在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.12 (2002.6.16発行)

 

過去に目を閉ざす有事法制NO!
GUNGUN7月行動(第2回公判・対政府靖国交渉)にご参加を

 有事法制3法案の今国会通過は、「非核三原則見直し発言」や「防衛庁身元調査リスト問題」で事実上頓挫しましたが、小泉政権によるその狙いが消え失せたわけではありません。戦争で侵略され、殺される側のアジア民衆は、今後の「銃口」がどこへ向けられるのかを見抜いています。GUNGUN原告団体の太平洋戦争被害者補償推進協議会は「日本が真に平和の使節として尊敬される国になろうとすれば、戦争で苦痛を受けたアジアの民衆を癒し、戦争再発を防止するための外交的努力にもっと多くの力を傾けなければならない」と声明を出しました。補償も誠意ある反省もしない国に戦争へのフリーハンドを与えるわけにはいきません。正しい歴史認識が戦争国家作りの動きに歯止めをかけます。4月26日、福岡地裁は三井鉱山・中国強制連行事件で企業・政府の加害責任を認定し、時効・除斥適用を否定する判決(一人あたり千百万円)を下しました。私たちは生存者が生きているうちの解決・立法措置を強く求めます。7月3日のGUNGUN第2回公判と、2〜5日の7月行動(日鉄元徴用工裁判とともに取り組む対政府・企業・靖国交渉)にぜひご参加ください!


厚生労働省へ「生存者が生きているうちに解決を」の直接行動
GUNGUN・日鉄7月行動「怒りのパフォーマンス」にご参加を!
7月3日第2回口頭弁論 〜 国は事実認否を行い、求釈明に応えよ!

 4月26日第1回口頭弁論において、原告3人が意見陳述するとともに、被告・国側から答弁書が、原告代理人からは国の答弁書に対する求釈明を中心とした準備書面(原告T)が提出された。
 国の答弁書は、事実認否を全て回避し、国家無答責や日韓協定・法律144号で「いずれも棄却」を求めるものであった。遺骨の返還については「遺骨を所持していない」ことを理由に。靖国合祀による“民族的人格権の侵害、名誉毀損”については「法律上保護された具体的権利ないし法益とはいえず、また名誉毀損も想定できない」ことを理由にしているのだ。不法な植民地支配を強行し、強制的に徴兵・徴用し、癒せぬ犠牲を強いた被害者の訴えに聞く耳を全く持たないという態度である。
 これに対し、原告代理人は事実認否回避の不当性を「極めて卑劣な態度」であり、答弁のやり直しを求めている。そして、遺骨返還要求や靖国合祀も「失当」とする被告に対し、「遺骨返還が不必要と考えているのであればその旨を明言せよ」「(靖国合祀)に屈辱感を感じている韓国人に対して『その屈辱感は法的保護の対象ではない。』とあえて言える根拠は何か。」など被告に釈明を求めている。
 第2回口頭弁論の争点はここにある。国側を事実認否に追い込み、求釈明に応えさせることである。
 法廷外の行動も第1回口頭弁論に続いて行なう予定である。厚生労働省前は前回の交渉で5点について回答することを約束した。靖国神社は公的証明があれば生存合祀者の取消しは行なうと回答した。包括的解決を求める日鉄裁判を支援する会の仲間とともに前回を上回る傍聴、行動への参加で政府を追い詰めていこう。

【7月行動の予定】
2(火)14時  日鉄公判(大阪高裁202)
    18時半 GUNGUN日鉄勝利集会(エル大阪709号室)

3(水)12時  新日鉄本社前パフォーマンス行動&交渉 
    13時  厚生労働省前GUNGUNパフォーマンス行動&交渉
    15時半 傍聴券交付
    16時  GUNGUN第2回公判(東京地裁202)
    18時半 GUNGUN日鉄勝利をめざす集会(文京区民センター)
5(金)11時半 日鉄供託金返還訴訟公判(東京地裁606)

【厚生労働省への追及(4月交渉時の宿題)】
・韓国人靖国合祀について、坂口厚生労働大臣の見解表明
・日韓交渉過程での遺骨問題の取り扱い
・靖国への生存者合祀の調査 ほか
【靖国神社への追及】
・生存者合祀取り消しの具体的手続き
・全ての韓国人合祀取り消し ほか

厚生労働省前ではGUNGUN原告252名のパネルを並べての怒りのパフォーマンスも行います。ぜひパネルを持っていただくためにご参加ください!

有事法制化が狙われている今だから、
ワールドカップ共催で盛り上がっている今だから・・・・


GUNGUN裁判〜歴史認識へのメッセージ
内海愛子さん交流学習会
(BC級戦犯の補償立法をすすめる会・GUNGUN裁判を支援する会 呼びかけ人)
6月24日(月) 19時 エル大阪 504号室(地下鉄天満橋駅5分)

内海愛子さんからのメッセージ
「知識があっても心が動かない知識は意味がない」(4月東京報告集会で)

 私に言い聞かせている言葉でもあります。それには、被害者の声を聞きながら自分なりに自問自答することが必要だと思っています。資料ばかり見ていると、心が冷え込んできます。熱い心を保つには、私の場合は動いていることが必要です。7月の調査を楽しみにしています。

「GUNGUN原告の証言を映像に残すツアー」のご案内
内海愛子さんとともにビデオカメラと三脚を持って、韓国へわたり、ソウルを拠点として各地へ飛びます。あなたも参加しませんか?
【ツアー行程案】
7月13日(土) 成田・関空発 ⇒ 仁川ソウル 通訳ボランティアと合流 打合せ
  14日(日) 原告の住む町へ移動(約5班) 3〜5名の証言を映像に撮影
  15日(月) ソウルで合流(交流会) ⇒ 帰国 (滞在組は残って継続)
  16日(火) 西大門刑務所・安重根記念館等見学 ⇒ 帰国


ツアーに参加するTさんからのメッセージ

 私は大学在学中のTです。「知識があっても心が動かない知識は意味がない」という言葉に感銘を受けました。私は韓国籍在日三世で、映像ジャーナリストを目指しているのですが、その勉強をこれから始めようと思っています。キーワードは、「韓国」「日帝時代」「僑胞」。今回の企画は、そんな私にとって本当に生の元軍人軍属の方々の声をお聞きできる、大変貴重な機会になると思います。朝鮮人特攻兵について描かれた映画「ほたる」を見ました。内容・テーマはすごくよかったんですけど、すこし物足りなかったです。しかし、ああいう内容の映画が日本で製作され、高倉健などの超有名俳優が出演し、人々が見る、ということは本当に重要なことだと考えます。

今年の「戦争犠牲者を心に刻む集会」のテーマは
「戦争と靖国〜有事法制下での靖国と追悼」
「アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む集会」事務局 六田みちこ

 毎年8月に行っている「アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む集会」は、今年で17回目です。1985年中曽根元首相の靖国神社参拝の翌年から集会がはじまり、全国に広がりました。私たちがまず思いを馳せ、心に刻み、記憶し続けなければならないのは、私たちの国によって踏みにじられ、殺されていったアジアの人たちのことではないかという思いから、毎年アジア各国の戦争被害者を日本に招き、証言集会を重ねてきたのです。これまで中国、韓国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、サハリン、台湾・・・といろいろな国や地域の被害者を招き、昨年は国交のない朝鮮民主主義人民共和国の戦争被害者を招請する予定でした。ところが来日直前になって「ビザは発給しない」と首相官邸の判断がなされ、被害者が来日できませんでした。これは小泉首相が靖国神社を参拝するために、その反対の声をあげさせないためのものでした。首相の靖国神社への参拝は、アジアの戦争被害者への謝罪や追悼とは相容れないものであることがはっきりしました。また、有事立法制定の動きなどをみても「戦争できる国」づくりへこの国が向かっていることは明らかです。
 私たちは今年、靖国神社への合祀とりやめを訴えている韓国の方をはじめ、日本人遺族、また沖縄の方のお話を聞きます。そして、靖国神社とはいかなるものか、戦没者の追悼はどうあるべきかを問い、過去の戦争とこれからの戦争について考える集会にしたいと準備しています。大阪は8月15日、ほか東京、新潟、長野、姫路、島根、広島、四国地方、福岡など各地で集会をもちます。詳細は6月末に決まりますので、改めてまたこの場をお借りしてご案内申し上げます。


応援しています! 大学教員 小塩海平さんからの寄稿(1)
韓国人靖国神社合祀絶止訴訟で問われていること

グングン裁判に寄せる期待

 私は生まれながらのキリスト者で、物心ついた時から両親に連れられて靖国法案反対のデモに参加してきた。教会では靖国神社問題委員をつとめており、最近では韓国人の妻と一緒にグングン裁判を支援している。度重なる政教分離裁判の敗訴や首相の靖国神社公式参拝などによって、これまでずっと精神的苦痛を受けてきたが、今回のグングン裁判における韓国人靖国神社合祀絶止訴訟では、必ず一矢報いることが出来るのではないかと大きな期待を抱いている。
靖国神社の自己矛盾
 グングン裁判の第一回口頭弁論が行われた4月26日の翌日、私たち夫婦は原告や支援者の皆さんと共に、靖国神社への申し入れに参加した。昨年の8月14日には、原告のほか、通訳と支援者各一人ずつしか社務所に入れてもらえなかったのだが、今回は4月21日に小泉首相が春の例大祭に参拝した余裕からか、総勢27名すべてが社務所に通され、お茶まで入れてくれる歓迎ぶりであった。
 私が今回の要請行動で最も期待していたのは、生きたまま靖国神社の祭神として合祀されている金智坤さんの霊璽簿抹消要求であった。さすがの靖国神社でも、これにはお手上げだろうと予想していたのだが、応対してくれた坂総務課長は意外にあっさりしていて、生存者合祀についてはすぐに霊璽簿から削除すると約束し、驚くべきことに、日本人の場合も、横田さんや小野田さんをはじめ、かなり沢山あったのだということまで教えてくれた。神社宗教の根幹に関わる重大事であるはずなのに、どうしてこんなにも杜撰なことがまかり通っているのだろう、とキリスト者の私にとっては不可解で仕方がなかった。しかもこのような理解しがたい好い加減さを平気でおおやけに出来る感覚が不思議である。
 靖国神社は、厚生省(中曽根の公式参拝以来、厚生労働省との関係は切れているとのこと)などから合祀候補者名簿を受け取ると、それを霊璽簿に記載し、招魂祭を行う。その後霊璽簿に戦没者のみたまが宿ったのち(よりしろという)、これを本殿のご神体(鏡と剣)に合わせ祀り、いわば抜け殻となった霊璽簿を霊璽簿奉安殿に納めるということである。坂総務課長の話では、金智坤さんのような生存者合祀の場合は招魂祭をしても元々霊魂は霊璽簿に宿らなかったのであるから、霊璽簿から削除することができるということであった。しかし、一度合祀されたみたまは、もはや個々バラバラではなく一体となっており、そのうちのある部分だけを取り除くということはできないのだそうである。「廃神の儀」という儀式があるが、これは例えば田舎の小さな神社が財政的に経営困難に陥ったような場合に、その神社の祭神すべてを天の高天原に帰す儀式で、ご神体の一部を取り消すようなことではないのだとの説明を受けた。要するに、靖国神社は、祭られている当人の思想や宗教、また死に方には無関心で、厚生省などの要請に従って、いわば自動的・機械的に合祀手続きを行っているわけである。「ひめゆり」、「白梅」等の沖縄七女学校部隊の女生徒や、「対馬丸」で沖縄から鹿児島へ学童疎開中に撃沈された男女の小学生なども、本人や遺族の意志とは全く無関係に靖国神社に合祀されている。戦死した当時、日本国籍をもっていたということが合祀の基準であり、韓国、朝鮮、台湾の軍人は祭られているが、インドネシアの兵補や労務者などは祭られていないという話であった。
(次号へつづく)

原告を知ってねコーナー

事実認否すら拒否する国の答弁書に「血が逆流する思いだ!」
李洛鎭(イ・ナクチン)さん陳述(要旨)

 私の父、李福圭は、1945年9月20日フィリピンのミンダナオ島で戦死しました。戦地での日本軍部は敗戦の事実を隠し、密林の奥深く兵力を投入し、結局父は銃による傷で命を落としました。家族には戦死通報一つありません。その後彼らは誰の同意も得ることなく、父を靖国神社に祀りました。誰の同意があってこんな理不尽なことをしたのでしょうか?我が国ではうしろ指差される「日本軍人」。死んでなお靖国に祀られ、全国民の非難を受けなければならないことを示しているのです。23歳の若き花のごとき新妻は今、腰が曲がり、杖にすがり、ようやく歩く状態であるが、それでも夫が帰る日を信じて今でも待っています。我々韓国人が靖国に祀られるのは「恥」であり、子々孫々まで拭うことのできない「侮辱」であります。私達の後世の子孫に祖先が靖国に合祀されていることをどう説明すればよいでしょうか。靖国合祀の取下げと戦後補償を求めます。


2002長野全交in志賀高原
平和と民主主義をめざす全国交歓会のお知らせ
テーマ:「戦争のない世界をつくりだそう!」
7月27日(土)〜29日(月) 長野県志賀高原
  27日 国際シンポジウム&分散会「今この戦争を止めるために」
  28日 分科会「戦争犯罪を裁く国際民衆法廷をつくろう」ほか
      国際連帯コンサート
  29日 閉会集会
GUNGUNで松代大本営フィールドワークに取り組む予定です。

詳細は全交ホームページをご覧下さい。 http://www2r.biglobe.ne.jp/~zenko  



←昨年の沖縄全交での権水清さん
読書案内 戦後補償から考える日本とアジア
          内海愛子 著(山川出版社 800円+税)

 アジアの戦争被害者が補償を求めて立ち上がった裁判はおよそ70件にのぼっています。本書は、裁判で何を問うているのか、未解決の問題は何か、をわかりやすくまとめてあります。その中からアジアの被害者の声が伝わってきます。昨年出された大阪日鉄裁判や劉連仁裁判の判決の意義・課題など、最新の情勢も盛り込まれ、アップデートな内容です。グングン裁判の意義や課題を、戦後補償問題全体の中でとらえなおすには絶好の本でしょう。(塚本)

GUNGUNインフォメーション

6月24(月)内海愛子さん交流会「歴史認識へのメッセージ」
  30(日)15時 W杯決勝GUNGUN宣伝行動(新横浜駅北口新幹線側)NOVAビル前集合
7月 2(火)14時日本製鉄元徴用工裁判(大阪高裁202)
       18時半 GUNGUN・日鉄勝利集会 (エル大阪709)
   3(水)12時 日本製鉄前行動  14時 厚生労働省前行動
       16時 GUNGUN第2回公判(東京地裁202)
       18時半 GUNGUN日鉄勝利集会(文京区民センター)
   5(金)11時半 供託金返還訴訟公判(東京地裁606)
  12(金)13時半 小泉靖国参拝違憲アジア訴訟(林西云さん)(大阪地裁)
       18時半 アジア訴訟団・田中伸尚さん学習会(エル大阪)
  13(土)映像に残すツアー 〜16(火)
  27(土)2002長野全交in志賀高原 〜29(月)