2012年2月20日

郵便貯金記録開示について当局との交渉で大きな成果


 
 

いざ、出陣!

 
 

ゆうちょ銀行との交渉

 
 

ゆうちょ銀行で

 2月20日、韓国から李煕子(イヒジャ)さん、金敏普iキムミンチョル)さんが来日し、軍事郵便貯金などの関係で大きな進展がありました。参議院議員今野東議員の仲介で、同事務所において、2時から総務省(管理機構の監督庁)、金融庁(ゆうちょ銀行の監督庁)、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(軍事・外地郵便貯金の管理)のヒアリングが行われました。また5時からはゆうちょ銀行本社(通常郵便貯金の管理および、管理機構から軍事・外地貯金の管理委託を受けている。)との話し合いも行われました。
 われわれ側の出席者は、推進協の2人、強制動員真相究明ネットワークの小林さん、強制連行企業裁判全国ネットの矢野さんほか、グングン裁判・日鉄裁判支援する会など郵便貯金問題に関わってきた仲間たちです。大きな成果をまとめると以下のとおり。
 
金融庁・総務省・管理機構と
1 韓国の支援委員会が韓国外交通商部を通して、日本側に軍事郵便貯金900件の調査を依頼し、日本政府はこれを受けて、「特別の理由がある。」として、ゆうちょ銀行が調査し、回答するよう準備している。
2 韓国政府から、さらに追加で軍人・軍属のリストが送られてきた場合、回答できるかとの質問に、「特別の理由がある」場合として検討するとの約束。外地・通常貯金関係の照合も検討する。
3 軍事郵便貯金については名前・部隊名が電算化されており、900名の調査についても2・3ヶ月でできることが明らかになった。
4 通常貯金(強制労働の未払い金)が、福岡の事務センターに集中されており、数万件にのぼることが、はじめて明らかとなった。

ゆうちょ銀行本社と
1 すでに16件なっている個別申請(現存確認申請)の回答について、ゆうちょ銀行としては、回答するための調整段階(金融庁との?)になっており、早急に回答できるよう調整の努力をする。
2 通常貯金の照合についても、国から依頼があれば行うようにする。

 このヒアリング・交渉を控えた前日、ホテルの一室で打ち合わせ会議が行われました。最初に驚いたのは、韓国での軍事郵便貯金が、未払い金として2000倍のウオンに換算して支給されるようにな ったが、その締め切りが6月30日ということでした。われわれ日本側ではこのことを理解しておらず、早急な対応を求めていこうということになりました。
 それと李ヒジャさんが韓国の支援委員会に来日の2日前に行ったところ、「外交通商部を通じて900名の軍人軍属のリストを送ったと聞いたが真実かどうかわからない。これを確認しなければ。また支援委員会からは日本側のリストを全部もらえるように日本側と話をして欲しいと頼まれた」とのことで、事態の進展に一同また驚くこととなりました。日本政府がこれにどう対応するのか、またゆうちょ銀行が個人情報だからと拒否しないか、明日の話し合いが、俄然重要になってきました。李ヒジャさんの話によれば、10月に日本で個別申請を始めたときに支援委員会に行ったとき、民間でこうやってがんばっているのに韓国政府は何もしないのかと追求したところ、2006年に申し入れたことがあるとの返事があり、今どうするのかと追及したそうです。あまりの進展に李ヒジャさんも真実かどうか不安がっていました。
 
グングン裁判で敗訴しても、裁判の要求を実現しつつある!
 
 緊張して迎えた当日、900件のリストの件は事実であり、回答の準備が進められていることが明らかになりました。更なる全名簿の照合要求が韓国側からあれば「特別な理由ある」ものとして可能であることもわかりました。個人情報の保護を理由に拒否しないかと、心配していたゆうちょ銀行の対応は、「この資料は民間会社のものというより、政府から預かったものなので扱いには政府の同意がいる。」とのことで、政府から依頼があれば照会要求には応じるとはっきり答えていました。これは、軍人軍属に留まらず、日本に連行された強制労働被害者の未払い金である、通常貯金を明らかにできるという意味で、大きな意味のある回答となりました。
 これらの成果は、日韓条約によって打ち捨てられた人々の権利を再び明らかにして取り戻すことにつながります。グングン裁判で敗訴した私たちが、その直後に裁判での要求を実現しつつあるのです。
 総括会議(と言っても打ち上げの宴会ですが)での李ヒジャさんの言葉を皆さんにお伝えします。
「今回の大きな成果は一度につくられたものではない。まず。1991年のグングン裁判の資料調査過程で22名の軍事郵便貯金の回答を得て、支援委員会に、行政審査委員会への提訴など、これへの支給を認めさせるたたかいがあった。そして日本で個別申請が始まった。それが10件20件となり支援委員会へ韓国政府としても何かをすべきであるという韓国側の追求が可能になった。そして今回の話し合いのために、小林さん(真相究明ネットワーク事務局長)が、長いかつ綿密な準備をしてくれ、それらがひとつになってこの成果につながった。日本の市民団体が今回作り出した大きな成果を韓国で結実させていく」とのことでした。また、参議院議員今野東事務所(戦後補償を考える議員連盟)が、個別申請の件で何度も金融庁・総務省に誠実に対応するように何度も連絡を入れていただき、その結果、今回のヒアリングが実現したことも皆様に報告しておきます。
 最後に、私たちグングン支援する会は、このような結果が生まれるとは考えもせず、個別申請を始めました。2年前からの遺族証言集会で行方不明の崔ナックンさん、カンジョンホさんのお父さんの情報捜索にいきづまり、日本が保有する膨大な資料として郵便貯金があるので、他に手段も無く、展望も無くはじめたことでした。22件の1991年の軍事郵便貯金の調査も韓国側事務局が中心に行っており 、実際のところ、私はよく把握できていませんでした。窓口になった、ゆうちょ銀行大阪支店も、初め何のことかチンプンカンプンで、数年前からの小林さんの調査資料を基に、手探りで話し合いをし、協力を得るに至りました。その時も、遺骨や記録を探す遺族の願いを訴え続けました。
 遺族証言集会で掲げた父・兄の遺骨・記録を求める運動は必ず日本人の心に届くはずであると信じています。そして一人ひとりの解決を確実に進めていくことが多くの人の解決につながっていくはずです。裁判の敗訴は日本の司法制度の限界を示しているだけであり、闘いは終わっていません。
 大阪での個別現存確認申請は、すでに34件になっています。大きな流れを確実にするためにも、気を抜かず回答を実現しましょう。(上田)