在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.37 (2006.3.19発行)


最終意見陳述した
李熙子(イ・ヒジャ)さんと
朴壬善(パク・イムソン)さん
(2006年2月15日・東京)

   

いよいよ5月25日判決! ぜひ立ち会ってください!
 
 5月25日東京地裁で、在韓軍人軍属(GUNGUN)裁判の判決が出されます。
 3月8日韓国政府は、「日帝強制動員犠牲者支援対策民官共同委員会」を開き、軍人軍属を含め強制動員被害者(死亡者)遺族に2000万ウォンの慰労金を支給する法案を国会に提出する方針を表明しました。法案の具体的な問題点はさておき、一番重要なのは被害の真相究明です。「なぜ夫が父が死んだのか?」「どうやって死んだのか?」「遺骨は?」そういう遺族の疑問に答える責任当事者である日本政府が一貫して傍観者を装っていることに、何よりも憤慨を覚えます。日韓会談の記録は隠蔽したままです。靖国合祀や遺骨問題など、被害者の人間としての尊厳に関わる重要な問題も放置したままです。供託記録の引き渡しなど最低限のことすらやっていないのです。だからこそ、GUNGUN裁判の役割は重大です。ぜひ判決の傍聴、報告集会にご参加ください。

判決は、5月25日(木)午前11時、東京地裁710号法廷です。

報告集会(高橋哲哉教授の講演あり)は、午後6時30分、日本教育会館です。

2月15日(水)20回目の口頭弁論(最終)が開かれました。 

● 靖国合祀、シベリア抑留、日韓協定・法律144号問題を中心に最終準備書面

 原告より最終準備書面、甲906から926号証までの書証を提出しました。最終準備書面は、130頁を越え、靖国合祀、併合条約無効論、国家無答責、安全配慮義務、シベリア抑留、日韓請求権協定・法律144号、未払い給与・供託金、遺骨返還・死亡通知、軍事郵便貯金、謝罪広告等全面に渡るものです。
 靖国合祀問題では、まず、国・靖国神社が一体となって合祀を行ったこと、それは原告等の民族的人格権、思想良心の自由、宗教的人格権を侵害するものであり、同時に、憲法13条(個人の権利の尊重)、19条(思想及び良心の自由)、20条第1項(信教の自由)及び3項(政教分離)に違反していること、さらに個人情報の違法な漏洩であることも明らかにしました。
 シベリア抑留問題では、抑留中の賃金未払いは1949年ジュネーブ条約違反であり、捕虜の労賃は所属国・抑留国が連帯して支払わなければならないことは、太平洋戦争当時すでに国際的に確立されていた原則であること、49年ジュネーブ条約はその支払い方法を明確にしたものであることを明らかにしました。
 そして、日韓協定・法律144号問題では、日本の法律で韓国人の財産権を消滅させたこの法律は、憲法29条(財産権の保障)に違反するものであることを明確にしました。

● 怒りを込め、二人が最終意見陳述

 韓国からは70回目の来日となる李熙子(イ・ヒジャ)さんと、初めて陳述する朴壬善(パク・イムソン)さんが来日しました。

 
 

朴壬善さん

 最初に、朴壬善さんが意見陳述に。朴さんのお父さんは、朝鮮半島からはるか離れた赤道直下の島・ナウル島で44年12月11日戦病死。朴さんは「日本は戦争を起こして朝鮮の地を奪い、私の家庭を破壊しました。(中略)それなのに日本は反省どころかますます右傾化しており、また一つの戦争を謀るための準備をしています」「被害国と被害者の痛みを察して心から謝罪してほしい」と訴えました。
 続いて最後の意見陳述として李熙子さんは、「父は靖国神社の霊璽簿に父を死なせた首謀者と共に祭神として記載されています。これは一つの慰霊碑に殺人者と犠牲者の名を刻むようなもの」「霊璽簿に記載する行為は人間の行為。削除するのもまた人間の意志で可能なはずです」と合祀取消しを強く訴えました。
 法廷は最後に判決期日を決めて終わりました。判決は5月25日午前11時30分です。歴史的な判決にぜひ立ち会ってください!

準備書面資料 (より鮮明な画像はPDFファイルで見てください。→ @合祀手続き A遺骨問題 )

 

太平洋戦争被害者補償推進協議会総会に参加して(中田)

 3月8日韓国政府の補償報道直後の10日、原告団体である太平洋戦争犠牲者補償推進協議会の総会がソウルで開催されました。参加者の関心はもちろん韓国政府の発表した補償案。
 死亡者への2000万ウォンの補償に比べて、生存者に対してはわずかな医療支援と未払賃金を120倍した額を支払うという内容に対して不満が噴出。
 日鉄大阪原告の呂運澤さんは「わずか50〜60万円の補償は人を馬鹿にしている。死んでしまった方がよかった」と怒りに身を震わせる。またBC級戦犯として日本に長く抑留された方から私たちに怒りの言葉が。補償案では証拠があれば未払賃金は支払われても、BC級戦犯として受けた“恨”を解くには程遠い金額。
 今回の補償内容では、被害者の受けた心の傷を癒すことができないことを改めて痛感。また一方で日韓条約で全て解決済みとして、日韓両政府から放置されてきた被害者に一条の光がさしたのも事実。いかにこの案をベースに被害者の要求実現に近づけていくのかが課題です。
 総会後の夕食会で一人一人が発言。遺族会員のほとんどが、真相糾明委員会から被害認定を受けていない、つまり「いつどこでどのように父や兄が死んだのかがわからないので補償を受けようにも受けられない」という人が多いことに気づかされました。改めて、事実調査さえも十分行わず、植民地支配の責任を取らずに戦後60年余り放置してきた日本政府の責任を今、追及しなければならないと思いました。

「李熙子さんのキムチづくり教室
   &あんにょん・サヨナラ上映会」
(2月26日・大阪)


 今年は白菜の水洗いを当日早朝にやったせいで、イ・ヒジャさんから「おいしい」と言われたのですが、ヤンニョム(薬味)の材料にも秘密が。天日干しのコチュ(唐辛子)やニンニク、生姜は、例年ソウルから持参してもらっているのですが、今年はミニョリ(せり)とカッ(からし菜)チョッパ(ねぎ)が付け加わりました。またイワシの魚醤とエビの醤油は特上の品を持参。また前日、大根やニンジンの仕込みをしていた時のこと。千切りを手早く、とスライサーを出すと、「アーニョ、アーニョ(だめだめ)」と。肩が痛いとグチをこぼす私たちを尻目にヒジャさんは黙々と千切りを続けます。器具を使うと水分が出すぎるそうです。切り方にこだわり、材料を吟味している姿から、参加者においしいキムチを食べてもらいたいという強い思いが伝わった「キムチ作り」でした。ちなみに、来年はポッサムキムチに挑戦してみようという話も。楽しみにしていてくださいね。(大幸)

   

キムチづくり&上映会に参加して(吉岡さん)
 トークの中で、大震災で肉親を失った方からの発言がありましたが、とてもすばらしい対話になり、またひとつ相互認識が深まったのではないかと思われました。イ・ヒジャさんからもその時の自分が被害者のことを全然考えていなかったと率直にわびられたことも素晴らしかったと思います。また、神社とは何かというような話が最後に少しあり、とても興味深いテーマだと感じました。キムチ作りと映画会をセットにした企画はとてもいいアイディアだと思います。

「あんにょん・サヨナラ」特集

7月劇場上映が決定!
   東京(ポレポレ東中野)・大阪(九条シネヌーヴォ)

三重県四日市上映会 (稲葉眞理子さん)

 
   

 寒さ厳しい2月5日、四日市での上映会は、110名ほどの参加者の中で行われました。ホールを埋め尽くすまではいかないものの、スクリーン上のイ・ヒジャさんを見つめる大勢の観客を眺めながら、“上映会を行ってよかった”と心から思いました。
 「イ・ヒジャさんの思いを沢山の方に知ってほしい」「イ・ヒジャさんらと地道な交流を続けてきた方々の活動が、この映画撮影の原点」と思う2つの気持ちを伝えながらチケットをお勧めしました。普段は趣味の事しか話さない友人、子育て期以来、行き来の途絶えていた方、集会で数回お会いしただけの方などに、様々なコミュニケーションの手段(お会いしたり、電話だったり、郵便だったり、Eメールだったり)を経てチケットが渡っていきました。
 「あんにょん」は出会いの挨拶の言葉だそうですが、「あんにょん・サヨナラ」は、私に多くの「あんにょん」を経験させてくれた映画でした。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

仙台上映会 (共同監督・加藤久美子さん)

 
   

 3月4日仙台に行ってきました。今回は「パラム仙台」という日韓交流をやっている団体が主催。180名入る会場で、参加者は120名くらいでした。
 映画の後に、映画制作の経緯を10分くらい話し、質問を受けました。@おじいさん:「(靖国賛成派が)言いたいことを未だに言っている。戦後補償金を払えなかった日本がアジアに対しての手形として決めた9条なのに、改憲の動きがあるのは心配。A級戦犯により加害者にさせられた人が共に靖国に祀られるのは嘆かわしい」  A30代の男性:「日本と韓国の市民活動の差とは?」 B30代の男性:「右翼側の反応は?」 C20代の女性:「韓国人の観客の反応は?」という質問・意見でした。
 その後交流会で、パラムは実は10本くらいドキュメンタリー映画を見て、「あんにょん」の上映に決めてくださったと聞きました。仙台では「靖国」のことが新しい問題だし、映画でも靖国賛成の人も反対の人の意見も出ていて 、見た人に「考えさせる」映画だということが決め手だったそうです。パラムの代表の金さんと司会の学生さんは、山形ドキュメンタリー映画祭で見てくださったそうです。メンバーの方と遅くまで酒を飲みながらいろいろ話しました。

神戸上映会 (神戸学生青年センター・飛田雄一さん )

 
   

 2月25日(土)、神戸学生青年センターで上映と講演の会を開きました。主催は、神戸学生青年センターと「対話で平和を!日朝関係を考える神戸ネットワーク」の2団体。センターは1972年に設立された財団法人で、朝鮮史セミナーを継続しているが今回の上映会はそのセミナーのひとつとして開かれた。ネットワークは、北朝鮮バッシングの中、2004年に結成されたもので、核・拉致・戦争責任・在日コリアンの人権問題など日朝間の課題を威嚇でなくて対話によって解決することを求めて活動しています。
 神戸は主人公のひとりである古川さんの地元ですが、今回が初めての上映会でした。プログラムは一日3回の上映と古川さんの講演「アジア太平洋戦争と日本軍の元朝鮮人軍人軍属」でした。参加者は84名。「敗戦時小学6年生であった者として身に染みるものがあります」「素晴らしい映画でした。こうやって人と人の繋がりをつくり平和を愛する世界の人と手を結び共に働いていきましょう」などと感想の書かれたアンケートも多く寄せられました。「古川さんのナレーションが素人っぽくて却って良かったです」というのもありました。主催2団体が協力して実現したこの会は、ますまずの黒字の上映会で、裁判への注目度も大分アップしたことでしょう。

札幌上映会 (北海道フォーラム・堀口晃さん)

 会議のため上京した折、中野で試写を見た。「これはいい。絶対にいい」。採算が会うか、成功するか、不思議と不安はなかった。ただ、やるしかない、という思いに取り付かれた。私は今まで4回見た。でも、新しい気持ちで又見る。
 試写会(12月21日)・上映会(2月6日)両方で200人近くが見た。後ろに立っていて、最後まで、1時間47分も画面に集中している。
 人としてごく当り前な、自然な心と行動を淡々と追っていく。靖国を中心に据えながらも、近現代の大事な問題が自然と総合されて結びついている。登場人物は意識していないであろうが、人としての道、人間の尊厳の回復を願い、素直な気持ちで本当のことを求めていく。3回も4回も右翼的な考えの学者や、行動している人の考えや姿を登場させる。このドキュメンタリーは、右も左も関係なく、深く考えさせる。そして、憎しみの心が連帯の気持ちへと、自然と流れていく。だからであろうか、胸が打たれる。
 高橋哲哉氏がある講演の中で、この映画の一部を彼の映像の中に組み入れて上映した。何か、身内が褒められている気がした。「全校上映をしたい」、と高校の先生が言った。これからは、労組や学校などへパンフを送り上映のお勧めをしたい。郵送代も確保した。フォーラムの仕事が一段落したら、仲間とそれをやりたい。8月、100人以上の人々が稚内のすぐ南の浅茅野で、朝鮮人強制連行・強制労働犠牲者の遺骨を掘る。東アジアワークショップ10周年にもやって来る日韓の青年達、地元の人々にも見てもらうことになっている。

イ・ヒジャさんと鈴木邦男さんのトーク
   『靖国を語る』  (上映委員会・高部優子さん)

 
   

 東京での劇場上映プレイベントとして、2月17日に、イ・ヒジャさんと一水会顧問の鈴木邦男さんのトークイベントを行いました。
 かねてからイ・ヒジャさんは、靖国に祀られている日本の遺族と話したい、また靖国を擁護する右翼と話したいという希望を持っておられると伺い、それなら以前「あんにょん・サヨナラ」インタビューに快く応じてくださった鈴木さん(本編ではボツになりましたが・・・、GUNGUNの大口弁護士が大学時代に論陣を張ったそうです)にお願いしようということで実現しました。
 鈴木さんは、「日本が朝鮮、台湾などを植民地にしたことは間違いであったし、靖国に祀られるのが嫌なら合祀はやめるべきだ」とソフトに話されました。一方で靖国や天皇を堅持する!という強い意志が垣間見える発言も。また彼は右翼だから、イ・ヒジャさんなど合祀取下げを求めている人たちのことも含め、靖国神社にまつわる事を事細かに知っていると思っていましたが、イ・ヒジャさんなどのおかれている状況などほとんど知らず、それこそ「普通の人」という感じがしました。やはり隔たりは「無知」から、と思いました。
 一方イ・ヒジャさんは冷静に、時には鈴木さんを持ち上げつつ、お父さんの話や状況を話され、さすが! また、鈴木さんが「靖国に祀られるのが嫌な人は祀らなければいい」と発言されたことをとても喜んでいました。地道な対話が必要なのだということが実感できたイベントで、イベント後の飲み屋でも、トーク第2弾をぜひやろうと盛り上がったとのこと。東京のポレポレ東中野で7月の劇場上映の期間中、ぜひもう一度、高橋哲哉さんも含めイ・ヒジャさんと鈴木さんのトークが実現できたらと思っています。

 読書案内

 『差別とハンセン病−「柊の垣根」は今も

           
畑谷史代著 平凡社新書  760円+税 
   
 「あんにょん・サヨナラ」の中に、小鹿島(ソロクト)の元ハンセン病患者の収容所が登場する。かつて日本は患者を隔離し、神社参拝と強制労働を強要した。現在、韓国内に唯一残っている神社が倉庫として使われている。
 1907年に始まった強制隔離政策で、優生思想と相まって患者の不妊手術や中絶すら実施。43年特効薬「プロミン」の開発で完治する病気になったにも拘らず53年には戦前同様の「らい予防法」(新法)制定で隔離政策を継続。変わらぬ差別のもと家族にも居場所を知らせず、塀の中での生活を強いてきた。この「らい予防法」廃止が96年。国による謝罪と補償金支給が2001年。今年、植民地下の韓国、台湾の元患者への補償もようやく決まった。しかし彼らの痛みはどこまで癒えるのだろうか?
 著者(信濃毎日新聞記者)は療養所に足繁く通う中で、元患者が重い心の扉を開いて心を通い合わせ、半生を語り始める。「誰であろうと一度しか会えない人でも、心から付き合ってくれる人が隣人だと思う。長く病み、隔てられた者に必要なのは薬じゃない。人の心なんだ。」元患者の言葉が胸を刺す。(塚本)


GUNGUNインフォメーション

3月30日(木) 重慶大爆撃の被害者の声を聞き、戦後補償全体の解決を求める集い
        14時30分 参院議員会館第1会議室
4月25日(火) 日韓会談文書開示請求行動
        13時 情報公開請求(外務省)  14時 記者会見(弁護士会館)
        15時半 日鉄裁判判決(東京地裁)  18時半 報告集会(東京しごとセンター)
5月13日(土) 恨之碑建立(14時読谷村 15時30分読谷村文化センター)
5月25日(木) GUNGUN裁判判決
        11時30分 東京地裁710号
        18時15分 判決報告集会 日本教育会館(地下鉄「神保町」)

◆「あんにょん・サヨナラ」上映会 
(上映スケジュールはこちら)