在韓軍人軍属裁判を支援する会ニュースレター

「未来への架け橋」 NO.1 (2001.2.6発行)


支援する会(準備会)からの呼びかけ(事務局)

 20世紀中の解決を目指して取り組んできた、戦後補償を求める闘いも21世紀に突入してしまいました。とはいえ昨年には、アメリカでの提訴の動き、ドイツでの基金の成立、そして国内では、慰安婦立法の動き、不二越や花岡事件での和解など、確実に半世紀前のことと片付けられない流れをつくりだしていることも現実です。

 今後情勢的にも、日朝国交正常化交渉の中で、侵略戦争の清算 は避けて通れない課題として浮上してきます。ドイツのように政府・企業の責任を明確にした「何か」が必要です。そのための圧力となるアクションとして、日韓市民の共同作業と位置付け、準備しているのがこの裁判です。原告予定者は、太平洋犠牲者遺族会(代表:金景錫会長)と、太平洋戦争被害者補償推進協議会(前太平洋戦争犠牲者遺族会ソウル支部 共同代表:李種鎮さん、張完翼さん)の会員です。

 軍人軍属といえば、雇用主は日本政府であり、証拠も多く残っています。未払い給与・弔慰金の供託の不法性が直接問えます。また遺骨返還要求は、時効に関係のない人道的な問題です。ここを突破口に、国家無問責や時効、日韓条約で解決済みなどの「壁」を打ち崩していきたいと思っています。今回の裁判は、原告が200名にのぼります。200人の原告となると、弁護士も10人は必要といわれています。この弁護団の編成をはじめ、サポートする体制も強化しなければ支えられないのが現実です。今、事務局で取り組んでいるのは、全国に向けた「呼びかけ人」の募集と、支援する会への入会者の募集です。ぜひ大きな支援のネットワークを全国につくりながら、原告を支えたいと思います。提訴は、6月になります。それまでに支援体制をつくりあげたいと思いますので、ご支援・ご協力をよろしくお願いします。

戦没船の資料館(神戸)の名簿に原告の名前を発見!(事務局 古川)

 今回の原告である、船ごと徴用されたまま、生死確認すらされていない韓広導さんの父・明竜さんについて、調査していた矢先の話です。昨年11月に行なわれた神戸東灘での平和まつりに参加したところ、海員組合の方の方と交流し、元町の組合ビル二階に「戦没した船と海員の資料館」があることを知りました。週明けにさっそく訪問、朝鮮人徴用者をはじめ、すべての戦没船に乗っていた犠牲者の名簿があることを確認しました。
 そして日鉄総行動があった12月5日に再度訪問し、名簿を見ていくうちに、韓さんの日本名「くにだ なかとみ」に極似した「韓田永富」の名前を発見しました。その遺族名が「妻用仁」だったので、後に金景錫さんに照会したところ、妻の名前が「用任」であることが わかり、間違いないことが判明しました。(船名は拿捕船で「暁空丸」。1944年荷衣島から上海に向かったが9月18日魚雷を受け沈没。682名が戦死、うち4名が韓国人でした。)しかもこの名簿の原型は、慰霊碑を建立するために、実行委員会が1970年に厚生省調査課・業務二課において、「厚生省の保管する戦没者原簿」をもとに作成したものであることも判明しました。(基礎調査は1966年に開始。)日韓条約を有利に締結するために隠した、強制連行の名簿がこの時すでに整理されていたことを示しています。研究員の方は親切で、「ここにある情報ならどんどん使ってほしい」とおっしゃってくれています。 (資料は事務局にもありますので、お問い合わせください。)
戦没した船と海員の資料館(078-331-7541)JR・阪神元町駅南西へ徒歩5分平日のみ(現在、支援する会でフィールドワーク検討中)

翻訳を手伝って(大阪、 延山さん)

 私が陳述書の翻訳をするようになったのは、高校の先生の紹介でした。初めは韓国語の勉強になるな」と軽い気持ちでしたが、みなさんの陳述書を読んでいくと「軽い気持ちじゃできないな」と思うようになりました。一人の陳述がA4用紙2、3枚に収まっていましたが、今までの思い、苦しかったこと、辛かったこと、悔しいことなどがぎっちりつまっていました。遺族たちはもっともっと言いたい事があるんだろうなと思いました。ちゃんと翻訳できるかなぁと不安になったりしました。しかし私にできることは、韓国語で書かれた遺族の気持ちを日本語で伝えることです。そして正確に伝えるためには当時の様子をしっかりと勉強しなければならないと思いました。遺族の皆さんの思いがちゃんと裁判所や日本の関係者に伝わるようにがんばりますのでこれからもよろしくお願いします。

(編)こちらこそよろしくお願いします。こういう世代を越えた、心の架け橋が時代を切り開くのだと思います。

浮島丸事件にこだわってサポートします!(京都、 佐藤さん)

 12月17日の全国集会で、今度の裁判の原告の中に浮島丸の生存者の方がおられると知り、ぜひその方を応援したいと思いました。私は、京都の仲間と、舞鶴にフィールドワークに行き、浮島丸の慰霊碑を見学したり、沈没現場に行った現地の方のお話を聞いたりしたことがあります。毎年8月24日に行なわれる慰霊祭にも参加したことがあります。強制連行で苦しめられ、ようやく祖国へ帰れる喜びの時に、命を奪われたかたがたの無念さを思うと胸が痛みます。舞鶴には浮島丸事件の真相究明に取り組んでおられる方もいますし、ぜひ今度の裁判を伝原告のサポーターを広げたいと思います。京都の仲間とも相談し、裁判が提訴される春には、京都で支援の集いを開きたいと思います。(3月20日予定)また、舞鶴にもう一度フィールドワークを行なおうと計画中です。裁判のお役に立てれば幸いです。

(編)フィールドワークは、ぜひ共催してやりましょう!

 事務局では、このような広範なサポートのために、「この人を応援したい」という、「マンツーマンサポート登録」を考えています。登録いただければ、直接原告の人にも連絡が取れます。原告の中には、BC級戦犯や、船ごと徴用された方の遺族など、いろんな境遇をたどった方がおられます。ぜひ地域や問題意識に合わせて、登録していただきたいと思います。