控訴審 第2回口頭弁論報告 2007年12月18日 東京高裁


新編靖国資料集、被侵害利益に関する準備書面提出
李美代子さん「キリスト教信仰者として耐えられない」

   
 
 

報告集会

 12月18日、グングン裁判の第二回口頭弁論が行われました。韓国からは、初来日の李美代子(イ・ミデジャ)さんと李熙子(イ・ヒジャ)さんが来日し、解決を訴えました。午前中は、遺骨問題での外務省申入れ、午後2時からは101号法廷で口頭弁論、そして、終了後弁護士会館で赤羽聖書教会の野寺牧師を迎えての報告集会が開かれました。
 今後、裁判は2回の弁論準備を踏まえて、次回口頭弁論は4月15日午後2時からとなりました。何も応えない国の早期結審策動を封じ、実質審理に踏み込むものです。

靖国問題:認否さえしようとしない国

 午後2時。101号大法廷で第二回口頭弁論が行われました。控訴人は準備書面3(新編靖国神社問題資料集)、準備書面4(被侵害利益)についての準備書面、および、証人申請している岩淵さんの陳述書を提出。席上、大口弁護士は「新編資料集のA級戦犯の例をみても国・厚生省が積極的に合祀を推進している」「国は、前回裁判所から指摘のあった、合祀への国の関与についての認否さえしない」と追及。また、準備書面4では大阪の訴訟により展開されている人格権侵害・「敬愛追慕の情の侵害」を追加して主張しました。
 最後に、一時陳述が危ぶまれた李美代子さんの意見陳述。通訳の赤池さんの宣誓に続き、李美代子さんが涙を抑え、のどをつまらせながら陳述しました。「私の家はキリスト教で幼い頃から信仰してきました。今も信仰生活を送っています。日帝時代に宗教的な理由で神社参拝を拒否したキリスト教信者を逮捕し、拷問・投獄したという話を聞きました。・・・結局は殉教者もでたといいます」「侵略戦争を正当化している宗教ともいえない宗教施設に父の名前が無断で合祀されていることは到底納得できない事実です」と訴えました。傍聴者の心を揺さぶる訴えでした。
 (李美代子さんの陳述書

靖国、それは戦争神社であり、殺人神社

   
 
 

報告する李美代子さん

 口頭弁論終了後、弁護士会館で報告集会が開かれました。集会は、大口弁護士、李宇海弁護士から口頭弁論報告。意見陳述した李美代子さんは「日本は憎いとおもって構えてきた。しかし、このように支援してくれる方が多くいて大変嬉しい」「今日裁判所で陳述でき少し気持ちが楽になった」と訪日にかけた思いと感想を述べました。李熙子さんは韓国での支援法を報告。最後に赤羽聖書教会の野寺博文牧師から「韓国におけるキリスト教弾圧と靖国」と題する報告を行っていただきました。
神社参拝を拒否したために何度にもわたる弾圧・逮捕・拷問、そして家族への拷問にも屈せず、最後には獄死・殉教された朱基徹牧師のこと、そして、赤羽聖書教会ではその拷問の後遺症の残る四男の方を今でもお招きして話を聞いているということでした。
 野寺牧師が結論付けたのは、「最も安上がりに兵隊を戦場に送り出し、安心して喜んで戦死させるための、まさしく「殺人装置」こそ靖国神社であり、この「戦争神社」「殺人神社」なくしてあれだけの超法規的・狂気的な戦争動員はありえなかった」ということです。

 


この間の厚労省・外務省交渉報告

   
 

外務省交渉

 


 昨年11月ノーハプサ、12月グングン口頭弁論にあわせて厚生労働省と外務省との交渉を行いましたのでその一部を報告します。厚労省交渉には太平洋戦史館館長の岩淵さんにも加わっていただきました。  






11月19日厚生労働省
(社会援護局援護企画課外事室 平澤室長補佐・小泉補佐) ⇒詳細

1.海外で収集した遺骨のうち、この5年間で韓国に返還された遺骨はあるか。
(厚)韓国に返還した遺骨はこの5年ではゼロ。

2.どういう場合にDNA鑑定まで申請できるのか。韓国人は申請できるのか。
(厚)どういう国であろうと、一定の条件を満たせば実施する。@身元を推定する資料の存在(埋葬地の     記録等) A遺族の要望 B兄弟や子からの献体(頬の裏側組織)提供 CDNA照合が可能であること 以上の条件がそろえば、国籍は関係ない。

3.平成18年度及び平成19年度の慰霊巡拝に関する予算はいくらか。
(厚)H18年度 1億2500万円 H19年度 1億100万円 12地域ずつを実施

4.「慰霊巡拝」に韓国・朝鮮・台湾人遺族は応募できるか。
(厚)記録が確認でき、関係を証明するものがあれば、日本国内に在住していれば可能。
  ただし配偶者・父母・兄弟姉妹・子の範囲内に限る。

5.インドネシアのマカッサル港沖やケケ島沖、トラック島で遺骨が放置されている旨の報道がなされたが、沈没船を引き揚げて遺骨を収集する予定はあるか。
(厚)沈没船が墓場という考え方もあり、基本的には沈没船の引き上げは想定していないが、実際にトラ ック島は収集した。
(岩)沈没船が墓場という考え方自体がおかしい。「海行かばみづくかばね」の世界であり、海軍の勝手 な考え方だ。それが遺骨放置の原因になっている。「魂が靖国にあるからいいではないか」という論理にもつながる。

12月18日外務省 (アジア太洋州局北東アジア課 秋山課長補、上山課長補) ⇒詳細

 昨年より韓国で行われている太平洋戦争戦没軍人軍属遺族の「戦地慰霊巡拝」に関して、
1.実施規模(人数・金額)はいくらか
(外)2006年 12月サイパン20名300万円・12月フィリピン20名300万円・12月パラオ20名400万円
   2007年 3月パプアニューギニア20名1000万円・7月マーシャル17名900万円・11月沖縄20名 
※日本側からの同行はなし(現地大使館員が対応)。韓国側は数名が同行。

2. そのうち日本側が負担している額はいくらか。
(外)上記の4割〜5割を負担している。外務省の予算「諸謝金」で執行。

3.今までの戦地巡礼が単なる「旅行」に終わっていると聞く。そうしないためにも、これまで日本側の生存者聞き取りなどで蓄積した情報(戦地の状況や当時の模様)を遺族に解説するなど、雇用者であった日本政府の道義的責任を全うすべきと思うがいかがか。
(外)ご指摘のとおりと思う。亡くなった人を偲ぶのが目的なので、それが叶うように遺族の希望を尊重しながらプログラムを決めている。マーシャルに行った際には日本人遺族の方に戦闘状況や部隊の動きについて、話しをしてもらった。事前に厚労省から韓国政府にはそういう資料を渡している。今後も改善していきたい。