在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.23 (2003.12.6発行)

「歴史を磨いた」(金景錫さん)
ボランティアツアー2003を開催!

(2003年11月23日、春川・納骨堂)

   

過去清算のための2005年キャンペーンを開始しよう!

 「STOP!憎しみの連鎖」〜いうまでもなく一つはイラク戦争のこと。国際法を無視したブッシュの戦争犯罪に日本が手を貸すのか否か。殺され、殺すことが明らかな自衛隊派兵を何としても食い止めなければなりません。もう一つは「拉致」被害者や「救う会」が唱える北朝鮮への「経済制裁」です。湾岸戦争後のイラクに対する経済制裁を見ても明らかなように、これは戦争の一手段であり、最も被害を被るのは一般市民、子供たち。もちろん「拉致」に対する真相究明は必ずなされるべきです。しかし「経済制裁」は、敵対関係を深化させるだけです。拉致被害者の地村保志さんは、拉致が起こった背景に日本が戦後北朝鮮との国交正常化を放置したことによる対立関係があることを指摘し、この解決のために再び首脳会談を行うなどの平和的な解決を提起しています。恐怖と敵対心を煽り、戦争へと扇動する勢力は、決して被害者の味方ではありません。過去の清算と対話こそが解決のために必要なことなのです。

 再来年の2005年は、乙巳条約によって朝鮮統監府が設置され、植民地支配が始まった1905年から100年にあたります。日韓双方で、過去の清算のための2005年キャンペーンを広げたいと考えています。

 GUNGUN裁判は二次提訴の訴訟救助が決定し、今後一次と併合される予定。引き続きご支援を!

第10回口頭弁論は、12月17日(水)13時東京地裁710です。
第11回口頭弁論は、2月18日(水)16時 同法廷で行われます。

【第9回口頭弁論報告】 趙茂衍さん意見陳述
「未だにわが父を支配」「完全に解決するまで闘う」

父の形見の着物を羽織る趙茂衍さん

 11月20日、グングン裁判第9回口頭弁論が行われました。今回の裁判には、韓国から、原告・趙茂衍(チョ・ムヨン)さんが来日し、20日法廷で意見陳述を行い、翌日には靖国神社への申入れを行いました。


 趙茂衍さんのお父さん・趙南鉉(チョ・ナムヒョン)さんは、陸軍軍人として徴兵され、中国戦線に配備。厚生労働省の記録によると、最後には、1945年4月3日西部ニューギニア島ソロンで戦死したことになっています。45年4月3日というと、沖縄戦の始まっていた時であり、ニューギニア戦線での戦闘はすでにほとんど終結しており、戦闘による戦死というより、戦病死・餓死したものでないかと思われます。

戦地の父からの手紙
法廷で意見陳述

 前回提出した準備書面の確認、進行についての協議後、原告・趙茂衍さんが静かに、怒りを抑えた口調で意見陳述を行いました。
 「私は、この問題が完全に解決するときまで闘う覚悟ができています。色あせた写真に写る若い父の姿を見ながら、父の死によって家族が受けた苦しみの歳月を思い出し、すべての真相糾明が遂げられるまで私の余生を捧げ、努力していくつもりです」と決意を明らかに。また靖国合祀について、「父を死に追いやった戦犯者と一緒に軍国主義の象徴である靖国神社に、一方的に、家族の意思も聞かず、知らせることもしないで日本政府と靖国神社で勝手に合祀したということは、未だに我が民族を、そして私の父を支配していることを誇らしく思おうという野望にしか見えません。そのようなところに日本の小泉首相が公式的な参拝を強行したことは、息子として到底許すことのできないことです」と訴えました。

 

東京地裁前でビラを配る趙茂衍さん
靖国神社に申し入れ

 翌日は、趙さんのたっての希望で靖国神社へ。月例祭ということで、社務所門前での対応でしたが、申し入れを行いました。
 その後、靖国神社の展示の見学を誘いましたが、趙さんはきっぱりと拒否。軍国主義の象徴を見ることではなく、その呪縛から父を解いてほしいということなのでしょう。返還された遺骨を、母は「これは偽物だ」と拒否しました。靖国合祀の取り消しは一番の思いです。静かに語る口調にもかかわらず、その決意は確かに伝わるものでした。
 
 そしてわずか3日後、今度は私たちがボランティアツアーで訪韓。ソウルでの原告集会で、趙さんは笑顔で迎えてくれました。「集会には全部参加します。私たちのことですから当たり前のことです」と語っていた趙さんは、この日も真剣に私たちの報告を聞き、終了後は原告どうしが交流する司会役をやっておられました。

次回 第10回口頭弁論は、12月17日(水)13時 東京地裁710号。
次々回 第11回口頭弁論は、2月18日(水)16時 同法廷で行われます。


原告の方々の思いに応えるために、今後もご支援よろしくお願いします。

ブックレットの紹介
『「北朝鮮」をめぐる問題の冷静な認識と理解に向けて』

 5月に交流した高松の方からの紹介です。「核」・「拉致」、それをめぐる日本社会の問題を日朝・米朝の関係史を通して、 [1]いま、「北朝鮮」をめぐって起こっていることとは何か、[2]解放後の朝鮮に対し日本とアメリカは何をしてきたのか、[3]私たちは何をすべきか、の3部構成で年表と各種資料もついています。ご希望の方は下記までどうぞ。 (一部300円)
  Q&Aブックレット編集委員会 愛媛県今治市片山3−6−5
  TEL/FAX:0898−23−5808 メール soul@dokidoki.ne.jp

「歴史を磨いた」

 
ボランティアツアー2003報告
(11/22〜25)
 

 
春川での納骨堂の清掃、キムチづくり、「冬のソナタ」のロケ地巡り、温泉、垢すり、ソウルでの原告集会・・・


 今年の特徴は、原告の人々との間に、人としての「絆」の深まりを強く感じたことです。戦後補償裁判サポーターとしての私たちは、支援する会を立ち上げて4年目。植民地支配した者としての贖罪の気持ちのなかで、原告の方と向き合うときにいつも強い緊張がありました。その緊張には、重い気持ちが伴走していました。しかし今年のツアーは、緊張の中にも、共同作業を担う友人に感じるような、温かさを実感しました。この報告で、そんな思いはどこからきたのか・・・伝えられたらいいなと願っています。

 春川での金景錫さん、奥様の洪さんの笑顔。(とりわけ洪さんは活き活きされていた。)納骨堂の慰霊碑に積み上げた3年分の平和の意志(石)。一昨年、昨年の石はさして色あせることもなく、私や職場の人、街頭で呼びかけた人の心をとどめてそこに存在し、私たちを待っていたかのような懐かしさを感じさせてくれました。納骨堂の周囲は、金景錫さんが大切に手を加えておられる様子が、植樹された木や石塔にうかがえ、毎年訪れる約束の場所が美しく変化していることが何よりうれしかった。金景錫さん曰く、この日私たちは「歴史を磨いたのだ」と。う〜ん、やっぱり金景錫さんはすごい!どうして、こんなにも胸をうつ言葉で、私たちの作業を表現することができてしまうのでしょう。尊敬します。

キムチが完成!

 キムチづくりは、洪さんの「とても美しいお店」というリサイクル福祉ショップで、ご近所の主婦たちの協力をうけて、簡単な英語、身振り手振りで、笑いの絶えない共同作業でした。生牡蠣の入ったキムチは、絶品!ひとつキムチを仕込んだら、絶品の生牡蠣キムチを互いの口にご褒美として放り込んで、愉快!おいしい! 事務局長の古川氏は何とも不器用で、指導者のオモニをハラハラさせ笑わせていました。東京の御園生氏は、 意外にも器用! 金景錫さんは、「そんなに入れたらダメだ!」と一喝指導者。一喝されたのは誰でした?

 ソウルでの原告集会は、エリム食堂で開催。大阪花キャラ隊の西野、尾山さんの歌声でオープニング。尾山さんの高く柔らかい歌声に誘われて、原告の崔乙出(チェ・ウルチュル)さんが身体を揺すっていた。2001年の初めての原告集会を思い出す。互いにピリピリしながら、私たちは日本人としての贖罪を背負い、原告は信用していいのか距離を置いて私たちを見つめていました。しかし、この日の集会の空気は、年来の友人を迎えるように温かく、まなざしは優しかった。裁判のたびに原告が来日され、「マンナッソ パンガップスムニダ!」(会えてうれしい)と、言葉を交わしあえる人が増えたことが影響しているのでしょうか。目を見つめ語り合い、知り合った同士は、憎みあうことなどできない。アジアの友人として新しい未来を築いていく共同作業をしているのだと感じました。その作業は、裁判の行程としては大変困難であるけれども、草の根の市民交流という視点で見つめると、階段を上り始めているのだと確信しました。

 集会で確認しあった「2005年キャンペーン」の取り組みは、日韓市民レベルの交流というグローバルな視点で、人としてふれあうことができる企画づくりから始めよう。それはとてもワクワクする作業になる。ソウルで、金銀植さん、李熙子さんと食事しながら、話は盛り上がりました。李熙子さんを招いて、キムチづくりの講習会を東京、大阪で開催しよう!というすてきな企画も生まれました。いいでしょう?
というわけで、ソウルの夜は今回もとてもソウルフルな夜でした。

 さて、ここからはオプション。最後の日は、李熙子さんと、シベリア抑留被害者原告の李柄柱さんの案内で、江華島(カンファド)へ。この島は李熙子さんの故郷。幾多の外侵から国を守った地。日本が江華島条約を締結させた地。そしてこの地は、良質な高麗人参の産地としても有名。私も購入してきました。高麗人参酒を仕込んで、販売しようなんて考えています。ソウルで販売できそうな小物や、韓紙も購入。サポーターの皆さん、販売にご協力下さいね。以上!報告でした。(小川)

寄稿/ソウルでの原告集会で歌「夢を一つに」を披露した尾山さん
原告の前で歌って〜初めての韓国(尾山 香)

ソウル原告集会で

 正直、初めて歌うハングルでの歌が原告の方に伝わるのか不安で一杯でした。でも歌いだした瞬間、優しく受け止めるような暖かい眼差しに不安はどこかへ消えてしまいました。その後何かを言いながら握手をしてくれたたくさんの人の手のぬくもりに、歌と心が伝わったと感じました。帰る日、雨に降られ「晴れ女パワーも激辛料理の食べすぎで弱まったか」と思いながら空港へ向かう途中、日がさして街がキラキラと輝きだしました。人と人との確かなつながりを感じたステキな旅となりました。

原告・李煕子さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会理事)インタビュー
団結を深めるために開いた原告集会

李煕子さん

(今回の原告集会を開いたねらいは?)
 原告たちの疑問を解決すると同時に意識を高めるためにこういう機会は必要と思い開いた。日本側の努力を原告に知ってほしいし、原告の団結を深めるためにも必要。私は靖国問題が解決すれば戦後補償の8割が解決すると思う。今日の内容は大変わかりやすくてよかった。訴状集に新聞記事や訪日原告の意見陳述書を入れたのは、原告が他の人の文章を読んで、自分の資料などを整理する必要を理解してもらうため。韓国でも文書公開などの裁判をやっているので、こういう報告会で勉強して認識を深めてほしいと思う。

(今回さらに原告と近く感じました。)
 それが一番重要。次回は名札を準備したい。それは原告同士が交流を深めるためにも必要。

(自衛隊のイラク派兵をどう見ていますか?)
 戦争の痛みは遺族が一番知っている。侵略戦争で被害が大きかったのは日本人も同じ。イラクへの派兵で若者たちが犠牲になる。私たちの心の痛みと同じ。家族と離れて犠牲を望む人などいないと思う。

侵略の雲楊号事件のあとが今も残る江華島(ボランティアツアーで)

 ドイツでは第二次対戦での自国の戦争犯罪を20世紀中に清算しようと、「記憶・責任・未来」基金を創設しました。意見は多々ありますが、過ちを認め、未来に向けたアクションを起こした点では、間違いなく評価されています。日本の右翼は「ドイツと日本とは違う」と言いますが、その根底には「植民地支配はいいこともした」という正当化があり、石原発言とも通じます。侵略によって多くの人を傷つけたのはドイツと同じであり、過去の清算なく友好的な未来構築はありえません。
 1905年、乙巳保護条約(第二次日韓協約)によって朝鮮統監府がソウルに設置されました。植民地支配の始まりから100年目の2005年に向けて、日本政府に過去の清算を迫っていこうという動きがあります。GUNGUNでも2005年を目標にキャンペーンを広げたいと考えています。毎月の行事を検討していますので、意見をお寄せください。

当面のキャンペーン活動
 12月27日(土) 関西スタート集会 18時 大阪ドーンセンター 
  1月31日(土)大阪、2月1日(日)東京  李煕子さんが教える本場・キムチ作り
  5月 陶芸と名護屋城跡から朝鮮を見る九州・唐津フィールドワーク



韓国での2005年キャンペーン構想
金銀植さん(太平洋戦争被害者補償推進協議会事務局長)のはなし

金銀植さん

 今考えているのは、博物館や交流宿泊施設をソウルに作るという構想です。その内容を豊富にするために日本側からの意見や展示物を取り入れたい。また市民へのアピール力のある文化活動でもキャンペーンを広げていきたいと思っています。
(詳しくは12月7日に東京で開かれる「強制連行問題解決の道を切り開く国際集会」(13時半 シニアワーク東京)で提案されます。)


 

関西2005キャンペーン・スタート集会&望年会
12月27日(土)17時30分 大阪ドーンセンター
講演 「未来のコリア&ジャパン友好のために、今しなければならないこと」
    金慶海さん(兵庫朝鮮関係研究会)

 

 読書案内
  『日朝関係の克服』
    
なぜ国交正常化交渉が必要なのか −
            姜尚中 著
                                  集英社新書 680円+税 
 北朝鮮との対話と交渉による拉致問題の解決ではなく、北朝鮮への経済制裁を求める署名、請願運動が始められています。経済制裁は戦争への一里塚ではないでしょうか。拉致問題の解決がますます遠のくばかりか、イラクでそうであったように北朝鮮の人びとに病気や食糧難などの犠牲が強いられます。こうした好戦的で煽情的な動きの影響が小さくないだけに本書が多くの人に読まれることを望みます。姜尚中氏は戦後の歴史を踏まえて、日朝国交正常化こそ北東アジア全体に平和と安定をもたらす道筋であると提言しています。相互交流を通して両国間の信頼関係を築き、日本の植民地支配の責任を果たして国交正常化をしなければ拉致問題の解決はないでしょう。


GUNGUNインフォメーション
9月10日(水) 関西GUNGUN原告を囲む集い(18時半 エル大阪)
12月 7日(日)強制連行全国ネット「国際集会」(13:30〜17:00 シニアワーク東京)
                     
  福岡裁判弁護団、太平洋戦争被害者補償推進協議会、崔鳳泰弁護士ほか発言。
  8日(月)戦後補償総行動
(9:30新日鉄前集合、経団連、三菱重工、金曜会等に要請行動)
  13日(土)14日(日) アフガン民衆法廷公判
(9:30〜 九段会館)
  17日(水)GUNGUN裁判第10回口頭弁論
(13:10〜東京地裁710号)
  27日(土)2005年キャンペーン・スタート集会
(18時大阪ドーンセンター)
 1月30日(金)日鐵供託金裁判
(証人尋問 14:00〜 東京地裁606号法廷)
    31日(土)李煕子さんが教えるキムチ作り教室in大阪
 2月 1日(日)李煕子さんが教えるキムチ作り教室in東京
    18日(水)GUNGUN裁判第11回口頭弁論
(16:00〜東京地裁710号)