在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.55 (2009.10.3発行)

ヤスクニキャンドル行動コンサートで
李熙子さん
(09年8月8日、東京・上野)

いよいよ10・29GUNGUN裁判控訴審判決!
東アジアの一員として責任ある「過去清算」実現を!

 民主党を中心とする新政権が発足しました。鳩山首相の国連外交において、中国・胡錦濤国家主席との会談(9月21日)で、「日中両国が違いを乗り越えて信頼を築き、それを軸に構築したい」と「東アジア共同体」構想を提案しました。また韓国・李明博大統領との会談(23日)では、「民主党新政府は、歴史を直視する勇気を持っており、建設的で未来指向的な関係を作っていきたい」と語りました。東アジアの国々と平等互恵な関係を築いていく一歩として歓迎したいと思います。その実現のためにも急がれるのが日朝国交正常化と「植民地支配・過去の清算」です。私たちはこれまで自民党政権下で放置された「戦後責任」を問い続けて、韓国の原告と闘ってきましたが、これからの歩みをあるべき方向に踏み出すよう、しっかりと注視し、意見発信していきたいと思います。GUNGUN原告の中には徴用・徴兵の記録すら残っていない人がいます。「真相究明」が不可欠です。

 GUNGUN裁判控訴審は、10月29日(木)いよいよ判決を迎えます。傍聴や報告集会等の判決行動にぜひご参加ください。
 

控訴審判決 10月29日(木)東京高裁101号法廷
韓国から、84歳の李炳柱さん、李熙子さん、洪英淑さんら来日決定!
靖国合祀通知サービス論を打破り、日韓協定万能論に風穴をあけよう!

 10月29日(木)午後1時30分から、東京高裁101号法廷で、グングン裁判控訴審の判決が出されます。
韓国からは、太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会から洪英淑(ホン・ヨンスク)会長と呂明煥(ヨ・ミョンファン)さん(原告)、太平洋戦争被害者補償推進協議会からは、共同代表で原告でもある李熙子(イ・ヒジャ)さんと金敏普iキム・ミンチョル)執行委員長。そして高齢をおして韓国シベリア朔風会から李炳柱会長(原告)が来日されます。
 

洪英淑会長

呂明煥さん

李炳柱会長


司法の独立性が問われている−靖国合祀、日韓協定が争点

   
 
 

2001年 提訴

 

 

2002年 追加提訴

 一審判決を追認する判決を許してはなりません。一審判決は、明らかに憲法違反である国による靖国合祀通知を「一般的な行政サービス」とし、他の全てを日韓請求権協定で解決済(遺骨さえ、日韓協定が締結された1965年6月22日時点で日本政府が保有していたとすれば解決済)とした、許すことの出来ない判決です。
 控訴審では、新たに靖国問題で書証として「新編靖国神社問題資料集」を提出し、被侵害利益についても追加主張しました。証人尋問では、韓国の民俗学者・朱剛玄文学博士、内海愛子早稲田大学教授、そして原告を代表して李熙子さんが立ち、韓国人遺族にとって靖国合祀が耐えることのできないものであり、韓国の習俗からしても両立することのできないものであることを明らかにしてきました。
 新資料集に明らかなように、国・靖国神社は一体となって合祀を行いました。国の協力抜きに合祀はできないものです。これが憲法違反でなくて何なのでしょうか。
 高裁の裁判官が、真に司法の独立性、法の公正に基づいた公正な判決を下すよう求めます。
 
政権交代を踏まえ、戦後補償実現を!
 
 鳩山政権が誕生しました。新たな変化を作り出さなければなりません。鳩山首相は、韓国との会談で「新政権は歴史を直視する勇気を持っており、建設的で未来志向的な日韓関係をつくりあげたい」といい、中国との会談でも「日本による侵略戦争と植民地支配について謝罪した首相談話を踏襲していく」ことを明らかにしました。
 鳩山政権になって初の戦後補償判決である今回、院内集会も予定しています。大法廷を一杯にする傍聴、原告・弁護団・支援者一体で決意を固めあう報告集会、そして、院内集会(予定)に協力を!
 

グングン裁判控訴審判決
日時:10月29日(木) 午後1時30分 東京高裁101号法廷
判決後「グングン裁判判決報告会&記者会見」
   午後3時30分〜4時45分 場所:衆議院第2議員会館第二会議室
   内容 グングン弁護団報告・原告挨拶
   特別報告「韓国併合100年と戦後補償」金敏浮ウん

グングン裁判・高裁判決報告集会(東京)
日時:10月29日(木) 午後6時30分〜8時30分(午後6時開場)
場所:港勤労福祉会館(JR「田町」駅徒歩5分、都営地下鉄「三田」駅A7出口すぐ)
   *原告からのアピール *弁護団報告
   特別報告:高橋哲哉・東大大学院教授
   金敏普E韓国推進協執行委員長

大阪報告集会(李熙子さんのみ)
日時:10月31日(土)午後2時
場所:ドーンセンター5階セミナー室1(京阪・地下鉄「天満橋」駅徒歩5分)

シベリア抑留で新資料

 
 

神戸新聞記事

 7月24日、共同通信から「抑留者最大76万人 ロシアで新資料発見 日本への提供合意」という記事が配信されました。ロシア国立軍事公文書館に保管されている抑留者名簿が発見され、ロシア政府から日本政府に年内にも提供される」という内容です。今回の判決行動に来日する李炳柱さんをはじめ、「徴兵2期」と呼ばれる1945年に陸軍に徴兵された兵士の中で、記録が残っていない人が多くいます。戦後のどさくさで、戦争犯罪の追及を恐れた軍部が軍関連資料の焼却を命じたという証言も残っています。記録がないことで、韓国での被害認定や支援金の支給において支障が出る人もいました。今回の新資料でどこまで明らかになるかはわかりませんが、大事なことは「原因を作った日本政府の責任において、韓国・朝鮮人被害者の記録を明らかにさせる」ことにあります。判決後の民主党幹部への要請でも一つのテーマになりそうです。今後の展開にご注目を!

今年も草刈りでいい汗かこう!
納骨堂草刈りボランティアツアー&判決報告原告集会のご案内

 今年も韓国春川市にある強制連行被害者納骨堂で草刈りをするツアーを企画します。
 今回は、GUNGUN判決を報告する原告集会を兼ねての開催です。
 「住所・氏名・FAX・携帯番号・出発日・帰国日」を記入し、メールかFAXでお申し込みください。
 メール:gungun@mx4.canvas.ne.jp
 FAX:関東 047-375-0991 関西 078-611-0050
 連休中で飛行機が混み合いますので、希望者はできるだけ早くお知らせください。

昨年の草刈りツアー

昨年の合同慰霊祭

(行程)
 21日(土)各地からソウルへ 翌日の打ち合わせ
 22日(日)AM ソウル原告集会 
        PM 春川へ 翌日の打ち合わせ (できれば夜に原告集会)
 23日(月祝)AM 納骨堂の草刈り・春川原告集会 
            11時 合同慰霊祭 早帰り帰国
 24日(火)観光 帰国
         (費用)飛行機代プラス約2万円

「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動」報告(大幸)

 
 

キャンドル行動

 06年、08年に続き、3回目となった「キャンドル行動」。今年は、韓国からイ・ヒジャさんや学生50名、台湾から高金素梅さんや原住民の人々50人、そして中国の「花岡事件」を はじめとした強制連行被害者の遺族が日本での慰霊祭を前に一緒に参加しました。

 8月7日は「東アジアからヤスクニを見る」をテーマに国際シンポジウム。

 報告者の一人目は、南相九さん(韓国・東北アジア歴史財団研究員)。

 

南相九さん

 
 

高金素梅さん

 

 「韓国人にとって靖国神社は、神社参拝の強制の記憶として生々しく残っている。日本名で合祀したその行為は、植民地支配が終わっていないことを示すものである。姓は、先祖のルーツを表し、名前は家族間のつながりを示す大変重要なもので、それを奪われたまま合祀された死者の魂は行き場を求めてさまよい続けている。また、靖国神社が『差別なく祀られている』というが、戦争犠牲者に対する関連施策からは排除されてきた。日本政府が合祀への関与を否定しているが、靖国神社は合祀の選考基準が国の認定によるものであると主張している」と資料を提示し政府の言い逃れを批判しました。

 台湾の高金素梅さん(台湾立法委員)は、台湾原住民族への弾圧の実態を、スライド写真を映し出しながら、日本軍の蛮行を厳しく告発。「1896年から1920年の間に138回の「討伐作戦」が行われ、7080人が殺されたがそれは、原住民の8分の1にあたる。この事実を台湾政府は教えようとはしてこなかったし、日本政府もその歴史に向き合ってこなかった。そして、靖国神社には、原住民を殺した日本兵士と、殺された原住民の子どもが日本兵士として出兵し靖国神社に祀られているのである。到底許されることではない。」と訴えました。

 シュテファン・ゼーベルさん(東京大学総合文化研究科博士課程)はドイツにおける戦死者の追悼の状況を報告。「統一ドイツ以降、戦死者追悼は、新衛兵所(東ドイツ時代に「ファシズムと軍国主義の犠牲者」を追悼するために使用される)が93年に中央追悼所として改築され、毎年11月第3日曜日に「国民哀悼の日」として式典が執り行われている。敵対国の戦死者やナチの迫害による犠牲者も対象となり、旧敵国の政治家も参加し追悼の演説がおこなわれている。しかしPKOなど国際貢献による武力行使の機会が増え、死者も出始めている(事故やテロにより旧ユーゴ、アフガニスタンなど約70名)ことにより、新しい戦争による死者の追悼と顕彰の問題が浮上している。06年に国防大臣によって「ドイツ連邦国防軍栄誉の碑」建設が発表され、09年9月に開幕式が行なわれる。そのことで、新たな戦死者追悼をめぐって議論が白熱するだろう。死者を「英雄」視する声は少ないが、社会から「公的な敬意のしるし」を望む声は多い。「追悼・顕彰」することは、遺族への慰めになりそれが、海外派遣をし易くするとの懸念もでている」と。

 石原昌家さん(沖縄国際大学教授)は、台風の影響で参加がかなわず、沖縄の「靖国神社合祀取り消し訴訟」の意味するものと題するメッセージが読み上げられました。
 現在、靖国神社には沖縄戦で亡くなった赤ちゃん、お年寄りさえも「祭神」として祭られている。「戦傷病者戦没者遺族援護法」の対象となるのは、軍人・軍属および準軍属とされているため、政府は、沖縄戦の一般被害住民を「準軍属」扱いするために、壕から追い出された住民を「壕提供」という軍事行動した「戦闘参加者」という身分を与えたり、親子・友人・知人同士で殺しあう形をとらされて「集団死」した場合も「集団自決」という軍事行動した「戦闘参加者」という身分を与えていった。沖縄戦の真実を捏造した背景には、日本の再軍備と抱き合わせに制定された「援護法」で、日本軍の犯罪を免罪して、政府の戦争責任を免責することにあった。沖縄訴訟原告5人の原告団の一人は、2歳の弟が「準軍属」として合祀されていることに、「ガッティンナラン」とその取り消しをもとめている。今、「国民保護計画」を策定して、防災訓練の名の下に「軍民一体意識」形成が図られている。「沖縄訴訟」はそのような動きにたちはだかる平和活動の一環でもある。

 
 

絵を描く学生たち

 

 

証言するイ・ヒジャさん

 翌日8日は上野野外音楽堂でコンサートが開かれました。エイサーや弾き語り、「飛魚雲豹音楽公団」など、多彩な音楽の合間に、韓国の大学生グループ「希望」の代表のキム・ソンギョンさんが「台湾の被害の現実を知り、わが国だけの問題ではない。韓国でも保守・右翼のおす教科書が採択される現実があるが、怒りと痛みを共有する平和を望んでいるみんなの力で、構成のために歴史をつくり残さなければならない。」と力強い決意を。また母親の叔父3人が合祀されているという台湾先住民タイヤル族の張嘉チーさんも「被害者と侵略者を一緒に祀らないで」とアピール。
 イ・ヒジャさんも登壇し「これまで90回も日本に来て、美しくも楽しくもない家族史を語ってきた。植民地支配によって民族が味わった苦痛とは家族間の生き別れだ。裁判では、幾度か自分がどのようにして生きてきたのか陳述してきた。しかし日本政府と靖国神社は遺族の声にそっぽを向き続けていて、怒りは頂点に達している。怒りと憎悪の鉄鎖から早く解放されたいと願っている。今度の判決に司法の良心を信じてみようと思っている」とアピールしました。
 2時から6時まで続いたコンサートの終了後、キャンドル行進をして「靖国は戦争美化をやめろ」「政教分離をまもれ」と声をあげて終了しました。

「生存者は合祀されていない」のなら、なぜ霊璽簿から氏名抹消できないの?
靖国神社は当事者の納得いく回答を!
10・15ノー!ハプサ(NO!合祀)訴訟第12回口頭弁論で徹底追及しよう!(山本)

「霊璽簿に誤った情報」認めた靖国神社

 ノー!ハプサ原告の金希鍾(キム・ヒジョン)さんは、サイパンから生還したにも関わらず、国の誤った戦死情報に基き靖国神社に合祀されました。
 この間、原告側は靖国神社に対し、生存者合祀の取り扱いについて、繰り返し求釈明を行ってきました。靖国神社は「回答の必要なし」として不誠実な対応に終始して来ましたが、4月27日の第10回口頭弁論で初めて包括的な反論を行いました(準備書面6)。
 この中で、靖国神社は初めて「霊璽簿自体が本来的には戦没者を記載するものであるから、全体的に考察すれば誤りと評価される余地もある」「霊璽簿における原告金希鍾に関する記載は、広い意味で原告金希鍾の生死についての情報に関わるものとはいえる」と認めざるをえませんでした。

 
 

朴壬善(パク・イムソン)さん

原告の朴壬善さんが意見陳述を行います

 10月15日のノー!ハプサ第12回口頭弁論では、靖国神社の準備書面6に対する反論を原告側から行います。また、来日される原告・朴壬善(パク・イムソン)さんの意見陳述も行います。なぜ靖国神社は生存者を死亡者として霊璽簿に記載し続けるのか、なぜ遺族の合祀取消要求を頑なに拒否するのか、原告と共に徹底追及しましょう。



第12回口頭弁論スケジュール
2009年10月15日(木) 午前11時〜 東京地裁103号法廷
              終了後、弁護士会館502ABで報告集会を行います。

靖国問題・戦後補償問題の解決で共生のアジアを!〜韓国併合100年に向けて〜
2009ZENKO報告(木村)

 8月1日・2日“戦争と貧困のない社会をつくろう”と横浜で開催された2009ZENKOで、タイトルの分科会が開かれました。

 

キム・ミンチョルさん

 

 戦後補償裁判では、“日中共同声明・日韓請求権協定ですべて解決済み”という壁がある一方で、韓国・日本で日韓会談関係文書が公開され、残された課題が解明されつつあります。文書公開を機に韓国政府は、強制動員被害者への補償立法による補償を開始し、遺骨調査から返還への日韓定期協議も継続しています。
 私たちはこのような韓国内の動きに“光”を感じてきましたが、韓国から参加されたキム・ミンチョルさん(太平洋戦争被害者補償推進協議会執行委員長)は、厳しい韓国の現状を報告。「過去を問わない」イ・ミョンバク政府は、「過去清算」の動きを後退させており、真相糾明委員会も補償委員会に吸収され、事実上機能麻痺状態。今まで作り上げてきた成果すらまともに社会化できないのではとの懸念を発言されました。

 合祀取り消し訴訟について、日本・沖縄・韓国を結ぶ訴訟は、遺族・生存者が当事者として連帯し戦う運動であることの重要性が基調で語られました。大阪の「合祀イヤです訴訟」で下された一審不当判決は、戦前から戦後へと引き継がれた国と靖国の戦争を美化する思想との対決であることが鮮明にされました。

 
 

金城実さん

 沖縄から参加された金城実さんは、「沖縄ガッティンナラン訴訟」を「沖縄で裁判を始めてから、0歳の子が合祀されている事実がわかった。戦時下で日本軍に避難壕から追い出され死に追いやられたにもかかわらず、援護法受給と引き換えに積極的に日本軍に協力し壕を明け渡したという一札を入れた。人の魂を勝手に盗んだ恥知らずが隠していた」と報告。またこの間、司法が判断せず逃げの一手に出ているとか。しかし沖縄小泉違憲訴訟の時、摩文仁が丘で被害者の証言を聞く進行協議が持たれたことを紹介。裁判は国民と共に学習していく場であり、靖国合祀に関して沖縄でマスコミが注目、琉球新報が特別班を置いて取材を行っており、「希望を持って戦っていきたい」と語られました。
 大口弁護士からは、ノー!ハプサ訴訟の現状を報告。来年から証人尋問にはいるが、3つの課題が。一つは日韓条約だが、条約は請求権の問題で、靖国については議題にもなっておらず、秘密裏に行われてきた。しかし、国側は一切解決済みとして請求権の中にクレームについても入ると主張してくるだろうと。二つは、国が靖国に資料提供(名簿通知)したことは行政サービスの範囲内という論。これは、20条違反で政教分離問題に留まるものでないという点を問う。三つは、被侵害利益の問題。大阪の「イヤです訴訟」地裁判決では、“侵害された利益はない”という結論。これを引いてくるだろうが、今までの裁判と異なるのは、原告が韓国人であるということ。韓国の伝統や習俗を無視して、いまだに幽閉しているということから考えれば、同じ次元で捉えられないはずだ。「必ず勝利したい」と。

 

韓国の学生「希望」のメンバー

 

 来年2010年は、1910年「韓国併合に関する条約」が締結され丁度100年という節目の年。植民地支配がもたらした被害の解決を図り、真の和解を達成しようという取り組みが韓国・日本の各地で開始されています。これを日韓市民共同の行動として今後何ができるかを論議しました。そこで、提起されたのが韓国人戦時下強制動員被害者基金法。すでに、韓国では強制動員被害者 に対する支援法が成立し被害者への支援が行われていますが、日本政府・日本企業の責任が免ざれるものではなく、一層日本の責任が問われていることから、政権交代に伴う立法解決の道として示されました。日韓協定で解決しえず残された問題の解決を図り、日韓の友好と平和的関係の促進をというもの。実現に向けて日韓の被害者・支援者・議員等による立法化検討チームを立ち上げていこうと確認されました。容易なことではないでしょうが、韓国のことわざシジャギ・パンイラ(始まってみれば半分成ったも同様)の精神でいきたいものです。

韓国併合「100年」を植民地主義克服の「元年」に!(中田)

 来年の「韓国併合」100年に向けて、日本ではすでに昨年10月に「韓国併合100年市民ネットワーク」が、韓国では今年2月に「真実と未来・国辱100年事業共同推進委員会」が、4月に「韓日100年市民ネットワーク」が結成され、それぞれ活動を開始しています。来年8月29日の「韓国併合」条約公布100年を節目として何を取り組んでいくのかが今、改めて問われています。

 東京裁判は、日本の戦争犯罪を裁きましたが、その最高責任者である昭和天皇を免罪し、天皇制という「国体」を「護持」しました。そして、「朝鮮ノ人民ノ奴隸状態ニ留意シ軈(やが)テ朝鮮ヲ自由且獨立ノモノタラシム」とカイロ宣言で表明された「植民地朝鮮」の真の「解放」も実現しませんでした。それは、当時の連合国の中心的な国々が「植民地支配」をしていたからです。

 江華島事件に始まり、3・1運動弾圧、関東大震災の「コリアンジェノサイド」等、暴力に彩られた日本よる朝鮮植民地支配の歴史を問い直す視点として、2001年南アフリカのダーバンで開催された「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された「ダーバン宣言・行動計画」が重要です。「植民地主義によって苦痛がもたらされ、植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されねばならないことを確認する。この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である。」「アパルトヘイトとジェノサイドは人道に対する罪であり、(略)いつであれ、非難され、その再発は予防されねばならないことを確認する」と述べられました。この今日的、普遍的な原理・原則から植民地支配を裁いていくことが日韓、日朝間だけでなく人類の「未来」を築いていくことに繋がっていくと確信します。具体的な行動として、65年日韓基本条約・日韓協定の不十分性を克服し、ピョンヤン宣言を実現させるための「20世紀植民地主義の克服と被害回復をめざす市民宣言及び行動計画」といった宣言・行動計画を日本、韓国、朝鮮の市民が共同で策定し、来年8月29日、韓国併合から100年の日に合わせて「市民宣言大会」を日・朝・韓で開催するような運動を作っていくことこそが、天皇訪韓で日韓関係を「清算」しようとする動きへの私たちの対案にもなるのではないかと思います。

GUNGUN控訴審判決行動への「原告招請特別カンパ」のお願い

 今回、多くの原告および関係者を韓国から招請するため、多くの出費が必要になります。
厳しい折に恐縮ですが、カンパへのご協力をよろしくお願いします。

【カンパ振込先】
郵便振込口座: 00930−7−64674  
ゆうちょ銀行: 〇九九 店 当座預金  0064674
口座名義  : 在韓軍人軍属裁判を支援する会

 読書案内

 『アボジが帰るその日まで
    〜靖国神社へ合祀取消しをもとめて』

 
   

          李熙子(イ・ヒジャ)/竹見智恵子 共著
             梨の木舎 1500円+税

 本書は、グングンおよびノー!ハプサの原告、映画『あんにょん・サヨナラ』の主人公の李熙子(イ・ヒジャ)さんが、生まれて13ヶ月で父と引き裂かれてから、父の靖国合祀取消し訴訟に人生をかけるに至った現在までの半生を語ったものである。『あんにょん・サヨナラ』の中に、韓国「望郷の丘」で父の名前の刻まれていない墓石の前にイ・ヒジャさんが佇むシーンがある。イ・ヒジャさんは「靖国神社から父を取り戻したら名前や事績を刻みたい」と誓う。本書のタイトルはこの強い意志を表現したものだ。韓国人元軍人軍属が靖国神社に合祀されたのは戦後、朝鮮が解放された後のこと。日本政府は韓国の遺族に戦死通知すら送らず、その一方で靖国神社に戦死情報を流し、無断合祀を推進した。父の安否を確認するすべもないまま、やむなく母が再婚し、イ・ヒジャさんの心は深い傷を負った。しかも亡くなった父は今なお日本国家に縛られ続けている。イ・ヒジャさんがどうしてもやりとげたいことは父を靖国から解き放し、家族のもとに連れ戻すことだ。この思いの深さが胸を打つ。
 第2章は、本書の生みの親ともいえる竹見智恵子さんが、イ・ヒジャさんの生まれ故郷の江華島をふたりで旅をして日韓の歴史とイ・ヒジャさんの生い立ちを重ね合わせたルポである。竹見さんがイ・ヒジャさんと初めて出会ったのは2001年8月14日、靖国神社の大鳥居の前でのことだった。「朝鮮人は帰れ!ここはおまえらの来るところじゃないんだ!」とヒステリックに叫ぶ右翼。ここから竹見さんの取材が始まり、本書の誕生となった。巻末には二つの裁判資料も収録されている。本書に込められたイ・ヒジャさんの願いを受止めることは、裁判支援にととまらず、真の歴史認識を深めるためにも不可欠のものと確信する。(塚本)

GUNGUNインフォメーション

10月10日(土)14:30 「韓国併合」100年市民ネットワーク設立1周年記念講演会
     イ・テジンさん(ソウル大名誉教授) 中塚明さん(奈良女子大名誉教授)
     龍谷大学大宮学舎・東101教室(西本願寺南側)
10月15日(木)11:00 ノー!ハプサ(合祀)訴訟第12回口頭弁論 東京地裁103号
21日(水)10:30 日韓会談文書公開訴訟 東京地裁522号
28日(水)13:30 靖国合祀イヤです訴訟控訴審第2回口頭弁論 大阪高裁202号
29日(木)13:30 GUNGUN判決 東京高裁101号
      15:30 記者会見&院内集会 衆議院第2議員会館第二会議室
      18:30 報告集会 港勤労福祉会館 ゲスト:高橋哲哉さん
        (JR田町徒歩4分、都営地下鉄三田駅A7出口すぐ)
31日(土)14:00 大阪判決報告集会(李熙子さんのみ)
        ドーンセンター5階セミナー室1(京阪・地下鉄「天満橋」駅徒歩5分)
11月1日(日)11:00 大阪団結まつり 扇町公園(JR天満駅すぐ)(李熙子さん参加)
11月21日(金)〜24日(火)納骨堂草刈りボランティア&判決報告ツアー