在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.65 (2011.10.15発行)


GUNGUNツアーで
金景錫さんのお墓参り
(2011年9月30日)

「日本軍慰安婦」「企業」で新たな局面
被害者への補償は待ったなし!
 
 8月30日、韓国憲法裁判所は、韓国政府が日本軍「慰安婦」被害者の具体的解決努力をしないのは被害者の基本権を侵害し、違憲であると決定しました。「日韓請求権協定」第2条第1項(「完全かつ最終的に」条項)の日韓両国間の解釈上の紛争がありながら、第3条が定めた手続き(外交で解決できない場合は仲裁委員会を作る)をとらない韓国政府の不作為が、違憲であると宣告したのです。これを受け、韓国は日本に協議を提案しましたが、玄葉光一郎外相は事実上拒否、「協定で解決済み」と従来どおりの姿勢を取っています。
 一方、韓国政府は、韓国人労働者を徴用しながら補償を行っていない日本企業を、政府機関、自治体、教育庁など263公共機関の入札から排除することを決定、9月16日には韓国国会議員が、入札制限を受ける企業のうち存続している136の企業名を公表しました。
 生存者は高齢で、被害者への補償は「待ったなし」です。一日も早く「協定」が定める「仲裁委員会」を設けさせるなど、日本政府への圧力を加えましょう!

追悼 李炳柱(イ・ビョンジュ)さん86歳、金幸珍(キム・ヘンジン)さん89歳で逝去。(古川)

李炳柱(イ・ビョンジュ)さん

李炳柱(イ・ビョンジュ)さんの祭壇

 9月13日、韓国シベリア朔風会の李炳柱(イ・ビョンジュ)前会長が逝去されました。昨年8月にお見舞いを持って訪韓した際はお会いすることができませんでしたが、その後「李煕子さんから受け取った。ありがとう」と電話があったのが今年1月のこと。「元気になるから」と話しておられました。
 2001年草刈ボランティアツアーの帰りにソウルで初対面。腹から訴えられる大きな声と笑い声、そして優しい目が印象的でした。2002年にGUNGUN二次提訴に合流。2005年、裁判の本人尋問の際、大阪での集会の後、二次会でロシア民謡を大熱唱。ソウルでも行きつけのお店で冷麺、カルビを食べた後は必ずノレバンへ。韓国人シベリア抑留生存者として貴重な証言を残し、朔風会運動を牽引。日本のシベリア抑留被害者団体、全抑協との交流も広がりました。昨年「特別措置法」が成立するも「国籍条項」の壁が立ちはだかりました。李炳柱さんの生存中に報いる結果を出すことができず、申し訳ない気持ちで一杯です。

金幸珍(キム・ヘンジン)さん

李炳柱さんと金幸珍さんと

 そんな気持ちの私たちに10月11日届いたのが、金幸珍(キム・ヘンジン)さんの訃報でした。金幸珍さんは、激戦地「ブーゲンビル」の高射砲部隊に配属され、飢餓地獄を生き抜きました。李炳柱さんと同じく日本語が堪能で、いつも私たちの労を労ってくれました。2005年の本人尋問で、李炳柱さん、李煕子さんと来阪、ホテルのロビー(飲食禁止)で大宴会をしたのが忘れられません。韓国で「支援法」が通るも、少なすぎる生存者への補償を改善させたいと訴え続けておられました。
 お二人の無念の思いを私たちは心に刻み、今後の運動にぶつけていきたいと思います。李炳柱さん、金幸珍さん、ありがとうございました。あの世から私たちの運動を見守っていてください。
 

韓国人シベリア抑留者に補償と謝罪を!
千鳥が淵での追悼の集いに朔風会初参加!(御園生)

 
 

千鳥ケ淵で

 8月23日、国立千鳥ケ淵戦没者墓苑において、「シベリア抑留犠牲者追悼の集い」が開催された。この集いは、1945年8月23日のスターリン指令でシベリア抑留が実施されたことに合わせ、2003年からはじめられもの。韓国シベリア朔風会から李在燮(イ・ジェソップ)会長と元鳳載(ウォン・ボンジェ)さんが参加された。韓国からは初めての参加。
 集いは、シベリア抑留者、遺族や国会議員、関係者ら多くの参加で行われた。黙祷から始まり、主催者代表挨拶、厚労省副大臣、国会議員の挨拶が行われ、さらに、遺族、元抑留者、韓国シベリア朔風会会長・李在燮氏から追悼の言葉が述べられた。李在燮会長は、「60余年前シベリア凍土の地でこの世を去った兵士の追悼の集いに参加して、万感の思いが交錯して、シベリアの過酷な思いが走馬灯のように流れ」、「収容所での最初の死亡者が発生しましたその兵士の死顔が、一生の間脳裏を離れないで、何時も『シベリア』という言葉が出れば、複雑心情になります」と当時の言い尽くせぬ過酷な状況を思い起こし、長年にわたる全抑協の取組みに敬意を表するとともに、最後に、特別措置法で除外された外国籍の補償問題と遺骨収集問題の速やかな解決を訴えるものであった。最後に、全員の県下で集いは終了した。

 

李在燮さん(左)たち

 

 集い終了後、場所を議員会館に移し、「韓国シベリア朔風会代表を囲む懇談会」が開催された。来日されたお二人から話された内容は、短いものであったが、胸に突き刺さる内容のものであった。「現在会員は10名位。外国籍除外した日本政府に強く抗議する。(外国籍への拡大を)どう実現していくかわからない」(李在燮会長)、「日本の支援者の皆さんには感謝するが、日本に期待しません。私たちが死ぬまでに補償してくれるわけがありません。朔風会の皆と一緒に生活していく」(元鳳載さん)。
 同席した今野東議員(民主)からは「2年前韓国を訪問して約束した。外国籍の方々への給付の道を切りひらかねば」、また、塩川議員(共産)からも「改めて外国籍問題の解決を決意」と話された。しかし、どう実現していくかの見通しは語られない。BC級戦犯問題の立法化も目途が立たない。旧植民地出身者は除外、植民地支配を反省し戦後を出発したはずの日本がこれでよいのであろうか。
 8月30日韓国の憲法裁判所が、「慰安婦」問題について日本と交渉しないのは韓国憲法に違反しているという画期的な判断を下した。日本政府は、このことを重く受け止め、韓国人をはじめとする植民地支配・戦争犠牲者への謝罪と補償をすべである。
 

9月29日〜10月2日 GUNGUNツアー
韓日合同慰霊祭、金景錫さんの墓参りに行ってきました
(大釜)

 GUNGUN裁判の発起人であった 金景錫(キム・ギョンソク)さんが私財を投じて建立した「強制連行被害者納骨堂」とそのそばに建てられた金景錫さんのお墓が、昨年まであった春川の墓地から、今年の4月にそれぞれ移転しました。「強制連行被害者納骨堂」の遺骨は4月11日、天安・望郷の丘に、金景錫さんのお墓も春川市東山西の市立墓地公園(安息公園)に移転しました。そのため、昨年まで10年間行ってきた草刈りボランティアツアーを、今年は合同慰霊式参加と金景錫さんのお墓参りという形で実施しました。

漢陽大学で「あんにょん・サヨナラ」上映会

 一日目は、ソウル市内漢陽大学(ハニャンデ)での、セミナーに参加。GUNGUNの心強い通訳で、自称「歩くGUNGUN・ソウル事務局」の姜庚旻(カン・キョンミン)君が「あんにょん・サヨナラ」上映会と交流会を企画し、学生に呼びかけてくれました。セミナー開始が夜の7:30で、場所も大学の教室というので、はたして観客が集まるのかと心配しましたが、20名近い学生が集まり、映画が始まるとたいへん真剣に見ていて、映画の後、主演の古川氏の解説にも聞き入っていました。質疑・感想を募ると、「なぜ、ヤスクニ裁判は負けるのか?」「教科書問題はどうなっているか?」と次から次に学生が発言。10時になっても交流は終わらず、場所を大学近くの居酒屋に替え、交流第二部に。セミナー参加学生は全員参加。話し合いのテーマも戦後補償だけでなく、政治、社会、女性、教育など、交流・討論会は夜中まで続きました。時間の過ぎるのを忘れるくらいGUNGUNのメンバーも討議に熱中し、また学生諸君からたっぷり元気をもらいました。    

望郷の丘で合同慰霊祭に参加

政府主催慰霊祭

春川の慰霊祭

慰霊祭で挨拶

慰霊祭で

 二日目、ソウル午前8時半バスで出発、 南へ83.6kmにある天安市へ。10時に国立公園墓地「望郷の丘」に到着。望郷の丘とは、海外で死亡した韓国人のための国立墓地として1976年に開設され、イヒジャさんの不明のお父さんの無銘の墓もここにあります。10.1は望郷の丘に埋葬されているすべての人々ための合同慰霊祭の日でした。GUNGUNの関係者は、まずこの合同慰霊祭に参列しました。 全体の合同慰霊祭は、墓地中央の慰霊塔前で、韓国政府、忠清南道、天安市、民団代表、墓参者など300名を超える参加により、荘厳に、しめやかに営まれました。その後、春川の納骨堂から移されたことを記された慰霊碑に移動し、個別に春川の「強制連行被害者納骨堂」に祀られていた人々の慰霊祭が行われました。その場所は望郷の丘の一番上にある見晴らしの良い場にあり、隣にはサハリン犠牲者同胞の慰霊碑、周囲には、日本各地で犠牲になった韓国・朝鮮人の無縁仏の碑がありました。春川の慰霊祭は、韓省宇(ハン・ソンウ)副会長の司会で進められ、江原道庁からの挨拶、古川GUNGUN代表から「金景錫氏の遺志を受け継ぎ、今後も韓日を繋ぐ気持ちは変わらない」など追慕の言葉に続き、日本から不二越訴訟団の中川さん、ソウル遺族会の李煕子さんなど参加者による献花が行われました。最後に、洪英淑(ホン・ヨンスク)会長が、「納骨堂は移転したが、慰霊は続けていきます。」 という言葉で締めくくられました。慰霊祭の後、赤とんぼが飛び交う秋空の下、慰霊碑の前で、韓日約50名の参加者で、昼食を共にして交流を深めました。

金景錫(キム・ギョンスク)さんの墓参り
 
 天安をバスで出発して、4時間後、春川市の郊外、東山西君子里にある春川市立公園墓地(安息公園に改名予定)に到着しました。車で20分ほど離れた市立墓地が春川市の都市計画のため、金景錫さんのお墓もここに移転しました。墓地公園は広大な敷地を持ち、出来たばかりで新しく、遠くから見るとよく手入れされた段々畑のようでした。秋夕の直後だったためか、どの墓にも原色の真っ赤や黄色などの菊の花(造花)が整然と並び、たいへん美しい眺めでした。その墓地の一番頂上に近い所に、金景錫さんが埋葬されているお墓がありました。その墓に遺族会の方とGUNGUNの一行で、白い菊の花束(生花)を供え、韓国式に清酒を一人一人墓に捧げました。「ギョンソクさん、日本から来ましたよ」と呼べば、「良く来たぁ」と野太い声で答えてくれそうな気持ちになりました。ご冥福をお祈りします。私たちも、ギョンソクさんの残した仕事を少しでも受け継いでいきます。

金景錫さんのお墓


春川市内を遺族会の方の案内でフィールドワーク

 三日目は、春川市内を遺族会の方の案内でフィールドワークに出かけました。春川博物館を見学した後、昨年、話に聞いて探しかけていた日本が朝鮮人支配のために建設した江原神社跡を調べに行きました。世宗ホテルの正門から下って江原道庁舎に続く坂が、江原神社階段だったらしいと、 近辺の人も言われていました。ヤスクニに繋がる侵略神社の実態について機会あれば、やるべき課題だと思います。

春川市内に韓日合同慰霊祭の横断幕

世宗ホテルの神社跡

道庁の階段跡

 その後、これまで10年間続けてきた草刈りツアーが今回区切りになり、これまでお世話になったお礼にと、春川遺族会の方々と会食会を催しました。一人ひとりがこれまでの感謝の気持ちを伝えたり、金景錫さんとの思い出を、時には涙声になりながら話しました。洪英淑会長からは、金景錫さんが亡くなった時もそれまでと同じように「健康復帰する」と思っていて、亡くなった後のことを全然話し合っていなかったこと、会長を継いだ後、崔ハルモニ(不二越の原告)たちが寄り添い、アドバイスをしてくれたおかげで、これまで運営することができたことなど、これまで知らなかった話を伺うことができました。本当に心温まる交流会になりました。GUNGUNも最高裁判決を残しており、今後も熱い連帯関係を継続、発展させていきたいと思いました。春川の皆さんありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

 

洪英淑会長と握手

 

漢陽大学で「あんにょん、サヨナラ」セミナーを開催 姜庚旻(カン・キョンミン)

 
 

漢陽大学でセミナー

 
 

セミナー参加者と交流

 関西グングンの訪韓に合わせ、9月29日ソウルの漢陽大学で「あんにょん、サヨナラ」セミナーを開催しました。私が参加する「漢陽大学法学専門大学院(ロースクール)公益人権法研究会」の主催で行われた今回のセミナーでは、関西グングンのメンバー5人と研究会の学生15人が一緒に映画を見た後、自由に話し合うことが出来ました。
 古川さんを含め、グングンの皆さんは韓国の若い世代と一緒に映画を見るのは初めてだったそうで、学生たちの反応に興味を見せましたが、やはり日本の若い世代が受けるほどの感動と衝撃を受けたと思います。映画を見た後一番印象的なシーンを聞いてみたら「古川佳子さんが母親の日記を読むシーン」だったと答える学生が多かったです。「日本人の中にも戦争の被害者はいる、戦争のことで今にも心を痛めている人がいる」という当然な事実を知る機会がなかったからだと思います。後は映画の後半に出てくる、 李熙子さんやグングンと一緒に戦う日本の若者たちのがんばる姿がとても印象的だったという答えもありました。「自分が恥ずかしい、そしてありがたい」そういう気持ちも話していました。
 映画の後の質疑では、古川さんが映画を企画してきっかけを聞く一般的な質問から、日本の学校で実際に行われる歴史教育のこと、訴訟、特に弁護士への受任にかかる費用のことをと聞く弁護士志望者らしい(?)質問まで幅広い話が出来ました。古川さんを含め、どんな質問にも率直に答えてくださったグングンの皆さんに感謝します。
 続いての飲み会では学生たちが、韓国がたくさんの戦犯を出したとも言えるベトナム戦争のことをどう見るか激論したり、普段より熱く語り合う姿も見せました。やはりグングンの皆さんや映画との出会いがいい刺激になったのだろうと思います。またグングンの皆さんに感謝と尊敬の気持ちを持つ学生が何人もいました。まだ若く、いずれは法律家になる彼らにとって、今回のセミナーが人生をより良い方向に向かって動かせる貴重なきっかけになったと確信します。そしてそこからまた新しい繋がりが日韓の間に出来ることを望みます。貴重な時間をかけ、喜んでお越しくださったグングンのみなさん、ありがとうございました!
 

大阪で韓国遺族と岩淵さんの証言集会を開催します

 昨年に引き続き韓国人遺族2名を招待して証言集会を行います。「父・兄の記録を!遺骨を!」という声を受け止め、郵便貯金記録から生きた足跡を調査、報告します。また今年は「ニューギニアに放置された遺骸と真相を隠す靖国」と題して、岩手から「太平洋戦史館」の 岩淵さんを招きます。

「ゲゲゲの遺骸放置と靖国合祀 ニューギニア・韓国からの証言」
11月13日(日)14時(開場13時半)
大阪ドーンセンター5階セミナー室2(地下鉄谷町線・京阪「天満橋」駅徒歩5分)
参加費 一般1000円 無職の方700円 学生500円

韓国からの訴え
「兄の死んだ状況を、遺骨の状況を知りたい」 南英珠(ナム・ヨンジュ)さん
「父はどこで死んだのか?郵便貯金記録があるはず」 崔洛(チェ・ナックン)さん

南英珠(ナム・ヨンジュ)さん 崔洛(チェ・ナックン)さん

特別報告
「ニューギニアに放置された遺骸と実態を隠すヤスクニの闇」
 岩淵宣輝(いわぶち のぶてる)さん(NPO法人「太平洋戦史館」会長理事)
 

2011平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動報告(木村)

 8月13日「3.11後の東アジア−原発とヤスクニが強いる国家と犠牲」をテーマにしたシンポジウム会場には韓国から李熙子さんをはじめ証言者として南英珠さんやノーハプサ原告を含め10数名の姿があった。台湾からもパネリスト潘朝成氏等が参加。今年はお盆の真っ只中という日程にも関わらず、会場を埋める400名が参加。シンポジウムでは、高橋哲哉氏(東京大学教授) 石原昌家氏(沖縄国際大学名誉教授) 台湾から潘朝成氏(慈済大学講師)、韓国から韓洪九氏(聖公会大学教授) が報告。今年は3.11を受けて、東アジアから靖国問題を見る新たな視点で開かれた。コンサートの後、韓国・台湾から来られた方々を先頭にキャンドル行動が行われた。「在特会」が街宣車を出し妨害してきたが、“靖国ノー”“原発ノー”の声を街に響かせた。以下発言要旨。

集会会場 キャンドル行動


 高橋哲哉氏 
ノー!ハプサ判決=朝鮮半島出身者の靖国神社合祀問題は、植民地主義の克服という形でしか解決できないものを日本国憲法下の信教の自由の問題にしてしまう呆れた判決。原発は、誰かを犠牲にするシステム。犠牲は通常隠されているか、“尊い犠牲”として美化され正当化される。日本国家の植民地主義的性格は根深い。戦後植民地主義は、原発という犠牲のシステムを国策とする形で、沖縄を犠牲にする日米安保体制というシステムとして生き残っている。戦争の責任をあいまいにしてきたことが、今また同じシステムにはまり込んでいる原因。

 石原昌家氏
 沖縄は福島から一番遠く安全と見られるが、日本復帰前に貯蔵されてきた“核爆弾”の存否は現在不明。爆撃機の度重なる墜落(爆薬貯蔵庫近く)で原爆の大事故が想定される。原子力潜水艦の寄港は300回を数え、放射能漏れ事故を起こしながらも継続されている。基地押しつけと同じ構造。“大の虫を生かすために小の虫を殺す”国家の体質によって危機に晒されている。お金で住民が絡めとられる構造も同じ。靖国合祀が2歳の子まで軍隊所属とし軍神として祀る代償に遺族年金が支払われるというのと重なる。

 潘朝成氏
17世紀以降日本による台湾の先住民族支配で、生活の場である山地が切り拓かれ抵抗するものは殺戮された。45年以降は台湾政府が植民政策を受け継ぎ、先住民族の資源略奪は続き、経済的差別、文化的偏見の差別を受けて来た。タオ族の住むランヨ島で熱帯雨林が全面伐採され、核廃棄物貯蔵庫が作られ、82年から稼働、10万缶以上の廃棄物の内3万缶以上が腐食し放射能が漏れた。タオ族の団結により運搬船が引き揚げたのは96年。今も原発建設で、先住民族の生活の場が廃棄物貯蔵所として狙われている。

 韓洪九氏
 大統領自身が韓国の“原発マフィア”の中心人物であり“原発ルネッサンス”という原発拡大政策を固守。日本の福島原発事故を人類の災いでなく、むしろ韓国型原発を売り込むチャンスとしか見ていない。しかし、福島以降雰囲気が変わり、江原道知事選では原発誘致の当初の公約を撤回するもハンナラ党が野党に敗北。東アジア共同体の構成員が自国の民主化を成し遂げる以外に東アジアの平和はない。

 高橋氏
 核が犠牲を不可避とする以上、誰を犠牲にするのか問うべき。犠牲なき東アジアを創る努力をすべき。

 南英珠(ナム・ヨンジュ)さん(韓国人遺族)
 (兄の遺影を胸に)7月21日判決は今でも理解できないし、裁判所の判決だと信じられない。裁判所は人間に対する基本的礼儀を持っていない。これからも靖国神社と日本司法府のとんでもない判決に対応していきます。

 古川佳子さん(合祀イヤです訴訟)
 靖国は餓死などの悲惨な死を悼むどころか“殉国の英霊”として褒め称える。敗戦後、天皇も靖国も戦争責任を問われず生き残った。日本は戦後の出発点で道を大きく誤った。個が大事か公が大事か、今度の原発問題でも真剣に考えるべきで、靖国問題も同じ。
 

『東アジア歴史・人権平和宣言』発表大会
    植民地主義克服のためのダーバン宣言から10年−報告(伊藤)

 植民地支配は人道に対する罪

 10月2日、「植民地支配は人道に対する罪!」と会場の正面に大きく書かれているのを見て、私は一瞬たじろいだ。東アジアを蹂躙し、今なおその傷跡で苦しんでいる人たちと一緒に「人道に対する罪」と声を発することが出来るのか。連帯のアピールで崔善愛さんは「植民地支配の思想そのものが罪なのだ」と言ったけれど。昨年「韓国強制併合100年」での取り組みの中から「植民地主義の清算と平和実現のための日韓市民共同宣言」が採択され、それはまさに2001年の「ダーバン宣言」を市民レベルで実現していこうというものであった。そしてその具体化の一歩として、この発表大会が開催されたのだが、会場の明治大学の大教室は空いた座席を捜すのが難しいほどであり、また熱気に包まれていた。
 まず、前田朗さんからこの運動の主旨と経過が報告された。前文だけでも8ページ、更に200項目に渡るこの宣言は、発表のこの日から、一つ一つが検証され、吟味され、そして行動されるものとして、拡がるだけでなく私たちの内部に蓄積されていくものとしてあるのだ。「植民地支配は人道に対する罪」という言葉にたじろいだ、その私を支える思想性と行動への指標としてこの宣言があるのだ、と確信した。
 
 脱植民地主義は近代以降の世界観・人間観の克服
 
 シンポジウムのテーマは「植民地主義を超えて〜平和連帯の東アジアをつくるため」だ。最近いろいろな所で「東アジア」という言葉が発せられる。しかし、この宣言での規定は明快だ。すなわち「近代日本天皇制国家=大日本帝国の植民地・占領地・交戦地、つまり日本の戦争と植民地支配にかかわる歴史的概念としての東アジア」だ。パネラーの阿部浩己さんからは「植民地主義を問い直す中から国際法を帝国主義の潮流から民衆のそれへと転換させていく」という提起がなされ、金東椿さんからは、「過去事清算と日本に関する課題」という題で、アメリカの世界戦略から見る東アジアの歴史と、韓国の「過去清算」が日本だけでなくアジアの文脈の中に位置づけることの重要性を、岡真理さんからは、「日本とイスラエル 植民地主義の歴史的責任をめぐる否認の問題」という題で、「ナクバ(大いなる破局)―パレスチナ人に対する民族浄化と祖国喪失」をイスラエルとパレスチナ人双方向からの意味を明らかにすることにより日本の植民地主義を考える、という刺激的な提起があった。そしてこの宣言作成に深くかかわってきた徐勝さんからは、「東アジアにおける脱植民地主義」との題で、現在の東アジアにおける最大の歴史的課題が、近代以降の世界観・人間観の克服であり、かつ西欧近代の社会システムと国家暴力の克服であること、そしてそれらに対する具体的提案も含めての提起があった。

 カクマクシャカのラップ、井上ともやすさんの歌や、映像による済州島の海軍基地問題の説明など盛りだくさんのプログラムだった。李玉善ハルモニの怒りと悲しみの発言に胸が痛くなったが、中原道子さんから、8月30日韓国憲法裁判所の裁定を受けた今後の韓日両政府の動き、女性と戦争博物館の完成へ向けての取り組みなどが話され、まさに状況は動いていると感じた。なにより、沖縄の人権回復NGOで活動している我如古朋美さん、高校教科書無償化除外差別を闘ってきた高英載さんの発言、詩の朗読をした金華英さんたち若い人が素敵で輝いていたことに、これからの希望を感じた。
 

 読書案内

  東アジア平和のための韓日共同企画・カラー版
 『図版で見る侵略神社・靖国』
  

 
   

                     辻子 実,金丞垠(キム・スンウン) 編著
                     韓国・民族問題研究所発行 1,500円+送料

 2009年11月ソウルの国会図書館で、「東アジア平和のための韓日共同企画展−侵略神社・ヤスクニ」が10日間開催され反響を呼んだ。その際発行された図録『侵略神社・ヤスクニ』の日本語版が完成。本書は植民地支配を受けた側の視点で侵略神社・ヤスクニの実相を暴いている。日本は満州、台湾など侵略の先々に神社を建てたが、朝鮮で最も神社制度を徹底した。ソウル南山の朝鮮神宮を中枢に、至る所に建てた神社への参拝を強制し、皇国臣民として財産も命も捧げるよう強要した。本書は200有余の写真や絵図を駆使してその実相をビジュアルに暴いている。今回グングンツアーで春川を訪れた際、今は道庁とホテルとなっている場所に江原神社の階段跡を認めることができた。他の土地にも痕跡が残っているに違いない。建物は打ち壊されていても、歴史の真実を埋めてはいけない。(塚本)

申し込み先:ノーハプサ事務局FAX:03-5241-9906 メール:nohapsa@yahoo.co.jp
 

GUNGUNインフォメーション

10月23日(日) 東京団結まつり 10時 亀井戸中央公園A地区
10月24日(月) いまこそ新日鉄は過去清算の決断を!10・24新日鉄行動
             8時30分〜本社前宣伝行動 10時 申入れ行動
             東京都千代田区丸の内二丁目6番1号(丸の内パークビルディング)
10月25日(火) 在特会らによる朝鮮学校襲撃事件裁判・第8回口頭弁論(民事裁判)
             (第9回11月29日(火))集合時間12時30分(13時30分開廷)
             京都地方裁判所玄関前広場東側集合(地下鉄丸太町駅1・3・5番出口から徒歩5分)
11月 6日(日) 大阪団結まつり 11時 扇町公園
11月13日(日) ゲゲゲの遺骸放置と靖国合祀 ニューギニア・韓国からの証言
             14時 ドーンセンター5階セミナー室2(地下鉄谷町線・京阪「天満橋」駅徒歩5分)
11月27日(日) 女性に対する暴力撤廃国際デー記念シンポジウム in 京都
             14時 ラボール京都(京都労働者総合会館)大ホール
             パネリスト:宋神道(日本軍「慰安婦」被害者)、川田文子(ジャーナリスト)ほか
11月29日(火) 日韓会談文書公開訴訟(第3次) 10時30分東京地裁522号法廷
12月14日(水) 日本軍「慰安婦」被害者に正義を!日本全国、世界各地で同時に行う『韓国水曜デモ1000回アクション』
            外務省を「人間の鎖」で包囲しよう!
             11時30分集合:日比谷公園(霞門)12時〜13時外務省包囲