在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.3 (2001.4.30発行)

6月提訴にむけ、スタート行動・集会を開催!

呼びかけ人・賛同人を全国から募集します。

 6月提訴にむけた行動として、韓国から原告ら6名を招いて、4月13日厚生労働省・法務省交渉、国会院内集会(東京)、14日スタート集会(大阪)を開催しました。両日の集会は、会場に掲げられた「歴史の歪曲は友好の破壊だ」と書かれた金景錫さん(太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長)寄贈の横断幕が象徴するように、教科書問題に対する「私たちの答え」として活気あふれるものとなりました。

 李煕子さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会副代表)は、前日の厚生労働省交渉でのやりとりを振り返り、声を詰まらせました。陸軍軍属として徴用され、中国で戦病死し、靖国神社に合祀されている父親。靖国神社には戦死者名簿を提供(1977年まで)しながら、韓国人遺族会からの照会には「プライバシーの関係上」と名簿を明らかにしない厚生労働省の不誠実な姿勢。

 李宇海(イウヘ)弁護士は、「遺骨未返還・靖国合祀を人格権侵害という概念で追及し、突破口を開きたい」と話し、未払い金の返還とともに裁判で争う意義について説明。

 呼びかけ人代表の飛田雄一さん(神戸学生青年センター館長)は、「中国人元軍人軍属裁判も、原告は侵略した日本に荷担したように扱われ、迫害を受けた。今回も規模・課題ともに大きいけど、みんなで支えていきましょう」と呼びかけました。

 250名を超える原告一人ひとりが侵略の生き証人です。これこそが「教科書」です。 院内集会に参加した、韓国・朝鮮人BC級戦犯者の補償立法をすすめる会の内海愛子さん、平和遺族会全国連絡会の西川重則さん、(その後)立教大学名誉教授の山田昭次さんも呼びかけ人代表になっていただくことが決定しました。日韓民衆の共同作業として、全国から大型訴訟をサポートする輪を広げていきましょう! ぜひあなたも6月提訴に向けた支援する会の呼びかけ人・賛同人になってください。(古川)

飛田雄一さん(神戸学生青年センター館長・呼びかけ人代表) 

 この裁判は規模も課題も大きいけど、みんなで支えて成功させていきましょう。以前NHKのドキュメントで、中国人で日本軍属となっていた人のその後が放映されました。捕虜収容所で、収容所の管理人の仕事をさせられていた人が、戦犯として絞首刑となった話です。この仕事は、彼が言葉に通じているからと、命じられただけなのです。その人は、オーストラリアで軍事裁判にかけられたとき、「ピンタしたことがあるか?」「はい、あります」「クリスチャンの白分としてその行為をどう思うか?」「残虐な行為だったと思う」と答えて、絞首刑になったのです。私は、中国人の元軍人軍属の裁判を支援していますが、日本にいたということだけで、侵略者に荷担したかのように思われてしまうのです。そんなことも歴史の重要な部分として真摯に受けとめて、ともに進めていきましょう。

李宇海さん(弁護士・呼びかけ人代表)

 ご苦労様です。原告の事情が多岐にわたっているので、スタートさせるまでが非常に大変ですが、訴状の骨子はできています。裁判の主旨説明に当たる部分です。

@ 遺骨を返せ。ないなら探せ。  A 死亡の年月日、場所、理由を全て明らかに しろ。 B 靖国への合祀を絶祀しろ。   C 未払い金、軍事郵便貯金を返還し ろ。 D 韓国の新聞に謝罪文を載せろ。

 の5本柱。 弁護士は5人で、6月に提訴します。  訴状の具体的な内容ですが、死亡の不通知、遺骨の未返還、靖国合祀を前面に出して、人格権の侵害という概念で追及していきたい。人格権とはその人の生活も精神も全てが破壊され傷つけられたということ。特に合祀の間題は、侵略者と共に祀られるという屈辱、韓国における遺族の痛惜ははかり知れません。戦後補償裁判は同じような判決が続いています。唯一勝った従軍慰安婦裁判も、広島で逆転敗訴。東京地裁で勝つのは非常に困難だが、人格権の間題として「合祀をやめろ」が、突破口にならないかと考えています。日韓協定以後に作られた法律144号は、個人の請求権を勝手に否定したもの。「国の分離、独立にともなう処理であり、戦争犯罪と同じようなもので…まことにやむを得ないものとして…」と請求権を否定しています。この訳の分からない壁を突破したい。

 東京杉並区で、東洋大の大倉教授(慰安婦は商行為だったといった人物)は、教育委員をすっかり入れ替えた。こうした石原的、藤岡信勝的なものに対抗しなければいけない。長くかかる裁判だと思うが、共に頑張っていきましょう。

来日した原告の方たちの発言

金景錫(キム・ギョンソク)さん(太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長)

 韓国では、与野党一致で『日本は教科書を改正せよ』と言っており、国会議員が日本の国会前でハンストをするほど怒っている。靖国神社に合祀されていることは、韓国にあらゆる辛酸をなめさせた日本に尽くした『売国奴』と韓国では見られる。これは痛惜の念に絶えないものだ。被害者は生きているうちに解決しなければ、永遠に解決できない。一致団結して、日本の未来のために頑張りましょう。

李熙子(イ・ヒジャ)さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会副代表)

 父親が陸軍軍属として徴用され戦死した。「日本政府は道徳的にも人道的にも応えるべきなのに、礼を失した対応をしている。その上、今度は歴史を歪曲する。知らないうちに日本に忠義を尽くしたと合祀されていることには耐えられない。ここに集まった皆さんの信実を集め、最後まで原告を見守ってほしい。

金幸珍(キム・ヘンジン)さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会)

 日本が侵略戦争を始めた年、1941年6月警察により軍隊に強制入隊させられ、一番戦闘の激しかったところに行かされた。輸送船11隻のうち2隻は沈められ、着いたのは残り9隻。ガダルカナルでは米軍と日本軍のすごい戦闘で多くが戦死し、残ったのは800名くらい。日本が敗戦したことを知ったのは、1946年の2月。それも米軍の飛行機からのチラシから。草木や蛇など食べることのできるものは全て食べた。多くが栄養失調、マラリアなどで死に、最後は14名しか残らなかった。厚生省に照会したら、1247円の供託金があるとのこと。厚生労働省、法務省は何もできないという。胸がすごく苦しい。

李璋雨(イ・チャンウ)さん(同全羅南道協議会)

 全羅南道からきた。私のおじは1943年ニューギニアで戦死したという通知がきた。遺骨の返還はなく、今は仮のお墓を作って毎年祭っている。遺骨が返還されるように皆さんお願いします。

黄昌協(ファン・チャンヒョプ)さん(同全羅南道協議会)

 光州から来た。父が亡くなってから苦労して生きてきた。成人して行くのが軍隊なのに、父は17歳で連れていかれた。父のように17歳で連れて行かれるというようなことを日本の若者ももっと知らなければならない。皆さんの支援をお願いします。

4・13東京スタート行動報告

 4月13日、6名の原告予定者らとともに、11時から厚生労働省、13時30分から法務省への要請行動、15時から参議院議員会館で院内集会を行ない、予想以上の成果を上げることができました。関東事務局として今後、裁判と対政府交渉を両輪でサポートしていきます。(関東事務局、御園生)

 厚生労働省へは、遺骨の返還、行方不明者の調査、未払金の返還、靖国への合祀の取下げを、法務省には供託金の返還を求めた要請書を手渡し、原告予定者らからの訴えを行ないました。両省とも「体が震えて仕方がない」(李熙子さん)という言葉に端的なように被害者の要求に全く応えるものではありませんでしたが、今後の交渉の検討課題を浮かび上がらせるものとなりました。

 遺骨については、「8335体の遺骨は、戦後韓国側へ引き渡している。不明の1136体の遺骨は目黒区の祐天寺に保管している。人道的立場から返還されるべきと考え、現在死亡者の本籍地が韓国にあるものの一括返還交渉を行なっているが、進展を見ていない。」 生死確認については、「昭和46年死亡者名簿を韓国政府へ送付。個別に照会があれば応じる。」と回答。遺族会からの正式の照会について応じるよう求めたところ、プライバシーの問題もあり、遺族からの照会には応じているが、「昭和52年以降、靖国神社や戦友会からの照会にも応じていない」と返答がありました。勝手に靖国神社へは合祀しておいて、遺族会の問い合わせには応じないという不当な態度に参加者の怒りは爆発。また遺骨調査についても、「韓国籍(外国籍)のものとはっきりしているものについては、日本では行わない。」など遺骨確認や調査ということについても「人道的」と言いながら全く人道に反する姿勢が浮かび上がりました。1時間近くも予定を超えた要請交渉でした。「長い付き合いにならざるをえない」と事実上今後も交渉に応じることを確認せざるをえず、また、初来日の2人の原告予定者の軍籍や供託金の確認には応じ、今後の窓口を開けさせたのは大きな成果です。

「これこそ教科書だ。協力できることを検討したい」(平和遺族会西川さん)

 院内集会は、今後の運動の広がりをつくるうえで重要な集会となりました。平和遺族会全国連絡会の西川重則事務局長、中国帰還者連絡会の湯浅謙さん、戦没船を記録する会の篠原国雄さん、そして、日本軍の戦争責任を肩代わりさせられた韓国・朝鮮人BC級戦犯者の補償立法をすすめる会の内海愛子さんらに参加していただき、挨拶をいただきました。

 西川さんからは「まさにこれは私たちの課題。全国連絡会に報告し、何ができるか、何をすべきか検討したい」。湯浅さんからは「会を代表して来た。今日のことを報告し、しっかり取り組むようにしたい」。また篠原さんからは「戦没船、船員の記録がある。照会していただければと思う。会としても、個人としてもどういう協力ができるか検討する」。そして、内海さんからは「誰かが取り組まなければならないと思っていたこと。できるだけの協力をしたい」と心強い挨拶を受けることができました。集会終了後、西川さん、内海さんにはその場で呼びかけ人代表になっていただくことを心よく了解していただきました。

サポーター紹介

宮内秋緒さん(神戸)

 スタート集会で原告の方の通訳をさせていただきました。私は高校3年で進路決定に迷っていた時期、戦前戦中を通し日本帝国主義に人間としての尊厳を踏みにじられ権利の回復を訴えるハルモ二、ハラボジの姿を目にしました。以来その方々の闘いを支援したい、未来を担う若者としての責任を果たしたいと、大学での研究を「隣国・アジア理解」とし、朝鮮学を選びました。このような初心で取り組み始めたものの、時には心の弱さから遠ざかってしまうこともありました。現在は被害者を支えるという気持ちより、自分自身の生き方として、また地球市民の一員としての気持ちから、ことに臨めるようになったと自負しております。真の平和と権利が守られる世界が実現するその時まで、何らかの形でかかわり続けたいと思っております。 

 

アジア沖縄平和まつり(5月19・20)でGUNGUN構成劇を発表!

「これが教科書問題への私たちの答え」と題して、「構成劇」を発表しようと知恵を絞っています。戦後補償にもっとたくさんの人々に関心を持って注目してもらえるようにアピールしたいと思っています。出演者を募集しています。劇のアイデアも寄せてください。まつりでは「入会コーナー」もつくります。ぜひ知り合いの方を誘ってご参加ください!(大幸)

東京:5月20日(日)10時 池袋西口公園 ステージ・模擬店・ストリートパフォーマンス・展示等

大阪:5月19日(土)18時 城東区民ホール(ゲスト新倉裕史さん・宮城康博さん・原告)

      20日(日)10時  扇町公園 ステージ・模擬店・フリーマーケット・展示等

  ○次の点でご支援下さい(電子メール・電話・FAXをお待ちしています!) ・裁判費用を支えるため、支援する会(年3000円)に入会してください。 ・翻訳、ワープロ入力、原告来日時の車の運転など、できることを教えてください。 ・地域で強制連行フィールドワークを企画してください。共催しましょう! ・5月26日〜29日弁護団の訪韓・現地集会に一緒に行きましょう!