在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.9 (2002.1.26発行)

 

GUNGUN訴状・資料集刊行!

ようやくGUNGUN裁判の訴状・資料集が完成しました。
訴状はもとより、靖国・BC級戦犯・戦没船・未払い金・遺骨など裁判で原告が要求していることがらを、わかりやすく資料をまじえながら説明しています。慰安婦問題以外は網羅された究極の戦後補償裁判の学習資料としてご活用ください。1部500円です。

日韓国民交流年の年明け。春。GUNGUN初公判!
 いよいよ2002年、日韓国民交流年の幕開けです。昨年は、教科書問題・靖国問題からはじまり、9・11報復戦争への参戦に至るまで、戦争国家づくりを急速に進める日本政府の姿勢があらわになりました。そんな動きに立ちはだかる戦後補償運動・日韓市民の連帯をさらに押し進めなければなりません。昨年は劉連仁裁判、浮島丸裁判、郭貴勲裁判で、国側に解決を促す判決が出され、画期的な前進がありました。GUNGUN裁判もこれに続きます。1月、厚生労働省は日本人の戦没者遺骨を身元確認のためにDNA鑑定する方針を発表しました。遺骨返還を求める多くのGUNGUN原告にとっては、真相究明への追及材料になります。
2月22日には小泉靖国参拝違憲訴訟の初公判が大阪地裁で行われ、金景錫原告代表が冒頭意見陳述を行います。春には本訴(東京地裁)の初公判も行われる予定です。ぜひ今年もGUNGUNの原告をサポートしてください。


靖国合祀拒否訴訟原告団が多田謡子反権力人権賞を受賞!

 12月15日、多田謡子反権力人権賞授賞式が行なわれました。多田謡子反権力人権賞とは、若くして亡くなった弁護士・多田謡子さんを偲んで父親らが創設した賞であり、今回で13回目。これまでに、在日の「慰安婦」裁判を闘っている宋神道さんや国労闘争団らが受賞しています。
 今回の受賞では、2000年12月に「女性国際戦犯法廷」を開催した「VAWW−NET ジャパン」、沖縄に在住し反戦平和運動に取り組んでいるキャロリン・フランシスさんとともに、「靖国神社合祀拒否訴訟・韓国人原告団」として太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会と太平洋戦争被害者補償推進協議会が受賞しました。
 当日は、韓国から金景錫さんと李熙子さんが来日し、授賞式に参加。また、GUNGUN裁判弁護団の大口昭彦弁護士も参加し、冒頭、多田謡子さんとの出会いや受賞の経過、靖国合祀拒否訴訟の意義について報告を行ないました。授賞式ではまず、今回の受賞のきっかけとなった文章を書いた西川重則・平和遺族会全国連絡会事務局長(GUNGUN裁判を支援する会呼びかけ人)から、4月スタート行動・院内集会での原告との出会いから6月提訴などの報告が行なわれました。
 続いて、金景錫さんより受賞のスピーチ。「受賞について迷ったが、『反権力』という言葉が私を来日させた。1万人を超える韓国・朝鮮人の靖国神社への合祀は二重、三重の苦しみを犠牲者、遺族に与えるものだ。」「小泉首相は、『おかしな人』という。生きて日本軍に捕らえられ、命を亡くしてまで抑圧されている被害者の悲しみがわからないのか。どちらが『おかしな』のか。」と靖国神社に参拝した小泉首相批判を含めてのスピーチを行ないました。
 また、李熙子さんは「このような賞の受賞ははじめて。今回の受賞を頑張れという励ましの賞としてお受けしたい。私の人生は父を思う一生だった。父は永久に帰らず、死亡通知一つなかった。靖国合祀について被害者はほとんど知らない。知らされていないのだ。日韓政府、靖国神社に働きかけ、時間がかかっても父を靖国から取り戻したい。」と決意を語りました。
 今回の受賞は、靖国合祀絶止訴訟の反響が国内外でいかに大きいかを、また、重要な問題であるかを物語っています。遺骨や未払い金の返還とともに、靖国合祀を取り消させるために全力を挙げていきましょう!


「BC級戦犯者」の補償立法案発表さる!
 12月8日、韓国・朝鮮人「BC級戦犯者」の補償立法をすすめる会の読書会&交流会が開催され、立法案(今村試案)が発表されました。戦時性的強制被害者補償推進法案につぐ戦後補償法案で、早期の上程・成立が望まれます。GUNGUN裁判の原告にも「BC級戦犯者」が加わっており、支援する会としても全面的に協力していきたいと考えています。


●旧植民地出身者である「BC級戦犯者」の遺族等に対する措置に関する法律(今村試案)

(この法律の趣旨)
第1条 この法律は、第二次世界大戦中の昭和17年、旧陸軍がわが国の統治下にあった朝鮮および台湾出身者(以下「旧植民地出身者」という。)を俘虜監視員として半強制的に動員し、タイ俘虜収容所、マレー俘虜収容所、ボルネオ俘虜収容所等において俘虜の監視等に従事させ、これによって大戦後、右俘虜監視員等が、連合国によるBC級戦争犯罪裁判を受け、その結果、死刑の執行を受け又は長期間にわたって拘禁されるなど、深刻かつ甚大な犠牲ないし損害を被ったことについて刑死者遺族等に対する措置に関し必要な事項を定めるものとする。
(謝罪のしるしとしての補償支給金)
第2条 政府は、旧植民地出身者で「BC級戦犯」として刑死した者の遺族又は拘禁された者もしくはその遺族に対して補償金を支給することにより謝罪の意を明らかにするものとする。
(補償支給金を受ける権利の裁定)
第3条 補償給付金の支給を受ける権利の裁定は、これらを受けようとする者の請求に基づいて総務大臣が行う。
(遺族の範囲)
第4条 金銭の支給を受けるべき遺族の範囲は、死亡した者の当時における配偶者、子(死亡した者の死亡の当時胎児であった子を含む。)、母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びにこれらのもの以外の三親等内の親族(死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持し、又はその者と生計を共にしていたものに限る。)とする。
(請求期限)
第5条 @請求は、施行日から起算して〇〇年以内に行わなければならない。 A前項の期間内に前条の請求をしなかった者には、金銭の支給をしない。
(補償支給金の額)
第6条 補償支給金の額は、刑死者又は拘禁刑に処せられた「BC級戦犯者」一人につき〇〇〇万円とする。
(政令及び省令への委任)
第7条 この法律に特別の規定がある場合を除くほかは、補償支給金に係る請求又は申請の経由及び補償金の支払方法に関して必要な事項は政令で、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は総務省令で定める。

GUNGUN特別講座(大阪)
日韓をむすぶ「合祀拒否」のこころ
「自衛隊よ夫を返せ」の中谷康子さんと交流学習会

  2月17日(日) 14時〜17時 アピオ大阪(JR大阪環状線・地下鉄中央線「森之宮」下車すぐ)
         参加費 1000円 (学生800円)

 田中伸尚さん著「自衛隊よ夫を返せ」のモデルとなった、山口県在住の中谷康子さんから、「合祀拒否」の思いや、訴訟を通じて感じたことを語っていただき、合祀手続き・靖国公式参拝の違憲性を学習します。GUNGUN裁判で要求する在韓遺族の思いとつながる「靖国合祀拒否」で、日韓市民交流の中身を作っていきましょう。
 1968年、自衛官のご主人と幼い子どもと3人暮らしの中谷康子さんに突然夫の事故死が襲いかかります。自衛隊主導で何事も進められ、亡き骸と一緒に悲しむことも許されないまま葬儀がなされます。それから4年後、キリスト教に入信していた中谷さんに突然自衛隊から「山口県護国神社への合祀」の案内が飛び込みます。当時日本キリスト教団の社会活動に目覚めていた中谷さんは、「拒否」の意志を伝えます。しかしそんな意志を全く無視して、「合祀」は平然となされます。それから中谷さんの闘いは始まったのです。1審、2審の勝訴にもかかわらず1988年最高裁で敗訴。しかし小泉首相の靖国参拝、在韓遺族の合祀絶止要求提訴(GUNGUN裁判)がなされた今、中谷訴訟の意義がクローズアップされています。

◆共催◆ 市民講座「世界のいま・いまの日本」


菱木政晴さん(小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局長) 交流・学習会報告(12月22日開催)

 学習会では、菱木さんより靖国神社の歴史やその教義などを詳しく教えていただきました。「聖戦のために死ぬことは、崇高である」「英霊が神になる」という靖国の教義によって、『戦争神社』と呼ばれていること。国民の戦争への疑問とか、犬死ではないかという思いを押さえつける働きをしていただけでなく、「後に続け」の思想まで植え付けたことがよくわかりました。死んでも神になるということで父や夫、息子の死を受け入れさせられただけでなく、後の戦死者を継続的に産み出す役割を靖国が果たしていたわけです。むごい、また許せないと感じました。 靖国参拝した理由を小泉首相は、「二度と戦争を起してはいけないという気持ちをあらわした」というが、国のため戦ったとされる軍人は祀るが、空襲犠牲者など民間人を排除している事実をどう考えるのか。彼の本音は、自衛隊の殉職者を堂々と国家として祀りたいのでしょう。年末の「不審船」に対する先制攻撃など、自衛隊や政府の対応などを見ていると、ますますこの「英霊サイクル」が加速することを危惧します。

菱木さん講演メモ
●靖国神社の教義は3つの柱で成り立っている。 @聖戦のために死ぬのは崇高である A英霊が神になる (あとに続けの思想) B顕彰
●小林よしのりがよく「爺っちゃんを悪く言うな」と強調して言う。「つらい運命だったが逃げたりせずとにかく行った。立派だと言ってあげたい」と、普通の人が言ってしまうことで、結局「任務の内容が立派だ」と言わされることにつながる。問題はA級戦犯と同じように祀られる。そしてその祭神に感謝し、敬意を捧げることによって「あとに続け」運動にいつの間にか協力していること。
●普通、怨霊を鎮めるために、敵方を祀るのが当然なのに、靖国は違う。空襲犠牲者は祀らない。沖縄戦で殺された人も祀っていない。ここで遺族年金との関連が浮かんでくる。集団自決では、命令があれば「戦闘協力」という名目で年金が出る。命令がなければ出ない。ここから「祀られないのは残念=犬死に」につながり、逆に「祀られることは名誉=喜ばしいこと」につながってしまう。
●靖国は「まじめにやってきた者を認めないのか」という発想で庶民をからめとって大きくなった。「死者に鞭打つな」という発想は、小林よしのりの主張と同じ。そういう世論形成の中で先鋒的に「正しい!」と言い出す子をもはや止められない世の中にしてはいけない。戦前がそうだったのだ。


小泉首相靖国参拝違憲訴訟(大阪)初公判に金景錫さんが意見陳述!
小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟<第一回口頭弁論>   2月22日(金)13:30〜14:30 大阪地裁202号(大法廷) 起訴弁論、原告冒頭陳述(原告3人) <裁判・報告集会>18:30〜/会場:エルおおさか/参加費:500円 弁護士・金景錫さんのお話、今後の裁判進行についての意見交換など

GUNGUN原告を知ってねコーナー

父がBC級戦犯として東京・巣鴨刑務所に10年も収監。「父たちを戦犯にしたのは一体誰なのか?」
(原告108) 羅鐡雄(ナ・チョルウン)さん

 三歳の時に父・羅三柞さんが徴用。釜山、インドネシア、スマトラ、ジャワへ連れて行かれ、そこで英国人捕虜収容所で勤務。終戦と同時に収容所の中と外とが逆転し、BC級戦犯として10年の刑を受け、東京巣鴨刑務所で10年もの間、収監。釈放後帰国したが、病弱になり1982年に亡くなった。
 残された家族の生活は悲惨なものだった。強制的に徴用された挙句、終戦後も10年間、人生の大切な時期に刑務所に入れられた苦痛に対する補償と、未払い給与の返還を要求する。

「強制的に労役させたのみならず、帰国途上に海のど真ん中で死なし、その上靖国に合祀している。日本は本当に悪辣だ。」
(原告213)林西云(イム・ソウン)さん

 2歳の時に父・林萬福さんが商売に出かけていって、そのまま捕まっていった。父から手紙や月給が送金された事はなかったとの事。解放されてから父の死亡消息を聞く。解放されて朝鮮に帰ろうとして、船が爆沈されて死亡したとの事。1945年8月24日に日本の舞鶴港で「浮島丸」に乗っていて死亡。強制的に労役させたのみならず、帰国途上にあった徴用者達を海のど真ん中で死なすとは、日本は本当に悪辣としか言いようがない。残された家族は激変した人生を送り、孤児のように一人で生きながら受けた苦痛は言葉ではとても表現できない。靖国にA級戦犯と一緒に祀られ首相の参拝を受けては、侵略に加担していたと受け止められかねない、と合祀絶止を要求。


読書案内  ハングルへの旅
 朝日文庫 茨木のり子著 540円+税

 「なぜ韓国語を習うのか?」この問いかけからこの本は始まります。その一つとして、著者が10年前に出会った韓国女流作家とのことが出てきます。とても日本語が上手いので「日本語が上手ですね」と言うと、「学生時代ずっと日本教育されましたもの」との返事。日本が植民地化した36年間の痛みに鈍感となっている自分を恥じたことからのハングルだそうです。隣国でありながら知らないことの多い韓国のことを、ハングルを学ぶ中から知っていく上で、とても興味深い本です。いわゆる学習本ではないので、気軽に一読を! 安寧(アンニョン)!  (西野)

GUNGUNインフォメーション

2月17日 大阪:中谷康子さん交流・学習会 14時 エル大阪
  22日 大阪:小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟<第1回口頭弁論>
         13時30分 大阪地裁202号(大法廷)
         18時30分 裁判報告集会 エル大阪