在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.44 (2007.6.9発行)

春川納骨堂で開催された
金景錫さんの一周忌式典
(2007.5.28)
 

   

相次ぐ戦後補償裁判の政治癒着判決を許さない!
GUNGUN控訴審第1回が9月25日に決定!

 安倍首相は4月靖国神社の春季例大祭で、「内閣総理大臣」名で供物を奉納していました。3月に国立国会図書館による「新編靖国神社問題資料集」発表により、旧厚生省軍人出身者が合祀に直接関わった資料が明らかにされた直後だけに、その合祀によって傷ついている人の存在を完全に無視した許されない行為です。安倍は、従軍慰安婦問題での「狭義の強制性はなかった」発言をはじめ、歴史認識においてアジア被害者への挑発を繰り返しています。また司法の場では、下級審で勝利判決が出された中国人戦後補償裁判で、「72年日中共同声明での請求権放棄」を認定し、次々と逆転敗訴判決を出しています。(3月新潟・中国人強制連行裁判・東京高裁、4月広島・西松建設中国人訴訟・最高裁)
 こうした判決は、これまで多くの判決の中にあった立法化を促す意見を無視し、生き証人が息絶えることを狙った安倍政権の姿勢に導かれたものです。しかし歴史修正、改憲へ突き進む安倍政権の動きを市民は許しません。2月にはGUNGUN原告をはじめ11名の韓国人が、靖国神社相手に「霊璽簿からの氏名抹消」を求めた訴訟「ノーハプサ(合祀)」を起こしました。3月には東京大空襲の被害者、遺族らが国を相手に損害賠償と謝罪を求める訴訟を起こしました。国の戦後責任を追及する市民が立ち上がった裁判として注目されます。
 GUNGUN裁判控訴審の第一回口頭弁論が、9月25日午後2時から(822号法廷)に決定。いよいよ控訴審が動き始めます。引き続きご支援ください。
 

いよいよグングン裁判控訴審が始まります!
9月25日第一回口頭弁論が決定!

 
 

昨年5月25日の不当判決時

 グングン裁判の控訴審がいよいよ始まります。昨年5月25日の不当判決後、6月2日控訴しましたが、亡くなった原告―訴訟の継承問題や訴訟救助等の関係で控訴審の口頭弁論の期日の決定が遅れていました。今回ようやく訴訟救助が決定され、第一回口頭弁論が、9月25日午後2時からに決まりました。法廷は822号です。いよいよ控訴審です。1年以上にわたり口頭弁論がなかったので、支援体制に不安があります。是非、一審のとき以上のご支援・傍聴体制をお願いします。


一審の認定を覆す「新編靖国神社資料集」 ―明白になった国の嘘―
 

 

新資料に関する新聞記事

 

 被告国の主張を検討も抜きに受け入れた一審判決は、靖国合祀について「被告国が行った戦没者通知(こういう言葉自身国がつかっているものであり、通知は「靖国神社合祀事務に対する協力について」と述べており、ここからして作為がある)は一般的な行政の調査、回答事務の範囲内の行為というべきであり、戦没者合祀の実施は、靖国神社がその判断、決定によって行われていたと認められる」と判決しました。しかし、今年3月末発刊された国立国会図書館編「新編靖国神社資料集」には、とても「一般的な行政の調査、回答事務の範囲内」とは言えない、国・靖国神社一体の事実が明らかにされています。現在、国立国会図書館のホームページで見ることができるので見てください。(「国立国会図書館  新編靖国」で検索してください)
 その「『第三期1952年4月28日〜74年まで』の『合祀関係』」に合祀基準について厚生省と靖国神社が詳細に打合せをしていることが示されています。昭和33年4月9日の合祀基準の関する打合会(第4回)が靖国神社社務所で、厚生省引揚援護局、靖国神社、傍聴(奉賛会)の出席のもとで開催され、その席上、厚生省側から「尚朝鮮・台湾出身者を昭和34年4月合祀できるよう名票準備を行う予定である」(阿部事務官)、「陸軍側も準備することとする」(三浦事務官)と発言しています。つまり、韓国人合祀については厚生省側から言い出しているのです。

問題は何も解決していない ―日韓協定公開、遺骨の調査・返還を―
 

 

二次提訴時のシベリア抑留原告

 

 グングン裁判の多くの原告は、未払金の請求やシベリア抑留中の捕虜労働賃金の返還を求めています。また、遺骨も重要な問題です。一審判決は「日韓協定締結時請求権あったものは全て措置法により消滅している」としました。今、韓国での請求権協定全面公開に続き、日本でも公開請求の裁判が行われていますが、韓国の朴独裁政権を支援するために結ばれたこの協定は、戦争犠牲者のことを全く無視するものでした。BC級戦犯問題などは、全く考慮されていなかったことが韓国側資料で明らかになっています。シベリア抑留問題も日韓協定で解決しているとはいえません。遺骨問題も一向に本格的解決に向かいません。日本人内部から「日本の政治家は『靖国』ばかりいうが現地に残された遺骨を見ると愕然とする」という声すら聞こえます。米国下院では「慰安婦問題」での決議案が出され、国連では「慰安婦」「強制連行・労働」問題が日本政府の執拗な画策にもかかわらず今なお問題が継続しています。国・三菱重工を被告とした勤労挺身隊裁判でも負けはしましたが「正義・公正に著しく反する行為といわざるをえず、違法」と認定せざるをえませんでした。同じ日本人軍人軍属として動員しながら、旧植民地出身者には恩給も年金もないという差別的取り扱い問題は、仏セネガル兵の対応等で既に国連で指弾されているのです。犠牲者への韓国での立法化の取り組みも進んでいます。BC級「戦犯」の韓国での遺族会も発足するなど新たな動きもでています。闘いはまだまだこれからです。

韓日の原告・弁護団・支援者を結んで裁判勝利・要求貫徹を!

 控訴審では、口頭弁論の進行は早いことが予想されます。原告の要求をかなえるために、最大限の努力が必要です。新たに発足した「ノー!ハプサ」ともに、靖国問題の解決を進め、日本政府に責任を認めさせ、韓国人シベリア抑留問題解決の突破口を 開けなければなりません。ご支援を引き続きよろしくお願いします。
 

第一回口頭弁論
9月25日午後2時
822号法廷

中国人強制連行訴訟「4・27最高裁敗訴判決」を乗り越えて
    今こそ全ての戦後補償運動の団結で政府に解決を迫ろう!

 (強制連行企業責任追及裁判全国ネットワーク共同代表 持橋多聞さん)

 
 

三菱訴訟で行動する持橋さん

 既にご承知の様に、4月27日に「広島西松建設中国人強制連行訴訟」と「山西省中国人『慰安婦』第一次訴訟」の最高裁判決が行われ、被害者の請求権棄却が言い渡されました。また、同じ日に「北海道・劉連仁訴訟」「福岡三井鉱山強制連行訴訟」についても同様の敗訴判決が電話で通告されました。裁判に一縷の望みをかけて闘ってきた原告と弁護団の落胆は大変なものだったと思います。判決文のポイントを検討し、戦後補償問題の解決に向けた今後の行動について述べたいと思います。

最高裁判決の矛盾点と運動上のポイント

 判決の拠りどころは1972年の日中共同声明です。これは政府がいう「二カ国間の条約で解決済み」にあたるものです。その中で「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好の為に、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」となっていますが、最高裁はこの項目で中国国民は請求権を放棄したのだと強弁しているのです。その根拠としてサンフランシスコ条約第14条のB項で「連合国およびその国民の請求権を放棄する」となっているのだから「請求の主体として個人を明記していないからといって、サ条約と異なる処理が行われたと解することは出来ない」と推測し、断定しているのです。95年3月、この点に関して中国の銭外相は全国人民代表大会で、代議員の質問に応えて「個人の請求権は放棄されていない」と答弁。さらに私たちは中国政府の公式の態度表明を求めて数次にわたって申し入れを行い、その結果今年の3月13日、中国外交部報道官の「共同声明について一方的な解釈を行うべきではない」「強制連行が重大な犯罪行為の一つであり、日本政府が歴史に責任を負う姿勢で取り組むべき」とのコメントを引き出しました。同様の記者会見は4月26日にも行われ「最高裁の判断が誤りのないものであることを希望する」とコメントしています。こうした中国政府の度重なる態度表明にも関わらず、共同声明の一方的な解釈が行われ、原告の請求が斥けられた事に、中国外交部の劉報道局長は「このような判決は不法で無効」なものであると抗議しました。ただ一点だけ注目すべき点があります。それは「ここでいう請求権の放棄とは、請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて裁判上訴求する機能を失わせるにとどまる」のであって「債務者側において任意の自発的な対応をすることは妨げられない」と述べている点です。これは言い換えれば政府や企業と話し合って解決する権利は残っていると言う事です。

さらに闘いを強め、戦後補償問題の解決を政府に迫ろう!

こうした権利を生かして政府や企業に解決を迫る闘いを展開していく訳ですが、問題は安倍内閣です。安倍内閣は首相をはじめ戦後補償に否定的な閣僚で固められており、アメリカでの「慰安婦」決議を阻止するロビー活動に躍起となっていますし、ILOでの強制労働条約違反の勧告の採択を阻止するために全力をあげています。また現行憲法の9条では解釈改憲でいっても自衛のための軍隊止まりなので先制攻撃が出来ないとして改憲を日程にのせています。その背景にアジア全体の「反日化」の動き、特に戦後補償を求め、日本の反動化を憂える人々に対する恐怖心があると思います。それがまた集団的安全保障、つまり日米同盟の軍事的一体化をめざす動きとなっています。これは現在ブッシュ政権が行っている軍事的冒険主義に一体化していくもので非常に危険で、日本を破滅させかねない危険な方向に向かっているといえます。私たちは、過去を克服して強制のアジアを創ろうと努力して来ましたが、まさにこうした方向だけが日本の進むべき道だと思います。来る参議院選挙でもこうした観点から志を同じくする議員の当選の為に奮闘したいと思います。そして戦後補償運動が時代を切り開く先頭に立って戦後補償を解決し、アジアと共生し、共に発展する平和で信頼に満ちた政府の実現のために奮闘しましょう。
 

金景錫(キム・ギョンソク)さん一周忌
       草刈りボランティアツアー報告
(木村)

 
 

故キム・ギョンソクさん

 
 

思い出の旧事務所で

 
 

新事務所でホン会長(左)と

 
 

草刈り

 
 

一周忌記念式典


 2001年から始めたボランティアツアーも今年で7回目。いつもは秋の旧盆に合わせるが、今年は金景錫さんの一周忌があり5月となった。私は第一回目から欠かさず参加させてもらっているが、春川の事務所に行けば、 キム・ギョンソクさんが満面の笑みで迎えてくださるのが最大の楽しみでもあった。昨年、今年と春川の事務所に向かうのが寂しい。でも今年は、東京から韓国初めてというメンバーも含めて参加があり、春川の駅に着くとホンさん、李先生、ノーハプサの原告でもあるヨ・ミョンファンさんが各々車で私たちを出迎えて下さった。いつもお世話になる方々に会えるとホッとする。

 次の日朝からいつもの事務所に集まるが、ここももうすぐ移転ということで参加者全員で記念写真を撮る。キム・ギョンソクさんの思い出の事務所の中や入口も写真におさめる。次に、建設中の新事務所にも立ち寄り、中を見せてもらう。関連の団体が一つのビルに事務所を構えるようで、江原道が建設しているとのこと。外観もオシャレで中の会長室も広い。「お客さんをたくさん迎えられる」とホンさん。ここの事務所費は何と光熱水費のみ。韓国では真相糾明法が通り、戦争被害者がやっと市民権を得たということだろうか。

 そして、納骨堂へと向かう。そこに日差しが暑く感じられる中、勢いよく育った草が私たちを待っていた。手当たり次第に抜いたり刈ったり、キム・ギョンソクさんのお墓の周りや明日お客さんを迎えるあたりは丁寧に掃除しスッキリしあがる。ひと汗かいて皆満足。 キム・ギョンソクさんのお墓にお参りし、納骨堂にも手を合わせた。

 お墓の横には石碑が建てられている。碑文はキム・ギョンソクさんが生前用意されていたもので、「此処に強情ぱりな老人が日帝の鎖から切り抜けて此の國の残存親日勢力を払拭する為一人きりで半生を捧げ闘った。二度の法廷勝利で怨みの多い霊を慰めた」と。理不尽な日本の国を相手に闘ってこられた キム・ギョンソクさんの志を私たちの心に留め、未だ解決していない戦後問題の解決に力を尽くしていきたいと思う。

 翌日朝からは一周忌記念式典が催された。李熙子さんの姿も見える。まずは石碑の除幕式。現地のマスコミMBCも取材に来ている。経過報告の後、韓国側を代表し、朴聖圭・日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会事務局長と、金鐘大・太平洋戦争犠牲者遺族会会長が弔辞を読み上げる。続いて日本側から谷川透・日本鋼管訴訟を支える会代表、古川雅基・在韓軍人軍属裁判を支援する会事務局長、山田博・不二越訴訟弁護団長が、それぞれ弔辞を読み上げた。それぞれの言葉に生前の キム・ギョンソクさんの歩んでこられた闘いの歴史と業績がしっかりと刻まれていて、参加者みんなで確認しあう、いい式典だった。



参加者の感想


【山本進さん】

 

左から伊藤さん、山本さん

 

 金景錫さんは日本軍の行った強制連行や強制労働を一番初めに告発しました。今、日本では憲法が変えられようとしています。日本国憲法は戦前・戦中に日本がアジアの民衆に対して行った事実の反省にたって成立しました。一周忌に金景錫さんの業績を検証し、日本国憲法を守ろうという気持ちを新たにしたいという意味で参加しました。追慕式では日本から3名が代表して弔辞を述べましたが、金景錫さんの運動の力強さがひしひしと身近に伝わってきました。戦争と侵略の事実は今更ながら、日本での改憲の動きとは到底相容れないという思いを強くしながら聞きました。金先生の残した「明日地球が滅ぶとも今日りんごの木を植えよう」との言葉はみんなに受け継がれるんだなあ、との実感です。また、春川に来る前、ソウルに立ち寄りましたが、タプコル公園に3・1独立運動の銅版のレリーフ10枚が張られていました。日帝への抵抗と残虐さを印象的に示しており、歴史を伝えていこうとする意思を感じました。また、今韓国の経済は活発な成長をしていることが、あちこちに高層マンションが林立していることでよくわかりました。

【伊藤精史さん】

 私は東京の荒川で昭和10年に生れています。下町での戦中や「朝鮮人」に対する偏見の中で育ちました。戦後の民主主義教育を受けても、しばらくはその偏見は体のどこかにこびりついていたと思います。近年、平和運動の中で日韓の問題に遅ればせながら自覚できたというのが正直なところです。金景錫さんのことを話しに聞き、是非、記念式に出てみよう、特に戦後補償の問題に以前から関わってきた人たちと一緒に行くことで、深いところで韓国を理解することができると思ったわけです。金景錫さんという一人の人間が一身を投げうって真実のために闘ったこと、その過程で日韓両国の人々が固く結ばれていったことはよくわかりました。金先生の奥さんをはじめ遺族会の方々と日本側の人たちが長年に亘って培った信頼関係の只中に入れていただいて感謝しています。また春川の自然の美しさが印象に残りました。遺族会の人たちは私たちを風光明媚な昭陽湖へ連れて行ってくださいました。湖上を船で渡ってからハイキングを楽しみました。五峰山の緑の山腹と頂きを背景に清平寺が目に入ったときの感動は忘れられません。最後に、印象というより反省ですが、ハングルが全く読めないことで三日間フラストレーションを味わいました。再訪のときは看板、標識ぐらい読めるようにしておきたいと、つくづく思いました。
 

GUNGUNでは、今後も春川への納骨堂草刈りボランティアツアーを企画しますので、ぜひご参加ください。(ニュースでお知らせします)

 

韓国から「平和通信使」の若者が日本へ来ます。
交流しましょう!

金銀植さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会事務局長)より

 

キム・ウンシク事務局長

 

 
「韓国から70〜80人の若者たちが参加します。8月4日全体集会(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は全員が参加します。国際連帯文化フェスティバル、青年・学生ソリダリティナイトにも参加します。国際連帯フェスティバルには韓国からのイベントを考えています。8月5日分野別討議では、ノー!ハプサ(NO!合祀)靖国訴訟で参加します。今回のツアーは福岡から長崎、広島、大阪、京都を経由して東京へ行きます。できれば、各地域で全交のメンバーとの交流を考えています。」





ZENKO(2007平和と民主主義をめざす全国交歓会)のご案内

 
 

昨年の京都ZENKOでのイ・ヒジャさん

今年のZENKOへは韓国から若者が80人規模で合流(別掲)。またノーハプサ原告の李熙子さんや羅敬任(ナギョニム)さんも参加されます。5日の分野別討議はぜひノーハプサへ!
【プログラム】
8月3日(金)昼:グローバリズムに抗議!ワンデーアクション
       夜:前夜祭(ピースライブなど)
  4日(土)10時 開会全体集会
       14時半 国際シンポジウム
       18時 国際連帯フェスタ
  5日(日)9時 分野別討議 13時 交流広場 決議採択
会場:東京都大田区民センターなど
お問い合わせ:03-3267-0156(東京) 06-6762-0996(大阪)
 
 

「あんにょん・サヨナラ」特集

5月19日・韓国ドキュメンタリ−フェスタ in Osaka報告
「あんにょん・サヨナラ」「テチュリ村の戦争」「ソグム(塩)」の3本上映
仕事忙しかったけど、企画して良かった!!(小川)

 
 
 

講演する丁智恵さん

 私は受付をしましたが、9:30には「憲法集会でチラシをもらったから」とおっしゃる人達が続々と入場。ネットでの紹介という人も複数参加されました。勿論賛同団体からの口コミ紹介も多数あり、参加者は60名でした。ありがとうございました。

 「あんにょん・サヨナラ」の制作に深く関わっていただいた、日韓コーディネーターの丁智恵さんのトークを紹介します。丁さんは「あんにょん・サヨナラ」に関わるまでの自身のルーツを話しながら、誠実な静かな語り口で参加者の心をとらえていきました。およそ1時間の語りが私にはとても短く感じました。丁さんの話を要約させていただくと・・・
「日韓の問題は、政治や既成のマスメディアにまかせていては何も解決しない。互いに過激に取扱うだけで、日韓の溝を埋めようという努力をしていないと感じていた頃「あんにょん・サヨナラ」の企画と出会った。キム ・テイル監督をはじめとした韓国側と日本側とは、それぞれの国での歴史認識、宗教観、教育内容の違いにとまどい、気づきながらも、ある部分ではわだかまりにと発展した。その時打開するために、長く夜を徹して語り合った。そうやって私達が学んだことは、自分たちが加害者だ、被害者だという意識をなくそう。顔の見える関係こそが争いをなくすのであり、人間と人間としての交流の大切さでした。互いの顔が見えて、暮らしがわかる情報を発信することで、政治の力に左右されない戦争の起きない社会を自分たちで作っていきたい。私達の社会の主人公は私達だから、情報を発信する権利は私達にある」と。

 

「テチュリの灯火」の中井監督

 

 丁さんのそんな思いを受け止めながら、「テチュリ村の戦争」「ソグム(塩)」を鑑賞しました。残念ながら私は受付の関係で「テチュリ」はほんとに後半部分しか鑑賞できず残念でしたが、映像にも登場された中井さん(「テチュリの灯火」監督)が、参加者として来場されており、貴重な現地情報もいただきました。
「ソグム」は鑑賞できました。韓国鉄道労働者である女性達が劣悪な労働環境の中で生活し、恋愛し、妊娠し、子を産み、育てるという人間として当たり前の生活が保証されずに流産、体調不良を余儀なくされ、家族の病気の時も休めない実態について、女性達の言葉で正確に語られていました。それ故に非常に臨場感があり、人間としての痛みを共感しました。私ごとながら、30年前「夜勤ができないなら賃金カットで、退職金無し」という身分に怒りを持って労働運動を展開せざるを得なかった自分の姿を重ねていました。その運動のおかげで民間職場としては、かなり恵まれた労働処遇となっていることに誇りを持っています。資本のもとで働く人間としての一体感を感じさせるドキュメンタリーでした。韓国の市民メディアの先進性に学びながら、日本でも市民レベルで情報発信することの大切さを、この日あらためて実感しました。
 



『あんにょん・サヨナラ』を大阪・高槻市で自主上映会します。

「あんにょん・サヨナラ」高槻上映実行委員会

 昨年から今年にかけ、教育基本法改悪強行、「防衛庁」を「防衛省」に改称、さらに、改憲国民投票法案を強行採決し、来る参院選では「改憲」を争点にすることを目論むなど、現政権は矢継ぎ早に日本を戦争のできる国へ仕立て上げようとしています。その一方で、現政権の生み出した深刻な格差社会によって作り出される市民の不満は、弱い者いじめや差別・排外主義へと誘導されています。マスコミと一体となって朝鮮・韓国・中国への敵意を煽り、先制攻撃(=侵略戦争)や核武装さえも打ち出す政府の戦争政策が、社会的弱者へと追い込められた若者の間で共感を広げ、靖国神社を訪れる若者が年々増加の一途をたどっています。

 この現状を見過ごすことができないと感じている個人・団体(それぞれの立場から高槻市で平和・人権運動に取り組んでいる団体=高槻市無防備地域宣言を実現する会、高槻ドキュメンタリー映画上映委員会、高槻むくげの会)がこのたび、一致協力して、靖国問題を取り扱ったこのドキュメンタリー映画「あんにょん・サヨナラ」高槻上映実行委員会を立ち上げ、高槻市で上映することにしました。この映画を多くの人に見てもらうことを通じて、過去から目をそらし、再びアジアの人びとに銃を向けようとしている日本の現状を変えていきたいと思います。上映会は、古川雅基さん、古川佳子さんをゲストにお招きし、お二人の講演を間に挟んでの2回上映とします。

「あんにょん・サヨナラ」上映と講演
6月30日(土)高槻市立総合市民交流センター8F イベントホール(JR高槻駅南スグ)
1:30p.m.開場 @2:00p.m.〜4:00p.m.「あんにょん・サヨナラ」上映
A4:10 p.m.〜5:45 p.m.講演 古川雅基さん(在韓軍人軍属裁判を支援する会)・古川佳子さん(元箕面忠魂碑裁判原告)(手話通訳あり)B 6:00p.m.〜7:50p.m「あんにょん・サヨナラ」
主催:「あんにょん・サヨナラ」高槻上映実行委員会(TEL&FAX 072-672-2728 )
参加費999円(小学生・中学生は500円)(保育あり・要予約)

 



奈良で「あんにょん・サヨナラ」&「ノー!ハプサ」(吉間千佳さん)

 

吉間さん

 

 「奈良でノーハプサの会を支援することになったので、吉間さん代表者になって」と言われて、私がさせていただくことになりました。もともと私は人前で何かしゃべったりするのがとても苦手で、代表者になる器ではないのですが・・・。小学生の時に、よく学校で日韓の問題についての映画を観ました。私は自分が日本人である事が恥ずかしく思い、父にこのことについて話した事がありました。しかし父の、「いつまでも昔のことを持ち出されて!いつまで言われなければならない?特にお前たちはまだ生まれていない時のことだろ」と言う言葉に「違う!そんな問題じゃない!」と心の中で叫ぶ自分がいるのに、父を納得させられる言葉が見つからず、自分に悔しく思いました。今でも相手を納得させられる言葉は言えませんが、そんなふうに思っている限り、私たちはいつまでも日本人であることを誇りに思えないのだということは言えます。「あんにょん・サヨナラ」のDVDを観たとき、イ・ヒジャさんの父親を想う気持ちがあふれ出ていた姿、そして彼女を悲しみにおいやった日本人である古川さんをはじめとする日本人が、国境を越えてともに闘っている姿が彼女の心の扉を叩き、少しずつ日本人に対する気持ちが変わっていった彼女の言葉に、私は涙が出ました。自分に置き換えようと試みてみても、実際に同じ立場ではない私たちは100%彼女の気持ちを理解することはできないけれど、近づくことはできるんだな、私は何ができるかなと思いました。多くの人の関心を呼ぶ事を言えない私です。でも多くの人に「あんにょん・サヨナラ」を観て頂く運動はしていける。そう思っています。
 

映画案内

『パッチギ!LOVE&PEACE』
       
(井筒和幸監督・現在各地映画館で上映中)

 アンソンは息子チャンスの筋ジストロフィー治療のために、妹キョンジャたち家族とともに京都から東京に移り住む。物語は、チャンスを救おうとする人びとの愛、在日への差別とのたたかいを横糸にして進行する。だが、この作品の随所にアンソン、キョンジャの父の姿が描かれ、物語の縦糸を織りなしている。父は、植民地支配下の済州島で日本軍の強制徴用から逃れ、激戦地の南洋群島ヤップ島へ流れ着く。キョンジャは「アボジが逃げてくれたからこそ、私たち兄妹はこの世に生まれることができた」との思いを抱く。この縦糸に注目したい。なお、時を同じくして公開された石原慎太郎製作の『俺は、君のためにこそ死ににいく』の対極のメッセージを発信していることを付言する。(塚本)
 

GUNGUNインフォメーション
◆「あんにょん・サヨナラ」上映
6月23日(土) 長崎市・日本キリスト教団銀屋町教会 14:00〜
6月30日(土) 佐世保市・日本キリスト教団佐世保 14:00〜
6月30日(土) 大阪府高槻市・市立総合市民交流センター8F(JR高槻駅前)
       14:10 上映16:10 講演 18:00上映 参加費:999円

◆「韓国・朝鮮人BC級戦犯者問題」連続セミナー(14時〜16時)
会場:在日韓人歴史資料館セミナー室(港区麻布1-7-32 韓国中央会館別館)
参加費500円
7月 1日(日) 「私たちの歩いてきた戦後62年」
          講師:李鶴来(韓国・朝鮮人元BC級戦犯者「同進会」会長)
7月22日(日) 「韓国・朝鮮人元BC級戦犯者問題とは何か」
          講師:内海愛子(同進会を応援する会代表)

◆見て、聞いて、考える「靖国問題」パート2
7月8日(日) 午後2時〜5時 シンポジウム「新資料集から見える靖国合祀の真実」
   場所:文京区民センター3C会議室  資料代:1000円(学生500円)
   パネリスト:田中伸尚さん(ノンフィクション・ライター)、内田雅敏さん(弁護士)

◆8月4日(土) 5日(日) 平和と民主主義をめざす全国交歓会
8月3日(金) 昼:グローバリズムに抗議!ワンデーアクション
        夜:前夜祭(ピースライブなど)
  4日(土) 10時 開会全体集会 14時半 国際シンポジウム
        18時 国際連帯フェスタ
  5日(日) 9時 分野別討議 13時 交流広場 決議採択
   会場:東京都大田区民センターなど
   お問い合わせ:03-3267-0156(東京) 06-6762-0996(大阪)