在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.36 (2006.1.15発行)


共生のアジアを!フェスタ12・4
集会後、パレードに出発
(2005年12月4日・東京)

   

戦争被害者の「心」を踏みにじる小泉発言に抗議!

 皆さん、あけましておめでとうございます。今年はいよいよGUNGUN裁判が結審、ますます運動面での広がりが問われます。一人ひとりの原告の思いを受け止めて、勝利に向けて頑張りますので、今年もどうぞよろしくお願いします。
 さて、小泉首相は年頭記者会見で、「外国政府が心の問題に介入して、外交問題にする姿勢は理解できない」「靖国神社参拝は外交問題にしない方がいい」と述べ、中国、韓国を批判しました。「戦争被害者の心」に土足で介入しているのが小泉の靖国参拝であり、01年の靖国参拝で外交問題の火種を作り出したのは小泉本人であるにも関わらずです。04年4月福岡地裁判決、05年9月大阪高裁判決の明確な「違憲判断」、また05年5月の韓国国会における「靖国神社の韓国人合祀取下げおよび日本の閣僚等の靖国神社参拝中断を求める決議」を踏みにじる、こうした言動に強く抗議します。
 アジアの視点から靖国問題を扱った日韓共同ドキュメンタリー「あんにょん・サヨナラ」は、釜山国際映画祭に続いてソウル独立映画祭の最高栄誉賞を受賞しました。若い人に正しい認識を広げるためにも「あんにょん・サヨナラ」の上映運動をさらに広げていきましょう!
 GUNGUN裁判は結審を迎えます。李熙子さんと尹玉重さんが来日します。ぜひ傍聴をお願いします。

韓国より李熙子さんと尹玉重さんが来日し意見陳述!
2月15日(水)最終口頭弁論の傍聴を!

【11時から東京地裁722号法廷・夜報告集会予定】

 韓国人軍人軍属裁判の象徴ともいえる在韓軍人軍属裁判(GUNGUN裁判)がいよいよ最終口頭弁論を迎えます。2月15日で結審となるこの日、最後の意見陳述に靖国合祀取り消しを訴え続けてきた李熙子(イ・ヒジャ)さんと尹玉重(ユン・オクジュウ)さんが来日し、意見陳述を行います。是非、結審にふさわしい傍聴席満杯のためにご協力よろしくお願いします。

グングン裁判が提起したもの

 
 

2001年6月29日一次提訴

 
 

シベリア抑留が注目された二次提訴

 2001年6月29日一次提訴、03年6月12日二次提訴のグングン裁判は、400名を超える原告数の多さのみならず、遺骨、未払い金返還、死亡結果未通知問題など全ての原告等に共通する問題とともに、新たに、@韓国シベリア朔風会参加のもとにシベリア抑留問題を提起し、Aさらに、靖国合祀の取消し問題を提起し、軍人軍属が抱えるほとんどの問題を網羅する裁判となりました。
 シベリア抑留問題では、30名の生存者が提訴に参加し、法廷内外で韓国人シベリア抑留者問題を訴えました。日本人シベリア抑留者団体・全抑協の協力を得た取り組みで、国会でも取り上げられるまでに至りました。(同封の署名にもご協力ください)
 また、靖国合祀取消し問題では、はじめての裁判として注目され、国内外に大きな反響を呼び起こしました。日帝時代の植民地支配をそのまま踏襲する靖国神社に無理やり日本の戦争に父らが狩り出され、死に追いやられたにもかかわらず、その日本の戦争協力の「英霊」として合祀されている理不尽さを訴えてきました。
 
日韓の共同した取り組みで成果

   
 

ボランティアツアーも昨年で5回目

 

 グングン裁判は、韓国の太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会、太平洋戦争被害者補償推進協議会とともにこの裁判を行ってきました。ボランティアツアーをはじめとした日韓市民の連帯は、先行した戦後補償裁判、日韓共同の努力と一体となり、韓国での真相究明法の成立、被害申告の受付、日韓会談文書の韓国側での全面公開という成果を手にしてきました。「この成果は直接的には韓国での運動であるが、たゆまぬ日本の運動があったからこそできたもの」(張完翼推進協共同代表)なのです。だからこそ、今後の日本側での運動がさらに問われてきます。

戦争国家づくりを進める小泉と闘う裁判

 小泉首相は、年頭の記者会見で靖国参拝について、「日本人からの批判は理解できない」「ましてや、外国政府が外交問題とするのは理解できない」と靖国参拝継続の決意を表明しました。これに対して、韓国政府は「日本政府の指導者が周辺諸国の考えに真摯に耳を傾けて正確な歴史認識を持つことを願う」と批判しています。外国からの批判だけではありません。日本経団連奥田会長も、および腰ながら1月5日の記者会見で「(小泉政権のアジア外交について)できれば変えていただきたい」としています。グングン裁判は、この問題の核心への闘いです。戦後補償実現の闘いは、被害者の要求を実現するとともに、今小泉政権が進める戦争国家づくりとの闘いでもあります。
 

準備書面資料

 昨年10月GUNGUN側から多数の書証を提出しました。その中から二つの資料を紹介します。一つは65年日韓条約の締結が軍事独裁政権による戒厳令下で強行されたことを証する当時の新聞記事。もう一つは朝鮮・台湾を植民地支配する際に戦死した日本人を靖国合祀したことを証する「靖国忠魂史」です。

「ソウルに事実上の戒厳令」(1965年8月26日朝日新聞) ↓

「靖国神社忠魂史」の中の「朝鮮暴徒討伐」部分  ↓

アジアとの共生の大きなステップとなった12・4フェスタ

 

雨の中を元気にパレード

 

 12月4日『戦後60年、2005年キャンペーン』の締めくくりとして、「共生のアジアを!フェスタ12.4」が開催されました。「慰安婦」、細菌戦・遺棄毒ガス弾、教科書問題、靖国問題等の課題や戦後補償を取り組む60団体、174個人が賛同し、これまでにない戦後補償の大きな共同行動として成功を収めました。
 第1部は、日比谷小音楽堂(野外)でのコンサート。あいにく冷たい雨が降り、コンディションは最悪でしたが、心を込めた歌、演奏は、参加者に冷たい雨をひととき忘れさせてくれました。第2部は、銀座パレード。雨中を日比谷公園から、数寄屋橋を経由して、銀座・水谷橋公園までパレードです。このパレードには一部に引き続いて、プンムルペウリト、多摩じまんなどのコンサート出演者も参加。プンムルペウリトはチャング、ケンガリ、銅鑼を鳴らしてデモを賑やかに盛り上げていました。
 パレード参加者は約160名。東京で、戦後補償実現を掲げて戦後補償団体が街頭デモ(パレード)を実施したのは、昨年5月の国会請願デモ以来のこと。昨年の国会請願デモは労働組合・争議団などとの共闘でしたが、今回のパレードは戦後補償団体単独で、課題も「戦後補償実現」のみ。その意味では画期的な行動だとのこと。また、このパレードには韓国から金銀植さん(太平洋戦争犠牲者補償推進協議会)、中国から王選さん(細菌戦裁判原告団長)も参加され、パレードの最後に連帯のアピールをされました。アジアとの共生をめざすにふさわしいパレードの締めくくりでした。
 この日に至るまで、戦後補償をめぐる情勢、それぞれの運動が直面している課題をどうするかの議論、企画についての論議、パレードの準備のための作業など、共同の積み重ねがあったと聞きました。このような取組みを今年、全国的にさらに大きな行動としてつくりあげていけば、政府、国会の重い扉を切り開いていくことができると実感しました。(中田)

冷え切った日韓関係を解きほぐす一条の光!
「日韓会談文書・全面公開を求める会」が発足・会員登録を!


 12月18日「日韓会談文書・全面公開を求める会」が東京の韓国YMCAホールで結成されました。共同代表に田中宏さん(龍谷大学経済学部教授)、西野瑠美子さん(女たちの戦争と平和資料館館長)、吉澤文寿(朝鮮現代史、日朝関係史研究者)を選出し、今後の会の取組みが提案されました。
 会の目的は、ひとつ。1000は超えると言われる韓国で全面公開された日韓交渉の文書を日本においても全面公開させ、日本の植民地支配の事実を明らかにし、被害者への謝罪と補償、戦後補償を実現させていこうと いうものです。情報公開法に基づいて、韓国の被害者も含めて日韓の市民が一人1文書の請求を求めていくものです。3月までに原告・サポーターの募集を行い、4月25日に外務省に対して情報公開請求を行い、非公開決定がされれば、ただちに裁判手続きに移行の予定です。
 1000人以上の会員登録が必要です。冷え切った日韓関係を変えていく一筋の明かりともいえる取組みです。会員・サポーターへぜひとも御参加ください!

事務局   名古屋市北区柳原二丁目4−6ひら乃コーポ3−A
会 員   一口1000円 3口以上(年会費)  サポーター 一口1000円

 
 

「人権平和・浜松」主催の上映会
2005年12月4日

「あんにょん・サヨナラ」特集

 日本と韓国の各地で上映活動が行われています。韓国ではソウル独立映画祭の最高栄誉賞を受賞。劇場上映に続いて学校や市民運動団体での自主上映が広がっています。
 あなたの地域でも企画してみませんか?お問い合わせは上映委員会へEメールかFAXで。
◆問い合わせ先
   メール ann-sayo@hotmail.co.jp  fax 03−3403−1902 
(上映スケジュールはこちら)

東京「さらば戦争!映画祭」で(高部さん)
 

キム・テイル監督と井筒監督(中央)の
トーク

 

 11月19日、20日に「さらば戦争!映画祭」が東京で行われました。この映画祭は、“戦争でどんなことが起きて、どんな苦しみが誰にふりかかったのか−。被害者の傷は癒えているのか−。そんな疑問を映画を観て考えてみよう”という趣旨で、20〜30代の人たちが中心になって企画したものです。「あんにょん・サヨナラ」は、日曜の朝なのに126人の入場者でパンフレットは完売。テイル監督は、シャイな性格がうけていて、来場者から「かわいー!」と大ウケでした。
 夕方からは「にがい涙の大地から」の海南監督の司会で、「パッチギ!」の井筒監督とテイル監督のトークがあり、制作の裏話や在日、朝鮮統一の問題などが話されました。テイル監督は最後に、『「あんにょん・サヨナラ」は、私たち制作スタッフだけでできたものではなく、日韓の市民団体の交流があったからこそ出来たものだと思っています。日本には、遺族の痛みをまるで自分の痛みのように感じて、戦後補償裁判を遺族と共に、それぞれ仕事を持ちながら10年近く支援活動をしている人たちがいるということを聞いて非常に感動しました。そういう人たちの交流や出会いがあったから、この「あんにょん・サヨナラ」がここまでできたのだと思います』と話しました。
 

大阪市生野区で(佐武さん)

 11月23日に生野区民センターで上映しました。生野区は区民の4人に1人は外国籍です。日本社会で苦労を重ねてきたハラボジ・ハルモニに、真の日韓・日朝の和解のために働いている日本人がいることをこの映画を通じて伝えられたらという思いで、生野区での上映会を始めました。当日の参加以上に宣伝になればと、とにかく戸別チラシ入れをしてきました。幸い、完成版上映会に来られた在日三世の方が親身になって在日の知り合い方々に働きかけてくれ、当日もたくさんの方が来てくれました。鑑賞者は72名でした。
 上映会後の感想交流会にも19名の方が参加してくれ、2時間以上、語り合いました。多くの人が、イ・ヒジャさんの思いを受け止めて自分たちがこれからどうするかが問題だと語っていました。「辛い過去を見つめなおし、ときほぐす」(キム・テイル監督)、その種の一つになった上映会だったと思っています。
 

東京都杉並区で(T・Aさん)
 
 

11月25日の杉並区上映会

 私たち「杉並の教育を考えるみんなの会」も上映会を行いました。参加者は50名弱でしたが、会の運動につながる在日朝鮮人の方々が、民団の方も総連の方もたくさん来てくださいました。上映後、短い時間でしたが、総連の女性同盟の方が、自分の生い立ちや、映画の感想などを、ひとつひとつ言葉を絞るように話してくださいました。そして、この映画をぜひ学校で子どもたちに観てもらいたいと、強く要望されました。
 この夏、多くの反対の声を無視して、無理やり「つくる会」の歴史教科書を採択するという暴挙に出た杉並区に対し、私たちは決して諦めず、今も毎週日曜日街頭宣伝をし、区民に撤回を訴え、署名活動を行っています。過去をねじまげ、独善的な史観に立つ「つくる会」の教科書を、未来を担うこどもたちに渡すことは、絶対にできません。この映画は私たちの会の仲間にとって、自分たちの運動への確信と勇気を与えてくれる素晴らしい映画でした。
 

香川県高松市で(渡口さん)

 映画の中でなぜ靖国なのか?と問いかけがありました。私は、どう言ったらいいのか? あの戦争で、傷ついた心、すべてがいやされるには、どうしたらいいのでしょう? 私の母は。沖縄戦でたくさんの死者の中で生き延びました。母は何も語らずに人生を終わるつもりです。元気なころの母が、イ・ヒジャさんや、ナヌムの家のハルモニにであっていたら、母は心の中の戦争を終わらせようとしただろうか? なぜ靖国なのだろうか? 私には靖国でいやされるとはとても思えない! いやされることさえも強制されるような気がする。
 

劇場上映に向けて
 「あんにょん・サヨナラ」は、2006年初夏(6月か7月)に東京のポレポレ東中野という劇場で上映されることになりました。ポレポレ東中野は、ドキュメンタリー界ではあこがれの劇場。そこで上映できるのはとてもうれしいことです。劇場上映には、2つの大きなチャンスがあります。1つはメディアに載る機会を作りやすくなること。もう1つは運動などにあまり関わりのない人たちにも見てもらえる機会がひろがるということです。劇場上映前にメディアに載りそうなイベントをたくさん企画して(例えばイヒジャさんと右翼のトークや高校生のトークなど)、日本全国津々浦々、誰もが「あんにょん・サヨナラ」という題名を聞いたことがある、何か気になる、という雰囲気を作り出し、この問題をあまり知らない人が「あんにょん・サヨナラ」を見て靖国について考えるきっかけとなればいいと思っています。劇場上映はとてもやりがいがありますが、やることもたくさんあります。お手伝いして下さる方、上映委員会までご連絡を〜!(高部)

 

韓国の劇場上映

 

監督と観客が対話

 
   

「李熙子さんが教えるキムチづくり教室」

2月26日(日)10時
大阪ドーンセンター調理室  参加費2000円

申し込みはFAXで 078−360−2171 へ参加者数をお知らせください。
エプロンをご持参ください。
14時・18時に「あんにょん・サヨナラ」の上映を行います。
16時に李熙子さんと古川さんのトークがあります。

 読書案内

 『古代朝鮮と日本文化−神々のふるさと』 960円+税
 『古代古代史と朝鮮』 1000円+税
    
            金達寿(キム・タルス)著  講談社学術文庫
 
 著者は、戦争中に神社への強制参拝があり、神道が軍国主義と結びついて猛威を振るったがために、「神社」「神宮」に対して嫌悪感を持っていたという。日本人の中にもこのように感じる人は少なくないだろう。それは明治時代になって天皇制国家によって作られた靖国神社・護国神社・忠魂碑、また、植民地支配下の朝鮮各地の神社が果たした役割に対するものだろう。
 しかし、著者は戦後、日本独自の文化といわれる神社・神宮の中に、高麗神社、百済神社、新羅神社など古代朝鮮三国の名を持つ神社や地名が日本各地に現存していることに気がつき、十数年にわたり全国を訪ね歩いて、その由来を明らかにした。多くの神社が朝鮮渡来人を氏神にしていることや、神宮の原型が新羅の祖神廟にあることを見いだすなど、日本の神々のふるさとが、古代朝鮮と、彼の地から高度な文化と技術を携えてやってきた渡来人の足跡に結びつくことを解明した。
 この2冊の労作は故・金達寿さんが1970年代から80年代にかけて発表した論集であるが、今なお増刷を重ねているロングセラーである。靖国神社が、いかに特殊な神社であるかを知るためには、一読しておくべき2冊ではないだろうか。(塚本)


GUNGUNインフォメーション

9
1月29日(日) 占領軍の即時撤退!イラクの民主的再建を目指す国際連帯集会 10時〜16時
          横浜市鶴見会館(JRまたは京急「鶴見駅」下車)
 2月15日(水) グングン裁判最終口頭弁論(東京地裁722号法廷)11:00
          18:30〜 報告集会(場所未定)
◆「あんにょん・サヨナラ」上映会 
(上映スケジュールはこちら)