在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.17 (2003.1.12発行)

李熙子さん「靖国合祀が取り下げられたとき、ここに父の文字が刻めるのです」

韓国・天安にある父の墓前にて
   

日韓市民の心の交流を広げGUNGUN裁判勝利を!

 あけましておめでとうございます! 昨年末、私たちを取り巻く多くの変化がありました。
 12月16日、日本政府はイージス艦のインド洋派遣を強行しました。ブッシュによる石油利権のための戦争に協力する小泉政権の動きは、アジア民衆からは脅威にしか映りません。対話と外交努力による解決をさせなければなりません。
 12月5日には、在韓被爆者・郭貴薫さんが「被爆者はどこにいても被爆者」と被爆者援護法の健康管理手当支給を求めた裁判が勝利! 国も上告を断念しました。国籍を理由に切り捨ててきた戦後補償を実現させる突破口へつなげていきましょう!
 韓国では年末、米軍によるの女子中学生轢死事件への怒りが全土を包み込み、大統領選挙の争点になりました。そして太陽政策の継続と、米国との対等な関係を求めた櫨武鉉候補が勝利。沖縄の痛みが日本全国の痛みになりえていない日本にとって「お手本」のようなできごとでした。
 昨年9月の日朝会談は、全ての戦後補償の解決にとって重要な幕開けでした。「拉致」問題による個人の人権の政治利用を許さず、国交正常化交渉の再開で個人補償を盛り込ませましょう!
 そしてGUNGUN裁判2003年の皮切りは、1月22日の第5回公判です。前回裁判所から出された「争点整理案」に対する主張が展開されます。第6回公判時には100人あまりの追加提訴も予定。直接原告たちと交流できる「マンツーマン・サポート」も開始します。今年も引き続きご支援をよろしくお願いします!


<トップ写真の説明>
 トップの写真は、昨年11月ボランティアツアーの最終日に李煕子さんにお願いして連れて行ってもらった天安(ソウルから車で2時間)にある「望郷の丘」での一コマです。望郷の丘は、在日韓国居留民団から「外国で死んだ人の墓を韓国内に」という要望を受け、韓国政府が政府予算、韓国内の寄付、民団の寄付によりつくったそうです。10万8千坪の敷地で1976年竣工。納骨堂(94年完成)には、太平洋戦争犠牲者の骨を含め600人分が納骨されています。李煕子さんは、「ここに父の墓を建てて9年になりますが、靖国合祀されている魂が帰ってくるまで文字が刻めません」と語っていました。すぐ近くには、元従軍慰安婦・金学順さんのお墓もありました。 
 

新年に寄せて

太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会 会長 金景錫(キム・ギョンソク)

 

昨秋のボランティアツアーで

 

 

昨年12月のキャンドルデモ

 

 昨年6月のアメリカ兵による女子中学生殺人事件により、韓国全土にその怒りが湧き起こっている。日帝による暴政の傷が未だに残る、その場での白人による轢殺行為は、彼らが我々にどう対応しているかを明白に記したものだ。面白半 分に鶏を追う犬のごとく、追い詰めて殺人行為をしたことは、天人ともに許しがたいものである。
 この事件は、日帝による戦争被害者には特に身に迫る思いである。なぜこれほどまでに侮辱されつつ、彼らの意に添う国柄になったのか? 殴られても殺されても、泣き寝入りをしなければならないのか! どんなことをされても物言わない結果が、今回の事件の震源である。今回の事件を機に、全国の老いも若きもが立ち上がった。一歩間違えば反米分子に問われるのも覚悟の上だ。幸いに傲慢な駐屯軍最高指揮官も口だけは「すみません」と言った。それでは済まない事も自明である。関係者を問責しても、死んだ人は帰らない。ようやく韓国の国民も目を覚ました。その延長線上で、日帝の悲惨な行為もわかってくれると思う。犠牲の上に立つ代価は大きい。
   2003年 元旦   金景錫

南洋群島トラック島戦死、靖国合祀の遺族の呂明煥さん来日

靖国合祀通知へのごまかしを許してはならない!
第5回口頭弁論の傍聴を!
1月22日午後4時〜 東京地裁722号法廷

 今回の口頭弁論にご夫婦で来日される呂明煥(ヨ・ミョンファン)さんは、父親・呂昌寛(ヨ・チャングァン)さんが日本軍に徴用され、1945年南洋群島トラック島夏島で戦死したとされている。遺族には何の通知もなく靖国神社に合祀もされている。
 父親の戦死地とされるトラック島は、1944年2月からの米軍の攻撃にほとんど抵抗できず敗退。取り残された4万余の軍人軍属らは、食料もなく飢餓による悲惨な状況であったといわれている。無謀な作戦に韓国 ・朝鮮人を無理やり動員したアジア太平洋戦争の犠牲者なのだ。
 今回の口頭弁論では、原告の陳述と共に、前回の口頭弁論において裁判所から出された「争点整理案」への被告・国の対応が最大の問題となる。「争点整理案」では、「靖国神社に対する回答義務が憲法第13条、第20条2項、憲法前文に違反しないことを主張されたい」となっている。つまり、裁判所はこのことが憲法違反かどうかを問題にしているのだ。政府がこれまでしている「これは援護のための回答であって合祀のための回答ではない」という見え透いたごまかしを許してはならない。

 また、韓国シベリア抑留者を中心とした二次提訴も準備の最終段階を迎えている。韓国人のシベリア抑留問題での提訴ははじめてである。戦中のみならず戦後もシベリアに抑留され、これに日本政府は何もしなかったのだ。

 是非多くの傍聴をお願いします。

【呂明煥さんの訴え】
 父・呂昌寛(ヨ・チャングァン)は、1911年韓国の江原道で生れた。1945年6月1日に南洋諸島トラック島夏島で戦死したとされている。日本政府からは何の対応もない。使い捨ての注射器のように投げ捨てるのは、人権蹂躙以外のなにものでもない。自国民以上の補償があってしかるべきだ。

 

***ちょっと!憲法講座***

【前文】
 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
 

【第13条(個人の尊重、生命・自由・幸福の追求の権利の尊重)】

 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政のうえで、最大の尊重を必要とする。

 

【第20条(信教の自由、国の宗教活動の禁止)】

1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国からの特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 

11月22日 寒風の中、国会前で座り込み!
シベリア未払い賃金を要求!
全国抑留者補償協議会・近畿地区未払賃金要求の会共同行動

 在韓シベリア抑留生存者がGUNGUN追加提訴に加わりますが、日本人生存者も現在国を相手に闘っています。このたびGUNGUN裁判支援を決定いただいた「全抑協」の平塚さんよりご寄稿いただきました。

***全国抑留者補償協議会東京都連 事務局長 平塚光雄さん***

 国会前座り込みが寒風のなか決行され、全国からシベリア抑留者69名、支援者含め80名が参加した。
 10時からの決起集会では、体調を崩して参加できなかった神林会長の代理として細川副会長が「我々は年齢的にも限界があり、今こそ体当たりで厚い壁を打ち破るときである。我々の運動は誇りある正義の闘い」と挨拶。
 韓国人のシベリア抑留者の裁判を支援する都職労の矢野氏からは「私たちはシベリアに抑留された韓国シベリア朔風会の皆さんの裁判を支援し、今日の座り込みに参加します。」と、また、中国残留孤児二世の方からも「シベリア抑留があったという事実すら知らなかった。支援します。」と挨拶があった。
 11時から衆議院議院会館前に、「シベリアの寒さに比べればこれくらい問題ない」と横断幕を持ち、座り込んだ。矢野氏の進行で、各県連代表が代わる代わるマイクを持ち、「寒風の中、80歳を越える我々の抗議行動を政府はどう見ているのか。このまま死んでいくのを待っているならば北朝鮮と同じ。」など訴えを行なった。座り込みには9名の国会議員も激励に駆けつけてくれた。総括会議では「寒かったけれどもみんな一つになって大成功だった。来年はもっと参加者を集め今回以上に幅広く元気よくやろう」と誓い合った。
 座り込みと並行して政府・各党に要請を行なった。とくに、野党各党の責任者に直接会って要請することができ、民主党では議員立法案を検討していることが明らかにされ、共産党ではさらに政府・外務省を追及していくことが明らかにされた。
 今回の行動は、一向に解決しない政府に対して未払い賃金の支払いを求めるという当たり前のことを求めた行動である。私たちはもう高齢である。しかし、要求が実現するまで頑張ります。
 都職労や韓国シベリア朔風会を支援している皆さんのご協力に心から感謝します。今後とも一緒に頑張りましょう。
 

メイク・オブ・ウィシュGUNGUN版のイメージで!
 
マンツーマンサポート お知らせ

 ニュース前号以降の議論を踏まえて、以下のようなイメージでの滑り出しを考えています。進め方を当初は固定化せず、進める中でよりよい姿にしていこうと考えています。

(1)原告の望みをかなえることを第一に!
 

 
「お父さんの顔も知らないんです。写真で
もあれば・・・」と訴える李英燦さん
 
   
 

第4回公判の原告李侖哉さん

 

 アメリカのNGOに「メイク・オブ・ウィッシュ」(余命少ない子どもたちの願いをかなえるためのNGO団体)がある。そのGUNGUN版のようなイメージで、原告の望み(究極的には補償全般であるが、私たち一般市民にもできる金銭以外のこと:例えば事実の究明。太平洋戦争に関する文献や資料は、韓国より日本の方が当然多いわけで、原告の望む真相究明の一助になりうる。)をかなえるために、できることをする。例えば写真の李英燦さんの場合であれば、何部隊かを調べて生存者を探し出すとか・・・ 前回公判で来日の李侖哉さんの場合、お父さんの乗っていた可能性の高い船が判明し喜んでもらえました。そのためにまずは、原告の望みを知ることから。

(2)原告と直接対話することで、日韓の友好を築こう!
 身の回りに韓国語ができる人はいませんか? 地域の中には案外探せばいるものです。もしいなくても大丈夫!ご相談ください。通訳ボランティアを介して直接原告とやりとりしましょう! マンツーマンでは敷居が高いので、当初は「グループツーグループ」に。まずは今度の第5回公判で来日する呂明煥さんをテーマにワークショップを行い、原告のために何ができるのかを議論したいと思います。

(3)グループ分けは・・・
・配属戦地別(シベリア、中国、フィリピン、ニューギニア、南洋、沖縄など)
   ・課題別(靖国合祀、遺骨返還、戦没船、BC級戦犯)
   にできれば最高ですが、当初は顔を知っている原告のことを調べてみましょう。
   まずは別紙ビラのワークショップに参加してください!

(関西) 1月21日(火) 18時30分 エルおおさか(6階研修室4)
 

昨年11月のボランティアツアーでは、
日韓市民レベルの有意義な交流ができました。
今回は参加者の感想を紹介します。


丁智恵さん

 

交流サッカーで(左端)

 

 韓国の日本帝国主義による強制連行などの事実を知ったのは私が中学のときだった。私が何よりも印象に残っているのは「お母さん、会いたいよ」という壁の落書きを残して海の藻屑と消えて逝ったであろう当時二十歳にも満たない朝鮮青年の想いである。あれから十年以上の年月が流れ、私は何百人もの行くあてもなく彷徨う犠牲者たちのためにつくられた春川の納骨堂の前に立ち尽くしていた。
 敗戦(韓国にとっては解放)57年も経つのに未だに韓日は地球の裏側よりも遠い国のようである。日本は新しい出発をできたのだろうか。高度経済発展によってもたらされた巨額の富はアジアの民衆の血と泪の上に成立し、未だに無尽蔵の苦しみを生み続けている。しかし歴史の教科書を開かなくともここには戦争によって苦しめられた生身の人間の存在がある。いわんや報われない霊魂の数はどれほどに上るであろうか。
 慰霊儀式が執り行われ前に出て朝鮮式の礼をすると、十代二十代の輝くときを奪われてしまった青年たちの「恨(ハン)」が心に沁みてくると同時に、絶望的な暗闇の世界が目の前を襲う。金景錫さんの掲げた「十萬億土」の世界。息ができなくなるほどの苦しみを胸に受け、頭を垂れる。いつまでこの苦しみは続くのか・・・。
 しかし、その暗闇の中にどこからか射す一条の光が見える。それはこの場所に慰霊のために訪れた日本人たちの想いである。57年間の年月を経て海峡を渡って供養のためにやって来た日本人(イルボンサラム)。体勢を戻し、慰霊碑を目の前にすると、心に浮かぶことはただひとつ。「これからは我々が、戦争のない、いい時代をつくっていきますので、安らかにお眠りください・・・」と。

海野慎治さん

 

キムチづくり講習会で

 

 参加させて頂き、有難うございました。金景錫さんにお会いでき、お言葉を聞くことができました。心かの歓迎を感謝申し上げます。日本各地に散らばったお骨を集め「十万億土のかなたに」お送りする地を掃除しました。
 久しぶりに思い切りサッカーをさせてもらいました。すてきなユニフォームを頂きました。私の宝物です。私が思ったのは、「歴史とは何?」とうことです。今、有事法制反対のデモから帰ってきたら、教科書裁判の家永三郎さんが亡くなったとテレビが伝えました。私も歴史を作る手伝いができればよいと思います。

 

読書案内
 『忘れられた朝鮮人皇軍兵士
         −シベリア脱走記』

        林えいだい著 梓書院 1600円(税込)

 本書は、朝鮮人でありながら日本軍兵士として徴用され、終戦とともに理不尽にもシベリアに抑留された人々の実録です。植民地支配からの解放となるはずの日本の敗戦後も生き地獄さながらの収容所生活。そこからの脱出。祖国の分断による新たな悲劇。彼らの叫びに今こそ耳を傾けなくてはなりません。GUNGUN裁判追加提訴のためにも必読!
 

  

GUNGUNインフォメーション

1月21日(火) GUNGUNマンツーマンサポート・ワークショップ
           (18時半 エルおおさか)
   22日(水) GUNGUN裁判第5回公判
           (16時 東京地裁722号)
   22日(水) アフガン国際戦犯民衆法廷in渋谷
           (18時伊藤塾東京校5号館) 
2月 1日(土) 国会図書館関西分館フィールドワーク
           (集合:12時JR学研都市線「祝園」駅改札口)
    8日(土) 原告らの足跡をたどってみよう!ワークショップ・関東
           (午後6時から:中央区京橋区民館 TEL03-3561-6340
            地下鉄「京橋」、都営地下鉄「宝町」より徒歩3分)
    252名の原告・原告の父らは、アジア太平洋の各地に配備され、その多くの方は、
    はるか南の島々で戦死・戦病死した。
   17日(月) 小泉靖国参拝違憲アジア訴訟第4回公判
           (13時半 大阪地裁202  正午に正門前集合・傍聴抽選)