第12回口頭弁論 2004年4月14日 東京地裁


日韓請求権協定・法律144号の鑑定意見書を提出
原告・李仁浩(イ・インホ)さんが意見陳述

  4月14日、韓国から李仁浩さんを迎えて、第12回口頭弁論が開かれました。今口頭弁論は、新潟地裁・中国人強制連行事件での全面勝利、福岡地裁・小泉靖国参拝違憲判決など、戦争政策を進める日本政府に司法の場からNO!を突きつけた情勢のもので行われました。

 

李仁浩さん・東京地裁前で

 

 法廷では、原告・李仁浩さんが、「金融機関という当時恵まれた職についていたのに徴兵され、帰ってみると38度線によって隔てられ復職できなかった。浜松まで連れて行かれ、空襲で死ぬ思いをした(死んだ同僚もいた)。せめて未払い賃金だけでも返して欲しい」と力強く訴えました。
 また同時に、憲法学者の獨協大学大学院法務研究科(法科大学院)右崎正博教授による、初めて憲に基づいて法律144号について評価した鑑定意見書を提出しました。政府はこれまで、法律144号で「日本の国内法で韓国国民の請求権を消滅させた」と言いつづけていますが、それが憲法上正しいのか否かを右崎教授が厳しく検証しました。


保管資料に該当無し(厚生労働省)
 李仁浩さんは、「徴兵第1期」で徴兵され、平壌での訓練後、名古屋、各務原を経て浜名湖の高射砲部隊に配属されたといいます。このことを確かめるために、口頭弁論後、厚生労働省を訪問。しかし、調査の結果は、現在厚生労働省に浜名湖に配属された資料はないとのこと。保管してある資料に李さんの名前(日本名:宮本仁浩)はないというのです。本人の記憶ははっきりしているにも関わらず「ない」という。多くの戦争被害者が、自らが徴兵されたその足跡をたどることさえできないのです。遺族の場合はなおさらです。「外国人」には充分な調査さえ実施されないのが現状です。担当者は「戦後すぐであれば聞き取りで記録を補充できたのでしょうが・・・」という。誰が放置してきたのか?!ここでも「理不尽な戦後処理」を感じずにはいられませんでした。

 

交流会で語る李仁浩さん

 

李さんの徴兵を悲観して母が自殺
 李さんを囲んでの交流会での場で、李さんから衝撃的な事実が明かされました。「父と兄は徴兵前に亡くなり、残された母は、『一度徴兵されると生きて帰ってくることはない』という噂を信じて悲観し、徴兵の数日前に自殺してしまった。日本の戦争によって家族や生活が引き裂かれてしまった」のです。証言の陰に隠された事実の重さに気づかされました。