在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.14 (2002.8.25発行)

 

有事立法と表裏一体の国立追悼施設NO!
二度と戦争を繰り返さない「反省と記憶」を!
 
 

8月10日、心に刻む会・姫路集会で話をする
李熙子(イ・ヒジャ)さん(中央)

 

 8・15を前に官房長官の私的諮問機関は、戦没者追悼国立施設を建設提案する方向だと発表しました。(8月10日朝日) 小泉首相をはじめ、靖国参拝を正当化する閣僚は必ず「平和の礎となって死んだ人に敬意と感謝の気持ちをささげる」と言います。「ありがとうの次には今度もよろしくねという言葉が続く」(心に刻む集会でアジア訴訟団山内さん)のを忘れてはなりません。「国のための死」を褒め称える施設はいかなる体裁を取り繕っても靖国の代替物に過ぎず、小泉政権が成立を狙う有事立法と表裏一体のものと言わざるをえません。アジアの戦争被害者が求めるのは、二度と戦争を繰り返さないという「反省と記憶」なのです。その思いを踏みにじる「靖国合祀」を一日も早く取り下げさせなければなりません。
 9・11 新たな日本の参戦のきっかけとなった日に、GUNGUN第3回公判があります。今回はBC級戦犯として日本の罪を負わされたお父さんの無念を晴らすべく原告となった羅鉄雄(ナ・チョルウン)さんが韓国から参加されます。戦争を正しく記憶し、アジアの人々と新たな未来を共有していくためにご支援・傍聴をお願いします。 

韓国より、BC級「戦犯者」遺族の羅鐵雄さんが来日!
平和をめざす行動とむすんで9月11日第3回公判の成功を!

 9月11日、第3回口頭弁論が行なわれます。ちょうど1年前、記憶に新しいテロのあった日です。そして、それを口実としてアフガン攻撃が開始され、この1年が戦争の年となり、新たな無実の多くの人々が戦争犠牲者となりました。アジア太平洋戦争で癒しがたい傷を負った韓国の犠牲者・原告たちが最も望むのは二度とかつてのような戦争を起さないこと。徴兵・徴用された本人・遺族たちに思いを馳せ、9月11日の第3回公判行動を行いたいと思います。
 来日する羅鐵雄さんのお父さんは、日本軍に強制動員され、捕虜収容所の監視員をしたことから、戦後も「BC級戦犯者」として侵略者の刑を肩代わりさせられ、刑務所生活を余儀なくされました。いつの時代も権力者は安全な位置にいるもので、羅さんからそんな戦争の不条理を訴えていただきます。ぜひ聞いてください。
 7月の第2回公判で裁判所は、植民地支配から敗戦そして戦後の靖国合祀までの関心を持っていることを明らかにし、訴状で引用した資料の提出を要請してきました。しかし日本政府は靖国合祀のみならず、遺骨の返還に関しても「法的根拠が明確でない」「現に遺骨を所持していない」と誠意のかけらすら示していません。
 8月12日には、韓国のみならず、台湾から遺族、立法委員(国会議員)ら6人が来日し、靖国神社に合祀取消しを申入れました。第3回公判はこのような情勢の下で行なわれます。今の戦争を止め、平和を求める全世界の行動とむすんで成功させましょう! 合祀取消しを!

第3回口頭弁論
9月11日 午前11時30分より(午前11時東京地裁前集合)
東京地裁710号法廷

院内集会(予定)12時30分


アジア太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む集会に参加して
GUNGUN原告 李熙子さん同行取材
 
/10東京 台湾の遺族も靖国合祀取消し求める!

 8月10日に開催された東京の心に刻む集い「平和のための証言集会」は、当初予定していた金景錫さん(太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長)と、生きながら靖国に合祀されている金智坤さん(GUNGUN原告)のお二人ともが体調不良のため欠席となり、急遽台湾の先住民・泰雅族の靖国合祀遺族、立法委員(国会議員)ら6人が参加しました。
 遺族の張雲琴華(泰雅族名:インカ・キン)さんは叔父が日本軍によって組織された「高砂義勇軍」に編入され、南方戦線に投入され、帰ってこず、「叔父を故郷に連れて帰りたい」と訴えました。また、立法委員の高金素梅(泰雅族名:チワス・アリ)さんは、写真を使って「日本軍は植民地支配のもとで抵抗する泰雅族を毒ガスまで使って弾圧した。靖国合祀は許せない。これから全国で、また国会で訴える」と訴えました。
 12日には、靖国神社に合祀取消しの申し入れを行いました。急遽GUNGUN原告の李熙子さんも合流し、台韓の合同の取組みとなりました。申し入れ後、台湾の遺族は、靖国神社本殿前で先住民の衣装で「私たちは今きました。あなたたちは踏みにじられ、侮辱され、どこで最後の息を引き取ったかも分からない。一緒に帰りましょう。子供たちが友達が待っている故郷へ」と歌い上げました。
 靖国合祀問題が、韓国のみならず、台湾でもその声が大きく上げられようとしています。(御園生)
 

8/15大阪 国立追悼施設は、第二のヤスクニだ!
 

例年より多数の参加者が大阪集会に

 

 国のために屍れた人に国民が感謝をささげるのは当然のこと、さもなくば誰が国のために命をささげるか」という中曽根発言から17年。いま小泉が首相として靖国に参拝。教科書問題。アフガンへの参戦。有事法制の国会上程。愛媛県の新教科書採択。国のために死ぬことが現実となる恐ろしさを、この日、証言者の発言から再認識しました。日本政府は、先の侵略戦争の実相を正しく知らせずに、国民を無知のままに放置するだけでなく、歪曲している。だからこそ、金城実さんが「無知は犯罪だ」と自分を戒めたと証言されたように、真実を明らかにすることが侵略者としての私達の責任であると痛感しました。

   

台湾の生存者が証言(大阪)

 

亡き母への心の痛みを証言

 

 台湾からの証言は、初めて知ることばかりでした。「誇りを持って、志願した」「日本兵として心から思い、いつ死んでもいいと思った」という証言は、衝撃的でした。他国の人に、それほど強く皇民化教育を行い、最も激戦区に駆り出し、その一方で彼らの家族に略奪の限りを尽くした私達の国は、いったいどんな国なのでしょうか。私の隣に座っていた中学生と思われる男の子は、すすり泣いていました。証言は日本語で行われました。母国語を奪うことで文化を破壊したことにも心が痛みます。
 GUNGUN原告の李熙子さんは、今まで語らなかった亡き母親に対する心の痛みを証言されました。父をとられ、死亡通知も受けられず、待ち続けた家族の苦しみと、戦争は家族の精神を破壊するものだと自身の成長を振り返って証言されました。証言後声をかけると、「一度も話さなかったこと・・・」と苦しそうに云われました。望郷の丘にある李熙子さんのお父さんのお墓に、名前を一日も早く入れることができるよう、靖国合祀を取り下げ実現のためにがんばりたいと思いました。(小川)
 

 

肉親の魂を取り戻す祈りをする台湾の遺族

 

 午後のシンポジウムは、「有事法制下の靖国と追悼」というテーマで、3人のパネラーから、靖国参拝問題を突き抜けて、「国立追悼施設建設を問う!」と問題提起されました。
 まず、小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局の山内小夜子さんが、訴訟の意義を説明。その後、不合理にも肉親が合祀された台湾のゲストから、前日靖国で右翼に囲まれながらも魂を返してもらうために行った「祈り」が、その場で再現されました。
 沖縄の「平和の礎」の刻銘検討委員座長の石原昌家さんから、沖縄の現状報告と共に、「礎」建設に至る論議が紹介されました。「『礎』は、慰霊のためのものでなく、沖縄戦での全ての死者の記録である。そのために被害者も加害者も全て刻銘した。平和の礎は、平和祈念資料館とセットでなければ意味がない。礎は名前を記録した大きな本だ!」と。
 高橋哲也さんからは、現在、政府・野党含めて提案されている「国立追悼施設」計画の問題について「国のために死ぬことが尊い犠牲とされるなら、殉教構造は存続する。戦争できる国には、新しい戦死者を予想しており、それを正当化する国家装置(国立施設=第二のヤスクニ)を必要とする」と指摘がありました。
まとめで、山内さんは、「国立追悼施設が国のために死んだ者への「敬意と感謝」を示すためというのなら、「死んでくれてありがとう、またよろしくね」という意味でしかない。そこには、「死なせて、ごめんなさい。もう繰り返さないから」という肝心なことが抜け落ちている」と指摘しました。
 有事法制下での国家追悼施設のまやかしが浮き彫りになるシンポジウムでした。(大釜)
 

 

聴く人から多くの感銘が

 
8/9広島集会

 広島集会では、まず菅原龍憲さんが「靖国の精神支配が戦後なお続いている。どう解放されるかが日本人につきつけられた課題だ。小泉の参拝はすまないと頭をさげているわけではない。結局戦死者を貶めている。父の合祀を取り消してほしいという訴えに、靖国の宮司は『遺族の申し出で祀ったものではないから、遺族の申し出で絶祀するわけにはいかない』と返答。あろうことか『お父さんは喜んでおられるかもしれませんよ』と言い、帰りには『お参りになりますか』と声をかける始末。人間の心の通用しない世界だ」と訴えられました。
 李熙子さんは、「誰もが生命を尊び、幸福になる権利を持っているはず。私は戦争により父を奪われ、父は若い命を奪われた。戦争により、悲しみや苦しみ、恨を持って育った。戦争の道具として生命が利用されていくことがないようにという思いを込めて裁判を闘っていきたい」と力強く話されました。 (大幸・木村)
 

8/10姫路集会

 姫路集会では、佐治孝典さんから「『靖国』には約212万3千人が一座として祀られているが事実は二座である。台湾で戦病死したといわれる皇室の二人は別に祀られているのであり、ここにも差別が持ちこまれている」という話を聞き、天皇家を特別扱いする精神が軍国時代そのままに受け継がれていることを知ることができました。李熙子さんは「去年の8月に合祀取り消しを求めて向かった靖国の鳥居の前で『朝鮮人かえれ。朝鮮人見たくもない』と言われた。ではなぜ朝鮮人を名簿に入れるのか。何も言えない死んだ人をなおもとらえる靖国とは何なのか。その場で倒れるほどの怒りを感じた」「しかしこうして皆さんとお会いしたことが無駄にならないよう、いい果実となって実るように」と呼びかけられました。
 李煕子さんから、日本に来られるまで「真相究明法」成立に向けて韓国国内を若い学生さんと一週間行脚したその足で日本の集会に駆けつけてこられたと聞き、李熙子さんのバイタリティーとそれを支える強い思いを改めて感じました。(大幸・木村)
 

ソウルからの留学生だより   奥田幸治
 (奥田さんは昨年のボランティアツアーに参加。7月の映像に残すツアーでも通訳ボランティアでご協力いただきました。)
 
 

通訳をする奥田さん(中央)

 

 韓国に来て早や1年8ヶ月が経ちます。こちらに来てつくづく思うのですが、日本と韓国って似ているところもあり似ていないところもあるのです。韓国は同じアジア地域で、外見も似ているし、ご飯を食べるときには箸を使うなど日本との共通点を持っています。かと思えば人の性格、国民性、習慣など違う点もたくさんあります。いったい韓国ってどんな国でしょう? 韓国を知る上でのキーワードを挙げて、感じたことを書いてみます。
 よく韓国人の友達とご飯を食べに行くのですが、最後に会計をするとき、その度に「ネガネルッケヨ(私が払います)」という言葉をよく言います。韓国では「ワリカン」はあまりしないのです。もちろん大人数のときはそれぞれお金を出すこともありますが、基本的にはその日、その時にお金がある人が出すようになっているようです。あまり親しくない人だったらそんなこともないようで、状況によって違いますが。ともかく、全員の分を出すとお金がいくらあっても足りないのではないかとも思うのですが、韓国の食事代、飲み代って日本に比べて安いし、おごったりおごられたりしてると、不思議なことに長い目で見てみたらバランスが良く取れてるんですよね。もし韓国で韓国人におごってもらうことがあったら、次は自分から「ネガネルッケヨ」って言ってみるのもどうでしょうか。では、また。。。
 

「近くて近い国へ」
今年も韓国ボランティアツアー・交流サッカー大会を実施!
11月22日(金)〜24日(日)25日(月)を予定
参加者・GUNGUNサッカー選手・平和の石を募集!

 今年も韓国のソウルから北東へ80kmの春川市にある、金景錫さんが建てた強制連行犠牲者の納骨堂で清掃ボランティアをし、現地のサッカーチームと交流試合を行います。昨年に引き続き日本からメッセージを書いた「平和の石(意志)」を集めて、供養塔の礎として使いたいと思います。また春川の自然に触れるプログラムも計画中です。具体的なプログラムは関東・関西で行われる実行委員会で話し合って決めていきますので、ぜひ意見をお寄せください。

関西:9月10日(火)19:00 エル大阪 
羅鉄雄さんとの交流とともにボランティアツアーの実行委員会を開催!

サッカー選手を募集!
※関西では春に交流サッカーをしたアボジ・チームと9月に交流サッカーを行う予定です。ぜひこの場にご参加ください。団結を深めましょう!

まずはご連絡を! 関西 090−1135−1488(古川)
            関東 090−4220−5427(御園生) まで

昨年の行程(今年のプログラムは実行委員会で決定)
1日目 午前:成田・関空 − 仁川空港 −(貸切バス)春川市内 
2日目 午前:朝から清掃ボランティア 午後:交流サッカー
夜 :夕食後 韓国チームとカラオケか温泉へ
3日目 午前:反省会後ソウルへ − 南大門市場で買い物 − 仁川空港
 

読書案内 私は貝になりたい−あるBC級戦犯の叫び−
          加藤哲太郎 著     春秋社(1648円)           

  本書は、俘虜虐待等の罪を問われて死刑を宣告され巣鴨刑務所に10年間拘禁された加藤氏が獄中で執筆した手記を中心にまとめられたもの。この中で著者は、戦争に参加したものが一人一人、自らの戦争犯罪を具体的に、体験的に語ることによって侵略戦争の実相が明らかとなり、二度と同じ過ちを踏ませない力になることを訴えています。獄中での深い思索と学習を重ねた人々が決死の思いで獄外になげかけた反戦の思いが伝わってきます。
 

GUNGUNインフォメーション

 9月10日(火)羅鉄雄さんとの交流会&ボランティアツアー実行委員会
          19時 エル大阪(地下鉄天満橋駅)
 9月11日(水)GUNGUN第3回口頭弁論
          11時30分東京地裁710号(午前11時東京地裁前集合)
          院内集会(予定)12時30分 場所 未定
 9月13日(金)日鉄供託金返還裁判 13時30分 東京地裁606号
 9月29日(日)〜10月2日 GUNGUN弁護団訪韓・原告集会
10月 8日(火)日鉄大阪控訴審判決 14時 大阪高裁202号