 
 
  ヤンニョムづくり
 
  白菜にヤンニョムを
 
  阪本さんと南英珠さん
 4月30日、大阪に李熙子(イ・ヒジャ)さん、南英珠(ナム・ヨンジュ)さんを迎えて、久しぶりのキムチ教室、韓国料理&お話し会を開催した。昨年からヒジャさんに会う度、関西で出会った懐かしい人に集まってもらいたいと何度も言われた。しかしここ数年、キムチ教室を含めグングン関西で集会を持つことがなかった。どれだけ参加してもらえるか、ヒジャさんの期待に応えることができるか不安をかかえての出発だった。だが当日20名を越える参加者で調理室は満杯になった。
 前日、私の家に到着したヒジャさんヨンジュさんのトランクは韓国からの食材がぎっしり詰め込まれていた。トッポッキ、チャプチェ、すりおろしニンニク、生姜、2種類のネギ、ほうれん草、コチジャン、唐辛子、ごま油、魚醤、ケチャップ、水あめ等調味料、太い胡瓜から人参まで。トランクから食材が取りだされる度に歓声があがり、写真に収めた。韓国からの食材と、塩漬けした白菜、千切り大根3本分、人参、玉ねぎ、胡瓜 等日本の食材を会場まで運びキムチ教室が始まった。ちなみに日本の食材は関西以西の物にこだわり、数日かけて店を回り探し求めた。
 予定の料理は、キムチと鶏がゆ、チャプチェだったが、トッポッキも加わり、オイ(胡瓜)キムチは韓国・日本産混合。参加者全員が調理室に入りきらず、ポイントのみ全員が集まり確認してもらうことになった。テーブルには、美味しそうな料理が大皿に山盛りとなり「お腹いっぱい」と言いながらも次々おかわり。食後は甘い韓国コーヒーと、京都の久米さん持参のヨモギ餅までいただいた。そのまま交流会に入り、自己紹介ではヒジャさんとの出会いの話、ヨンジュさんとニューギニアに関わる話に盛り上がった。ニューギニア遺族の阪本さんをはじめ、皆さんが忙しい中駆けつけて下さった。
 
植民地歴史博物館オープンへの思いを交流
 
 ヒジャさんは今、植民地歴史博物館建設に力を注がれている。挨拶でヒジャさんは、「6月沖縄で行われる恨之碑の集会に向けてパンフレットを準備している。戦時中、慶尚北道から3000人が沖縄戦に動員されている。姜仁昌さん徐正福さんの二人が生きている間に資料を作って講演会とかやればよかった。遅くなったが慶尚北道の学校に配りたい。日本で多くの戦後補償裁判が闘われたが、苦しんでいる人に会うことが大事。博物館は来年の春、遅くとも来年中に開所したい。展示物は、尹貞玉さんから寄贈を受けた従軍慰安婦に関する資料、東京靖国訴訟の辻子実さんから寄贈を受けた靖国神社関連資料が含まれる。今日の様な食文化交流ができるような空間が欲しいと考えている」と。歴史博物館と聞き、貴重な資料が集められる意義ある活動だとは考えていたが、ヒジャさんの話しを聞くうち、韓国と日本の市民レベルの交流の歴史も展示の内容に入る、更に来館者の交流の場も作ると聞き、単なる資料見学のための場所ではないこと、今までの交流、活動の歴史が刻まれ更に未来に引き継がれる交流が生まれる場所なんだとわかった。朴クネ、安倍がどんな政治を行おうと、市民の連帯の力に勝てるはずがない。そんな力をためる場になるだろうと思いワクワクする。
 終了後、ヒジャさんから、キムチ教室は合格と言ってもらえた。何より初参加の方も含めて楽しい時が持てたことがよかった。一方、秋に韓国遺族達と一緒に江華島への旅をしようとヒジャさんから提案があった。今後も継続した交流が国境を越え、私たちの求める平和な社会を築いていくことは確かだ。
みんなで食事 最後は寄せ書き

ノー!ハプサ第2次訴訟第7回口頭弁論報告(山本)

 3月16日のノー!ハプサ第2次訴訟第7回口頭弁論に原告側は被告日本国・靖国神社の答弁書に対する全面的な反論の準備書面11、12を提出しました。前回の口頭弁論までに原告側は植民地支配関係を基礎にした原告らの肉親の死、靖国合祀の不当性を歴史的経過を踏まえて全面的に主張してきました。今回の裁判ではそれに対する被告側からの反論の期日と当初認識されていましたが、裁判所側が被告の答弁書に対する反論を提出してほしいと求めてきたため、厳しい日程でしたが、準備書面を完成することができました。
 
ヒジャさんとチョン・ジンボクさん  
 
報告会  
 準備書面の補足として陳述に立った原告の鄭鎮福(チョン・ジンボク)さんは「他人の家族を戦場に引っ張っていって死なせたのなら、知らせてくれるのが人間の守るべき最小限の礼儀ではありませんか?どうして家族に一言も知らせずに合祀までできるというのですか?どうしてこんなことがあり得るというのですか?家族に知らせる責任が、日本政府と靖国にあるのではないですか?私の話は間違っていますか?日本政府と靖国は私の問いに答えなければなりません。 日本政府と靖国は、私の父を『日本人として死んだから』と勝手に合祀しているのです。一方では外国人だからといって未払い金すら支払わず、一方では日本人だったからといって無断で合祀する身勝手な行為がどうして許されるのか、この場にいる日本政府と靖国の人は、遠く海を越えてやってきた私に説明してください。」と堂々と訴えました。
 原告側の準備書面では、被告日本国が答弁書で「(靖国神社に合祀されているということは)被合祀者が太平洋戦争で戦没したという事実を示すに過ぎない」と言っていることに対して、では、なぜ、被告日本国は靖国神社に情報提供したのか、靖国神社は被告日本国と同じ認識なのか、求釈明を突き付けています。今後の大きな争点になると思います。
 裁判後は、参議院議員会館で裁判総括集会を行った後、在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会、ガマフヤーとの共催で遺骨問題の学習会を開催しました。遺骨収集法案が参議院通過した後ということで、山口や関西方面からの参加や川田龍平議員の参加もいただき、裁判ともども盛り上がりました。被告日本国は裁判で「遺骨収集の法的根拠は無い」と開き直ってきましたが、今回遺骨収集法案が成立したことで、そのような居直りは許されなくなります。裁判の中でもその責任を追及し、韓国人の遺骨収集の前進につなげていきたいと思います。

 次回第8回口頭弁論は、6月14日(火)午前10時30分から、東京地裁103号法廷で行われます。(傍聴券抽選のため、30分前集合)。次回こそは被告日本国・靖国神社側が反論する番です。引き続きぜひご参加ください。裁判後には弁護士会館で総括集会を予定しています。

読書案内
 
   

韓国人元BC級戦犯の訴え
      −何のために、誰のために−
            
                    李鶴来(イ・ハンネ)著 梨の木舎 1700円+税

 4月24日、東京で李鶴来さん「何のために誰のために」出版記念会が開かれた。サブタイトルとして「韓国・朝鮮人BC級戦犯者問題の立法解決をめざして」とある。この出版記念会は、8年前に衆議院に提出されながら審議もされず廃案となった立法案「特定連合国裁判被拘禁者等に対する特別給付金支給に関する法律案」を、5月にも再提出し、成立をめざす出発点ともいえるものであった。李鶴来さんは、今年まで周囲の勧めにもかかわらず、立法化後にと出版を断わっていたという。しかし、今年2月で91歳となった。是非立法化を図りたいという思いを含め出版を決意されたという。だから、実は、この本の最終章は、5月からの立法化である。今も毎日議員を訪問しているという。頭が下がる思いである。本書は、李鶴来さんの一生を描いたものであり、捕虜監視員生活から、22歳の若さで死刑執行の恐怖と向き合った8ヶ月、不条理を訴え続けた取組等々、全てが書かれている。ぐんぐん裁判原告の羅鐡雄さんのお世話になった(2002年9月来日)。「波乱に満ちた私の生涯も終末期を迎え、戦犯、特に刑死者の無念の怨恨(おもい)を多少なりとも癒し、名誉を回復するのが、生き残った私の責務」(著者あとがき)。この思いに少しでも応えることができればと思う。是非、一読を。(御園生)

GUNGUNインフォメーション

6月 5日(土) 全国総がかり大行動 14時〜 国会議事堂周辺
6月11日(土) 沖縄「恨の碑」10周年追悼会 13時30分〜読谷村文化センター
6月14日(火) ノー!ハプサ第二次訴訟・第8回口頭弁論10時30分〜(30分前集合) 東京地裁103号法廷
6月17日(金) ヤスクニキャンドル行動第3回事前学習会「『英霊』顕彰と戦死者の遺骨の現実」
            講師:辻子実さんVS山本直好さん 韓国YMCA 304 参加費500円
6月17日(金) 東京総行動 13時50分〜 新日鉄住金前(東京・丸の内)
7月 4日(月) 安部靖国参拝違憲訴訟・東京 14時〜(30分前集合)東京地裁103号法廷
7月15〜16日 政教分離全国集会(東京)
7月30〜31日 平和と民主主義をめざす全国交歓会(エルおおさか)
8月13日(土) 2016ヤスクニキャンドル行動「戦争法の時代と東アジアー『戦死者』とヤスクニ」
            13時30分〜18時30分 参加費1000円 韓国YMCA・スペースY(JR水道橋徒歩7分)
            シンポジウム パネリスト
             高橋哲也さん(東京大学教授) 韓洪九さん(韓国・聖公会大学教授) 新垣毅さん(琉球新報編集委員)ほか
            証言、特別報告、コンサート 終了後、キャンドルデモ