在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.38 (2006.6.4発行)


不当判決に抗議
(2006年5月25日・東京地裁)

   

事実に目を背けた「最悪の判決」を糾弾する!

 5月25日、東京地裁民事第19部の中西茂裁判長は、未払賃金、遺骨返還、シベリア抑留、靖国合祀問題等、あらゆる戦後補償の課題を取り上げたグングン裁判414名の訴えに、具体的な事実認定も行わず、日韓請求権協定及び法律144号で解決済みという形式的論理で、全ての請求を棄却しました。
 「原告らの請求の中に、法律上の根拠に基づき財産的価値を認められる実体的請求権が含まれて」いたとしても、法律144号によって全て消滅しており、それ以外の権利があるとすればそれは条約上解決するべき問題であって「裁判上の請求ができるものではない」として切り捨てました。
 そしてマスコミも大きく取り上げた靖国合祀の問題については、戦没者通知は「事実行為に過ぎず」「一般的な行政の調査、回答事務の範囲内」であり「原告らに対し、強制や具体的な不利益の付与をするものではない」として国の合祀責任を免罪しました。しかし、日本政府による靖国神社への戦没者名簿の提供を「政教分離」に抵触するとの指摘を受けて87年以降中止しているにもかかわらず、名簿提供が「一般的な回答事務に過ぎない」というのは、まさに日本政府の判断をも踏み越えた常軌を逸した判決。何が何でも原告らの請求を否定することだけが目的の、悪意に満ちた判決と言わざるを得ません。
 奇しくも、判決の翌日、原告団の大黒柱であった太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長の金景錫さんが急逝されました。故人の遺志に応え、日本政府に過去清算を迫っていく新たな闘いが始まります。皆さん、引き続き御支援よろしくお願いします! 


金景錫さん急逝 

 

昨年ボランティアツアーでの金景錫さん

 GUNGUN裁判の原告団体・太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長の金景錫(キム・ギョンソク)さんが、判決の翌日、急逝されました。5月29日春川で行われた葬儀に古川が参列してきました。お墓は納骨堂の奥に造られました。
 以下、弔辞です。(古川)
 

弔辞

 在韓軍人軍属裁判の判決があった翌日に、金景錫さんは旅立たれました。金景錫さんらしいと思います。私たちは金景錫さんから多くのことを学びました。不屈の闘志。不誠実な態度を取り続ける日本政府に発言し、闘う姿勢。一方で同じように闘う日本人に対する敬愛の情。そしてユーモア。私は金景錫さんの笑顔が好きでした。私たちはこれまで5年間、金景錫さんが情熱を注いで建てた強制連行被害者の納骨堂の草刈りをやってきました。今後も続けるつもりです。そして日本の過去清算が実現するまで韓国の皆さんと闘い続けることを誓います。金景錫さん、ありがとう。さようなら。

   
 

金景錫さんの棺を納骨堂へ

 

 

不当判決糾弾のシュプレヒコール

 

事実と向き合うことを拒否し、
司法の独立をも放棄した御用判決!

《 声 明 》

 5月25日、東京地裁は、在韓軍事軍属裁判(01年6月29日一次提訴、03年6月12日二次提訴、併合)の判決を下した。判決の内容は、「原告らの請求をいずれも棄却する」というものであり、事実認定を一切行わず、国の主張をなぞった前代未聞の不当判決である。我々は、司法の独立さえ放棄するようなこの前代未聞の不当判決に心底から抗議するとともに、原告団、弁護団と一体となって、法廷内外で勝利するまで闘うことを宣言する。

 判決は第一に、徴兵・徴用及び戦闘配置、戦闘行為、労働、死亡、傷害、未払金、軍事郵便貯金にかかわる損害賠償請求のみならず、BC級戦犯やシベリア抑留にかかわる損害賠償請求およびシベリア抑留期間中の未払賃金請求についても、日韓請求権協定および措置法で解決済みと強弁していることである。今や日韓請求権協定文書公開により、BC級戦犯問題やシベリア抑留問題が日韓協定議論の対象にも上らなかったことが明らかになってきている状況下にもかかわらず、日本政府の意図を代弁するかのように、「1965年6月22日に存在した韓国国民の『財産、権利及び利益』はについて・・・全て消滅させた」(判決文)と判決を下した。そして、原告がとくに主張していた、法律144号が憲法29条(財産権)に違反するとした点についても、何の根拠も示さず、「憲法の各条項の想定の範囲外」(判決文)として請求を棄却したのである。

 第二に、遺骨の返還については、遺骨の所有権は日韓請求権協定の対象外としながらも、遺骨の所有権が「権利に該当するとすれば」(判決文)日本国がその遺骨を保管していたとするならば死亡したものの家督相続人や又は祭祀承継者は「所有権を喪失したこととなる」としているのである。人道の根本である遺骨や祭祀さえも日韓請求権協定で「解決」させることができたかのように判決を下しているのである。こういう考え方からは、遺族の悲しみとそれを踏まえた方策など何も生まれてこない。

 最大の問題は、靖国合祀問題である。判決は「確かに、(昭和31年の『靖国神社合祀事務に対する協力方について』通知など)被告国が靖国神社に協力的であった事実が認められ、このような時期に旧厚生省の回答により靖国神社に合祀されたと認められるけれども、被告国が行った戦没者通知は一般的な行政の範囲内の行為というべきものであり」(判決文)と結論している。何の論証もせず、国が主張していることをそのまま採用しているのである。わざわざ、靖国神社を特定し、通知まで出し、旧憲法下のやり方を復活させた行為を「一般的な行政の範囲」としたのである。加えて、この通知があった時期、原告等はすでに韓国人であり、恩給等の対象からも排除されていたのである。

 我々はこのような御用判決に屈しない。「命尽きるまで日本政府を追及したい」(李炳柱氏)「失ったことより得たもののほうが多い。多くの日本人の心を得た。」(李熙子氏)との決意 、そして、「戦後補償問題は100年戦争」とし、最後まで闘う意志を貫きながらも無念のまま他界された金景錫さんの遺志に応え、最後まで闘う。

2006年5月26日  
在韓軍人軍属裁判を支援する会

 

怒りの判決・同行記(関西事務局 木村)

 
 

地裁前の原告のみなさん

 5月25日東京地裁で在韓軍人軍属裁判の判決に参加しました。4名の原告に加えて靖国反対共同行動関係者ら5名が来日されました。日本側だけでなく韓国からも駆けつけた報道関係者の人垣の中、横断幕を持って地裁へ入っていきました。
 法廷は傍聴者があふれ、座席の後ろにも次々人が立っていきます。裁判所側が、立つのはだめだと言うと、椅子を出して欲しい、床に座わらせてくれ、部屋を変えて欲しい・・・と詰め寄ります。それでも、受け入れられず、仕方なく立っている人は外へ。判決の瞬間に、その場に原告と共に身を置きたいという思いは同じだったと思います。
 開廷のピンと張り詰めた空気、裁判長の言葉を一言も逃すまいと集中した時、なんと、裁判長は「原告の請求を全て棄却する。裁判費用は原告が持つ」と言ったかと思うと、ほとんどの人が呆気にとられる中さっさと退席してしまいました。戸口に消えようとする裁判官に向かって「説明しろ!」「御用裁判!」の怒声。何処にぶつけてよいかわからない怒りと口惜しさを胸に法廷を出ました。事実認定すらしようとしない頑なな姿勢に、壁の厚さと共に、それほど国が触れられたくないアキレス腱を突いていると感じました。

   

判決後の記者会見にはマスコミがぎっしり

 

夜の報告集会

 

 判決後の記者会見の後、午後から厚生労働省・外務省との交渉、その後院内集会が開かれました。
 夜の報告集会では会場に入りきらないくらいの参加者で、この判決への関心の高さがうかがい知れました。そこでの原告からの「失ったことより、得たことの方が多い。多くの日本人の心を得た。皆さんがいなかったら絶望していたかもしれません」(李熙子さん) 、「日本に認めさせるまで、力を一つにして闘っていきたい」「命尽きるまで闘う」という言葉に、責任の重さを感じると共に、励まされ、勇気を得ることができました。
 

【来日原告らの声】


   
 

靖国神社に向かうイ・ヒジャさん

 

今日の判決を今後の活力に!
李熙子(イ・ヒジャ)さん

 「日本への憤りは大きい。それを我慢することも覚えた。皆さんの声援や良心がなければできなかった。良心ある国民がいるから許そうとも思った。今日の判決に失望するというより、今後の活力になると感じている。(父の靖国合祀問題に)直面した時は、今のように関心が持たれていなかった。そのころは、寂しい闘いをしていた。この間失ったものより、得たものの方が多い。多くの日本人の心を得た。皆さんがいなかったら、絶望していたかもしれない。日本に認めさせるまで、力を一つにしていきたい。私は活動家でもなんでもない、父を亡くした娘として、恥じることなく力を得ながら活動を続けている。平和を愛する皆さんの良心も感じることができた。協力くださる皆さんと最後まで闘いたい。小泉は心の問題だと言っているが、心があるなら、周辺国の人の心、遺族の心をわかるはず。棄却を土台にして闘っていきたい 」
 

   
 

イ・ビョンジュさん(中央)

 

命が尽きるまで日本政府を追及する
李炳柱(イ・ビョンジュさん)

 「3年前の事を思い出す。皆さん方が正義と平和のため、真正な民主主義のため、心を共にして何事かやり遂げようとしていることが後でわかった。平凡な市民の集まりで、弱い者の味方になって裁判を助けてくれていることがわかった。(今日の判決は)呆気に取られた瞬間でした。たった5秒、2行読んで裏門から逃げ出した。3年も待った判決があんな判決になる。世界が前向きになっているのを日本の政治家も見ているはず。勝利判決が出るとは思っていなかったが、一部は受け入れる判決がでるのではないかと、一抹の小さなごみみたいな良心でも残っているのが司法府ではないかと期待を持った。あんな 原告達を無視した憤慨を言葉にできない。ドイツ政府は戦後の問題を処理しようと努力し、全世界に向かってホロコーストは二度と起こさないと誓っている。日本が果たして変わる展望があるのか。ほんとに口惜しい。今後、可能な限りの事をして命が尽きるまで日本政府を追及したい。いつか必ず、正義の審判が下される 」
 

   
 

ソン・ランソクさん、ヨ・ミョンハンさん

 

呂明煥(ヨ・ミョンファンさん)

 「あまりにもひどい判決だ。原告の訴えを無視する判決はあってはならない。目的を果たすまで闘いたい」

宋琅錫(ソン・ランソク)さん

 「名古屋に徴用され、空襲で負傷した。あまりにもひど過ぎる判決だ。最後まで闘う」

李海学(イ・ヘハク)牧師
(韓国の国家人権委員会委員。「靖国反対共同行動・韓国委員会」共同代表)

   
 

イ・ヘハクさん

 

 「皆さんを見て非常に慰められた。『許すけれども忘れない』ということばはあるが、60年経っても日本の植民地支配による民族抹殺政策によって受けた傷も癒えないのに、靖国参拝を頂点とする、今の日本の侵略戦争の正当化は断じて許せない。日韓の未来を築くためにも、韓国、台湾、沖縄そして国連への訴えもふくめて国際的な枠組みで、7月にソウルでの国際シンポジウムの開催、そして8月に『平和の灯を靖国の闇へ!キャンドル行動』を取り組む 」
 

   
 

高橋哲哉さん

 

正面から靖国に責任を問わざるを得ない
高橋哲哉さん(東京大学大学院教授)

 完全に逃げた、極めて形式的な判決。全く内容に踏み込んでいない。従軍慰安婦の裁判でも被害の事実認定はやった上で法律論で棄却している。今回は事実すら認定していない。国は、靖国合祀のもとになると知っていて情報提供した。それがなければ合祀できないと知りながらやっている。靖国と一体の行為でなくて何なのか?判決で合祀の責任はあくまで靖国と言っているのだから、今度は正面から靖国に責任を問わざるを得ない。

 

   
 

ソ・スンさん

 

8月靖国共同行動に参加を
徐勝さん(立命館大学教授)

 靖国問題を普遍的な問題だと訴えるために、8月にキャンドルデモや集会を開催する。ソウルから1000人以上の市民が来る。台湾からも来る。ぜひ成功させよう!


(予定) 8月11日 昼休み集会・キャンドルデモ
        12日  キャンドルデモ
      13日 屋内集会(日本教育会館)⇒キャンドルデモ
      14日〜15日 野外集会(明治公園)でコンサート等⇒キャンドル人文字

 

判決後、厚生労働省・外務省と交渉

 判決のあと、厚生労働省・外務省との交渉を行いました。
 今回のポイントは、韓国内で論議されている「被害者支援法」との関連で、名簿にない、「徴用の事実認定がなされていない人」の問題です。交渉で厚生労働省は、「朝鮮半島出身の軍人軍属」の人数を「243,992名」、「死亡者数」を「22,205名」と回答。「これは旧海軍、陸軍から引き継いだ名簿の登載人数である」と明らかにしました。当会からの質問「この名簿が正確なものか?」「もし正確でないとすれば、何が原因と考えられるか?」に対しては、終始沈黙を貫き通しました。
 また外務省北東アジア課の担当者から「昨年8月15日の内閣総理大臣談話『過去の心情を受け止め、在サハリン被害者、遺骨調査、歴史共同研究を真摯に行っていく』という姿勢である」との表明を受け、「朝鮮半島出身者の方々の御遺骨を日本政府が収集することは考えていない」とある今回の回答について、総理談話の整合性について問いただしましたが、明確な回答は得られませんでした。
 今後、韓国の真相究明の動き、支援法の動きと連携して、「対話」を続けていきたいと思います。(古川)

4名の議員参加!
靖国合祀取消し含め各分野からアピール!ー院内集会―


 厚生労働省交渉の後、「靖国合祀取り消し、全ての戦後補償問題解決をめざす5・25院内集会」を、共生のアジアをめざす戦後補償共同行動実行委員会との共催で開催しました。忙しい国会審議の中、衆院から近藤昭一議員、末松義規議員、参院から白眞勳議員、吉川春子議員が参加、挨拶をいただきました。「国立追悼施設検討委員会のメンバー」という白眞勳、末松両議員からは「日韓を機軸に」新たなアジアを考えていきたい」と力強いアピール。岡崎トミ子、福島みずほ、保坂展人、前田武志の各議員秘書も参加。小泉首相の靖国参拝をめぐる緊迫したアジアとの外交状況下で、改めて政治レベルでの「靖国問題」への関心の高さが証明されたのではないかと感じました。(御園生)


判決翌日、靖国神社へ申入れ行動!

   
 

申入れ行動で取材を受けるイ・ヒジャさん

 

 翌26日10時より、靖国神社への申入れ行動を行いました。提訴当初は、「意見の違いはあるが遺族の方が来られるのは歓迎します」と応接室で対応していた靖国神社が、今は玄関前で、しかも人数を5人に制限し、会わなくて当然という対応です。韓国人戦死者、原告の父らを遺族にも無断で「英霊」として祀っているにも拘らずです。大口弁護士の「靖国神社も礼を尽くすべき」という話に靖国神社もいくらか軟化しましたが、玄関前での対応は変えないという失礼な態度に、申入書は渡さず、李熙子氏、呂明煥氏から怒りのアピールを行い、最後に靖国反対共同行動の李海学牧師から、「私は韓国の人権委員でもある。遺族を無視した合祀は全くの人権侵害。国連人権委員会への提訴も検討している」と、鋭く問題解決を靖国神社に突きつけました。

 

現在韓国国会に提出されている
「強制動員被害者支援法案」について
金銀植さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会事務局長)

 今後の組織づくりをどうするかが当面の課題です。真相究明委員会はあと1年で期限が終了しますが、その後今回の支援法の組織に移行するのが望ましいと思います。私たちは、財団法人を作って、韓国と日本の政府・企業が拠出する基金を設け、被害者を支援する方法がいいと考えています。今回の法案では、被害者に2000万ウォンを支給する内容ですが、問題は未払い金・供託金への補償です。元軍人軍属の場合供託金額が労働内容に比べて極端に低い場合があるので、調整が必要ではないかと考えます。
 今後、9月の定例国会で審議に入りますが、会期は3ヶ月。12月までの審議を経て、年末の本会議で一括法案通過が望ましいのですが、情勢的に不安定です。現在の法案は、被害者の不満も多く、問題点もあるのですが、審議過程で議論して、現政権下で通過させ、後に調整していくことが望ましいと考えます。
 

あんにょん・サヨナラ特集


『あんにょん・サヨナラ』の劇場公開<東京・大阪>迫る!
「あんにょん・サヨナラ」上映委員会 高部

 東京での劇場上映に続き、大阪の劇場でも「あんにょん・サヨナラ」が上映されることになりました。限られた地域ではありますが、この機会に多くの人に見ていただきたいと思っています。前売り券(1300円)絶賛発売中!です。

<東京>
  ●ポレポレ東中野(JR東中野駅徒歩2分)
   7月8日(土)〜21日(金)…1日4回(12:30 14:40 16:50 19:00)の上映
  ○イベント情報(予定)
   8日(土):イヒジャさん・高橋哲哉さん・鈴木邦男さんのトーク
   8日(土)、9日(日):イヒジャさんの挨拶
    15日(土)〜17日(月):キムテイル監督の挨拶
(その他、共同監督加藤久美子、ジャン・ユンカーマンさんのトークもあります)

<大阪>
  ●大阪シネ・ヌーヴォ(地下鉄中央線「九条」駅 徒歩2分)
   7月15日(土)〜28日(金)  モーニング1日1回の上映(10:20)
   7月29日(土)〜8月11日(金)レイト1日1回の上映(20:40)
  ○イベント情報(予定)
   7月15日(土):キムテイル監督、古川雅基さんの挨拶  


 チケットは、当日1500円、大学・専門1300円、シニア・高校生以下1000円で、前売り券は1300円です。お問い合わせは各劇場または「あんにょん・サヨナラ」上映委員会まで。
 



長野県飯田市で上映(遠野ミドリさんより寄稿)

   
     

 「あんにょん・サヨナラ」飯田上映会(4月23日)を終えて、ほぼ一ヶ月、5月25日のGUNGUN裁判の不当判決が伝わってきました。長いこの闘いは、この判決などでは終らない。イ・ヒジャさんの失望も絶望もしないという言葉の力強さに心から拍手を送りたい。
 A級戦犯を合祀する靖国神社に小泉首相が参拝し、不戦の誓いをするなんて大きな嘘っぱち、くらいの認識しか持っていなかった私に、靖国が戦争で果たしてきた役割、そして今、靖国で何が起こっているのか、この映画で目のあたりにし、またしても私の世界は変わりました。虫けらのように殺され、死んでいった人たちが、一転して、靖国で尊い神になる・・命の尊厳をどこまでも冒涜していく国家の意図は、またしても、愛国心という言葉で鼓舞されようとしている。ならば、私は、非国民としての愛を育てて生きたい。
 飯田では、僅か52名の上映会の参加でしたが、この種がまた広がっていくことの希望を持っています。遠く、神戸より、古川さんに来ていただいてのお話は、参加していただいた人たちの心に響きました。ヒジャさんは、日本の心ある人たちに支えられてきたという、しかし私達がアジアの人たちに返していかねばならないことの課題の道のりはまだまだこれからです。その重さをしっかりと受けとめたい。魂の旅、共に歩んで行きたいと願っています。


沖縄・読谷村で「恨之碑」除幕式

 5月13日、「恨之碑」の除幕式が、韓国から元軍夫の姜仁昌さん、徐正福さんの御子息を含む7人をはじめ、約100人余りが参加し、遠く海を望む沖縄の読谷村瀬名波(せなは)の高台で行われました。
 共同代表の平良修牧師は「記念碑は、時が経過すると忘れ去られることが多いが、私たちは『恨之碑』をそのようなものには決してしてはならないと考え、鳳仙花で爪を染める沖縄・朝鮮共通の習慣から名づけた『ポンソナ(鳳仙花)の会』で学習を積み重ねて『恨之碑』をみんなで愛護し、歴史の学びと共生・平和への教材としていきたい。「恨」は日本語でいう『恨みつらみ』ではなく、心の底に深く刻みながらも、それを乗り越え、バネにして、新しい共生の道を築いていこうとする未来志向の思考を表す言葉です」と挨拶。
 韓国の英陽郡に「太平洋戦争・沖縄戦被徴発者恨之碑」が建立されて7年、沖縄の「恨之碑」は英陽郡の碑と向き合う形で建てられました。韓国から持ってきた石と氏名が判明している慶尚北道から沖縄に強制連行された元日本軍軍夫2,815名の名簿、碑の建立への協力者名簿、関係資料が収められました。姜仁昌さんは涙を浮かべながら碑の前に立たれました。徐正福さんに代わって参加の二人のご子息は、韓国から持参した握りこぶし大の石およそ30個を碑の裾から故国朝鮮半島に向けて並べ、固定しました。高嶺久枝さんによる荘厳優雅な鎮魂の琉球舞踊。在日韓国人ミュージシャン・趙博さんの歌唱(パンソリ)。最後にブロンズ像制作者・金城実さんの像説明と喜びの挨拶で式をしめくくり、その後、お披露目の祝賀の宴が2時間繰り広げられました。(中田)

※ 沖縄では「恨之碑」とリンクした「あんにょん・サヨナラ」上映が計画されています。
  第1回目の上映会が「慰霊の日」の6月23日(金)午後7時から、那覇市NPO活動支援センターです。その後、沖縄本島全域、八重山・宮古など沖縄県全域での連続上映運動が企画されています。

 読書案内

 まじめな反論本 「マンガ嫌韓流」のここがデタラメ

           
姜誠・太田修・朴一ほか著 コモンズ  1500円+税 
   
 『マンガ嫌韓流』が売れている。マンガのストーリーは、大学生の男女が主人公で、近年の韓流ブームは危険で、間違いだ。一方的で些末な例を取り上げることで、「正しく?」嫌韓流(韓国に不信と憎しみを持つ)ことに、確信を持とうというたわいない話である。しかし、原本に取り上げられている中身は、すさまじい差別・排外主義に満ちている。この原本に対して、『まじめな反論本 「マンガ嫌韓流』のここがデタラメ』が出た。
 この本では、原本の「日韓併合は韓国が望んだこと…」「日本は戦争していないから、韓国に賠償を払う必要はない…」等については、歴史事実認識の誤りをていねいに解き明かし、「W杯で韓国のサッカーは汚い」「在日女子学生のチョゴリ切り裂き事件は自作自演」等の感情的な誹謗中傷には、事実でもって反証している。
 以前、朝鮮・韓国と日本人との間には、一種の垣根があった。しかし、サッカーのW杯共催、「冬ソナ」ブームを経て、隣人としてのふつうの交流が深まりつつある。『まじめな反論本』は、その交流が更に深く強いものになることを期待する立場で、その流れに水を差し、妨害をする動きに、惑わされず日韓両国民が知り合う努力を訴えている。(大釜)


GUNGUNインフォメーション

6月10日(土)、11日(日) GUNGUN弁護団訪韓(ソウル・春川原告集会)
6月24日(土) GUNGUN裁判判決報告集会(18時 大阪ドーンセンター)

◆「あんにょん・サヨナラ」上映会 (上映スケジュールはこちら)