在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.59 (2010.7.17発行)

沖縄「恨之碑」で権水清さんと李熙子さん
(2010年6月19日)

シベリア特措法成立! 力を合わせて植民地支配の清算へ

 6月16日、「戦後強制抑留者特別措置法(シベリア特措法)」が成立しました。「酷寒の地で過酷な強制労働に従事させられた労苦」を慰謝する特別給付だけでなく、調査や遺骨収集、次世代への継承などが盛り込まれ、「パンドラの箱が開かれた」との評価が多い一方で、今回も日本国籍以外の抑留被害者が排除されました。全国抑留者補償協議会は「日本人以上に苦労された韓国・朝鮮、中国・台湾に暮らす元抑留者らにも、相応の措置が講じられるべき」と訴え、GUNGUN原告の韓国朔風会も「私たちが日本およびソ連から受けた被害の実態を調査し、不正義と不条理をただして」と要望しています。
仙谷由人官房長官は7月7日記者会見で、韓国との戦後処理について「一つずつ、あるいは全体的にもこの問題を改めてどこかで決着を付けていくというか、日本のポジションを明らかにする必要があると思っている」と述べ、従来政府の対応は不十分との認識を示しました。韓国併合100年の今こそ、誠意ある個人補償に踏み出す時です。
 GUNGUN裁判はようやく訴訟救助手続きを経て、上告申立理由書、上告理由書を提出します。今後の展開にご注目ください。
 

グングン裁判訴訟救助決定!
7月いっぱいに上告受理申立書・上告理由書を提出予定!

 グングン裁判は、ようやく訴訟救助が決定され、6月14日裁判所から「上告が提起された通知書」が届きました。翌日から50日以内に、判例違反を主にした上告申立理由書、憲法違反についての上告理由書を提出します。現在、グングン裁判弁護団では精力的に作業を進め、遅くとも7月中には提出する予定です。最高裁の判断がどれくらいかかかるかわかりませんが、司法を動かすのも立法を動かすのも「戦後補償実現」「靖国合祀取消し」を求める日韓世論の盛り上がり次第です。韓国強制併合100年のこの夏、連続した大きな取組みが進められます。この成功こそが、司法・立法を動かす原動力です。

熱い、熱い夏! 戦後補償実現のため、連続行動に参加を!

李煕子さんが参加する7・29ノー!ハプサ口頭弁論、8・1〜2平和と民主主義をめざす全交

 まず、7月29日11時から東京地裁でノー!ハプサ(合祀)の口頭弁論が行われます。今回は、証拠調べ・証人尋問を前にした最後の弁論の予定。原告・李煕子さんも来日します。続いて、30-31日政教分離全国集会(京都)で靖国訴訟を中心に討議が行われ、7・31-8・1平和と民主主義をめざす全国交歓会(大阪)にも、李煕子さんが参加し、「『強制併合100年』に何をめざすのか」が討議されます。

8・14はヤスクニ・キャンドル行動

 今年の「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動」のテーマは、「ヤスクニと植民地支配」。李煕子さんの父らを死に追いやり、合祀する靖国神社は、今なお植民地支配を正当化し、侵略戦争を美化しています。植民地支配の清算はいまや国際的な課題であり、それには靖国合祀の取消しが不可欠です。韓国、台湾の植民地支配、沖縄における「住民敵視政策+援護法=靖国合祀」が問われています。韓国、台湾、沖縄、日本4地域一体の継続した取組みで、今年も都心を、ヤスクニの闇をキャンドルの灯で照らし出そう!

昨年のキャンドル行動

8・22「強制併合100年」日韓市民共同宣言大会

 併合100年目の今年、多くの団体・個人が集まり、韓国、日本共同して市民宣言大会を行う取組みが進められています。22日は、併合条約が「調印」された日。この1910年併合条約、また、それに至る1905年条約も武力や文書偽造をもって行われたものであることが明らかになってきています。
 村山談話等で謝罪をした植民地支配は、未だ清算されず、日韓関係に大きな影を落としています。多くの被害者が日本政府の謝罪と名誉回復と何らかの補償を求めています。韓国支援法で一定の給付をなされた遺族も日本政府が未だ真摯に謝罪しておらず、遺骨の調査・返還や靖国合祀取り消しなどを強く望んでいます。27〜29日にはソウルで大会が開催されます。
 この夏の一連の行動は、一つ一つが重要な行動であり、参議院選挙後の政局を動かしていく力です。右翼の妨害を圧倒的な結集で跳ね返し、大成功させていきましょう。
 

ノー!ハプサ第15回口頭弁論報告(山本) 

沈黙の靖国神社…裁判所は靖国神社の実態と証人調べを行え!
自分勝手な判決の援用は許されない!

 

報告集会

 

 6月7日、午後2時より東京地裁103号法廷で、ノー!ハプサ訴訟の第15回口頭弁論が行われました。この間、被告・靖国神社、国は原告らの請求を拒否する根拠として、山口殉職自衛官合祀拒否訴訟最高裁判決、大阪・合祀イヤです訴訟一審判決、在韓軍人軍属裁判控訴審判決を書証として提出し、それに基づく主張を展開してきました。また、以前の裁判でも裁判長自身が「山口事件最高裁判決の射程に裁判所としては関心がある」とはっきり表明しており、最重要争点となっています。これに対する包括的な批判として、今回原告側は約60ページにおよぶ準備書面25を提出しました。原告らへの利益侵害を否定し、国・靖国神社の共同不法行為を否定する被告の主張を一つ一つ取り上げて批判し、「被告らは、本件原告らの父・夫ないし原告自身(生きた英霊)について、被告國神社が自主的に判断して合祀を行った旨主張するが、本件原告らの父・夫ないし原告自身の合祀を被告國神社が自主的に判断して行ったという根拠・資料を示せ。」と求釈明も突きつけました。 弁護団の井堀弁護士は「事案の全くことなる本件に対して、山口事件最高裁判決を極めて自己に都合のいいように援用しており許しがたい。」と厳しく批判しました。

なぜ靖国神社は自らを語ろうとしないのか?

 
 

報告する井堀弁護士

 また、その主張の前提として、「靖国神社とはいかなる施設であるのか、その本質は何か」ということについて、あらためて準備書面24を提出し、明らかにしました。弁護団の内田弁護士は「私たちは靖国神社はこういう施設だと繰り返し説明しているが、靖国神社が積極的に主張しようとしないのはなぜなのか。靖国神社もこんなすばらしい施設だと主張したらどうなんだ」と靖国神社に迫りました。裁判長も靖国神社の反応を期待するかのように、靖国神社の代理人をじっと見つめていましたが、靖国神社は沈黙を守るだけ。誰も言葉を発しないという不思議な空間でした。最後は裁判長に促されて、いつも通りの「答えるかどうかも含めて書面で回答する」という対応でしたが、靖国神社の逃げの姿勢が際立っていました。
 7月7日の進行協議では、11月11日午前10時から証人尋問の期日が入り、次回裁判で証人の採否が決まります。事実調べをどれだけ裁判所にやらせることができるかいよいよ山場です。

ノー!ハプサ訴訟 第16回口頭弁論
7月29日(木)11時 口頭弁論 東京地裁103号大法廷
12時 報告集会 (弁護士会館508・ABC)

「シベリア特措法」が可決。
      遺族や外国籍兵を除外するとは何事か

                                  シベリア立法推進会議世話人 池田幸一

   
 
 

池田幸一さん

 皆様すでにご存知の通り、6月16日の衆議院本会議で「シベリア特措法」が可決されました。老兵たちの宿願がひと先ず達成されたのですが、長年ご支援下さいました方々に心からの感謝を捧げます。

 私も当日は国会へ駆けつけてその場に立会いましたが、この日を待ち兼ねて先に死んでしまった多くの仲間を偲び感無量、一法成って万骨枯れる悲しみに身を包まれました。それから既に半月、この日を境にして住んでいる世界が一変したような気分です。その前には口に出せなかったことが、今は大っぴらにものが言える、それらを少々ご披露いたしましょう。一つは、当り前のことが当り前になるのにどうして31年もの歳月を要したのか、この至極当然の言葉が尽力下さった議員先生の前では言えませんでした。どうしてマスコミはこの日の論調の10分の1でも10年前に書いてくれなかったか、(ある新聞は裁判の時、逆の社説を書いて司法に迎合したこともありました)どうして最高裁は今日の立法府判断と大きく異なる判決で我々を棄却したのか、なぜ宮崎牛の補償が1000億円で、シベリアの兵士は200億なのか?これらは成立した安心感があってこそ言えることであって、以前には恐ろしくて口には出せなかった事ばかりです。

 不幸にして16日以前に死んだ者やその遺族には一切支給されません。“早く死んだ者は死に損”なのです。更なる不公平は、韓国の「朔風会」の仲間たちのように外国籍の除外です。日本軍に召集され、日本兵として抑留されながら、用が済むや否や今度は日本人ではないからといって支払わない、こんな不条理がこの国では白昼堂々とまかり通っているのです。インドのグルガ兵やアルジェリァのアルジェ兵はそれぞれ戦前の宗主国であるイギリス、フランスから本国兵同等の補償金を受けています。この世界の常識を無視して今回またしても除外するとは、不道徳というより恥晒しです。

 なぜこうなったのか の一つは、“始めに200億ありき”です。多くの方々から“よくやってくれた”と祝福されるのですが、私は恥じ入るばかり、今回の結果は手柄でも何でもありません。新しく予算を取ったのではなく、残飯漁りに過ぎないのです。「シベリア抑留」の激しい攻勢を封印するために総務省のダミーとして作られた「独立行政法人」は、事毎に我々の要求を抑圧し、頃は良し とばかりに近く解体されるのですが、その資本金の残りをお情けにより呉れてやろう と言うだけのことで、その200億円だけでは生存者で精一杯だったのです。残念なことに運動は実力以上のことが出来るものではありません。仕方がないとこの辺りで政府と和解し、遺族と外国兵の問題は次に取り掛かれるように工夫したのです。法案に折り込んだ「検討の項」を、最後の段階で役人の横車により削られてしまったのです。従って表向きには再度の要求は難しくなっています。

 しかし誰が考えても不自然なことは不自然であり、幸い世論もこの不公平を指摘し国民の関心も高まっています。私たちは韓国朔風会の仲間たちから預けられた菅総理あての要望書を、近く官邸へ届ける予定です。

 高齢化が進む私たちは非力ですが、これら二つの不公平を是正するため引き続き戦う決意です。自民党政権下で封じ込められていた戦争責任という「パンドラの箱」は、政権交代とシベリア老兵の合作で固い蓋をこじ開けました。償いを伴う多くの諸矛盾の解決に、皆様の更なるご助力をお願いして、ご報告に代えたいと思います。
                                                      7月1日     
 

全国抑留者補償協議会声明
「戦後強制抑留者特別措置法案」成立を受けて 

 本日、私ども元シベリア・モンゴル抑留者が切望してきました「戦後強制抑留特別措置法案」が衆議院で可決・成立しました。これまで法案を作成・準備し、成立に向けてご尽力いただいた各党の議員の皆様に心より感謝申し上げます。
 1979年5月7日に「全国抑留者補償協議会」(全抑協)が発足してから31年、「シベリア・モンゴル抑留・未払い賃金問題立法解決推進連絡会議」(シベリア立法会議)が2003年5月29日に結成されてからちょうど7年になります。余りに長い年月と道のりでした。私たちを送り出した祖国日本の冷たさに、失望と落胆、恨みを刻み続けてきた戦後65年でした。この間、すでに多くの戦友が無念な思いを抱いたまま他界し、会員は激減しました。80台後半になるまで、国を恨み続けてきた元捕虜の想いをようやく国会が受け止め、初めて法律をつくっていただけたことに感無量の思いです。
 不当に拉致され、前代未聞の奴隷労働、飢えと寒さ、日本人同士の対立と抗争に青春の数十ヶ月を奪われた代償としては、特別給付金の額は余りに少なすぎます。しかし、問題は金額ではありません。被害者である私たちを、冷遇・排除してきた長い戦後の反省に立って、この法律が生まれたことは、画期的なことで、評価し、歓迎します。長い運動の歴史の中で、政治に翻弄され、抑留者自身も引き裂かれ、分裂してきました。今回初めて、超党派で国民的合意に基づいて措置が講じられることを率直に喜びたいと思います。
 「これで打ち止め」ではなく、本格的な国の事業としては、「これが始まり」です。第13条の基本方針の肉付けの作業が大切です。いったい全体何人がシベリアに拉致され、何人が死んだのか? 最低限のことを明らかにすべきです。遺骨さえ返っていない遺族の思いを国は受け止め、国民全体で分かち合うべきです。関係諸外国の協力を求め、民間の知見も活用して、実態解明に全力を挙げていただくことを強く望みます。
 今後、同じように悲惨を体験し、日本人以上に苦労された韓国・朝鮮、中国・台湾に暮らす元抑留者らにも、相応の措置が講じられるべきものと考えます。次代への継承、再発防止も大切な課題です。私どももそうした活動にささやかながら貢献できるよう、長生きをして、余命をまっとうしたいと思います。

2010年6月16日
シベリア立法推進会議代表・全国抑留者補償協議会会長 平塚光雄

李炳柱さんと平塚会長(右)

韓国シベリア朔風会の要望書

内閣総理大臣 菅 直人 様

 
 

朔風会の李炳柱さんたち

 6月16日に日本で「戦後強制抑留者特別措置法」が制定され、日本国籍所有の元シベリア抑留者に対する国家補償が実施されることになったと聞きました。同法の制定を、私たちも一歩前進と評価し、歓迎します。
 日本ではよく知られていませんが、私たち、韓国人元シベリア抑留者は、日本によって徴兵され、日本の元抑留者と同様に酷寒の地で3年以上奴隷労働を強いられ、そして危険な帰国行を経て、戦後強制動員した日本からも使役したソ連からも一切支払いを受けていません。また、帰国後も祖国・韓国で「赤」とのレッテルを張られ、排除・差別され、日本人元抑留者以上につらい戦後を送ってきました。すでに韓国政府は2007年に私どもの被害を強制動員被害と認定し、最近医療面でのわずかな支援をしています。
昨年2月に帰国60周年を記念して38度線で慰霊祭を行いました。しかし、日本政府からは、何の謝罪も補償も受け取っていません。極めて残念であり、不当かつ不合理であると思います。最近ようやく一部の日本の報道機関が私たちの問題を報道・提起するようになりましたが、すでに私たちも80歳台半ばに達しています。 
 どうか、すみやかに私たちが日本およびソ連から受けた被害の実態を調査し、不正義と不条理をただしていただけますよう、要望いたします。

2010年6月21日
韓国シベリア朔風会 会長 李炳柱 ・ 副会長 李在燮
 

「朝鮮総督府プロパガンダ映像を見る会」の報告(木村)

 6月13日大東市で、朝鮮総督府が1937年頃から1944年頃までに制作したプロパガンダ映像を上映、映画の背景と今上映する意義について藤井幸之助氏より解説していただいた。

 

藤井幸之助さん

 

 映画は前半に短編5本と後半に1時間40分にも及ぶ長編「兵隊さん」の計6本。
 短編の映像は、当時の朝鮮ののどかな町や農村の風景の中で、朝鮮の人々が、いかに自分たちの生活を切り詰め日本の戦争に協力しているかが描かれていた。男性は禁酒・禁煙で節約したお金を、女性は大切な金かんざしを、そして、毎日食べるお米からひと匙ずつ集めた米を上納する姿。創氏改名の講演で水野先生が“自発性の強要”ということを言われたが、生活丸ごとまさに“自発性の強要”であったことがわかる。
短編最後の「朝鮮時報」第11報「武運輝く武山大尉の生家を訪ねて」では、スマトラ島パタンバル飛行場攻撃で戦死した武山(崔さんの創氏名)大尉を空の軍神として、崔さんの生家で父母が弔う姿を映している。無言の遺族の映像に戦死を称賛する説明。息子の命が奪われた上に、その死を称賛し日本の戦争へ朝鮮の青年を動員するために利用された。映し出されるアボジの顔には、深い悲しみと、表すことのできない怒りを感じた。
 最後の長編「兵隊さん」は、3人の若者の訓練所の生活を通して、日帝がつくった兵営がいかに立派な場所かを見せる。規則正しい生活・充分な食事・デザートも充実・食後には娯楽の時間もあり、物わかりのよい上官は訓練生に温かい心配りを見せる。若者の成長を家族は目を細めて喜ぶさまも描く。まさに軍隊の現実とは無縁の“洗脳”の為に作られた映画だ。

 
 

神社参拝を強制

 会場には、交通の便の悪い所にかかわらず、20数名が、吹田や京都からも来ていただいた。映像の中に壮行会で“木曽節”を手拍子で歌う場面や、日常会話が日本語であったり、「なんでやねん」と思う場面がしばしば出てきた。会場で見ている間中突っ込みを入れたい場面が続出で、きっと皆さん最後まで我慢してもらったと思う。その分感想にたくさん書いていただいた。しかし、笑い飛ばしておれない内容だ。藤井氏より補足資料も加えて この映画の上映された状況や、保存から視聴できることになった経過も伺った。全く朝鮮の人々の生活も文化も無視して、服従させ戦争に動員する意図のもと制作された映画。しかも、当時1945年でも日本語を理解する人が35%という中で、村々を回って上映されていたそうだ。またこの映像はロシアと中国が保存していたフィルムを韓国でDVD化されたもの。日本にあって当然のフィルムであり、過去に学ぶためには大切な資料のはずである。感想にも上映希望とかいていただいたが、多くの方に見ていただきたい内容だ。

※ 事務局では短編集・長編集を貸し出しています。詳しくは(090-1135-1488古川)までお問い合わせください。
 

「有効?無効?韓国併合条約!」と題する講演を聴いて(大幸)

 

戸塚悦朗さん

 

 戸塚悦朗先生から、まずこの問題を研究するいきさつを話していただき、韓国の研究者の論文、その原本、国際的条約集などの資料から得られた事実を報告していただきました。それは、1910年、「韓国併合条約」が締結され、日本の植民地支配を正当化する法的根拠が、いかに日本側に都合よく作り上げられていったかということがわかるものでした。つまり、国家間でかわされた条約、協定に大きな瑕疵が潜んでいたことが、韓国の研究者によって明らかにされているのです。
 1904年から1910年の間にかわされた「協約」「条約」とされるものには、王の署名や印がなかったり、その文書にタイトルがないままに発効されてしまっていて、日本側が勝手に「条約」を意味する「TREATY」「CONVENTION」という言葉を使って国際社会に提出してしまったといういきさつがあるのです。つまり批准されずに、「韓国併合」がすすんでしまったわけです。このことに関して、韓国側から日本政府に「無効ではないか」として見解を求めたのですが、日本政府は全ての「条約」が「批准」を必要としたわけではないので、「略式であっても、無効ではない」という態度をとり、この問題に真摯に向き合うことなく「無視」してきたそうです。戸塚先生はそのことについて、そもそも、独立国家の外交権を奪うという最も大切な条約が「略式」でいいとすること自体がおかしなことであり、それは国際的な条約慣習法からみても、通用する理屈であると力説されました。
 戦時下で、強権的に「韓国併合」がすすめられてきたことは疑いのない事実ですが、お話を聞いて、法理論上も大きな問題をはらんでいたことがよくわかりました。この講演を詳しく知りたい方は、是非「韓国併合を問う」と題するブックレットを是非お読みください。
 

「韓国併合」100年市民ネットワーク8月企画の見どころ!(中田)
8月7日(土)〜8日(日) 龍谷大学アバンティ響都ホール(JR京都駅南) 

 
 

朝鮮総督府

 日本が「韓国併合条約」を強要し、1910年8月29日から35年間、朝鮮半島を植民地として、今年の8月にちょうど100年の節目を迎えます。国連のダーバン宣言は、「植民地主義」について、歴史清算、過去の克服を明確に打ち出しました。この100年の歴史を、「人権」と「民主主義」という人類の普遍的価値に基づき、東アジア、さらには世界に平和を実現する視点から、日本と朝鮮半島に暮らす人々との心からの和解を進めるには何が必要かを考える企画です。
  詳細は「韓国併合」100年市民ネットワーク・ホームページ

【記念講演:上田正昭氏「日本と朝鮮の文化交流2000年−京都の中の朝鮮文化を中心に−」】
8月8日(日) 13:15〜
 民衆と民衆が交わる「民際交流」−民衆サイドのアジアのネットワークの必要性を説く講演。

【映像企画】
7日(土) 10:00〜
 目で見る植民地支配の実像!「朝鮮総督府制作のプロバガンダ映像」を通じて植民地支配がいかに人々の日常の底深くまで、浸透させられていったかを当時の朝鮮総督府が作成した映像から追体験。

8日(日) 10:00〜
 日韓共同制作のドキュメンタリー「あんにょん・サヨナラ」。アジアの人々から靖国神社はどう見られているか?アジア太平洋戦争中に日本軍に徴用され、中国で戦死した父について何の通知もなく、遺族の知らないうちに靖国神社に合祀されていた。父の命日に、父が死んだ場所へと旅する主人公イ・ヒジャさん、韓国の遺族にとっての靖国合祀の意味とは?

【シンポジウム「文化を奪うとはどういうことか?植民地支配の文化的側面」】
7日(土) 13:30〜
 植民地支配は、多面的な側面を持っています。物理的・暴力的な支配という側面だけでなく、1910年から45年までの日本の朝鮮半島への35年間の植民地支配を「文化」の観点から捉えなおし、「文化」を奪うとはどういうことか、また、いまだに「清算」されない文化財返還問題をとりあげます。
パネラー
仲尾宏氏(京都造形芸術大学客員教授)「文化による植民地支配とは」・太田修氏(同志社大学教授)「日韓条約で文化財はどう扱われたか」 ・康成銀氏「奪われた文化財について」 特別報告:利川市五重塔返還運動

【シンポジウム「強制連行の現状と課題 その立法解決を求める」】
8日(日) 14:30〜
 戦後補償について、ほぼ司法的解決が難しい状況の下で、西松(中国人強制連行)事件の和解や日韓での様々な取組みや運動を踏まえて、参議院選挙後の政権下での立法化による解決に向けた展望を探る企画として開催。
パネラー
田中宏氏 (西松建設との和解の経過と意義) 有光健氏(立法化の展望)重本直利氏(企業の CSRについて)コーディネータ 矢野秀喜氏(強制連行企業ネット) 

【文化企画「日韓・日朝文化交流の夕べ」】
7日(土) 18:30〜
チングドゥル(親舊達) 
 KOREAと日本の芸能に表現基盤を置きつつも、伝統をダイナミックに多様化/現代化させた世界観。両文化の伝統芸能を知り、融合された芸術を作り上げようとする「チングドゥル」のフィールドは、日本からKOREA、そして世界へと向かっている。

「月桃の花」歌舞団
 1997年秋結成。名前は当時全国で100万人の鑑賞者を出した沖縄戦映画「GAMA-月桃の花」から。今回は靖国をテーマのミュージカルを上演。

利川市五重塔返還テーマのパンソリ 
 「韓国併合」以後、朝鮮半島から持ち出された文化財の中で、高麗時代の11世紀に作られた韓国の利川(イチョン)市にあった石塔をホテルオークラの創業者、大倉喜七郎の父喜八郎が1915年頃日本に持ち帰った「利川五層石塔」の返還運動が利川市の市民団体が提起。返還運動をパンソリ(歌い手と太鼓の奏者が奏でる歌と打楽器による語り)で表現。
 

 読書案内

 『韓流がつたえる現代韓国
   〜「初恋」からノ・ムヒョンの死まで』

 
   

            
           イ・ヨンチェ(李泳釆)著   梨の木舎 1700+税

 「シュリ 」、「冬のソナタ」などを皮切りに、韓国映画・ドラマの我が国での人気は、一過性の"ブーム"でなく、韓流文化として定着している。著者は、この韓流の流れを、「戦後補償や歴史認識問題の硬い枠でなく、市民の立場から考え合うきつかけになった」ものとして肯定的にとらえ、より深まることを期待している。著書の中で、具体的な映画、TVドラマが多く登場するが、ファンには興味が尽きない所ではないか。著者は、韓流作品が、日本を含めた多くの人々になぜ受け入れられているのかを、韓国の現代史と関連付けている。日本から独立した韓国民は、1950年朝鮮戦争以降、軍事政権、開発独裁で人権・民主主義の弾圧下におかれた。その社会に変化をもたらすのが80年光州民主化運動・87年民主化闘争であり、90年代に民主政権を生んだ。元気な韓流映画・ドラマの担い手は386世代(60年代生まれ、80年代学生民主化闘争参加、90年代30代で社会リード)と言われている。彼等の作品には「歴史に翻弄された人間の生身の姿を描きながら現代史を伝え」ていると。386世代の現状認識を知る上では興味深い。 (大釜)
 

GUNGUNインフォメーション

7月29日(木) ノー!ハプサ訴訟第16回口頭弁論 11時 東京地裁103号法廷
7月30日(金) 日政教分離全国集会14時 龍谷大学大宮キャンパス西黌大会議室
8月  1日(日) 平和と民主主義をめざす全国交歓会・分野別討議 9時半 エル大阪504号
8月7日(土) 8日(日) 「韓国併合」100年市民ネットワーク企画
                  龍谷大学アバンティ響都ホール
8月14日(土) ヤスクニキャンドル行動 14時 社会文化会館ホール(地下鉄永田町駅)
8月21日(土) 遺族の証言を聞くつどい 13時 大阪産業大学梅田サテライトレクチャーA
8月22日(日) 日韓市民共同宣言大会 13時半 豊島公会堂(JR池袋駅徒歩10分)
8月29日(日) 日韓市民共同宣言大会(ソウル)14時成均館大学