在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.45 (2007.8.18発行)




韓国の若者たちと李熙子さん東京ZENKOで
(2007年8月4日)

 

   

歴史歪曲の安倍政権に日本も世界もNO!
いよいよGUNGUN控訴審スタート!


 7月の参院戦で安倍政権は歴史的な大敗北を喫しました。安倍自身の歴史認識や改憲への目論見に国民が「ノー」を突きつけたのです。選挙結果に追い討ちをかけるように、米国下院本会議で7月30日、日本軍慰安婦強制動員に対する日本政府の公式の是認・謝罪および歴史的責任を要求する慰安婦決議案が、全員一致で通過しました。票決に先立って、トム・レントス下院外交委員長は、「どんな国も過去を無視する事は出来ない。ドイツは第2次世界大戦後に過去史を反省する正しい選択をした一方で、日本は歴史的な忘却をけしかける態度を見せた」と指摘。「狭義の強制性はなかった」と歴史を歪曲する安倍をはじめ日本政府の戦争総括に対して、世界中が注目しているのです。
 11月には国連人権委員会に対して「韓国人靖国合祀問題」をアピールする行動がサンフランシスコ・ニューヨーク・ワシントンで繰り広げられることが決まりました。日本でも連携を取り合って行動していきましょう。GUNGUN控訴審第1回口頭弁論は9月25日(火)14時東京高裁822号法廷です。ぜひ傍聴をお願いします。
 

いよいよ控訴審 第1回口頭弁論
9月25日(火)午後2時〜 東京高裁822号法廷
韓国より、高仁衡(コ・インヒョン)さん来日!遺骨返還!合祀取消を求める!

 いよいよ、グングン裁判の控訴審が始まります。第一回口頭弁論が、9月25日(月)午後2時から、行われます。当日、韓国からは、高仁衡(コ・インヒョン)さんが済州島から来日します。高仁衡さんのお父さんは、1944年東部ニューギニア・ボイキンで戦病死。遺族に通知も遺骨の返還もなく、ただ、靖国神社にだけは通知されていました。

 政府の嘘を暴きだした新編靖国神社資料集

   
 
 

高仁衡(コ・インヒョン)さん

 一審判決後の今年3月、既報のとおり、新編靖国神社問題資料集が発刊されました。これについて、ノー!ハプサ、靖国違憲訴訟・東京、グングン裁判を支援する会の共催でシンポジウムが開催されましたが(次項参照)、そのなかで『靖国の戦後史』の著者・田中伸尚さんは、「この資料のなかだけでも、靖国神社と厚生省は17回もあって、打合せをしている。その中には、旧植民地出身者の合祀をどうするかも含まれている」と報告。明らかに政府・靖国神社一体として合祀が行われたのです。「靖国神社から戦没者の照会を受けて戦没者に対する回答をしたにすぎない」(被告・国)と国の言うことを鵜呑みにした裁判所の「一般的な行政調査の範囲内の行為」(一審判決)が、いかに嘘であったかが明らかになりました。裁判所は政府の嘘を見抜く検討を回避し、国に追従したのです。

 遺骨は日韓協定で「解決」などしていない

 一審判決は、遺骨返還請求に対して、「遺骨の所有権が『権利』に該当するとすれば、日韓協定・措置法で韓国人遺族の請求権は消滅」、また、(物権的請求権に基づく)遺骨返還請求については「国が遺骨を占有していることが要件であるが、国が遺骨を所有していると認められない」から返還されないのは当然としています。ここには、強制動員し、死に追いやった反省がどこにも見当たりません。遺骨を調査・収集し、返還の努力をすることこそが、日本政府の行うべきことです。米国は、いまだに朝鮮戦争時の戦死者の遺骨を粘り強く行っているのです。

 「憲法の想外」をいう裁判所の変革が必要

 日韓協定とそれに基づく措置法(韓国人の権利を日本法で消滅させた法律)も重要な問題であり、すでに、原判決の誤謬性について明らかにしています。つまるところ、政府の主張は「措置法は敗戦に伴う国家間の財産処理をめぐる事項に関するものであって、憲法の各条項の想定する範囲外のものだから」というものです。戦争の反省から出発し、二度と同じ過ちはしないとした憲法の各条項を適用しないとすれば、何を判断の法的根拠とするのでしょう。戦後補償裁判で必ずでてくる「国家無答責」論や、「憲法の想定する範囲外」との裁判所判断は、みずからが侵した戦争犯罪を反省しないからにほかなりません。平和の歴史を切り開くためにも、裁判所自身が変わるべきです。

 充分な控訴審審議をさせるために傍聴席を一杯に!

 控訴審は、十分な審議も行われないまま結審となるケースも多々あります。一審判決は、国の言い分に従った「御用判決」でした。控訴審で、この破廉恥な判決を覆さなければなりません。皆さんの傍聴の力が必要です。是非、傍聴に来てください。

 

グングン裁判控訴審報告集会
9月25日(火)午後6時30分から
場所:東京しごとセンター地下講堂(予定:JR・地下鉄「飯田橋駅」徒歩5分)

 

第1回口頭弁論にあわせて大阪で集会

語り合おう!海をこえて
野ざらしの遺骨と「英霊」とのギャップ


9月23日(日)
時間:14時〜17時(13時半開場) 
場所:クレオ大阪西 音楽室(JR・阪神「西九条」駅下車5分)

内容 日本青年会議所制作のアニメ「誇り」上映
    教育をとりまく状況(教育現場から)
    遺骨・靖国問題の解説(GUNGUN事務局から)
    ビデオ「忘るまじ 未帰還兵の無念」上映
    韓国からの訴え(高仁衡さん)
交流(チャンゴ・太鼓演奏あり)

参加費:一般500円 中学高校生 無料

 

シンポジウム「新資料集から見える靖国合祀の真実」報告

「文字どおり国・靖国神社一体」(田中伸尚さん)

   
 
   

 7月8日、田中伸尚さん、辻子実さんを招いて、新資料集に関するシンポジウムが行われた。50名くらいの会場ではあったものの、満席となった。新資料集を読めば読むほど、これまで、国が言っていた「回答事務の一環」、判決の言う「行政サービスの一環」が嘘であったか、を如実に示している。この新資料集をテコに、国を追い詰めていこう。

 

   
 

【田中伸尚氏報告要旨】
 この新編資料集は大別して3つに分かれている。一つは、国会議事録、二つ目は、靖国神社が所蔵している「合祀資格審査方針綴」、そして、三つ目は、中曽根首相時代の「靖国懇」の資料である。これまでの資料を通じて「国家の度の過ぎた関与」と考えていたが、新資料を見ると「国・靖国が全く一体」で、「国・厚生省が祭祀部門を抱えていた」とさえ言える。
 全てではないと思われるが、この資料の中だけでも靖国神社と厚生省は、17回の合祀基準等の打合せをしている。1952年以降、合祀基準を「援護法および恩給法の適用者」としたが、それ以外にも拡大していく。沖縄戦の「6歳以下65歳以上の戦争協力者、対馬丸戦没者」などなど、こういうことを厚生省と靖国神社は打ち合わせて合祀していた。旧植民地出身者もこの打合せの中で、合祀されている。   
 

昭和33年4月9日の「合祀基準に関する打合せ(第4回)」において、
 旧海軍として阿部事務官(厚生省)より説明
 3.尚朝鮮・台湾出身者を昭和34年4月合祀できるよう(祭神)名票準備を行う予定である。
 4.陸軍も準備することとする(三浦、注:厚生省事務官)。
                        (以上、「新編靖国神社問題資料集」より)

   
 
   

 靖国神社は、大阪で始まった「合祀イヤです訴訟」で「合祀基準は(無断合祀も含め)教義」であると主張している。教義に国が関与していることになる。この合祀問題は、靖国問題の要と言える。靖国神社は、国・天皇のために亡くなった人を讃えることを通じて、戦争を賛美し、第4帝国・日本の核となる装置である。ここに合祀問題の重要性がある。2001年GUNGUNの合祀取消提訴には衝撃を受けた。「ヤスクニの檻」に閉じ込められているという。日本人がはっきりと言えなかったことだ。ノー!ハプサ、グングン裁判は重要。(M記)
 

「ノー!ハプサ(合祀)」の第1回口頭弁論に傍聴を!
9月7日(金)午後4時〜 東京地裁103号法廷

 韓国から李熙子さんら3名の原告来日予定

 この日、一日行動が取り組まれます。この闘いは、国・靖国神社一体となった合祀取消(霊璽簿からの削除)により、あの侵略戦争を「正当な戦争」とする、安倍を初めとした歴史修正主義・靖国史観との闘い、平和を求める闘いです。是非、傍聴に!

9・7行動スケジュール
12時〜13時 宣伝行動:東京地裁前
13時半〜14時半 靖国神社無断合祀問題を考える院内集会(仮称) 会場未定
16時〜 第1回口頭弁論:東京地裁103号法廷(霞ヶ関駅下車すぐ)
※30分前までには裁判所前に集合を。
19時〜 報告集会:豊島区民センター音楽室

 

韓国学生の「日本・平和の旅」に同行して(大幸)

 
 
 
 
 
 

 8月2日、新大阪駅ホームに学生と民族問題研究所や太平洋戦争被害者補償推進協議会の一行が到着。ウサギのキャラクターが可愛い名刺を下さったシン・ウシクさんは河南市でウサギ飼育農園の代表者です。「ナヌムの家」の支援活動をしておられるそうで、ハルモニたちもそこで働いているとのこと。当初14人いたのに、今は9人になっていると顔を曇らせて話してくださいました。
 
 その後JRを使って鶴橋駅までの大移動。改札を出ると10人の若者が待っていてくれました。立命館大学の勝村先生のゼミの学生さんたちです。韓国の学生たちはすぐに「アンニョン!」とにこやかに握手しています。初対面とは思えないその様子に「平和通信史」の自覚をしっかり持っているなあと、感心させられました。合流した一行は、コリアタウンを通って「韓国キリスト教会館」まで歩きました。

 そこで、韓国の学生代表から「私たちは東アジアの平和のためにやってきました。長崎の在日の被爆者に会い、ウトロのおじさんに話を聞き、ヤスクニを見学して学び、日本の右傾化を日本の学生といっしょに阻止し、東アジアが明るく笑顔で遊べる地域にしていきたいです」というメッセージ。彼らは7つの大学のサークルに所属していて、その連合体を「希望」と名づけ社会的ボランティア活動をしているそうです。立命館の学生からは「国と国の問題はいろいろあるけれど、人と人、友と友、地域と地域がつながることで仲良くなれると思います」とのあいさつがありました。

 コリアNGOセンターのキム・カンミンさんからは、若者に「韓日の問題のはざまで在日の問題が置き去りにされてきたけれども、韓国が世界のどこの国よりも人権を尊重する国になることが、在日に対する何よりの追い風になること。マイノリティーの感性、経験こそが社会を変えていく力となるが、それにはパートナーが必要である。日本の若者には、たった一人でもやる勇気・やめる勇気をもってほしい」という示唆に富んだ話がなされました。

 そのあと、桃谷にある朝鮮初級学校を訪ねましたが校長さんを始め教職員の皆さんはサッカー大会の応援に行って、学校には保護者と数人の子どもたち以外誰もいません。学生たちは、持ってきた寄せ書きや漫画本を保護者に預けることにしました。韓国では、ドキュメンタリー映画「ウリハッキョ」によって、民族学校の存在を初めて知る人に深い感動を与えているそうです。道すがらなぜ漫画本を持っているのだろうと思っていた謎が解けました。

 蒸し暑い大阪の夏にもめげず、若者たちは明るく礼儀正しく行動していました。イ・ヒジャさんが「あなた方は希望の星」と語っていましたが、まさしくその通りです。「清清しい風をふきこんでくれてありがとう」という感謝の気持でいっぱいになりました。
 

平和と民主主義をめざす全国交歓会(全交)報告(木村)

 国際連帯で平和と民主主義の実現を目指す運動の全国交流会が東京で開かれ、韓国からの平和通信使70名と共に、ノーハプサの原告ナ・ギョニムさんも参加された。

 

ナ・ギョニムさん

 

 「60年の人生を、短い時間では言えないが…」と発言を切り出されたナ・ギョニムさんは、90年代に遺族会光州市支部長を引き受けたのは、「生後48日目の時父と別れて以来父と口にすることがなかった。遺族会の中ではアボジという言葉を口にすることができる」。また、「知るすべのない父の行方が分かるかもしれない」との思いからだった。
 「父は8か月の軍事訓練を受けたが、この間1度も家に帰らず、令状が出ると家族にも知らせずコッソリ来いと言われ、誰も見送りすることができなかった」。その後の消息は分からず、夫の友人が厚生省から取り寄せた資料でニューギニアにいたことが分かり、これを手がかりに父が東部ニューギニアの野戦病院で患者の世話をしていたこと、後に食糧補給所が米軍に破壊され、おそらく飢え死にしたのではないかと知らされた。この話を聞いた時、お父さんに再会した気分で、その人は娘に会った気分で抱き合って喜んだ。その話を聞いた後、食事をしても、申し訳ない気持ちになる。

 
 

 靖国合祀については活動の中で知ったが、初めはどういう意味をもつのかわからなかった。日本の天皇のために戦ったから、日本の神として祀られていることを知り、とても許せない。生後間もない娘を残して、どうして進んで行ったというのか。母はとんでもない、後ろ髪を引かれる思いで行ったのだという。だから日本に行ったら、靖国から名前を削除できるようお願いして来なさいと強く言われてきた。
 そして、お父さんの「志願兵」訓練所終了の記念アルバムと一枚の写真を取り出された。写真を胸に、「父の恨を晴らすために使っている。いつも触っているので随分汚れてしまった。日本大使館前でハンガーストライキ15日行動を行ったときも、雨の中雪の降る中この写真を胸に抱かれていたという。

 韓国から参加した学生たちはこの話を聞いた後「知った限り、他の人に知らせていく責任を感じている。沈黙は歪曲以上に悪い。人の考えを変えるのは大変だが、信頼できる仲間と共にできる行動は何か、より深めていきたい」と語った。
 最後にナギョニムさんは、「発言ができて、少しばかり気持ちが晴れた。多くの方が協力してくれることを知り、きっといつか父の名も靖国から削除される」と話された。
 韓国からのこのツアーの名称は「日本・平和の旅」で、学生たちも皆映画“あんにょん・サヨナラ”を見ている。“あんにょん・サヨナラ”が訴える、国を越えた市民の交流がより広く浸透しているのを感じた。そして、ツアーを通して更に多くの交流があり 新たな出会いを得てきたということが報告されていた。
 ツアーの最終地東京の集会でナ・ギョニムさんの話を同じ空間で聞けたことを新たな出発点に、一人でも多くの方に知らせていく責任をもち“靖国合祀ノー:霊璽簿からの名前の削除”を実現していきたい。



日韓の寄せ書き

 

展示された靖国諷刺画

日本も韓国の強制連行被害者の支援法に学べ!(中田)

 7月3日、韓国国会で「太平洋戦争前後強制動員犠牲者支援法案」が成立しました。
 @ 強制動員犠牲者遺族に対して、1家族当り2000万ウォンの慰労金を支給、A 負傷で障害を受けた人に、1人当り2000万ウォンを限度として障害のレベルよって慰労金を支給、B 生存者に対しては 1人当り500万ウォンの慰労金を支給、C 未払賃金について、1円当たり2000ウォンに換算して支給、D 生存者に対して、治療費用の一部を医療支援金で支援するというものです。
 昨年3月に政府が示した原案に対して、生存者に対しても慰労金500万ウォンを支給し、未払賃金の換算率を見直す、より一層前進した内容でした。しかし、8月2日「生存者への補償は、国家に多額の財政負担を強いる、朝鮮(韓国)戦争の犠牲者とのバランスがとれない」などの理由で「再議」に付される事になりました。しかし、韓国政府の原案でも「日韓条約」を盾にとって強制連行被害者をバッサリと切捨てる日本政府の姿勢とは正反対の画期的な法律です。
 韓国における「過去の見直し」は、「親日派」の問題から、朝鮮戦争時の民間人虐殺、「疑問死」事件などすべての「負の過去」を克服しようという立場から取り組まれています。自らの過去を教訓として過ちを繰り返さない「国」にしようということです。徹底して過去に背を向けて来た日本こそが、「20世紀の不幸な歴史を清算して、アジアの指導国家としての地位を堂々に確保するためにも、歴史的な葛藤のくびきから脱するように積極的な政策を樹立」しなければなりません。
 

あんにょん・サヨナラ特集
        寄稿:長崎上映実行委員会 菊地孝夫さん

 長崎で初めて「あんにょん・サヨナラ」の上映会をしました。僕自身がもともと満鉄や細菌戦など中国侵略戦争を勉強していたこともありました。そして二度とこのような残虐な侵略戦争を許してはならないと思っていました。その思いに応えるようにこの映画ができ、ぜひ多くの人に見てもらいたいと、長崎市内と佐世保で上映会を行いました。集まった人たちは50人くらいでしたが、アンケートで一つ一つが胸を打つ感想が返ってきました! 本当にこの映画をありがとう! 長崎では、地域での上映会などを今後も計画していきます。そして有事法制と戦争協力に反対する労働者の闘いとも結びついて、憲法改悪と戦争に反対していきたいです。その一部を、ご紹介したいと思います。

・良い映画を本当にありがとうございました。終戦の時(12歳)朝鮮に居りました。日本人が朝鮮の方に対してどんなことをしたか、肌で記憶しています。なかなか簡単に許されるものではないと思います。このような映画が北朝鮮との間にできるのは一体いつでしょうか? 38度線をつくったのは、日本が原因だと思いなんとかしたいです。

・最近の強引な右傾化日本、政治はこういう昔の犯罪を、きちんと位置づけてきていないからでしょう。昨夜の強行採決をみても、日本国中ウソばかりでかためたことばかりで、又あのまちがいを犯していくのではないかと思う。それに歯止めをかけていかなければならないでしょう

・この映画に出会えてよかった! 韓国の人の本当の苦しみが良く分かった! 一日本人としてもっともっと深く考えていきたい

・心が苦しくなりました。今日見たことを話していくことが、私のできる事かなと思います
 

 読書案内

 『マンガ版・神聖喜劇(1)〜(6)』
     
作・大西巨人  漫画・のぞゑのぶひさ  脚色・岩田和博
             
幻冬舎 1365円+税

 
   

  あの戦争にも一理あったのかもしれないと平気で叫ぶ人たちが、ステージ中央に出てきた。 そうした過ぎた痛みを忘れ、侵略を正当化する風潮に、マンガ版「神聖喜劇」は、きっぱりと棹さす刺激的な作品である。徹底してリアルであり、ユーモアがあり、ミステリーでもあり、そして生きることを考えさせてくれる作品である。「神聖喜劇」の原作は、大西巨人氏の戦後文学を代表する作品である。のぞゑのぶひさ氏、岩田和博氏の漫画化で、「時の作品」となった。マンガ化の功罪は論議はあるようだか、原文の漢字、法令文の多さを見てパスする読者にもメッセージが読み取りやすいという点では、成果はあったと思う。
 ストーリーは、主人公東堂太郎が、太平洋戦争末期に日本軍に徴集され、その超人的な記憶力を武器に、軍隊内での矛盾と立ち向かう。彼の90日間の軍隊生活を通して、軍隊内の暴力、差別が詳細に暴かれる。東堂をはじめとした兵卒に暴力・戦争を正当化する大前田軍曹との正邪を超えての綿密なやりとりは秀逸である。東堂らの抵抗が一定の成果がでた場面は、痛快ではあるがしかし根本が変わったわけではない。結局、軍隊システムそのものの「毒」が浸透しきった状況の中で、その根本のボタンの掛け違えを問うていくこと、それは今の社会にも通じる問いかけだと読み取るべきなのだろう。原作もマンガ版も、大長編である。他にも読み方はあると思う。でも、あの戦争の痛みを再確認し、今を考えるためには絶好の作品である。(大釜)
 

 
   

お奨めの映画 『ウリハッキョ』

 2006年度釜山国際映画祭で銀波(ウンパ)賞を受賞したこの作品は、北海道の「朝鮮初級・中級・高級学校」を舞台にしたドキュメンタリー映画です。あの広い北海道に一つしかない学校に通うために、早い子で6歳から寄宿舎生活が始まります。敢えて民族学校を選んだ保護者の思いを受け止めて、生徒たちと関わるソンセンニムの姿、保護者の声、など胸があつくなります。生徒がときおり監督に向かって話しかける場面がとっても自然でほほえましい。それもそのはず監督のキム・ミョンジュンさんは3年間寄宿舎に滞在して撮影したそうです。韓国でセンセーションを巻き起こしているそうですが、日本でこそ多くの人に見てほしい映画です。(大幸)
 

GUNGUNインフォメーション

8月23日(水) 第5回シベリア抑留犠牲者追悼の集い
          13:00〜 国立千鳥が渕戦没者墓苑
          主催:全国抑留者補償協議会ほか

8月28日(火) 靖国合祀イヤです訴訟(大阪)11:00(集合10時)大阪地裁202号
          13時 学習集会 エル大阪701号

9月7日(金) ノー!ハプサ第1回口頭弁論
          16時〜 東京地裁103号法廷
          19時:報告集会 豊島区民センター

9月23日(日) 語り合おう!海をこえて 野ざらしの遺骨と「英霊」とのギャップ
          14時〜17時 クレオ大阪西(JR・阪神西九条駅5分)

9月25日(火) 日韓会談文書公開訴訟 11時 東京地裁713号法廷

9月25日(火) GUNGUN裁判控訴審第1回口頭弁論
          14時〜 東京高裁822号法廷
          15時〜17時 報告集会&原告を囲む会(弁護士会館、地下鉄「霞ヶ関」)

10月20日(土)あんにょん・サヨナラ上映
          13時〜 東京 全労連会館2階ホール
          主催:全労連全国一般労働組合東京地方本部