在韓軍人軍属裁判の要求実現を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.73 (2013.7.20発行)

NPO法人「戦没者追悼と平和の会」塩川正隆さんと
李煕子さんたち
(6月23日、久留米市で)

日鉄ソウル訴訟で画期的勝利判決! 植民地支配の清算へ加速を!
遺族への遺骨返還に向けた新たなアクションにご支援を!

 7月10日、韓国・ソウル高等法院は、強制労働被害者4人が損害賠償を求めた訴訟で、被告・新日鐵(現・新日鐵住金)に対し1人当たり1億ウォン、総額4億ウォンの賠償金を支払えとの判決を言い渡しました。今回の判決は、昨年5月韓国の最高裁にあたる大法院が「日本による植民地支配期の強制動員自体を不法とみなす韓国憲法の核心的価値と正面から対立する」として二審判決を破棄し、審理をソウル高裁に差し戻したものです。
 GUNGUNでも交流のある呂運澤(ヨ・ウンテク)さんは、97年大阪地裁への提訴から16年の月日を振り返り、「死ぬまでに恨がとけた」「これまでの皆さんの支援に感謝する」とずっと泣いておられたそうです。この判決は植民地支配の清算を強く促すものです。日韓政府に対する圧力をさらにかけていきましょう。
 この秋、GUNGUNで最も大きな原告要求である「遺骨返還」に向け、日韓遺族の連携による大きな行動に取り組みます。将来、遺骸が発掘されても故郷に帰すための要求です。ぜひご支援をお願いします。

 
 

ボイキンで(2012年8月)

高仁衡(コ・イニョン) さん急逝

 GUNGUN原告の高仁衡さんが昨年10月に亡くなっていたことが最近判明しました。昨年8月にはNPO法人「太平洋戦史館」の岩淵宣輝さんの案内でパプアニューギニアに渡り、お父さんが戦病死した地、ボイキンで祭祀を行なうことができました。その矢先のできごとだけに、私たちも絶句しました。
 岩淵さんからは「知らせを聞いてびっくりした。同い年で私が少しだけ兄だっただけにショック。考えれば昨年、高さんの思いをかなえるお手伝いができてよかった」とお悔やみの電話がありました。
 高仁衡さんは靖国合祀に関して、「私たち朝鮮の祭り方があるのに、どうして日本に従わなければならないのか。日本は負けたのだから魂を解放すべきだ。父は戦病死。病気で死んでいる。飢え死にをした人の魂は食べ物や飲み物が取れない。恨みを解かなければ祭祀ができない」(2008年ソウルでの聞き取りで)と語られていたのが印象的です。ご冥福をお祈りします。

日韓遺族による連携アクション・新たな行動へ
「遺骨を家族の元に返さないといけない。靖国に行くのではない」(塩川さん)
九州・久留米証言集会報告

 6月22日(土)九州・久留米市において、「戦後補償と靖国問題」解決済みは通用しない・韓国からの証言集会を開催しました。呼びかけはNPO法人「戦没者追悼と平和の会」、GUNGUNが主催し、韓国から李煕子(イ・ヒジャ)さんと崔洛(チェ・ナックン)さんを招きました。2010年証言集会で来阪した崔洛さんのお父さんの記録探しを継続し、唯一残された写真に写る同僚が福岡県の貝島炭鉱で働いていたことが判明し、今回の証言集会に。今回もう一つの目的は、NPO法人「戦没者追悼と平和の会」理事長の塩川正隆さんとの交流です。GUNGUNニュース前号でお知らせしたとおり、4月末にスタッフが訪れ交流させていただいた結果、今回李煕子さんたちとの交流が実現しました。 (古川)

「将来遺骸が出てきても故郷に帰ることができるようにするための行動を」

 集会前日、会場のホテルで対面し挨拶を交わすと、いきなりロビーで遺骨問題についての意見交流が始まった。自民党による「遺骨収容に関する新法」の動きを報じる新聞記事を前に李煕子さんから「こういう法律の動きに対し、我々は何が必要か」と問うと、塩川さんは「遺骨を遺族の元に返すということが大切。それを盛り込んで民主党政権下で私たちが作った法案を自民党案は骨抜きにする可能性が高い」「将来遺骸が出てきても故郷に帰ることができる方法がある」と応えた。今回の交流を象徴するやりとりだった。
 そして塩川さんは、「戦没者は韓国人もそうだが、靖国に行きたい人ばかりではない。ほとんどの戦死者は家族の元に返りたいはずだ。靖国が勝手に神様にしているが、あなたのお父さんもそう。家族の元に返れるようにする法律でないといけない」と続けた。

 翌日の証言集会は早朝からの開催であるにも関わらず、前日朝日新聞が集会を大きく報じたこともあり、約40人が参加して行なわれた。博多からかけつけてくれたチャンゴグループ「ビビムタ」による活気あるサムルノリ演奏で開会。
 呼びかけ人として塩川さんは、「戦後ずっと遺骨、遺留品の収拾活動をやってきた。父を沖縄戦で亡くして貧しい生活をしてきた。朝鮮半島で大黒柱をなくして、どうやって生活を送ったのか、聞いてびっくりした。認識不足を実感した。日本の裁判所は国家間で解決済みと言っている。東南アジアを回ると「日本政府」への批判を言われるのはよいが、「日本人」と言われると辛い。諸悪の根源は「靖国」にある。加害者と被害者が同居している。」と挨拶した。
 続いて韓国からお二人の証言。いつもながら整理された立派な証言資料を韓国から持参していただき頭が下がる。李煕子さんと崔洛さんがその資料に沿って証言した。資料の力が通訳力不足を補ってくれた。

塩川さんと名刺交換 チャンゴで開会 挨拶する塩川さん
朝早くから多くの参加 証言する李煕子さん

調査報告する角南さん

崔洛さんのお父さんの記録を探して

 続けてこの間、崔洛さんのお父さんの記録を探して奔走してきた共同通信記者の角南さんが報告。「崔洛さんの父の消息を調査するために、唯一の資料である写真と崔洛さんの記憶にある灰皿を頼りにこの間調査してきた。韓国の真相究明委員会の資料に、写真に一緒に写っている高山と言う人と金川という人の記録があった。この写真が貝島だったらよいがと思って調べた。宮若市に石炭記念館があり、名簿があればわかるのではないかと思い調べると資料整理がされておらず、調べたという九州大学の先生に聞くと、そんな名簿はなかったという。明日記念館でお願いする予定。炭鉱の社史に「1942年6月10日に150人が着山、協和訓練所に入所」という記述がある。寮がどこにあったのか、建物はどうかと調べるために、作家の林えいだいさんに見せて聞くと、九州の炭鉱ではないという。壁の板が厚く、窓が二重になっている。北の方ではないかとのこと。しかし北海道で9月ならばランニングシャツでは寒い。横川輝雄さんに写真を見せると貝島近くの高齢者に見せて聞いてくれた。貝島の建物はもっと立派だったとのこと。今後なんとか名簿を調べてお父さんの足跡にたどりつきたい」と発言。
 その後上田さんから、NPO法人太平洋戦史館の岩淵さんに案内していただき昨年パプアニューギニアで行なった戦地追悼や、今年2月の東部ニューギニアでの遺体発見の模様が報告された。

「遺骨は家族の元へ。靖国神社へは行かない」

 集会最後に塩川さんは、「今私は68歳だが、30台の頃父の消息を知りたいと現在の活動を始めた。今日は父の命日。沖縄戦の末、摩文仁で行方不明になった。神社は平和を希求すべきなのに靖国神社だけは別世界。父を戦争で亡くした遺族は身震いすると思う。人間魚雷を展示して、靖国は神聖な場所だと言う。うちのNPOの若い人が先日靖国を見学してきたが、驚いて帰ってきた。戦争を反省せず正当化している。皆さんの税金が都道府県の護国神社経由で靖国神社に流れている。そういうことを情報公開させないとなかなか裁判に勝てない。遺骨収容の法律については民主党時代に私の案が論議され、内閣総務委員会で決定された。遺骨は家族の元へ、靖国神社へは行かない。という思いをこめた。本当に靖国に行っていると思っている人はそんなにいない。私の法案は戦没者の遺骨を家族に帰すこと。焼くまでは遺体だ。日弁連も指摘しているが、身元がわからない人は千鳥が淵墓苑に入れられるがそこは墓地ではない。埋葬ではなく仮安置だというが、仮安置を67年続けているような違法状態が続いている。新法で骨抜きにされないようにしないといけない」と締め括った。

塩川さんの事務所で交流

 集会後、塩川さんとゆっくり交流するために事務所を訪れた。西鉄久留米駅から吉野ケ里遺跡の方向へ向かって車で10分の距離である。
 事務所で塩川さんに父が沖縄で行方不明のままの権水清(クォン・スチョン)さんがいると言うと、「うちの父も行方不明だ。国頭に集結せよと言う指令が6月20日の夜に出た。残った人は助かり、動いた人は死んでいる。遺族には石を渡して死亡を認めろ、認めないなら年金は払えないと言った」と。そして事務所の奥に何かを取りに行き、帰ってきた塩川さんの手には「沖縄方面 霊石」という小さな箱が。「小学校のときに開けて母に怒られた。こんな小さな石ころを入れて霊石と呼んで遺族を納得させた。権水清さんに今度お会いしてどうしてほしいか聞きたい」と沖縄戦遺族の連携を希望された。
 「遺族の思いとしては、とにかく遺骨だと思う」という李煕子さんに、「そうであればまず死亡を認めさせることが先決。韓国人も同じ扱いをさせるのは我々の仕事」「戦没者の気持ちは「遺族の元に帰りたい」だ。と今後の方針が具体化されていった。

塩川さんの事務所で 小さな紙の箱「霊石」

崔洛さんのお父さんの足跡を感じるために貝島炭鉱跡へ

 翌23日、福岡県宮若市の貝島炭鉱跡にある石炭記念館を訪ねた。現地では角南さんと市民研究者の横川輝雄さんが崔洛さん、李煕子さんを出迎えてくれた。
 一通り館内を見学したあと、教室跡で横川さんから話しを伺った。崔洛さんの手元にある唯一の資料であるお父さんの写真には「協和訓練隊員昭和17(1942)年9月13日記念撮影」と書かれている。横川さんは「啓心寮の建物を協和訓練所に変えた。協和と言うのは共に生産を上げようという意味。聞こえはよいが朝鮮人を日本人化するのが目的だった。社史に「1942年6月第1回の朝鮮人労務者150名が江原道から貝島大之浦第5鉱に着山、協和訓練所に入所する」という記述がある」と言うと、崔洛さんが「5から6月に日本に渡ったと聞いている」と。「時期的にはぴったりだ」と横川さん。「ただ、ここで働いたことのある人に見てもらったら「壁の板が厚すぎる」「窓や屋根が粗末過ぎる」「瓦が使えない寒いところではないか」という意見だった。時期はぴったり合うがこの建物は貝島ではないのではという。この近くの寒いところ、山の中、水力発電所の建設現場という可能性もある。灰皿の西本組は広島の大田川の上流で発電所を造っている。そこに行ったとも考えられる。あとは名簿がないか明日あたってみましょう」と今後の調査を展望した。

石炭資料館の前で 落盤事故の絵 教室で横川さん(右端)の説明を聞く
慰霊碑で酒を供える崔洛さん 貝島炭鉱は今は池の下に 崔洛さんと横川さん

日韓遺族の連携行動で新たなアクションへ

 翌日は、名簿の情報公開を求める行動が取り組まれ、2010証言集会で来阪した姜宗豪(カン・ジョンホ)さんのお父さんの情報がみつかるなど大前進がありました。(記事別掲) 
 そしてその後、韓国遺族と塩川さんとの連携行動に向けて、具体化が進んでいます。まず6月24日にソウルで行なわれる「日韓過去清算市民運動報告大会」に塩川さんが招請され、講演を行い、韓国遺族との交流が予定されています。その後、今後の行動の具体化に向けて議論を行う予定です。
 遺族の要求である「遺骨返還」に向けた新たなアクションへのご支援、集会への参加等をよろしくお願いします。

崔洛(チェ・ナックン)さんのお父さんの記録探し 
九州での調査活動報告(上田)

 

 6月22日朝日新聞福岡版に崔洛(チェ・ナックン)さんのお父さんと同僚たちの写真が大きく載りました。私たちが、佐賀で証言集会を開くことや貝島炭鉱記念館に調査に行くこと。写真に写った同僚の貝島炭鉱での未払金や、逃亡記録などが詳細に載っていました。(同僚の記録は韓国政府に渡された法務局の未払賃金供託金資料より発見された。)
 今までの調査で、同写真に載った同僚の1人は1942年3月から8月まで貝島炭鉱に働き逃亡、そして1ヶ月後の9月17日同写真が撮られ、44年11月にもう1人が貝島炭鉱で仕事をし、その月逃亡したこと。また同写真の寮の造りから見て貝島炭鉱の寮ではなくもっと寒い(秋田以北?)ところのものであることが、九州の林えいだいさん、横川さんの調査で明らかになっていました。「福岡と寒い地域?」調査を続ける中で、頭は混乱していました。貝島炭鉱記念館での調査打ち合わせの中で横川先生から「寒い所というのは高いところではないだろうか?」という仮説が出てきました。「広島の協和寮は高いところで寒かったと」という記録を読まれたことがあるというのです。こうなると、確かにすべてがつながってきました。つまり42年9月に一緒に写真を撮った寮は貝島炭鉱からそう遠くない(1人が貝島から逃げて1ヶ月後)、寒いところにある寮ではないかということだ。ナックンさんのおじさんが「お父さんは福岡にいると聞いた」という話も全て、つじつまがあってきました。
 24日宮若市教育委員会社会教育課に貝島炭鉱の朝鮮人労務者関係の名簿などに関連した情報公開請求をしました。またその足でA社会保険事務所にナックンさんのお父さんの年金記録がないか調査に行きました。年金事務所での事後報告も含めた結論は、「お父さんの名前は無い。貝島炭鉱および家にあった灰皿の三井建設工業およびその前進の西村組は戦争中年金制度に加入していなかったので、そこからも探せなかった」との回答でした。

社会保険事務所で申請

 今回の成果ですが、調査内容での前進はありませんでしたが、福岡を探すのか北海道を探すのか、見当がつかくなっていた調査の方向が福岡方面に定まりました。供託金・郵便貯金につづき年金の調査も行方不明者の調査方法として、活用できるようになったことも大きな成果です。また、地域の研究家である横川先生および共同通信の角南さん、また塩川さんが自分のことのように動いていただき、今後の調査に大きな期待が持てるようになりました。

姜宗豪(カン・ジョンホ)さんのお父さんの記録を発見!!

 それと、皆さん! A年金事務所において、済州島から船ごと徴用された姜宗豪(カン・ジョンホ)さんのお父さんの記録が、年金事務所内にあることがほぼ確実となりました。この情報の公開に向けて韓国側支援委員会(政府組織)から日本側へ要求することも含め、あらゆる手段を通して公開を実現したいと思います。姜宗豪さん! 頑張りますからもう少し待っててくださいね。

ノー!ハプサ控訴審第1回口頭弁論は大法廷一杯の傍聴で成功!
羅敬壬さん、李熙子さんが意見陳述(ノーハプサ 山本)

 5月29日、待ちに待った控訴審第1回口頭弁論が開かれ、冒頭で原告の羅敬壬(ナ・ギョニム)さん、李熙子(イ・ヒジャ)さんが意見陳述を行いました。羅敬壬さんは「今、日本政府や靖国神社を見ると一つの家族を完全に破壊して、長い歳月苦痛を与えても、この問題を解決する意志が全く見えません。逆に被害者たちを靖国神社に合祀して、遺族たちを絶えず苦境に追いやっています」と訴えました。李熙子さんは「判決の要旨を読むたびに理解できず、あきれて息もできません。一審で裁判所はこの裁判がどこから始まったのか、全く見ないでいます。この裁判は日本帝国主義国家が朝鮮を強制的に植民地にして、そこで暮す人たちを戦場に連行して行ったから発生した、被害の回復を要求する裁判です」と一審判決を厳しく批判しました。

靖国合祀間題に関する韓日の研究者・弁護士による意見書を提出

 ―審判決は「被告靖国神社による本件合祀行為等に対して強い拒絶の意思を示していること自体については、原告らの歴史認識等を前提にすれば、理解し得ないわけではない」と、原告らの訴えを「歴史認識」の問題に矮小化して切り捨てました。控訴審に向けては韓国人にとっての靖国合祀問題を歴史的・法律的・習俗的な側面から展開した意見書が韓国の研究者法律家により作成され書証として提出されました。(当日夜には、執筆者の一人である東北アジア歴史財団研究員の南和九さんを講師に学習会も行われました。)また、意見書の主要な執筆者や法律家のほか、「靖国神社は国にお返ししたい」と公然と発言してきた元靖国神社宮司、湯澤貞などを証人として申講しました。東京高等裁判所が歴史の真実に向き合い、韓国人靖回合祀問題の本質に迫る審理を行うことを期待したいと思います。

共感広げた証言ツアー

 裁判後、李熙子さんは大阪、山口で証言ツアーを行い、これまで靖国問題を共に関ってきた多くの仲間の皆さんと交流しました。提訴準備が始まった第2次訴訟にも大きな関心が寄せられました。日韓市民の「ノー!ハプサ(NO!合祀)」の声をつなぎながら、よリ一層支援の輪を広げたいと思います。次回は7月24日です。引き続くご支援をお願いします。

李熙子さんと羅敬壬さん 報告集会で 李熙子さんと古川佳子さん(大阪で)

ノー!ハプサ控訴審 第2回口頭弁論
2013年7月24日(水)  午後4時〜  東京高裁101号法廷
※ 裁判後、弁護土会館508号室で総括集会を開催します。

2013平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動にご参加を!(御園生)

 8月10日(土)第8回目の“平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動”が開催される。今年は、安倍政権の誕生とその反動的政策により、これまでになく重要なものとなっている。今年のテーマは「国防軍の名の下 ふたたび『英霊』をつくるのか」である。

安倍のウソ−ヤスクニ、アーリントン

 4月安倍内閣は、靖国神社例大祭に麻生副首相を送ったのを初めとした3名の閣僚が参拝し、安倍首相は「真榊」を奉納した。また、過去最大の自民党を初めとした国会議員が「皆で渡れば怖くない」とばかりにぞろぞろと参拝した。そして、これに抗議する中国、韓国政府に対して、「わが閣僚はどんな脅かしにも屈しない」(安倍首相)と啖呵を切ったのである。そして、「世界中で祖国のために命を投げ出した人に政府が敬することを禁じる国はない」といい、米国アーリントン墓地の例なども出している。しかし、ここで根本的な点について嘘をついている。アーリントン墓地は国立墓地であり宗教施設でないこと、また埋葬の決定権は遺族にあるということである。靖国神社は一宗教施設であり(そうでないのなら安倍はそういえばいい)、合祀の決定権は遺族に全くないのである。裁判まで起こしても合祀を取り消さないのである。
 しかし、首相の「侵略」否定発言とともに首相の態度は、米国で大問題となっている。米議会調査局は、5月1日公式に「(安倍首相の歴史認識について)侵略の歴史を否定する修正主義者の見方を持っている」、また、「安倍内閣の一部の閣僚は極端に国家主義的な見方を持っており、閣僚の選択は安倍首相の(歴史問題での)考えを反映している」との報告書を公表した。また、韓国国会は、「日本閣僚らの靖国神社参拝および侵略戦争の否認妄言の糾弾決議」を採択し、そのなかでは韓国人合祀の取消しをも求めている。安倍の政策は東アジアの緊張を極端に激化させる政策なのだ。

自民党の憲法改正案とヘイトスピーチ

 発表されている自民党の憲法改正草案は、もはや多くを語る必要はないであろう。前文は戦争への反省を日本の誇りと「国民統合の天皇戴く国家」として位置づけ、第一章では、天皇を「天皇は、日本国の元首」と明記し、さらに、「国旗は日章旗とし、国家は君が代とする」と憲法に書こうというのである。9条、96条の件はここでは触れない。
 政教分離を規定した20条の改悪も企図されている。現行の「国及びその機関は、宗教施設その他いかなる宗教活動もしてはならない」に、「ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。」を加えたのである。明らかに、靖国神社参拝を合憲化しようとするものであることは明らかである。その根底にあるのは、アジア太平洋戦争は「侵略戦争」ではなく、アジア解放「大東亜共栄圏」建設のための戦いであり、東京裁判は「勝者による敗者」を裁く裁判であり到底認めることはできない、排外主義を内包した日本民族は優越であるという、歴史観である。
 キャンドル行動には、絶えず「在特会」ほか右翼が押し寄せ嫌がらせをしてきている。
今、東京・新大久保、大阪・鶴橋で「朝鮮人殺せ!」「ガス室に叩き込め」等をがなり立てる差別・排外主義デモが行われている。全く同じである。安倍政権の発足ゆえに過激化しているのである。日本政府は、ヘイトスピート、ヘイトクライムを認めない、という厳しい姿勢をとっていない。国連で「人権大国」日本を発言し失笑をかった。「慰安婦」問題やこんな問題を放置して何が人権重視か。

今年こそ、キャンドル行動に参加を

 靖国神社は、今年の「みたままつり」(7/13〜16)の宣伝にこれまでにない力を入れている。機に乗じようというのである。チラシのとおり、今年のキャンドル行動は非常に重要です。安倍政権の誕生、参議院選挙の結果、ヘイトクライム、靖国神社の動向等々、この一歩を許すか否かが重要な状況になってきています。
 安倍首相が、8月15日に靖国を参拝するかどうかだけでなく、憲法改悪・政教分離条項の改悪も許さず、さらに、韓国人の合祀の取消しをさせるためにも少しでも参加ください。集会だけでも、右翼に対峙するデモだけでもOKです。是非ご参加を!         

キャンドル学習会 昨年のキャンドル行動

平和の灯を!ヤスクニの闇へ2013キャンドル行動集会
「国防軍の名の下ふたたび英霊をつくるのか」
8月10日(土)13時30分〜(19時〜キャンドルデモ)
在日本韓国YMCAスペースYホールほか(JR水道橋駅徒歩6分、御茶ノ水駅徒歩9分、神保町駅徒歩7分)

読書案内

  『在日外国人 第三版 −法の壁、心の溝−  

 
   

       田中宏著  岩波新書  820円+税

 1991年初版で、今年(2013.5) 再再版されたロングセラーの最新版である。まえがきで 「2012年2月9日、新大久保のコリアンタウンにはコリアン排撃デモが出現、2月20日、(安部内閣が高校無償化から)朝鮮人学校除外の"断"が下された」 「いまや日本は、外国人排除するのに頭を使うのでなく、外国人と"ともに生きる"社会を築くために、知恵を絞り、発想を転換することが求められているのではなかろうか」と、著者は問うている。この本は、在日朝鮮人からニューカマーまで、ほとんどの在日外国人を対象としている。在日外国人たちの就職、教育、年金、参政権、戦後補償問題などについて、「国籍」を持ち出すことで差別を正当化してきた行政、法の壁。無権利状態から多くの権利を獲得してきた在日外国人、その支援者たちの闘いなど。著書では、そうした在日外国人問題の要点を丁寧に紹介し、考察している。本書の副題は、−法の壁、心の溝−である。現在、朝鮮高等学校の無償化除外問題で日本政府は、国家間の政治的摩擦を、朝鮮学校の生徒たちの教育を受ける権利を盾にして、外交・政治の手段に利用している。日本社会の多くの人が、このことを「おかしい」と思わないとしたら、そこに「心の溝」があるのでは。"ともに生きる"ことが問われている。(大釜)
 

GUNGUNインフォメーション

7月24日(水) ノー!ハプサ(合祀)控訴審第2回口頭弁論 
            16時〜 東京高裁101号法廷 
7月24日(水) 2013年日韓過去清算市民運動報告大会
            9時〜 韓国ソウル・キョンヒ大学校青雲館309号室
7月26日(金) 第26回 政教分離訴訟 全国交流集会
            14時〜 愛媛県美術館 講堂(松山市堀之内) 参加無料
            講演:田中 伸尚(のぶまさ) さん
7月28日(日) 2013ZENKO戦後補償分野別討議 
            9時30分〜 港区立三田いきいきプラザ集会室A(地下鉄三田線・浅草線 三田駅徒歩1分)
            「7月差戻審判決をステップに強制労働立法化を!」判決報告 張完翼弁護士
7月30日(火) 三菱重工差戻審判決 韓国釜山高等法院 
8月10日(土) 平和の灯を!ヤスクニの闇へ 2013キャンドル行動 「国防軍の名の下ふたたび英霊をつくるのか」
            13時〜18時 在日本韓国YMCA(JR「水道橋」「御茶ノ水」、地下鉄「神保町」)
            シンポジウム/高橋哲哉・金東椿・内海愛子・志葉玲
            遺族証言/韓国・沖縄・東アジア地域から
            コンサート/ソン・ビョンフィ、ムン・ジンオ他
            19時〜 キャンドルデモ