在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.57 (2010.2.20発行)

ソウル日本大使館前で日韓条約文書公開と過去清算を求める呂運澤さんたち
(2010年2月8日)

韓国強制併合100年の今年こそ過去清算実現の年に!

 2010年、今年は韓国を強制的に植民地支配した「韓国併合条約」からちょうど100年になります。岡田克也外相は2月11日、韓国の李明博大統領と会談し、「韓国の人々にとって国を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられた出来事だった」「併合された側、痛みを覚える被害者の気持ちを決して忘れてはいけない」と発言しました。日本は戦後、自民党政権下で、2000万アジア民衆と300万国民を戦禍に巻き込んだ戦争責任追及を放置し、軍人軍属遺族への遺族年金だけで補償を済ませてきました。同時に、天皇の戦争で犠牲になった「ご褒美」として機能したのが「靖国合祀」でした。鳩山民主党政権になった今こそ、「過去清算」をさせなければなりません。
 1月31日、東京で「韓国強制併合100年共同行動日本実行委員会が結成されました。8月に東京(22日)とソウル(27〜29日)で「日韓市民共同宣言大会」が開かれます。GUNGUNも合流していきたいと思います。グングン裁判は現在、上告審に向けての訴訟救助手続きを進めています。今後の展開にご注目ください。
 

韓国からのメッセージ

李熙子(イ・ヒジャ)さんから

 
   

 こんにちは。グングン裁判の原告を代表してご挨拶を申し上げます。
 2010年は虎年です。虎のように力強く活気に満ちた一年になるように心より祈ります。この間、皆様が送ってくださった声援と温かい心そして熱情は私の心の中に大切に残されています。おそらく永遠に残るでしょうね。この手紙を通して、もう一度、感謝の気持ちをお伝えします。2010年は我が国が日本により強制的に奪われてからちょうど100年になる年です。過ぎ去った時間を振り返れば記憶したくない多くのことがありました。痛ましい歴史を持ったまま、未解決の出来事が、100年を迎える時点でも依然として解決されずにいるのが現実です。
 私は皆様の美しく温かい心と、414名の原告たちの痛みと心を無残にも踏みにじった日本の司法府の判決日(2006年5月25日、2009年10月29日)を忘れることができないでしょう。しかし、このような状況の中でも皆様がいたから頑張って困難を切り抜けてくることができました。皆様がいたから希望を失いませんでした。
 今、私は、原告たちの気持ちを理解し最後まで裁判を支援してくださった方々の温かい心を集め記録に残す準備をしています。原告414名の心に残った裁判記録は皆様の誠意と汗の結果であることを忘れていません。これからも変わることのない声援と関心を寄せてくださるようお願いいたします。そして良いアイデアがあれば共に分かち合い、機会ができれば論議します。
 いつもご健康で幸福でおられますように。そしてその中に平和がありますようにお祈りいたします。


金幸珍(キム・ヘンジン)さんから

 
   

 2010年の太陽がまたそびえました。あけましておめでとうございます。新年は、韓国では白虎の年で、良いことばかり来る年として、期待充満です。昨年末にNHKの記者が訪ねて来て、太平洋戦争で死の一歩後で生還した私を取材しました。(NHKスペシャルの特集取材)一週間以上韓国の隅々を探って日本に帰りました。昨年はGUNGUNの大きな支援に頼って、勇気をもらいました。今年も勇気百パーセントとなるよう、応援ください!今年もよろしくお願いします。
 

 

関西で韓国併合100年学習会
「創氏改名に見る日本の植民地支配」
講師:水野直樹さん(京都大学教授)
報告:「創氏名での合祀を問う・韓国人靖国合祀拒否訴訟の今」
     「戦後補償立法の展望」
日時:3月28日(日)14時〜
会場:エルおおさか(701号室)京阪・地下鉄谷町線「天満橋」

「韓国併合100年共同行動」日本実行委員会が
                       結成されました!
(中田)

 

会場では写真展も同時開催

 

 1月31日、東京早稲田奉仕園スコットホールで、韓国から14名のゲスト(真実と未来 国恥100年事業共同推進委員会、民族問題研究所、民主社会のための弁護士の会、関東大震災朝鮮人虐殺真相糾明と名誉回復のための韓・日・在日市民連帯、KlN地球村同胞連帯、靖国反対共同行動韓国委員会、安重根義士記念事業会、太平洋戦争被害者補償推進協議会、韓国挺身隊問題対策協議会、歴史問題研究所、フォーラム「真実と正義」、京畿市民フォーラムなど)を迎えて「韓国併合100年共同行動」の日本実行委員会の結成集会として「過去を清算し平和の未来へ1・31集会」が会場にあふれんばかりの約240名の熱気ある参加者で成功をおさめました。
 「朝露」と「ニムのための行進曲」の合唱の後、韓国側イ・イファさん(真実と未来 国恥100年事業共同推進委員会常任共同代表)と日本側伊藤成彦さん(中央大学名誉教授)がそれぞれあいさつに立ちました。
 「韓国と日本は一衣帯水、または脣歯の関係、よい記憶を思い起こしながら本当の真実を明らかにし、未来の平和と人権の時代を開いていきましょう」「国際法形成の歴史に照らせば韓国併合条約は1910年の強制締結の時からすでに無効…韓国併合条約に対する正しい見方に立って過去の清算を行い、力を合わせて東北アジアの未来を切り開こうではありませんか」

日韓・東アジアの平和な未来を切り開くために

 
 

李錫兌(イソクテ)弁護士

 続いて「日韓、東アジアの平和な未来を切り開くために」と題して李錫兌(イソクテ)弁護士から今後の運動の基調となる講演が行われました。「白人たちが移住する前には北アメリカに1000万人以上いたインディアンは今では25万人だけとなり、500年の歴史を持つ植民主義は、奴隷制の歴史、抑圧され放置されることによって死を強要された人々の無言の歴史、領土と土地の奪取の歴史、人種主義の制度化の文化破壊などの歴史を内包」「植民地から政治的解放を迎えた国々もまた、未だ過去と似たような状態から抜け出せず、政治的無秩序と抑圧、貧困と飢餓、社会的不平等、文化的隷属等の問題で苦痛を受けており、却って状況は更に悪化。植民主義は外観の上では消え去ったが、重荷となって残っている。」「近代の植民支配は被植民地の政治、経済に止まらず社会、文化全般にわたり支配と統制を行い、皮膚、人種、民族の違いを理由に搾取と収奪を制度化した体系であり、文明化という名のもとに他民族の文化を破壊し抑圧することを正当化、被植民地の住民には奴隷的思考と主体性の喪失、脱植民の時代にも植民主義のシステムと意識が依然として作動しており、植民主義は現在進行形である。」とコロンブス以来の植民地支配の歴史から説き起こし、植民地主義の本質を規定しました。
 そして日本の朝鮮植民地支配の具体的な事実を挙げながら、その克服すべき課題として、
第1に、侵略の過程で発生した日本軍‘慰安婦’をはじめとする強制動員被害者らの被害実態の真相究明と被害の回復、
第2に日韓協定の過ちを再び踏襲しないように条約締結の基本理念と方法に対して市民社会の次元で提案を作成し、日朝の国交正常化を図ること、
第3に、東アジアひいては全世界に根を下ろしている植民主義を打破し、自由と平等、人権に基づく新しい時代をつくるための共同宣言の採択、自由と平等そして、人間の尊厳性が尊重されともに平和に暮らせる世界をめざして、2001年の人種主義と人種差別、外国人嫌悪症が反人類的であることを確認した「ダーバン宣言」の精神をより発展させ、植民主義を完全に克服しよう
と提起されました。

 
 

多彩な人が報告

6つの具体的な克服すべき課題

 そして次に「清算されない植民地主義」として六つの具体的な克服すべき課題が報告されました。

@「日本軍慰安婦』(性奴隷制)問題と植民地責任」(鈴木裕子さん)
A「戦時強制動員とその被害補償について」(山本直好さん)
B「韓国人の靖国神社合祀問題とその解決について」(大口昭彦さん)
C「関東大震災時朝鮮人虐殺の国家責任」(山田昭次さん)
D「清算されない植民地主義と在日朝鮮人」(金優綺さん)
E「歴史認識問題について」(俵義文さん)

8月22日東京・27日〜29日韓国で「市民共同宣言大会」

 

キャンドル行動−東アジアの平和のために

 

 休憩ののちに、具体的な行動計画として、@「日韓市民共同宣言」の起草、A植民地主義克服を呼び掛けていく取組み、B日本政府等に対する要請・要求運動、C韓国実行委員会との連携、日本実行委員会参加の団体企画への協力が提案され、8月22日に東京、8月27日〜29日に韓国で「市民共同宣言大会」を開催していくことが確認されました。
 そして日本実行委員会の共同代表として、伊藤成彦さん(中央大学名誉教授)、姜徳相さん(在日韓人歴史資料館長)、鈴木裕子さん(日韓の歴史と女性を考える会代表)、宋富子さん(高麗博物館名誉館長)、中原美智子さん(VAWW−NETジャパン共同代表)、山田昭次さん(立教大学名誉教授)が選出されました。質疑の後、会場からも、具体的な取り組みとして韓日平和100年市民ネットワークの李大洙(イデス)さんから、日韓の市民レベルでの交流を通じて「麻生炭鉱及び筑豊地域強制動員被害者証言集会」を6月に開催していくことが報告されました。
 最後にナチスがユダヤ人の住宅、商店などを次々と襲撃、放火した「水晶の夜事件」を彷彿とさせる最近の「在特会」の跋扈に対して「『水晶の夜』を許さない市民のアピール 在特会による人種差別を糾弾する」を採択、4時間半に及ぶ結成集会を終えました。
 

韓国併合100年の今、
韓国人・軍人軍属強制動員被害者補償立法化をめざして
(御園生)

 昨年10月29日、東京高裁は、韓国人元日本軍・軍人軍属の謝罪と補償を求める控訴を退けた。裁判は、植民地支配が無効であることを踏まえ、徴兵・徴用等強制的に日本軍の軍人軍属として動員されたこと、そのことにより、死亡・負傷等の被害を受けたこと、遺骨も未だ返還されず、供託されている未払金や軍事郵便貯金も返還されていないこと、また戦後のシベリア抑留、BC級戦犯問題の解決、さらには、靖国神社合祀取消等を要求するものであった。靖国合祀問題や遺骨問題は、それ自身も解決しなければならない非常に大切な問題であるが、本稿とは別にする。他は高裁判断でも、「日韓請求権協定・法律144号」で解決済みというものであり、上告審で憲法論争を展開するものの、鳩山政権が誕生した今日、法廷外の闘い・立法化も極めて重要な課題となってきている
 以下、韓国人軍人軍属問題での立法化の検討を行う。

冷戦崩壊後も主張される冷戦時代の産物

 
   

 まず、前提として、日韓請求権協定が「完全かつ最終的に解決した」といいながら、何故ここまで問題となっているのか。また日本政府は、条約の解釈まで「変更」して、当初は「ある」とした個人請求権(柳井条約局長国会答弁)を、何の説明もなく個人請求権は「ない」と変更せざるをえなかったのか。それは、日韓条約・請求権協定が、被害者への戦後補償・戦後処理を一切念頭においたものではなかったことに起因する。日本政府は、その国内における説明において、供与資金は「経済協力金」であり、「独立祝賀金」であると説明し、韓国政府は国内説明において、「実質的には賠償である」と説明したのである。何度となく決裂した、この日韓請求権協定の成立の背後にあるのは、米国であった。日韓交渉への「不干渉主義」をかなぐり捨てた米国は、ベトナムへの本格的軍事介入を行うにあたって、アジア諸国、とりわけ、クーデターのおきた韓国の安定、協力を必要としたのである。その役割が、日本だったのである。すなわち、日韓請求権協定は、日韓政府双方とも、被害者を念頭においたものではなく、ベトナム侵略戦争を本格化する米国、アジアへの経済侵略を大きく伸ばそうと狙う日本、北との対抗関係・独裁維持に必死の韓国・朴政権、この三者の思惑の産物であった。

植民地支配の清算を欠如させた処理

 
   

 それでは、日韓請求権協定とは何であったのか。グングン裁判など韓国人が原告の戦後補償裁判で、日本政府および司法は、未払い賃金、軍事郵便貯金はいうに及ばず、徴兵や徴用による死亡・負傷、さらには、シベリア抑留問題(捕虜労働賃金含む)、BC級戦犯問題についても、日韓請求権協定で解決済みとした。悪乗りする日本政府は、靖国合祀による損害賠償請求問題までも「日韓請求権協定」で解決済みと主張したが、さすがに、これについては、東京地裁・高裁とも、「日韓請求権協定」の対象外とした
 ここで、仮に日韓請求権協定が有効に調印・批准されたものだとしても、重要な問題が残る。すなわち、1965年日韓条約・請求権協定で、植民地支配問題の解決・清算は全くできていないということである。日韓基本条約第2条は、「(韓国併合条約は)もはや無効であることが確認される。」としたものの、韓国側が主張するように当初から無効であったのか、それとも日本側が主張するように、日本の敗戦により無効になったのか、という点については対立したままであった。その上で、結ばれたのが日韓条約であり、日韓請求権協定であった。韓国のみならず、他のアジア諸国への「補償」を含め、日本はアジアへの経済侵略・経済支配を大きく進めたのである。

韓国政府も未払い金等解決を肯定
 
 韓国政府は、この日韓請求権協定についてどう考えているのか? 05年8月、韓国政府は、日韓請求権協定に関する最終見解を明らかにした。その概略は以下のとおりである。
 @請求権協定は、日本の植民地支配賠償をするものではなく、A日本軍「慰安婦」問題など、国家権力が関与した反人道的行為は日本に法的責任があり、請求権協定対象外であり、Bサハリン、原爆被害者問題も含まれていない。Cまた、未払い金など対日請求7項目については「解決済」であるとしている。しかし、同時に、強制動員被害者のために「政治的次元から補償を要求した」といい、「(韓国政府にも)道義的責任がある」としている。それが現在韓国で行われている「支援法」による支援金の支給となっている。

植民地支配謝罪を公式に表明した村山談話

 1990年、キム・ハクスンさんが「従軍慰安婦」であったことを名乗り出て、戦後補償運動はアジア諸国に大きく広がった。冷戦が崩壊したにもかかわらず、日本が平和構築に努力するどころか、PKO法を成立させる、自衛隊(日本軍)の海外派兵などに危惧をいだいての行動であった。
 このようななかで、戦後50年の1995年、村山首相は、植民地支配と侵略戦争を謝罪する談話を発表した。重要な問題なので、少し長くなるが引用する。

 「我が国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争の道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ちをなからしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明します。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。」「平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを二度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。」

 
 

靖国キャンドル行動で李熙子さん

 この村山談話は、あの小泉首相も含め、その後の歴代首相が曲がりなりにも言い続けざるをえなかったのである。しかし、形の上では表明しても、誠実に対応すべき戦後処理はほとんど対応されなかったといっても過言ではない。歴史の歪曲は閣僚から声高に叫ばれ、教科書は改悪されていった。今、「誠実に対応すべきであった」、この植民地支配の謝罪とそれに基づく補償こそが問われているのである。
 

ノーハプサ第13回口頭弁論報告(山本)

裁判所が靖国神社の不誠実な態度を事実上容認

 

提訴時の原告たち

 

 12月24日、ノー!ハプサ訴訟第13回口頭弁論が行われました。前回の口頭弁論で被告国は、10月29日の在韓軍人軍属裁判(グングン裁判)控訴審判決を踏まえた準備書面を提出すると明言したにも関わらず、なぜか「間に合わない」として判決を書証として提出することにとどめました。
 その代わりに、靖国神社が前回原告側が提出した準備書面20に対する反論の書面(準備書面7)を直前に提出してきました。称えるに値しない、宇垣纏及び世良修蔵をなぜ英霊として合祀し、遊就館等でも真実を隠して展示しているのか、との原告側の問いに対して、靖国神社は自らの祭神の正当性に関わることであるにも関わらず、「合祀されたことにより、祭神になっている」と木で鼻をくくったような回答しかしません。このような、不誠実な靖国神社に対して、原告側は準備書面21で「裁判所は、被告が明らかに争わない場合は、民事訴訟法159条1項(自白の擬制)に基き、原告主張を認めたものとして扱うことを明らかにすべき」と迫りました。すると、靖国神社の代理人は「争う」と一言だけ。原告は「ではどこをどう争うのか。争う場合は具体的に主張するのが裁判の手続きだ」とさらに迫り、裁判所に対しても「争うと言っただけでは争うことにならない。原告主張を認めたものとして裁判記録にも書いてほしい」と要求しました。驚いたことに裁判所は「被告が争うと言っているのだから、裁判所はそのようには考えない」と、靖国神社の不誠実な訴訟態度を事実上容認する姿勢を示したのです。芝居がかった訴訟指揮にはあきれるばかりです。

次回は3月18日(木)11時

 弁護団の奮闘でなんとか次回裁判までには国も靖国も主張を出してくることになりました。次回第14回口頭弁論は3月18日(木)午前11時から東京地裁103号法廷で行われます。公正な訴訟進行を裁判所に迫るために次回も傍聴をお願いします。

金慶海(キム・ギョンヘ)さんを悼む(古川)

 GUNGUNの支援者で、結成集会や学習会でお世話になった、兵庫朝鮮研究会の金慶海(キム・ギョンヘ)さんが、12月6日急逝されました。金慶海さんは、阪神教育闘争をはじめ、在日朝鮮人の運動を調査・研究する活動を続けてこられました。神戸電鉄の工事に携わった朝鮮人労働者問題を調査中、私の勤めていた神戸市北区役所に名刺を持って来られたのが初対面でした。北区役所は神戸電鉄社長の小林長兵衛の息子、小林秀雄(阪急グループ社長)の豪邸があった場所に建てられていました。GUNGUNでは結成当初からいろんなアドバイスをいただきました。中でも印象的なのは、「あの戦争での一番の被害者は日本人なんやで」と、戦争の総括が日本人自身の中でできていいないことを第一に指摘していただきました。その後、靖国合祀をはじめ過去清算を考える際の大きな指標になりました。この場をお借りしてご冥福をお祈りします。

グングン学習会での金慶海さん

 読書案内

 『鎮魂(たましずめ)への道
    −BC級戦犯が問い続ける戦争』

 
   

                        飯田 進 著  岩波書店 1300円
 
 著者は、ニューギニア戦線での苛酷な体験を克明に記録すると共に“ぼくの戦争犯罪”と自らの罪をも曝け出す。鉄格子越しに指と指を絡ませて別れを告げた、刑死者達の遺書を紹介する。どれほど身の毛もよだつような光景が戦場に生じたのか、刑死者がなぜ戦犯に問われねばならないようになったのか。各地の慰霊碑に刻まれた、あるいは慰霊祭の追悼の、「勇戦敢闘して戦場に倒れた」といった死者たちの死を美化する言葉や、「あなたがたの尊い犠牲のおかげで、今日の経済的繁栄がある」という言辞に疑問を投げかける。この本は過去の記録に留まらず、日本の戦争責任・戦後責任とは何かを問いつめる。
 日本軍の行った事実を語ったり、戦死の実態を語る発言は、英霊を冒涜するものとしてタブーとされてきた。しかし飯田さんは言う、「臭いものに蓋をすると歴史はまた同じ愚行をくりかえす」と。飯田進さんのドキュメンタリー映画「昭和84年」が各地で上映されている。あわせて見ていただきたい。(木村)
 

GUNGUNインフォメーション

2月23日(水) 日韓会談文書公開3次訴訟 10時30分 東京地裁522号法廷
3月 8日
(月) 不二越2次訴訟判決 11時30分 名古屋高裁金沢支部
第2回戦争と貧困をなくす国際映画祭2010
 3月 6日
(土)13時 大阪市立住まい情報センター(地下鉄天神橋6丁目駅下車すぐ)
 3月13日
(土)13時 青山学院大学6号館621教室(渋谷駅徒歩10分、表参道徒歩5分)
3月18日
(木) ノー!ハプサ訴訟 第14回口頭弁論 11時 東京地裁103号法廷
          終了後、弁護士会館(予定)で報告集会
3月28日
(日) 韓国併合100年関西学習会 14時 エルおおさか(701号室)
        「創氏改名に見る日本の植民地支配」水野直樹さん(京都大学教授)
4月27日
(火) 大阪合祀イヤです訴訟控訴審 15時 大阪高裁202号法廷