在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.21 (2003.8.24発行)

日帝強制連行被害者が国籍放棄行動
(8月13日、ソウル)

   

被害者にとって補償は待ったなし!
       韓国で国籍放棄デモンストレーション

 8月13日、韓国のGUNGUN裁判原告を含む「日帝強占下強制動員被害真相究明などに関する特別法制定推進委員会」300余名は、ソウル青瓦台の盧武鉉大統領を直接訪ね、「政府は被害者から目を背けている」と抗議し、韓国籍放棄の意思表示を行いました。
 現在の戦後補償裁判の前に立ちはだかっている壁、それは「日韓請求権協定で解決済み」という論理です。「韓国籍を放棄すればそんな論理は通用しない」と、この行動につながったのです。今まで日本政府の主張を韓国政府はただ静観するのみでした。また同協定で個人の請求権まで放棄したのかが争点となった三菱元徴用工裁判で関連文書の提出を要求した際、韓国政府は「日本政府が公開に慎重を期すよう強く希望しているから」と公開を拒否しています。国籍放棄行動はそんな韓国政府への痛烈な抗議なのです。被害者にとって、「補償は待ったなし」です。
 7月22日、東京高裁は遺族会訴訟判決で、戦時中の軍人軍属の安全配慮義務を初めて認め、「国家無答責」も排除しました。今後GUNGUN裁判でもこの点を立証します。また靖国合祀がいかに民族的人格権を侵害しているか立証するために、韓国の宗教・民俗学者からの鑑定意見書を提出する予定です。

次回(第8回口頭弁論)は、9月11日(木)です。

 

これ以上待てない  8月13日「国籍放棄」も辞さないと韓国政府に迫った  

太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長 金景錫さんからの報告

 

国籍放棄行動で訴える金景錫さん(右端)

 

 1945年8月15日から、もう早や58年が過ぎた。
 半世紀が過ぎたにもかかわらず、日帝の憲兵政治の傷跡は未だに深くこの地に刻まれて、その害毒を及ぼしている。
 当時、嫁入りして間もない新妻は、強制連行された夫の帰りを待ちわびて、80才のハルモニ達は20代の夫の面影を偲びつつ、その帰りを未だに待っている。その数100万。また強制連行された本人も年すでに80。大半がこの世を去ったにもかかわらず、その実相は調査されていない。「日帝強占下強制動員被害真相究明などに関する特別法」が国会に提出されて、既に3年余。これ以上待てない。最後の手段として「国籍放棄やむなし」という、意思表示に至った。韓日条約の呪縛から解放され、戦後補償裁判の新たな展開を目的として、国籍放棄という極限手段を辞さないという表明である。
 

グングン裁判秋季闘争へ全力!

  9月11日東京地裁へ(13:10)

 

二次提訴(6月12日、東京地裁)

 

 7月31日、東京地裁民事第19部でグングン裁判の進行協議が行なわれました。 これは、第7回口頭弁論で裁判所から提起されたもの。協議では、年内に双方の主張を出すことが確認され、私たち原告側から立証計画を明らかにしました。二次提訴については、併合の方向が裁判所から示されました。また原告全員の証人尋問はできないので工夫してほしいとの提起もなされました。

 裁判での争点は?

 提訴以降、双方から準備書面や答弁書を提出。特に論争になっているのは、靖国合 祀、日韓請求権協定、国家無答責問題などです。
 靖国合祀では、「合祀は国と靖国神社が一体で行なった」という主張に対して、国 は「合祀通知は援護事務の一環」として、何の実態的被害もないと主張。未払い金では、国は「日韓請求権協定とそれを踏まえた法律144号によって解決済であり、原告に請求権はない」と主張。また、この間他の戦後補償裁判で適用すべきでないとされている「国家無答責論」についても、国は必死で反論してきています。また私たちは安全配慮義務について、6月12日第7回口頭弁論で準備書面(注)を提出しました。

(注)準備書面で安全配慮義務の主張
1943年1月ニューギニア・ギルワで戦死した3人(原告の父)について、すでにその前に何度も作戦に失敗しているにもかかわらず、「明らかに無謀な作戦による損害を防止すべき義務に違反し、飢餓に落とし入れ、ギルワに放置し、戦死にいたらしめた」と。また、戦後浮島丸に乗船して爆沈した原告の父について、安全に運送する義務を負っていたが、「この義務を怠り死に至らしめた」と国の責任の存在を主張。

韓国人学者からの意見書も予定 さらに国を追い込もう!

 

二次提訴、原告と弁護団

 

 今、私たちは靖国合祀問題で、韓国の宗教・民俗学者から「靖国合祀がいかに韓国の習俗に反するものであるか」の鑑定意見書提出を準備しています。また法律144号について「日本の国内法で外国人の権利を消滅させることはできない」ことを明らかにしていきます。国家無答責論では、7月22日東京高裁判決「現行憲法及び裁判所法の下においては『国家無答責の法理』に正当性ないし合理性を見出すことはできない」を踏まえた主張を行ない、安全配慮義務問題でも、さらに被害実態に即した主張を行なっていく予定です。また二次提訴の韓国人シベリア抑留者問題でも国際法上の問題など主張を展開します。
 秋季は、グングン裁判を勝利に導く正念場です。さらに国側を追い込んでいかなければなりません。皆さんの傍聴と、運動の拡大で被告・日本政府を大きく包囲していきましょう!

第8回口頭弁論 9月11日(木) 13:10  東京地裁710号
    14時〜16時 原告を囲む集い (星陵会館) 
    19時〜21時 原告歓迎会 (YMCA韓国青少年センター:韓国YMCAホテル) 

関西原告を囲むつどい 9月10日 来日日程の関係で中止させて頂きます

※11日は10時より、環境破壊のODAを問う「コトパンジャンダム訴訟第2回口頭弁論」が東京地裁で行われます。

東アジア反戦大会(ソウル)に
   GUNGUN裁判を支援する会も参加!

 日本の敗戦記念日、韓国にとっては解放記念日である8月15日をはさむ14〜16日、韓国ソウルで、「東アジア反戦大会」が開催されました。ブッシュ・小泉による朝鮮半島の緊張激化政策の中、イラク反戦のスーパーパワーをこの東アジアでも実現しようと韓国諸団体の呼びかけで開催されました。

韓日の平和運動連帯の第一歩 〜 緊張激化の下で、戦後補償は実現しない

 

ソウル大学での大会

 

 ソウル大学での大会は、韓国の演劇集団の「ヒロシマ・メッセージ」で始まりました。韓国人被爆者を描いた演劇で、国境を越えた被害の悲惨さを訴えたもの。戦後補償問題では韓国の学生らを前に、日本製鉄元徴用工裁判を支援する会から「拉致被害者も植民地被害者も国家による人権侵害の被害者。今問われるのは、日本政府に対する謝罪と補償を求める民衆の連帯運動です」と報告。太平洋戦争被害者補償推進協議 会からの「若い世代がイラクの被害者と同様に太平洋戦争の自国の被害者問題にも注目すべき」との訴えに拍手が送られました。

ソウルの学生街でパレード・コンサート

 

学生街をパレード

 

 最終日は、梨花女子大などのある新村(シンチョン)でピース・パレードと、韓・ 日・沖縄を結ぶピース・コンサートが行なわれました。「チョンジェン(戦争)パンデ(反対)!」韓国語、日本語が響き渡る。月桃の花歌舞団のエイサーがひときわ目を引く。ビッグオブジェクトがパレードの先頭にたつ。沿道から拍手。繁華街の公園でピース・コンサートが始まる。沖縄からは海勢頭豊さんが特別出演。38度線に思いを馳せ作った実弾演習阻止の歌「キセンバル」や、元従軍慰安婦を歌った「トラジの花」がビルの合間に響き渡る。歌の間に韓日の若者のアピール、イラク、アメリカからの報告。韓日の若者が歌に合わせて一緒になって踊り、22時過ぎまでコンサートは続きました。

ソウル宣言を採択 〜 朝鮮有事を許さず、戦後補償の実現を!

 最後に、3日間の大会を締めくくる「ソウル宣言」が韓・日の代表から読み上げられました。朝鮮半島の緊張激化政策に反対する9・27世界をむすぶピースウォークへの参加などが訴えられ、参加者全員の拍手で確認。そして、日韓共同の取り組みを継続していく実行委員会のメンバーが紹介されました。取り組みは継続されるのです。
 この大会直前に、6カ国協議の開催が発表されましたが、イラク戦争を行なった米ブッシュ・英ブレアの足元は揺らいでいます。世界の反戦パワーは健在です。今、朝鮮有事を食い止め、東アジアの、朝鮮半島の平和を実現し、戦後補償の実現を勝ち取っていかなければなりません。 (御園生)

「日本国を相手に闘う戦友=同志を見捨てない」

寄稿:池田幸一さん(カマキリの会)

 

池田幸一さん

 

 6月13日、エルおおさかでの集会で、初めて韓国の戦友たち三人に会いましたが、忽ち心は通じ合い、彼らの勇気と不屈の気概に惚れ込みました。同じ黒パンを分け合って死の労役を共にした仲、ましてや日本国を相手に法廷で闘う者同志であってみれば、その思いはひとしおです。
 私たちは今、民主党の「戦後強制抑留者への特別給付金法案」を秋の臨時国会に上程すべく努力しています。やっとの思いで作りあげた法案でしたが "ない袖は振れぬ" と大巾の後退で、とても満足できるシロモノではありません。
 しかし、とにかく風穴を開けぬことには・・・・ の思いで大筋を甘受したのですが、どうしてもこれだけは と折衝している一つが「外国籍兵を除外するな」の運動です。
 ご存知の通りわが国は、「日韓条約などですべて解決済み」として、日本国籍を持つ者以外を頑なに除外してきました。日本国の軍人として勝手にかき集めて苦難を強い、都合が悪いと弊履の如く捨てて顧みない態度は、いかなる理由有りとて許されないことです。
 私たちは、「外国籍であっても定義に該当する者で、その所属する国の適格証明を有する者」 との条項を支給対象者に加えるよう強く要望しています。 "被爆者は何処へ行こうと被爆者" であるならば、"何処へ帰ろうと強制抑留された者"に変わりはなく、苦労を共にした仲間を人情と道理から見捨てるわけには参りません、と。 


近畿地区未払い賃金要求の会総会で連帯挨拶

 

多田代表

 

 7月13日、大阪で「近畿地区シベリア抑留者未払い賃金要求の会」の総会が開かれ、立法運動の推進や韓国シベリア朔風会との連帯など、今後の取り組み方針が議論されました。GUNGUN裁判を支援する会も招かれ、 二次提訴の報告と連帯挨拶をさせていただきました。(古川)
 

「原告証言を映像に残すツアー」報告

 今年も「GUNGUN原告の証言を映像に残すツアー」を企画。生存者を中心に13名の方から聞き取りを行いました。

時間がないことを実感した原告との対話(大幸)
 2年ぶりに、訪れた韓国は、雨に始まり雨に終わる4日間でした。19日、清涼里駅から7時50分発の汽車に乗車。隣の若者がスイカにスプーンをつっこんで皆で食べていました。春川まで2時間で2700ウォン。日本円で300円はめちゃくちゃ安〜い!韓国では公共交通が何せ安い!政府がしっかり予算を計上しているから?

 

李亨基さん(左)

 

 春川駅に到着し、タクシーで遺族会の事務所に行くと、元気な声の金景錫さんがおられま した。昨年足の手術をされたと聞いて心配していたのですが、おしゃべりの声は相変わらず大きくしっかりで、まずは安心。でも階段の昇り降りは誰かの肩を借りて、ゆっくりゆっくり。見るのはつらいものがありました。

 原告の方もすでに来られていてさっそく、証言の聞き取りを始めました。李亨基(イ・ヒョンギ)さんは、娘さんと一緒。耳が遠いので、通訳の丁智恵さんの言葉を大きな声で伝え直してくださり、とても助かりました。青森から北海道に移動する時に米軍の空襲にあい、破片が頭につきささって今も残ったままだと、レントゲン写真を見せてくださいました。以来ずっと、耳鳴りのような音が続いているということでした。

 

柳興元さん

 

 柳興元さんからは、豆満江の厳冬の中で軍事物資を運搬する仕事をしていたという話を聞かせていただきました。華奢な体で、とっても小さな声で話されていたのですが、「日本政府に言いたいことは何ですか」と伺うと、ふところから封筒を出して1枚の用紙を見せてくださいました。厚生省から届いた「日本軍に所属していたという書類が見つからなかった」という通知。「日本政府には、誠意を持って補償をしてほしい。裁判をして訴えようとしているのに、こんな返事をよこされてはどうしようもない」 。無念な思いが伝わりました。何の謝罪もなく事務的な内容のみの通知ですましているこの対応こそ被害者の怒りをかっているのではないでしょうか。
 お二人はヤンニョンからバスで1時間半もかけてこの事務所まで来られたということです。帰って行かれる姿に、被害者の「もう残された時間が無い」という切羽詰った思いを感じました。

韓国料理食べある記
 昼は、金景錫さん行き付けの店で蒸し豚やチヂミ、水冷麺をおなか一杯食べました。チシャに豚、にんにく、コチュジャンを包むといくつでも食べられるから不思議。ソウルでは、カムジャタンを初めて食べましたが、スープのおいしいこと最高でした。汁物が大好きな私はソルロンタンを食べたかったのですが、このカムジャタンで十分満足。春川の夜は「やっぱり、タッカルビでしょう」。入った店は米軍兵士やカップル、家族連れ、友人どうしで一杯。なべを見て圧倒されました。直径50センチはある鉄鍋に鶏肉とキャベツがてんこもり。どう考えても2人分じゃない。私には5人分に思えました。あとは、マッコリ大好きな古川さんの希望で、静かにお酒を飲める店に入って、金銀植さんと「日本人の宗教観」について話し合いました。


侵略の玄関になった江華島を初めて訪問(木村)

 

侵略の舞台、草芝鎮

 

 21日には李熙子さんの故郷、江華島へ行きました。江華島が様々な歴史の舞台になってきたことを案内され説明を聞く中で始めて知りました。草芝鎮(チョジジン)。ここは外敵の侵入を阻止する江華島に数ある要塞の一つ。1875年日本軍艦「雲揚号」が禁を破って接近、草芝鎮に艦砲射撃をくわえた「江華島事件」から日朝不平等条約につながる事件のあった場所です。
 指さす方を見ると、松の木の幹に白いペンキで丸印が。日本の艦砲射撃で傷ついたところを印している。同行のハルモニが「日本人恥を知れ!」。返す言葉もなくその傷を見ていました。車に戻っても「松の木にも命がある、そんな木を傷つけるなんて!」と怒っておられました。
 しかし同行のハルモニたちは道中よくしゃべる、よく食べる。そのバイタリティーには圧倒されました。元気を一杯もらいました。カムサハムニダ! 江華島は朝鮮人参の産地。市場に立ち寄ると試食の人参を口にねじ込まれました。初めは独特の味でしたが後に甘みがあり、つい買ってしまいました。
 

トピック 「日本人に対して」遺骨DNA鑑定の希望者を募集!

 厚生労働省は6月23日、日本人の戦没者遺族6000人にDNA鑑定実施のお知らせを送付し、希望者の募集を始めました。これまで私たちの申し入れに対し、厚生労働省は「外国人の遺骨収集は外国政府で」と言う不誠実な態度をとり続けてきました。今回のDNA鑑定は、遺骨の特定手段が一般的に可能になった公表であり、今後の交渉につなげていけると考えています。「遺骨に時効や日韓請求権協定で解決済み」は通用しないのです。
 

 読書案内
  『韓国の若者を知りたい』
        水野俊平 著
        岩波ジュニア新書 780円+税 

 
 この本では、韓日の若者<高校生・大学生>を取材し、その共通点・相違点を明らかにし、理解を深め合うことをねらいとしている。受験、男女交際、年長者への態度、徴兵制等、生活・意識の違いは興味深い。昨今、日本のマスコミはファッション・マンガ等の流行を取り上げ、若者文化の同質性を強調し、過去の先入観なしの「新しいつきあい」を強調する。しかし、「日帝は嫌いだが、日製は好き」という声に見られるように、韓国の若者の多くは、反日感情は薄れてはいるが、決して肯定的にとらえているわけではない。「先入観なしに」というのは、日本人側のご都合主義で、韓国の若者は「韓国人の受けた痛み」を知った上でのつきあいを望んでいる。生活・文化の違いだけでなく過去の歴史を知ることも、本当のつきあいには不可欠なのだ。(大釜)
 


 

GUNGUNインフォメーション
9月10日(水) 関西GUNGUN原告を囲む集い(18時半 エル大阪)
9月11日(木) GUNGUN第8回口頭弁論(13時10分 東京地裁710号)
         14時〜16時 原告を囲む集い(星陵会館)
         19時〜21時 原告歓迎会(韓国YMCAホテル)
9月26日(金) 小泉おかしい人発言名誉毀損訴訟判決(11時 大阪地裁)
10月6日(月) 小泉靖国参拝違憲アジア訴訟第8回口頭弁論(10時 大阪地裁)