在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.10 (2002.3.16発行)

 

第1回口頭弁論4月26日に開催!

 GUNGUN裁判の第1回口頭弁論の期日が決定しました。4月26日(金)東京地裁103号法廷で開催されます。昨年6月29日提訴以来、教科書問題、靖国参拝問題の中で歴史認識が大きくクローズアップされ、このGUNGUN裁判も注目を浴びてきました。
  2月22日には小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟(大阪)の口頭弁論が行われ、金景錫さんが意見陳述。「靖国はどんな権限があって、誰の同意をえて合祀したのか? 今からでも遅くない。同胞を返しなさい!」と合祀問題の本質をきっぱりと主張しました。
 4月26日には生きたまま合祀されている金智坤さんも来日し、その理不尽さに対する怒りを意見陳述する予定です。
 ワールドカップ共同開催の今年。歴史総括がなされない象徴である元軍人軍属の未払い金・遺骨返還・靖国合祀等を鋭く問うGUNGUN裁判第1回口頭弁論&報告集会に、ぜひご参加ください。
(同日4月26日には大阪で小泉違憲訴訟の第2回公判も行われます。)

第1回口頭弁論 4月26日(金)14:30 東京地裁103号法廷
報告集会(東京) 4月26日(金)18:30 港区勤労福祉会館(JR「田町」駅・地下鉄「三田」駅
報告集会(大阪) 4月27日(土)18:30 エル大阪606号室(地下鉄谷町線・京阪線「天満橋」駅)
252名全員の訴訟救助決定!
さあ4月26日第1回口頭弁論へ!

生きた教科書のページが開かれる

 昨年6月29日提訴(東京地裁民事19部、平成13年(ワ)第13581号で受理、事件名「合祀絶止・遺骨返還・損害賠償等請求事件」)してから、8ヶ月あまり。この間GUNGUN裁判の最大の問題は、「訴訟救助」をどうしても勝ち取らなければならなかったことです。
 GUNGUNの原告数は252名、請求額は24億6千万円です。民事訴訟法によると、提訴に際して裁判所に手数料(例えば請求額が1000万円の場合、一人5万円の手数料(「民事訴訟費用等に関する法律」)が必要)を支払わなければならないことになっています。日本による植民地支配・侵略戦争の犠牲者にそのような負担を負わせるわけにはいきません。ましてや原告は高齢です。提訴後、弁護団は訴訟救助の申立てを行い、「原告たちは、貴重な青年時代を日本帝国の戦争遂行政策のための戦力・労働力として動員され酷使され」「(戦後は)朝鮮動乱による混乱と国土荒廃により」「長年、経済的な困苦に堪えてこなければならなかった」こと、そして、今高齢で年金等でようやく生活を送っていることを粘り強く裁判所に訴え、訴訟救助を勝ち取ったのです。
 さあ次は、第1回口頭弁論。日本政府のとった戦後処理の理不尽さを、原告らがあますところなく主張する「生きた教科書」のページが開かれます。 ぜひ注目を!(御園生)

国家のために「死」を利用しようとする事への「公憤」
報告/中谷康子さん交流学習会(2・17大阪)

 穏やかに微笑むようにして語る中谷さん。そんな人が、30年も合祀拒否で闘い続けたのは中谷さんの言われたように「私憤」からではない。私達の人間としての基本的な権利を守るため。個人の人格権を踏みにじって、国家のために「死」を利用しようとする事への「公憤」であると感じました。信教の自由を侵害してまで合祀取り下げに応じないのは、靖国神社を自衛隊の精神的支柱とする危険なもくろみ以外のなにものでもない。 GUNGUN裁判での合祀取り下げ要求が、自衛官の死を「国のため」だと意味づける危険な動きをとどめることになると、中谷さんの優しい顔を見つめながら考えました。(小川)



中谷康子さんのお話(要旨)

◆自分の身の丈ほどの幸せとして結婚相手を・・・それがたまたま自衛官だった。敗戦から夫が死ぬまで25年。家族の幸せだけを考えて社会のことは何も考えてこなかった。夫の死後、息子を連れて夫の実家をでたのは、地に足をつけて教会で外のことを学びながら生活したいと思ったから。侵略のこと、人権のこと、権力のこと、岡部さんの冤罪事件・・・いろんなことが段々わかってきた。
◆85歳の渡部さんは、「息子を殺したのは国だけじゃない。私にも責任がある。靖国がそんなところだとは知らなかった。」と、一人で3万人の署名を集めた。その必死の姿に「本当の親の姿」を見た。その影響もうけて、靖国問題は許してはいけないと強く思った。その後に自衛隊から合祀が。お断りしたのに祀られた。「自衛官は国のために亡くなったのだから、合祀しないといけない。今後全ての自衛官を祀っていく」と私に語った。本当に腹が立ちこんな自衛隊の姿を知って欲しいと思った。
◆1968年に夫が死亡、69年靖国法案国会上程の動きのなかで、合祀拒否運動を支援する会もすぐに作られた。運動の途中で皆に迷惑かけている、何故私のような者が・・と考えて辛くなった。辛かったけど、私憤から抜け出ることができた。「弁護士、私、支援者がひとつにならないと勝てない!」私は私なりに選ばれたのだと思うようになった。
◆身近なことで一人でもできることとして、元号を使用しないことを私は貫いている。私と義父が別々の宗教で夫を祀ることは問題ではない。そこに国(国家権力)が介入してきたことが問題。

金景錫さんの意見陳述が圧巻!
小泉靖国参拝違憲アジア訴訟
第1回口頭弁論開かれる

(アジア訴訟団事務局長 菱木政晴)  

急きょ傍聴券の抽選

 2月22日、午後1時半の開廷にもかかわらず、神経質になった裁判所のほうから、正午から整理券の配布、傍聴券抽選という知らせが前々日に入った。法廷では、訴状の陳述と3人の原告の意見陳述を予定していたのだが、原告席にはいれたのは代理人(弁護団)とこの3人の原告だけ、他の原告は40名分を確保できたが、あとは抽選。正午前から地裁玄関前には、右翼風の連中が30人くらいたむろし、傍聴席を原告と支援者が確保できたのは合計55席くらい。このような事情で入廷できなかった原告も多かった。裁判所によると「異なる意見をもつものが多数集まって混乱を生じることのないような措置をとった。ご協力いただいて感謝する」とのこと。しかし、原告は当事者である。靖国や遺族関係で動員された連中といっしょにされては困る。

相手側代理人に自己紹介を要求

 訴状の陳述に先立って、原告側から被告四者(国、内閣総理大臣、小泉、靖国神社)のそれぞれの代理人に自己紹介を要求した。誰が誰の代理人かわからなくては意見陳述する原告も気合が入らない。自己紹介させたかいあって、金景錫さんが陳述の最後の部分で、靖国の代理人に向かって「靖国はいったいどのような権限があって私たちの肉親を死んでまで強制連行しつづけるのか」と叫んだ。これは本当に迫力があった。

国からのイチャモン

 訴状に対しては、国と靖国から答弁書が出ているが、いずれも本件は「私的参拝だ」と主張している。訴状に対する「求釈明」(訴状の意味がわからんぞ、説明しなおせというイチャモン)も同じことを言っている。われわれが訴状に「本件公式参拝」という表現をしていることに対して、「わしらは私的参拝のつもりや、あんたらのいう『公式参拝』の定義をしてくれ」というものである。しかしこの訴訟の争点は、小泉が8月13日に行なった参拝が、憲法20条3項の禁止する「国の機関の宗教活動」なのかどうかである。公用車を使い、内閣総理大臣と記帳し、事前からいやというほど宣伝・公言したこの参拝を、内閣総理大臣(公務員)としての参拝でない純粋な個人的行為(自然人・小泉の宗教的プライバシー権に属する行為)だといえるだろうか。自然人小泉が本当に自分の信教の自由を守ろうとしたら、ひとりこっそりとまたは人ごみにまぎれて誰であるかわからないようにして参拝するべきなのである。しかし、かれは実際にこんなことはするはずがないし、第一それでは、「首相の参拝」を求めた勢力に顔向けができないだろう。われわれに「公式参拝」の定義をしてくれとはお門違いも甚だしい。
 さて、三人のそれぞれに迫力があり、感動的な意見陳述については、大阪訴訟の公式ホームページを見ていただきたい(GUNGUNホームページからリンク)。金景錫さんのほかに、遺族の菅原龍憲さん、在日の洪仁成さん、皆とてもすばらしい内容でした。




金景錫さん意見陳述(要旨)

 日本人と同じ条件下で死んだにもかかわらず、日本人兵士は日本の法律で保護されている反面、植民地出身の犠牲者たちは、生死確認すらなされず放置されているのです。これは言うまでもなく「差別」そのものです。
 その一方で靖国神社には遺族に断りもなく勝手に合祀しているのです。加害者と被害者が同じところに祀られている苦痛がわかりますか。そこに一国の首相が参拝したわけです。被害者の傷口に塩を塗るようなことが次々と発生していることは、遺憾に堪えません。
 多くのアジアの民族を犠牲にした侵略戦争を正当化するものであることは言うまでもありません。戦後日本の憲法は、一切の戦争行為を禁止しているにもかかわらず、この行為は、われわれアジアの民族にとっては脅威であり、侵略の前触れだと言わざるをえません。過去も現在も被害を受けている民族にとって、この行為を道義上許すことはできません。
 この不道徳極まる行為に対する、日本の良心を見守りたいと思います。

小泉おかしい人発言名誉毀損訴訟第1回口頭弁論
4月10日(火)13:15 大阪地裁202号法廷
違憲訴訟第2回口頭弁論
4月26日(金)11:00 大阪地裁202号法廷
交流深めた2・24コリア・ジャパン
草の根交流カップサッカー
(大阪)

 昨年11月の春川納骨堂清掃ボランティアツアーの際に行なった親善サッカー大会の第2弾を、大阪で開催しました。対戦相手の「大阪府アボジサッカー連盟チーム」は、府下の朝鮮学校10校のアボジサッカーチーム代表からなる強豪。「グングン行こうぜチーム」は中高大学生の若者の参加でパワーアップしましたが、昨秋の親善試合に比べ健闘したものの、3対4で惜しくも敗れました。今回は、小泉靖国違憲アジア訴訟の第1回口頭弁論で来阪中の金景錫さん(太平洋戦争韓国人犠牲者遺族会会長)をお招きし、「在日同胞と会えてうれしい。戦後補償問題の解決まで闘い続ける」とアピールしていただきました。試合の後は車座になっての交流会。アボジチームからは、朝鮮学校が学校として認められず、民族教育が保障されていない実態も訴えられました。お互いに顔が見え、お互いを理解する場として今後もこんな催しを続けていきたいと思います。(塚本)

李英好(リ・ヨンホ)さん(大阪朝鮮アボジサッカー連盟)からのメッセージ  

「草の根サッカー交流試合」にお招きいただき誠にありがとうございました。日朝・日韓の親善に少しでも役立てばと思いながらも、白熱した(?)試合内容で楽しいひと時を過ごせたことを非常に嬉しく思います。このような交流の場を通してお互いの理解が深まる事を心から願っています。 歴史をたどれば日本と朝鮮・韓国は文化的交流が盛んでしたが、20世紀初頭の「暗黒の時期」の清算とその歴史的教訓をつかめないまま現在にいたっている事は許すことができず、又残念でなりません。しかし日本には《在韓軍人軍属裁判を支援する会》のみなさんのように物事の本質を見つめ、良心を持って取り組まれる見識高い方もたくさんいらっしゃいます。双方が認め合い譲り合えば争いが起こるわけが無く、そしてそれが自分自身の向上につながる事だと信じています。自己の一方的な見解だけを述べるのではなく、お互いひざを交えて尊重しあいながら意見交換ができるこのような素晴らしい交流の場を心から大切にしていきたいと思います。又の開催を心待ちにしています。

GUNGUN原告を知ってねコーナー

1月11日号『週刊金曜日』で伊藤孝司さんが戦没船「太平丸」をルポ。その太平丸の遺族。

祖父が「太平丸」沈没事件で憤死。日本政府は船の引揚と遺骨返還を!
(原告95)朴鉉東(パク・ヒョンドン)さん

 祖父の朴炳勲(パク・ビョンフン)は1923年12月21日、江原道チョンソン郡イムケ面コヤン里234−2番地で父、朴ウォンゴと母、ペク・シサの四男として生まれました。1942年、強制徴兵を受け北海道の千島列島海上で発生した「太平丸」沈没事件で船が爆破され水葬されたという消息を聞きました。死亡通知は解放と同時に故郷の家に伝達され、保証人の証言で確認しました。日本の強制徴用で私たちは祖父を失い、祖父が憤死したことをどうやって補償するつもりですか。日本は当然、補償と賠償をしなければなりません。

前号ニュースの主張で取上げた「遺骨のDNA鑑定を厚生労働省が決定」に対して問い合わせが数件ありました(1月18日神戸新聞が報道)。DNA鑑定が実現すれば、遺骨返還が重要な要求になっているGUNGUN裁判でも大きな意味を持ちます。ここで紹介した「太平丸」は日本人、朝鮮人(南北)が一緒に沈んでいますが、DNA鑑定によってその遺骨を判別することが可能ということで、日本政府に引き揚げを要求する大きな材料になります。伊藤孝司さんのルポによれば、太平丸は北千島に向かった1944年7月9日米軍の魚雷により沈没。総乗船者2010人(朝鮮人約1000人)中死亡者956人(朝鮮人655人)。

読書案内  日韓キックオフ伝説
 集英社文庫 大島裕史著 686円+税

 なぜ韓国はサッカーが強いのか? なぜサッカーだけは日本に負けたくないと思っているのか? それを本当に理解するためには、日本の植民地支配にさかのぼって朝鮮・韓国のサッカーの歩みをみなければなりません。また、サッカーの歴史を通して、日本が朝鮮に対して何をしたのかがよく見えてくると言ってもいいでしょう。著者は、韓国の延世大学で韓国語を学び、現在フリージャーナリストで、昨年12月日鉄裁判支援する会の「日韓サッカー談義パートU」で講演されました。交流サッカーのための必読書!

GUNGUNインフォメーション

3月26日(火)「近くて親しい国」へ!日韓友好コンサートーコッタジとともに
    18:30開演 労働スクエア東京ホール(地下鉄「八丁堀」すぐ)
3月28日(木)VIDEO ACT企画「ニッポン・戦争・私 2002」(グングン靖国合祀)
    18:30 中野ゼロ視聴覚ホール(JR中野駅徒歩8分)
4月10日(水)おかしい人発言訴訟第1回口頭弁論
    13:15大阪地裁202号
4月26日(金)GUNGUN第1回口頭弁論
    14:30 東京地裁103号
    報告集会(東京)26日18:30港区勤労福祉会館
    報告集会(大阪)27日18:30エル大阪

4月26日(金)小泉靖国参拝違憲訴訟第2回口頭弁論
    11:00大阪地裁202号